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審決分類 審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y25
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y25
管理番号 1269664 
審判番号 無効2011-680001 
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-03-28 
確定日 2012-11-30 
事件の表示 上記当事者間の国際登録第853224号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 国際登録第853224号商標の指定商品中,第25類「Children’s clothing;knitwear (clothing);layettes (clothing);hats;hosiery;babies’ pants;uniforms;underwear;pants.」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は,その2分の1を請求人の負担とし,2分の1を被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第853224号商標(以下「本件商標」という。)は,「Annil」の欧文字からなり,2005(平成17)年6月13日に国際商標登録出願,第25類「Children’s clothing;knitwear (clothing);layettes (clothing);shoes;hats;hosiery;babies’ pants;uniforms;underwear;pants.」を指定商品として,平成18年5月12日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が引用する登録第2708073号商標(以下「引用商標」という。)は,「ANVIL」の欧文字からなり,平成2年1月29日に登録出願,第17類「被服,布製身回品,寝具類。」を指定商品として,同7年6月30日に設定登録され,その後,同17年8月3日に指定商品を第24類「布製身の回り品」及び第25類「被服」とする指定商品の書換登録がされ,現に有効に存続しているものである。
第3 請求人の主張
請求人は,「国際登録第853224号商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め,その理由を次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 本件商標と引用商標の外観,称呼及び観念について
本件商標は,「Annil」の欧文字を所謂ゴシック体の書体で横書きしてなるものであり,これより「アンニル」の称呼が自然に生じ,特定の意味合いは生じない。
一方,引用商標は,「ANVIL」の欧文字を所謂ゴシック体の書体で横書きしてなるものであり,これより「アンビル」の称呼が自然に生ずるものである。また,該文字は,鍛冶屋の金床(かなとこ)を意味する英語と同じ綴りであるにしても,国内においてはこの英語は馴染みの薄いものであり,英語力に秀でた者を除き,当該特定の意味合いで認識されることはない。
2 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標の外観を比較すると,本件商標は,「A」を除く「nnil」の部分は欧文字の小文字であり,欧文字を大文字で表記してなる引用商標とは,大文字と小文字という違いはあるにしても,この種の欧文字からなる商標に接した者は,概して,商標を構成する文字の配列として把握するのが通常であり,この点では,両商標は,それぞれ,「ANNIL」(annil),「ANVIL」(anvil)の欧文字から構成される商標として認識し,外観を把握するものであるものといえる。
そうとすると,本件商標と引用商標とを時と処を異にして離隔的に観察した場合,5文字中,冒頭部の「AN」(an)の2文字,後半部の「IL」(il)の2文字を共通にし,しかも,中央部の「N」(n)と「V」(v)が上下逆になった比較的近似の外観を呈する文字であることから,また,いずれも全体の外観では太字のゴシック体で,かつ5文字が隙間無くコンパクトに表記されているという共通点が大きく,視覚印象において彼此れ相紛らわしいものと映るものである。したがって,本件商標は,引用商標と外観において相紛れるおそれがある。
次に,称呼についてみると,両商標は,いずれも4音の短い称呼において,称呼の識別上重要な冒頭部の「アン」と,全体の聴感でも印象に残る末尾の「ル」とを共通にし,違いは中間音の「ニ」と「ビ」の差異だけである。しかし,この「ニ(ni)」と「ビ(bi)」は,母音「i(イ)」を共通にし,かつ,該子音の響きは後続する末尾音の「ル(ru)」に吸収されてそれらの音の響きはさらに弱められるから,両商標の全体の称呼においては,この違いは僅かな差異に過ぎず,全体として明確には聴取し難いものである。
以上のとおり,本件商標と引用商標は,観念については比較すべくもないが,外観において離隔観察した場合の印象において極めて相紛らわしく,称呼においても全体の語調・音調において相紛らわしいものとすれば,これら各点を総合する両者は,全体として彼此相紛らわしく,類似のものとするのが正解である。
3 本件商標と引用商標の指定商品の類否
本件商標の指定商品は,特許庁IPDLの商標情報の書誌によれば,「子供用被服,ニット製被服,新生児用被服,靴及び運動用特殊靴,帽子,メリヤス下着,メリヤス靴下,おしめカバー,制服及びユニフォーム,下着,ズボン及びパンツ」であり,このうち,「靴及び運動用特殊靴」以外の商品は,引用商標の指定商品中の「被服」と同一又は類似する。
4 本件商標と引用商標の指定商品における取引事情
本件商標及び引用商標にかかる商品は,店頭において一般の消費者が日々購入し,使用するものであって,価格的にも高価なものではない。この種の商品は,商品の購入・選択にあたって技術的な仕様や品質がそれほど重要視されず,所謂ブランドやデザインに頼るところが大きいものであるから,消費者は,店頭等で一度接しただけで,商標・ブランドを一瞬のうちに把握し,その外観・構成から容易に記憶に残る印象でもって手軽に商品を選択,購入する。してみれば,2つの商標を対比した場合で個々の構成では差異が認識されたとしても,全体の外観的構成や印象が共通している場合には,時と処を異ならしめれば,彼此れ混同するおそれは多分にある。
