• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y19
管理番号 1266068 
審判番号 取消2011-300817 
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-08-31 
確定日 2012-11-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第2707180号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2707180号商標(以下「本件商標」という。)は、「ハッピー」の片仮名を横書きしてなり、平成3年5月23日に登録出願、第7類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同7年5月31日に設定登録され、その後、指定商品を第6類「建築用又は構築用の金属製専用材料,金属製建造物組立てセット」、第9類「加工ガラス(建築用のものを除く。)」、第11類「便所ユニット,浴室ユニット」、第19類「陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,建造物組立てセット(金属製のものを除く。),土砂崩壊防止用植生板,窓口風防通話板,区画表示帯,セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス 」及び第21類「ガラス基礎製品(建築用のものを除く。)」とする指定商品の書換登録が同18年1月4日にされたものである。また、本件商標の指定商品中、第19類「陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物」については、その登録を取り消す旨の審決が確定し、平成22年9月9日に審判の確定登録がされているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成23年9月15日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の指定商品中、第19類『リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,セメント及びその製品,木材,石材』についての登録を取り消す。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁及び口頭審理での陳述を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第14号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、上記請求に係る指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されておらず、また、本件商標を使用していないことについて正当な理由も認められないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)通常使用権者の立証について
被請求人は、企業A(以下「企業A」という。)が、本件商標に関する通常使用権者であるとするが、その事実は立証されていない。
通常使用権の許諾があったことを示す証拠の提出もなく、被請求人と企業Aとの関係についても具体的な説明がない。
企業Aは、「ハッピー養生シート」の小売業者にすぎず、単なる小売業者に小売商品の通常使用権を許諾することについて疑義を有する。
(2)本件商標の使用商品について
被請求人は、「ハッピー養生シート」が付された「養生シート」は、「プラスチック製」、又は「紙及びプラスチック製を合成したもの」と述べているが、前記以外の材質の、例えば「繊維製」、「アルミ製」のものも存在し、単に「養生シート」と表示されているだけの理由では、前記材質に係る商品であると決めることができない。
乙第1号証のカタログ(以下「商品カタログ」という。)には、「ハッピー養生シート」について、その材質、構成等が分かる説明は記載がなく、いかなる商品であるかは不明であって、被請求人の主張は立証されていない。
また、商品カタログに掲載された「ハッピー養生シート」が実際に取引に供されているとも認めることができない。
商品カタログの裏表紙下段には、「有効期限 2011.1.1?2011.12.31」と記載されている。一方、乙第2号証の売上伝票及び納品書は、2008年9月24日以降、2010年7月24日までのものである。
