• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X33
審判 全部申立て  登録を維持 X33
管理番号 1264499 
異議申立番号 異議2012-900102 
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2012-04-27 
確定日 2012-10-12 
異議申立件数
事件の表示 登録第5466674号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5466674号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5466674号商標(以下「本件商標」という。)は、「KADER」の欧文字と「カデル」の片仮名を上下二段に横書きしてなり、平成23年8月17日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同年12月20日に登録査定され、同24年1月27日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
1 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下の(1)ないし(3)のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4770119号商標(以下「引用商標1」という。)は、「CADET」の欧文字を標準文字で表してなり、平成11年8月18日登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同16年5月14日に設定登録されたものである。
(2)国際登録第346201号商標(以下「引用商標2」という。)は、「CADET」の欧文字を書してなり、2003年(平成15年)2月3日に国際商標登録出願(事後指定)され、第33類「Wines.」を指定商品とし、平成16年4月9日に設定登録されたものである。
(3)登録第1983461号商標(以下「引用商標3」という。)は、「MOUTON CADET」の欧文字を横書きしてなり、昭和57年12月10日に登録出願、第28類「酒類」を指定商品として、同62年9月21日に設定登録、その後、二回にわたり商標権存続期間の更新登録がなされ、また、指定商品については、平成20年3月12日に、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 具体的理由(要旨)
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標1及び2の指定商品は、「Wines(ぶどう酒)」、すなわち「洋酒」において共通しており、相互に類似する指定商品である。
イ 称呼上の類否について、本件商標は、前記第1のとおり、片仮名で「カデル」と併記されているため、「カデル」との称呼が生ずる。一方、引用商標1及び2は、前記第2 1のとおりであるところ、「CADET」は、英語による読み方ならば「カデット」であるが、商標権者はフランス法人であること、指定商品がフランスの特産品である「ワイン」であること、さらに、商標権者のワイン銘柄である「MOUTON CADET」は、我が国において「ムートン・カデ」として知られていることに鑑みると、引用商標1及び2から生ずる称呼は「カデ」と考えられる。
これを踏まえて、本件商標より生ずる「カデル」の称呼と、引用商標1及び2より生ずる「カデ」の称呼を比べてみるに、両商標の称呼は語頭の「カデ」において共通にし、第3音目の有無の違いを有するものである。一般的に、語尾の音は他の位置の音に比べて明瞭に発音され難いため聴者の耳に残り難く、また、語尾の「ル」の前に位置する「デ」が破裂音かつ濁音で発音されるため、相対的に「ル」の音が弱くなってしまうことを考えると、語尾における「ル」の音の有無が両称呼の全体に及ぼす影響が大きいものとはいい難く、両称呼をそれぞれ一連に称呼したときは、全体の語調・語感が相似たものとなり、互いに聴き誤るおそれがある称呼である。
そうとすると、本件商標と引用商標1及び2は、その称呼において互いに類似しているものといえる。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標3との類似性の程度
引用商標3は、コーポレートブランドである「ムートン」と「カデ」を組み合わせたものであるところ、需要者の間ではムートンブランドの「カデ」と認識されており、「ムートン・カデ」の他にコーポレートブランドの部分を省略した「カデ」との称呼も生じ得ることも考えると、本件商標と引用商標3は相互に類似しているものである。
イ 引用商標3の周知著名性及び独創性の程度
申立人は、1853年に創立された、フランスを代表するワイン製造業者であり、ボルドー地方の五大シャトー(ワイナリー)のひとつである「シャトー・ムートン・ロトシルト」を有している。同社は、「Chateau Mouton Rothschild」なる銘柄を筆頭に多数の有名銘柄のワインを有し、同社が製造するワインはフランス・ボルドー地方を代表するワインとして世界中で愛飲されている(甲6)。