この点,本件商標と引用商標は,前述のとおり,全体の外観的印象は極めて似ているため,彼此れ混同するおそれは大きいといえる。また,第3文字目における差異も前後の文字が同一であることから,商標全体の共通した構成・外観的印象においては埋没し易く,全体としてのお互いの違いを際立たせてはいない。
したがって,本件商標が引用商標と同一又は類似の商品について使用された場合,この種商品の前記取引実情を考慮すると,本件商標と引用商標は,彼此相紛らわしいものであることは明らかである。
ところで,引用商標は,長年シャツに使用されており,Googleで日本語ホームページを対象に「ANVIL」「シャツ」を検索すると92,000件以上のサイトがヒットする。このことから,引用商標が国内で広く認識され,浸透している商標であることは疑いない。
してみると,引用商標が長年親しまれ,広く認識されている事情を考慮すると,外観,文字構成,称呼において共通するところが大きい本件商標は,実際の取引場面において引用商標と混同し易いものである。
5 結論
以上のとおり,本件商標は,引用商標と類似し,その指定商品も同一又は類似するものであるから,本件国際登録は,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり,同第46条第1項第1号により,無効とされるべきものである。
第4 被請求人の答弁
被請求人は,前記第3の請求人の主張に対し答弁していない。
第5 当審の判断
1 本件商標と引用商標の類否について
本件商標は,「Annil」の欧文字を太字のゴシック体で表してなるものであるから,その構成文字に相応し「アンニル」の称呼を生ずるものである。そして,これは,特定の意味を有する成語とはいえないから,観念は生じない。
他方,引用商標は,「ANVIL」の欧文字を太字のゴシック体で表してなるものであるから,その構成文字に相応し,「アンビル」の称呼を生ずるものである。そして,これは,金敷き,金床(かなとこ)などを意味する英語といえるが,その語の我が国における普及度やその語と本願商標の指定商品との関連性などからすると,これに接する需要者が直ちに当該意味を理解するとは言い難く,特定の観念を生じさせない一種の造語と認識するものとみるのが自然である。
そこで,本件商標から生ずる「アンニル」と引用商標から生ずる「アンビル」の称呼を比較すると,両者は,共に4音構成からなり,称呼の識別上重要な要素を占める語頭部の「アン」の音と,語尾の「ル」の音を共通にし,その異なるところは,中間に位置する「ニ」と「ビ」の音の差異にすぎない。しかも,その差異音は,母音(i)を共通にするものであり,かつ,明確に聴取し難い中間に位置することから,その音の差異が称呼全体に及ぼす影響は大きいものとはいえず,両称呼をそれぞれを一連に称呼するときは,全体の音感,音調が近似し,相紛らわしいものというのが相当である。
次に,本件商標と引用商標の外観を比較すると,両者は,共に欧文字5文字を太字のゴジック体で表した構成からなり,2文字目以降の「nnil」と「NVIL」に大文字と小文字の差異はあるものの,綴り文字については,目に留まりやすい語頭部の「An」と「AN」及び,語尾部の「il」と「IL」を共通にし,異なるところは,比較的目に留まりにくい中間部に位置する「n」と「V」の差異のみであるから,これらの書体や綴り字などの共通性をもってすれば,本件商標と引用商標を時と処を異にして接した場合には,これに接する取引者・需要者がその差異を明瞭に区別することができず,外観において相紛れるおそれがあるものというのが相当である。
2 指定商品の類否及びその取引の実情について
本件商標の指定商品中の第25類「Children’s clothing;knitwear (clothing);layettes (clothing);hats;hosiery;babies’ pants;uniforms;underwear;pants.」は,いずれも被服の概念に含まれる商品であって,引用商標の指定商品中の第25類「被服」と同一又は類似の商品である。
そして,商品(被服)に関する取引の実情をみると,これらの商品は,日常的に消費される性質のもので,その需要者は特別な専門的知識経験を有しない一般大衆であるといえるから,これを購入するに際して払われる注意力はさほど高いものではないとみなければならない。そうすると,本件商標に接する需要者が前記した「ニ」と「ビ」の称呼の差異や,大文字と小文字及び「n」と「V」の綴り字などの外観の差異を明確に認識し商品を選択,購入するとは言い難く,これらの差異を重視することを要しないとみるのが相当である。
3 判断
前記のとおり,本件商標と引用商標は,観念については比較することはできないが,称呼及び外観において相紛れるおそれがあり,取引の実情を考慮しても,本件商標をその指定商品中の第25類「Children’s clothing;knitwear (clothing);layettes (clothing);hats;hosiery;babies’ pants;uniforms;underwear;pants.」に使用した場合,引用商標との間で商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれがあるから,両商標は類似し,結局,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
4 むすび
本件商標は,前記の商品について商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから,結論掲記の商品についての登録は,同法第46条第1項により,これを無効とすべきものである。
そして,前記の商品以外の商品(shoes)については,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとはいえないから,無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-02-15 
結審通知日 2012-02-17 
審決日 2012-03-02 
審決分類 T 1 11・ 262- ZC (Y25)
T 1 11・ 261- ZC (Y25)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 小田 明 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 森山 啓
田中 亨子
登録日 2005-06-13 
商標の称呼 アニール、アンニル 
代理人 青木 篤 
代理人 原 隆 
代理人 田島 壽 

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