さらに、通販サイト「サイトA」(甲第3号証)には、2011年6月1日に当該サイトを開設したことが記載されているから、この通販サイトを見て注文したものでもない。
したがって、前記売上伝票及び納品書における「ハッピー養生シート」は、商品カタログに掲載されたものと同一の商品であることが何ら立証されていないので、「ハッピー養生シート」が「養生シート」であることは推測され得たとしても、その材質のみならず、建築工事用の養生シートであるか否かも分からないものである。
以上のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者等によりその指定商品について使用されていることは認められない。
3 口頭審理(口頭審理陳述書)における陳述
(1)本件商標に関する通常使用権者について
被請求人は、企業Aとの関係について、代表者同士が兄弟であると説明しているが、そのような事情は、単なる私的な事情にすぎず、両社の関係性を何ら示すものではないし、両社が緊密な関係を有していることの証拠にもならない。また、企業Aとの関係の補充として、両社の設立から現在までの代表者の推移等を説明しているが、この説明からも、両社間の関連を示す事情は見いだせない。
また、商品カタログにおいて、被請求人の製造に係る商品が掲載されている旨を述べているが、これらの商品を取り扱っていることと、本件商標について通常使用権の許諾があったか否かとは、無関係の事柄であって、本件審判の請求とは何ら関係のない商品の取引を行っていた事実をもって、本件商標について黙示の使用許諾があったということにはならない。
(2)「ハッピー養生シート」について
ア ハッピー養生シートの材質は、商品カタログ中に記載されていないので、その材質について、被請求人は、ポリプロピレン(PP)ラミネートフィルム、クラフト紙、クラフト中芯と主張しているが、その立証がなされていない。
また、被請求人は、乙第1号証の「ハッピー養生シート」の現物であるとして、乙第39号証を提示しているが、被請求人は、商品カタログに掲載された写真の商品は、ウェブ上からダウンロードして使用した他人の商品である旨述べているとおり、乙第39号証に示された商品ではないので、乙第39号証が上記材質であったとしても、乙第1号証の材質の根拠にはならないし、仮に乙第1号証の「ハッピー養生シート」が、被請求人の主張どおりの材質であったとしても、実際に取引に供されていたとは認められない。
被請求人は、「ハッピー養生シート」の仕入れ先が企業Bであり、乙第14号証を提示して、平成14年11月4日に同社から「版代」が請求されるとともに仕入れたことが明らかであると主張しているが、商品が仕入れ先から仕入れただけでは、本件商標を使用したことにはならず、乙第14号証に記載の「ハッピー養生シート」が商品カタログの商品と同一であるとの証拠もない。また、「版代」に係る「版」の現物として乙第38号証を提示しているが、版の存在をもって、本件商標を使用したことにはならないし、この版がいつから存在したかも不明であって、いつ、この版が建築用の養生シートに印刷するために用いられたのかについても立証されていない。
イ 乙第2号証の1ないし17に記載されている「ハッピー養生シート」は、「養生シート」であることが推測され得たとしても、どのような材質のいかなる用途の商品であるのかが不明である。
乙第36号証及び乙第37号証によっては、品番「12-0050-2」の「ハッピー養生シート」と、品番「304-021」の「ハッピー養生シート」が同一の商品であるとはいえず、乙第1号証と乙第2号証の1ないし17の「ハッピー養生シート」の同一性は認められない。
被請求人によると、企業Aは、平成23年6月にシステム入れ替えに伴い、品番の表示を「2桁-4桁-1桁」から「3桁-3桁」に変更したものであって、商品カタログに記載の「ハッピー養生シート」の「304-021」の品番は、システム変更後に係る新しい品番ということになる。しかし、商品カタログ裏表紙下段には「有効期限 2011.1.1?2011.12.31」と記載されているから、システム入れ替えに伴う変更が6月であるのに、なぜ1月の時点の商品カタログが既に新しい品番で表示されていたのか、上記システム入れ替えによる品番の変更の時期と一致していないので、矛盾している。また、商品カタログについて、企業Dに制作を依頼し、平成23年3月22日に3,000部が納品されている旨述べ、乙第12号証を提示しているが、3月22日に納品された商品カタログの有効期限が、なぜ1月1日からなのか、その点についても不自然である。