同社が製造・販売する銘柄の一つに、引用商標3が付された「MOUTON CADET (ムートン・カデ)」なるワインがあり、日本では、ワイン専門の輸入商社であるエノテカ株式会社が輸入している(甲7)。「MOUTON CADET (ムートン・カデ)」は、ワイナリーの略称である「MOUTON」と、フランス語で「末つ子」を意味する「CADET」を組み合わせたものである。ボルドー地方には、申立人の有するワイナリー「シャトー・ムートン・ロトシルト」の他に「シャトー・ラフィット・ロトシルト」という著名なワイナリーがあるため、これと区別すべく、申立人のワイナリーは「ムートン」と称されることが多いが、この銘柄は、「ムートン」ブランドにおける普及価格帯を担うべく、すなわち、高級ワインである「Chateau Mouton Rothschild」の弟分という意味合いで「MOUTON CADET (ムートン・カデ)」と名付けられた。
エノテカ社が開設している特設ウェブサイト及びアサヒビール社が開設しているウェブサイトによれば(甲8及び甲9)、「MOUTON CADET (ムートン・カデ)」は「世界で一番愛されているボルト一地方産のワイン」であり、この世に誕生してから80年の歴史を持つ。年間約1500万本が生産され、約150か国で販売されている。著名な映画祭である「カンヌ映画祭」のオフィシャルワインにも採用されており、「MOUTON CADET (ムートン・カデ)」は日本を含む世界中で周知であると思われる。
ウ 本件商標の指定商品等と引用商標3の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度
本件商標の指定商品は、前記第1のとおり「日本酒、洋酒、果実酒、中国酒、薬味酒」である。一方、引用商標3について実際に使用している商品は「ワイン」であり、極めて関連性の深い商品といえるものである。
エ 商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情
本件商標、引用商標3とともに指定商品「ぶどう酒(ワイン)」であって取引者及び需要者は共通しており、前記第2(2)イのように、引用商標3はワインの需要者・取引者の間に広く認識されているのであるから、出所混同を生ずる可能性はきわめて大きいといえる。
以上の比較によれば、本件商標をその指定商品に使用するときには、これに接する需要者は、引用商標3を連想・想起し、当該商品が申立人の取り扱う商品であると誤信するか、又は、申立人との間に密接な関係を有する者の業務に係る商品であると誤信することで、その商品の出所について広義の混同を生ずるおそれがあるというべきであって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当するのは明らかである。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前記第1のとおり、「KADER」の欧文字と「カデル」の片仮名を上下二段に横書きしてなるところ、その構成文字に相応して、「カデル」の称呼を生ずるものである。
また、当該欧文字は、英語やフランス語の辞書に掲載はなく、また、直ちに親しまれた特定の語を想起させるものでもないから、一種の造語として認識されるものである。
他方、引用商標1及び2は、「CADET」の欧文字を書してなるところ、該文字は、英語読み風に「カデット」の称呼を生じ、また、指定商品との関係からすれば、指定商品中の「果実酒」に属する「ワイン(Wine)」に精通している愛飲家の間では、「カデ」の称呼を生じ、「末っ子」の意味合い(観念)を生ずる場合もあるとみるのが相当である。
そこで、本願商標と引用商標1及び2との類否について検討するに、称呼についてみると、本件商標から生ずる「カデル」の称呼と引用商標1及び2から生ずる「カデット」の称呼とは、両称呼は、それぞれ3音という短い音構成において、第2音の「デ」の音の促音の有無という差異及び語尾における「ル」と「ト」の顕著な差異を有するものであり、これらの差異が称呼全体に与える影響は決して小さいものとはいえず、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調、語感が相違し、十分に聴取し得るものである。
また、本件商標から「カデル」の称呼が生じ、引用商標1及び2から「カデ」の称呼を生ずるとした場合、両称呼は、構成音が3音と2音のいずれも短い音構成であるところ、両者は、「カデ」の音を共通にしているが、「ル」の音の有無に差異を有するものであるから、両称呼の短い音構成にあっては、該音の有無が全体の称呼に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、その語感、語調が相違し、互いに聴き誤るおそれはないというべきである。
そして、両商標は、それぞれ前記のとおりの構成よりなるから、外観上も明らかに区別し得る差異を有するものである。
してみれば、本件商標と引用商標1及び2とは、観念上は比較できないものの、外観及び称呼において相紛れるおそれがなく、これらを総合的に考慮すると非類似の商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)申立人会社の著名性について