さらに、システム入れ替え前の品番に係る「得意先商品単価マスタ一覧表」(乙第36号証)中、3行目「企業C」については、販売単価の設定日が「2011年6月30日」となっており、18行目「ハウジングオペレーシ」については、「2012年4月12日」となっているが、いずれもシステム入れ替えに伴う品番変更後の新しい品番が使用されている時期であり、後者については、変更から10ヵ月程度も経過しているにもかかわらず、旧品番で販売単価を設定している点も矛盾している。
4 第二弁駁
(1)被請求人は、「ハッピー養生シート」の現物を一部カットしたものを商品見本として持参したが、該商品見本が、表面から、ポリプロピレン(PP)ラミネートフィルム、クラフト紙、クラフト中芯の順に貼り合わせた材質であったとしても、該商品が、要証期間内に取引に供されたと主張する「ハッピー養生シート」と同一の商品であることは、何ら立証されていない。
すなわち、上記商品と乙第1号証及び乙第2号証の1ないし17における「ハッピー養生シート」とを結びつける証拠は提出されなく、いかなる商品であったかは不明のままである。
また、乙第2号証については、「ハッピー養生シート」の文字が記載されているだけであって、その材質のみならず、用途も不明である。
(2)被請求人の口頭審理陳述要領書の記載によると、「ハッピー養生シート」の文字の印刷は、企業Bより企業Eに委託されたものであり、企業Eでは、乙第38号証のロール状の版を用いて文字を印刷したものとされている。そうすると、「ハッピー養生シート」の製造には、少なくとも二つの会社が関わっているが、商品の製造工程が明らかでなく、根拠となるポリプロピレンがいかなる工程でラミネートされたものかについては、不明であり、また、養生シートには、例えば樹脂加工が施されていない片面段ボールのみからなるもの等も存在しているから、企業Bからの請求書(乙第18号証)における「養生用巻段ボール」の記載からは、「紙製」の商品であったと推測することも可能である。したがって、被請求人による「プラスチック製建築専用材料」や「合成建築専用材料」であるという主張には根拠がない。
(3)被請求人は、材質について、答弁書においては「クラフト紙にポリエチレン(PP)クロスと、ポリプロピレン(PP)フィルムを貼り合わせたものである」と述べ、口頭審理陳述要領書において、材質についての記載は誤りであるから訂正すると述べている。
しかしながら、答弁書に記載の材質は、クラフト紙の両面にポリエチレンクロスとポリプロピレンフィルムを貼り合わせたもので、一般的によく出回っているクラフト紙に両面樹脂加工が施された養生シートと同種のものと推測される一方、訂正後の材質は、被請求人が持参した商品見本によれば、片面段ボール(クラフト中芯+クラフト紙)にポリプロピレンがラミネートされている商品であり、段ボールを使用している分、厚みがあって、また、それほど一般的に出回っている商品ではなく、若干特殊な商品である。
これら訂正前と訂正後の材質は、いずれも紙とプラスチックからなるものであっても、大きく異なる商品であって、少し材質を取り違えたという程度のものではなく、疑問であり、こうした点からも、被請求人が主張する材質の商品が要証期間内に製造されていたことについては、疑わしいものである。
(4)被請求人が主張するとおり、「ハッピー養生シート」が「紙及びプラスチック製の養生シート」であると仮定したとしても、余程建築用に特化した何らかの加工でも施されていない限り、建築用に限らず、引越し用やイベント用等にも使用できるものである。実際にインターネット上において、紙とプラスチックからなる養生シートが、前記用途で使用されている状況も複数見受けられる(甲第10号証)。
また、被請求人は、乙第20号証ないし乙第29号証を提示して、これらの商品がすべて「エンボス加工又はラミネート樹脂加工されたクラフト紙」である旨述べ、これを根拠に「ハッピー養生シート」も同様の材質であるかのような主張をおこなっている。
しかしながら、被請求人が示す商品は、いずれも「紙及びプラスチック製の養生シート」であるところ、乙第21号証、乙第22号証及び乙第24号証には、引越し作業に使用できる記載があり、少なくとも「建築専用」であるとはいえない。
そして、被請求人が持参した「ハッピー養生シート」は、建築用に特化した何らかの加工が施されているとも見受けられず、仕入れ先である企業Bは、「商品・製品の梱包、梱包材料の販売並びに製造」等を主な事業とする会社であって、建築に係る商品は、販売、製造をしていないし、また、加工先と目される企業Eにおいても同様であり(甲第11号証及び甲第12号証)、この点からしても、「ハッピー養生シート」が「建築専用」であるとは考えられない。
(5)被請求人が持参した「ハッピー養生シート」は、片面段ボールにポリプロピレンでラミネート加工したものであって、主材は紙であり、その時点で「プラスチック製建築専用材料」ということは有り得ない。また、「合成建築専用材料」とは、基本的に2種以上の素材が混合され、一体不可分となった状態の商品を指すものであり、複数の材料が混合され、見た目にも分からない状態のものであるから、被請求人が持参した「ハッピー養生シート」は、薄くポリプロピレンがラミネートされているだけであって、上記のとおり、主材は紙であるから、この商品は、「合成」というより「紙製」であって、この点からも「合成建築専用材料」の範ちゅうに入るものではない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁及び口頭審理での陳述を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第45号証(枝番を含む。)を提出した。
1 理由
本件商標は、片仮名「ハッピー」を書してなるものであり、本件審判の請求に係る指定商品は、第19類「リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,セメント及びその製品,木材,石材」であって、本件審判の請求の登録日は、平成23年9月15日である(審判注:「平成23年9月13日」とあるが、商標登録原簿の記載によれば、「平成23年9月15日」と認められる。)。
そこで、被請求人は、以下の資料を提出する。
(1)企業AのサイトA事業部の作成・発行に係る「住宅事業者様のための住宅建材カタログ創刊号『サイトA』」(乙第1号証)について
企業Aは、本社住所を住所1に、また、大阪営業所を住所2に置く法人であって、本件商標に関する通常使用権者である。なお、企業Aの代表者である人物Aは、被請求人の代表者である人物Bの実弟である。
商品カタログの裏表紙下段に「有効期限2011.1.1?2011.12.31」と記載されていることから、2011年(平成23年)に使用されているカタログである。
商品カタログに記載されている商品は、その「カタログ総合目次」からもわかるとおり、全て建築工事に関するものであって、その総合目次における「9 造作工事」の中の「屋内用養生」の記載に対応する190頁の2段目に「ハッピー養生シート」の記載がある。この「養生シート」は、建築現場において床材が敷き詰められた後、その床材を保護するための建築専用材料であって、クラフト紙にポリエチレン(PE)クロスと、ポリプロピレン(PP)フィルムを貼り合せたものである。
(2)売上伝票と納品書(乙第2号証の1ないし同17)について
売上伝票と納品書は、平成20年(2008年)9月24日以降、平成22年(2010年)7月24日までの要証期間内のものである。その項目に「ハッピー養生シート」の文字があって、実際に取引に供されている。
「ハッピー養生シート」は、「養生シート」が商品の普通名称であるので、「ハッピー」部分が自他商品識別標識として機能するものである。したがって、登録商標「ハッピー」と社会通念上同一と認められるものである。
また、「ハッピー養生シート」が付された商品「養生シート」は、上記材質からもわかるとおり、「プラスチック製」又は「紙及びプラスチックを合成したもの」である。
ところで、建築又は構築専用材料は、「金属製」、「陶磁製」、「木製」、「石製」及び「ガラス製」以外の商品に分類され、本件審判の請求に係る商品は、まさに「金属製」、「陶磁製」、「セメント及びその製品」、「木材」、「石材」及び「ガラス製」以外の建築又は構築専用材料である。そして、特許電子図書館における「商品・役務名リスト」には、第19類の「07A03」の類似群に属する商品として、「シート状のプラスチック製養生用建築専用材料」、「プラスチック製建築用養生材」、「建築工事用床養生用プラスチックシート」、「建築工事用繊維製養生シート」及び「建築用の紙製養生用粘着テープ」等が認められている。
2 口頭審理(口頭審理陳述書)における陳述
(1)商標権者と企業Aとの関係について
企業Aは、大正10年に人物Cによって創業され、昭和25年5月16日に銅鉄の販売を主たる目的として成立した会社である(乙第3号証)。