申立人の提出に係る甲第6号証ないし甲第9号証(甲6ないし甲8は、ENOTECAonlineのウェブサイトの写し、甲9はアサヒビールのウェブサイトの写しである)によれば、以下のとおりである。
ア 甲第6号証には、「世界に羽ばたく シャトー・ムートン・ロスチャイルドの仲間たち」と題し、「バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社の歴史の原点は、150余年前まで遡ります。・・・現在シャトー・ムートン・ロスチャイルドをはじめとし、シャトー・ダルマイヤック、シャトー・クレール・ミロンなどを冠するエステートを5銘柄、オーパスワンなどのジョイント・ヴェンチャーを4銘柄、シャトー・クーテの販売の他、ネゴシアン部門を含め取扱商品は60銘柄を超えます。」との記載があり、「BORDEAUX ボルドー」の項に「■ムートン・カデ」と記載されている。
イ 甲第7号証には、「世界で一番愛されているボルドーワイン MOUTON CADET(○にR記号)/ムートン・カデ」、「エノテカから新登場!ムートンの精神を受け継ぐ“ムートン・カデ”」、「1930年創立、バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドが世界に誇るムートン・カデ。」、「ムートン・カデは、シャトー・ムートン・ロスチャイルドの精神を受け継ぐ、ムートン直径のブランドワインです。」、「今日では150ヶ国以上で販売され」と記載されている。
ウ 甲第8号証には、「・・・今日では150ヶ国以上で販売され・・・」と記載されている。
エ 甲第9号証には、「ムートン・カデのルーツを訪ねて」の見出しのもと、「ムートン・カデはなぜ世界中で愛されているのだろうか。」、「男爵はこのワインを<ムートン・カデ>、つまりは『ムートンの末っ子』という名で販売することにした。ここにムートン・カデという新しいワインブランドが誕生したのだ。現在、ムートン・カデは世界150カ国以上で販売。年間生産量は1500万本におよぶ。」と記載されている。
(2)以上よりすると、引用商標3(「MOUTON CADET」)は、「ムートンカデ」と称呼されて、本件商標の登録出願の日前からワインの愛飲家において、ある程度知られているとしても、我が国における具体的な取引状況(例えば、販売の数量・期間・地域・売上高・市場占有率等)や宣伝広告等の事実については明らかでないこと、及び本件商標の指定商品は、「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」という一般需要者を対象とする商品であることを考慮すれば、引用商標3が、本件商標の登録出願時及び査定時において、広く一般の需要者間にまで申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして認識されているものとはいえないと判断するのが相当である。
また、本件商標は、「KADER」の欧文字と「カデル」の片仮名を上下二段に横書きしてなり、「カデル」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標3は、「MOUTON CADET」の欧文字を横書きしてなり、「ムートンカデ」の称呼を生じ、「ムートンの末っ子」程の意味合い(観念)を生じることから、両者は、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
そうすると、引用商標3は本件商標の出願時(及び査定時)に、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間で広く認識されているものと認められないものであり、また、前記1のとおり、本件商標と引用商標3とは、判然と区別し得る別異の商標というべきものであるから、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、申立人の業務に係る「MOUTON CADET」のワインを連想・想起させるものとは認められず、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにおいても違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2012-10-01 
出願番号 商願2011-58777(T2011-58777) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (X33)
T 1 651・ 271- Y (X33)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大渕 敏雄豊田 緋呂子 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 前山 るり子
渡邉 健司
登録日 2012-01-27 
登録番号 商標登録第5466674号(T5466674) 
権利者 株式会社ミライズ
商標の称呼 カデル、カダー 
代理人 青木 博通 
代理人 中田 和博 
代理人 柳生 征男 
代理人 片山 礼介 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