企業Aの代表者は、初代から、その長男の人物D(二代目)、初代の次男である人物Eの妻人物F(三代目、旧姓:坂井)と変遷し、平成3年11月29日に人物E及び人物Fの次男である人物A(四代目)が就任した。その後、平成23年6月1日に人物Aの長男である人物G(五代目)が代表取締役社長に就任したことに伴い、人物Aが代表取締役会長に就任している(乙第4号証)。
他方、商標権者は、昭和37年1月29日にモルタル用鉄網製造販売ほかを目的として成立し、その当時の代表者は、企業Aの初代代表者である人物Cの次男、人物Eであり、平成6年10月13日にその長男である人物Bが代表取締役に就任し、現在に至っている(乙第5号証)。
なお、企業Aの創業者である人物Cは、商標権者の現代表取締役である人物B、及び企業Aの現代表取締役会長の人物Aの祖父である事実を説明するため、簡略な家系図を提出する(乙第6号証)。
このように、商標権者と企業Aは、経営者同士が親族であって密接な関係を有しており、かつ、商標権者の製造に係る商品を企業Aが販売する製造元と販売元の関係がある。
また、商取引の場において、小売業者が仕入れた商品に自ら商標を付して販売することが往々にしてあることは経験則上明らかであって、実際、企業Aは、本件商標を付した「養生シート」以外に、何らの識別標識も使用していないものがあり(乙第1号証190頁3段目)、該「養生シート」よりも高品質であることを明確化し、それと差別化するために商標「ハッピー養生シート」を使用しているのである。
そして、商標権者は、「ハッピーベース」(乙第9号証)、「ハッピーラス」(乙第11号証)等の商標権者でもあり、これらの登録商標を付した商品をも企業Aが取り扱っている事実があり(乙第8号証及び乙第10号証)、商標権者が、需要者、取引者にとって、強い印象を与える語の一つである「ハッピー」を冠した商標を付した複数の商品を製造し、それら商品の販売会社の代表者が当該商標権者の代表者の実弟である場合、当該販売会社が、それに因んで「ハッピー」を冠した商標を使用して販売することは十分想定されるところであり、その使用に対して、商標権者が異議を唱えるどころか、通常使用権を許諾していると主張しているのであるから、そこに黙示の許諾があったことは客観的に明らかである。
したがって、通常使用権の許諾について疑義があるとする請求人の主張は、何ら根拠のないものであり、失当である。
よって、企業Aは、本件商標に関する通常使用権者である。
(2)乙第1号証について
商品カタログ(乙第1号証)は、企業Aの代表取締役社長が人物Aからその長男である人物Gに代替わりすることに伴い、より一層の販売促進を目的として制作・発行したものであり、企業Aが企業Dに制作を依頼し、平成23年(2011年)3月22日に3,000部が納品されており(乙第12号証)、その納品日は、人物Gが代表取締役社長に就任する2か月前であり、若干のずれがある。
それは、平成22年夏頃に企業Aの専務取締役であった人物Hが中心となって、商品カタログの制作を企画し、その後、同年秋頃から同人がコンピュータシステムの変更及びネットビジネスの開始を企画、検討し、また、ネットビジネスについては、平成23年(2011年)3月7日にドメイン(GENBA007.COM)が創設、登録され(乙第45号証)、その後、使用されている。
乙第1号証及び乙第2号証の1ないし17をもって、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が、取消請求に係る商品について、要証期間内に、商標法第2条第3項第8号に該当する使用があった事実を主張、立証しているのである。
(3)乙第1号証の注文番号について
「304-021」の注文番号は、需要者、取引者が商品カタログを見て注文をする際、商品「ハッピー養生シート」を特定するためのものであることは事実であるが、商品カタログを発行した企業Aにとって、取引先は不特定多数ではなく、特定の業者に限定されていて、この商品カタログ発行前の「ハッピー養生シート」の販売先は、乙第36号証に示すように31社であって、企業Aと取引先との関係は、限定的であり、かつ、一回限りではなく、繰り返し注文を受け、納品する関係にある。
また、「ハッピー養生シート」を含む建築資材を取り扱う業界においては、電話による商取引が頻繁に行われ、その際に「注文番号」ではなく、商品名をもって取引が行われているのが実情であり、電話による商取引の多い取引の実際において、「注文番号」は、商品を特定する上でさほど大きな意味を持たない。
(4)「ハッピー養生シート」について
商品カタログの記載内容からすれば、標章「ハッピー養生シート」がその商品の識別標識として表示されていること、その商品が幅1m長さ50mのロール状の商品であること、その商品が商品カタログの下段に掲載されている「養生シート」よりも、厚みがあり丈夫であること、「ハッピー養生シート」の単価が4,500円で、下段の「養生シート」の単価が1,200円よりも高額であること等が明らかである。
企業Aは、平成14年11月4日に企業Bから「版代」(印刷の元になる版を作るときにかかる費用)が請求されるとともに、「ハッピー養生シート」を仕入れたことが明らかである(乙第14号証)。
企業Bは、平成14年より「ハッピー養生シート」の印刷を企業Eの関東支店に委託しており、現在もなお、企業Eに「ハッピー養生シート」の版がある。その版写真を乙第38号証として、また、商品の現物見本を口頭審理期日に持参し、その商品写真を乙第39号証として提出する。
商品カタログに掲載している「ハッピー養生シート」の写真と実際に販売している商品と異なる商品の写真を掲載したのは、人物Gがカタログ制作を1人で行っており、印刷までの時間もなかったためである。その事実を立証するため、企業Aの代表取締役の人物Gの陳述書を提出する(乙第17号証)。
企業Aは、要証期間内である平成23年6月3日に、用途が「養生用」、材質が「段ボール」、大きさが「1000(mm)×50m」、単価が「2,600円」である「ハッピー養生」を「66本」仕入れた事実が明らかである(乙第18号証)。そして、「ハッピー養生」は、印刷文字数の関係上、「シート」が省略されて「ハッピー養生」となっているが、これが他の書証に記載されている「ハッピー養生シート」と同一の商品であることは容易に推認できるところである。また、「ハッピー養生」及び「ハッピー養生シート」における「養生」及び「養生シート」の文字は、商品の普通名称又は品質表示であるから、「ハッピー」部分が独立して識別力を発揮することも明らかであり、かかる表示は、本件商標と社会通念上同一と認められるものである。
商品カタログの4枚目に記載の「ハッピー養生シート」の材質は、商品カタログにおける各種記載、乙第17号証、乙第19号証、乙第39号証及び乙第44号証をもって、表面から「ポリプロピレン(PP)ラミネートフィルム」、「クラフト紙」及び「クラフト中芯」の順に貼り合わせた(なお、平成23年11月7日の答弁書3頁目12行目以下「クラフト紙にポリエチレン(PE)クロスとポリプロピレン(PP)フィルムを貼り合わせた」の記載は誤りであった。)ロール状の商品であり、その用途については、乙第36号証、乙第37号証及び乙第40号証ないし乙第43号証をもって、その需要者が建築工事の施工業者であり、「ハッピー養生シート」が建築専用材料であって、建築現場において床材等を保護する養生を目的とするものである。
3 まとめ
以上のとおり、要証期間内に、取消請求に係る商品、即ち、「合成建築専用材料」に属する「紙及びプラスチック製の養生シート」(具体的には、表面から「ポリプロピレン(PP)ラミネートフィルム」、「クラフト紙」及び「クラフト中芯」を貼り合わせた、幅1m長さ50mのロール状の商品であって、建築現場において床材等を保護する養生を目的とするもの)に関する広告、価格表若しくは取引書類に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「ハッピー養生シート」を付して展示し、又は頒布した行為があったことは、客観的に明らかである。
よって、本件商標について、その請求に係る指定商品の登録が取り消される理由はない。

第4 当審の判断
1 事実認定
(1)企業Aの登記簿の履歴事項全部証明書(乙第4号証)には、「人物A」が代表取締役として就任した後である平成8年3月14日に「住所3」へ住所移転の登録がされ、「人物G」が平成23年6月1日に代表取締役就任の登録がされており、また、被請求人の登記簿の履歴事項全部証明書(乙第5号証)には、「人物B」が平成6年10月13日に代表取締役就任し、その住所が「住所3」と登録されている。
(2)乙第6号証は、企業Aの前代表取締役の人物Aと被請求人代表取締役の人物Bが兄弟と認められる被請求人作成の家系図である
(3)乙第1号証は、「サイトA」の表題のある商品カタログで、表紙の最上部に「住宅事業者様のための住宅建材カタログ 創刊号」との記載及び「住宅建築現場の必須材料を工程順に丸ごと一冊にまとめました。」との記載、2枚目の「カタログ総合目次」の右下部分の「9 造作工事」の見出しの右側中央部分に「屋内用養生 190」「屋外用養生 192」「養生テープ 193」の各記載があり、4枚目の190頁の2段目の「ハッピー養生シート」の見出しの下に、ロールに巻き付けられているシート状の商品の写真と「特長 通常の養生シートと比べて厚みがあり、丈夫です。」との記載、「サイズ」の欄に「幅1m×長さ50m」等の記載がある。
また、商品カタログの裏表紙の上部に「コスト削減と施主様のご安心に。サイトAは住宅事業者様専門の住宅建材の通信販売です。」との記載があり、また、最下部に「有限会社 企業A/サイトA事業部」、その右側下部に「有効期限/2011.1.1?2011.12.31まで」との記載がある。
(4)企業D 東京営業一課 人物Iが企業A住宅資材営業部 所長代理 人物Jあての2012年5月10日付けファクシミリ文書(乙第12号証)には、「サイトA通販カタログ」、【納品日】2011年3月22日、【数量】3,000部等の内容が記載されている。
(5)平成23年6月20日付けの企業Bから企業Dあての請求書写し(乙第18号証)には、「日付」の欄に「23/06/03」、「商品名」の欄に「養生用巻段ボール 1000×50mハッピー養生」、届先として「企業D 物流センター」との記載がある。
(6)平成24年6月15日付けの企業Aの代表取締役人物Gの陳述書(乙第44号証、平成24年5月21日付け陳述書(乙第17号証)の訂正)には、「代表取締役社長に就任する際、総合カタログ誌『サイトA』を作成することにしました。」、「『ハッピー養生シート』の写真は、どこからダウンロードしたかは覚えていませんが、実際に販売している『ハッピー養生シート』に似ている写真を探して、ネットからダウンロードしました。『ハッピー養生シート』は、表面から『ポリプロピレン(PP)ラミネートフィルム』、『クラフト紙』及び『クラフト中芯』を貼り合せたロール状の商品で平成14年頃から企業Bから仕入れ、販売しており、その販売当初から、商品表面に『ハッピー養生シート』の文字を印刷しています。」との記載がある。
2 判断
上記1の認定の事実と答弁の全趣旨に基づき、以下、判断する。
(1)通常使用権者について
通常使用権の使用許諾は、商標権者と使用権者の意思表示の合意によって成立し、口頭による契約も認められると解されることを考慮すると、書面による使用許諾契約がなされていないとしても、商標権者と企業Aとは、創業より代表者同士が姻戚関係であり、商標権者の製造に係る商品を企業Aが販売している実情から、両社は、製造元と販売元のような緊密な関係があるものといえ、企業Aは、商標権者から黙示の使用許諾があったものと推認し得る。
(2)企業Aの使用している商標及び使用時期について
企業Aは、「サイトA」の表題の「住宅事業者様のための住宅建材カタログ 創刊号」を企業Dへ制作依頼し、平成23年(2011年)3月22日に3,000部が企業Aに納品されたものである。
そして、商品カタログは、住宅事業者専門の住宅建材に関するカタログであり、有効期限を「2011.1.1?2011.12.31まで」とするものであるから、この商品カタログは、2011年3月22日に納品された後には、住宅事業者に頒布されたものと推認できる。
また、商品カタログ中4枚目の190頁の2段目には「ハッピー養生シート」が掲載されており、厚みがあり、丈夫であることを特長とするもので、サイズは幅1m×長さ50mと認められる。
そうすると、「造作工事」中の「屋内養生」の頁に「養生シート」に「ハッピー養生シート」の表記のある商品カタログを本件審判の請求の登録日(平成23年9月15日)前3年以内の平成23年(2011年)3月22日以降、或いは商品カタログの有効期限内までには頒布(商標法第2条第3項第8号の「商品に関する広告に標章を付して頒布する行為」)していたと認められる。
そして、「ハッピー養生シート」の表記中の「養生シート」は、商品「建築用養生シート」との関係よりすると、商品の普通名称といえるものであるから、自他商品識別標識として機能する部分は「ハッピー」であり、本件商標とは社会通念上同一の商標を使用していたと認められるものである。
(3)使用商品について
ア 「商品及び役務の区分解説[国際分類第8版対応](特許庁商標課編)によれば、第19類の「リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網」には、「これらには、専ら建築又は構築に使用される材料のうち、金属製、陶磁製、セメント製、木製及び石製並びにガラス製のものを除いたものが含まれる。“専用材料”という意味は、専ら建築又は構築に用途を限定されたものとして取引される材料のことである。」と記載されている。
イ 本件審判の取消請求に係る第19類「リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,セメント及びその製品,木材,石材」は、建築又は構築に用途が限定され、専ら建築又は構築に使用される材料のうち、金属製及び陶磁製のものを除いたものであれば足りるといえるものである。
ウ 商品カタログ(乙第1号証)は、住宅事業者様のための住宅建材カタログとするものであり、住宅建築現場の必須材料を工程順に丸ごと一冊にまとめたもので、その中のカタログ総合目次「造作工事」の中に「屋内養生」として「養生シート」、「ハッピー養生シート」の表記があり、「通常の養生シートと比べて厚みがあり、丈夫です。」と記載がある。そして、企業Aは、平成23年6月20日に企業Bから「養生用巻段ボール 1000×50mハッピー養生」(乙第18号証)を仕入れており、該養生シートは、「ハッピー養生シート」と記載のあるロール状の養生シートの写真(乙第39号証)に表された段ボールを主とする養生シートと同一の商品であると推認できる。さらに、乙第39号証の「ハッピー養生シート」は、その写真及び企業Aの代表取締役人物Gの陳述書からすると段ボールに「ポリプロピレン(PP)ラミネートフィルム」を貼り合せたロール状の養生シートと認めても不自然ではない。
上記アないしウを総合すると、「ハッピー養生シート」は、厚みのある段ボール(「クラフト紙」及び「クラフト中芯」)に「ポリプロピレン(PP)ラミネートフィルム」を貼り合わせた養生シートといえ、建築現場において床材等を保護する養生を目的とする建築専用のものであり、金属製、陶磁製、セメント製、木製及び石製並びにガラス製以外の材質のものといい得るから、上記取消請求に係る商品中の「合成建築専用材料」の範疇に属する「合成養生シート」というのが相当である。
なお、請求人は、「ハッピー養生シート」の主材は紙であるから、この商品は、「合成」というより「紙製」であるから、「合成建築専用材料」の範ちゅうには入らない旨主張しているが、上記のとおり、段ボールを主とするものであっても、それに「ポリプロピレン(PP)ラミネートフィルム」を貼り合わせたものであり、これは、専ら建築に使用される金属製、陶磁製、セメント製、木製及び石製並びにガラス製以外の商品といえるから、請求人の主張は認めることができない。
3 以上を総合すると、本件商標の通常使用権者が、本件審判の請求の登録日(平成23年9月15日)前3年以内に、日本国内において本件審判の請求に係る指定商品中、「合成建築専用材料」の範疇に属する「合成養生シート」を掲載した商品カタログについて、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布したものであり、商標法第2条第3項第8号の「商品に関する広告に標章を付して頒布する行為」にいう使用行為をしていたというべきである。
4 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、通常使用権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を本件審判の請求に係る指定商品中「合成建築専用材料」の範疇に属する「合成養生シート」について本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したというべきである。
したがって、本件商標の登録は、取消請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-09-06 
結審通知日 2012-09-10 
審決日 2012-09-28 
出願番号 商願平3-53127 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y19)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 正雄 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 田中 亨子
酒井 福造
登録日 1995-05-31 
登録番号 商標登録第2707180号(T2707180) 
商標の称呼 ハッピー 
代理人 辻野 彩子 
代理人 古関 宏 
代理人 畑中 芳実 
代理人 亀川 義示 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