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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 12428
管理番号 1259808 
審判番号 取消2011-300272 
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-03-11 
確定日 2012-06-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第2245460号の2商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第2245460号の2商標の商標登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2245460号の2商標(以下「本件商標」という。)は,「CHANCE」及び「チャンス」の各文字を上下二段に横書きしてなり,昭和62年7月14日に登録出願,第24類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,平成2年7月30日に設定登録され,その後,2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされた登録第2245460号商標の商標権の分割に係るものであって,第24類「ビリヤードクロス」及び第28類「遊戯用器具,ビリヤード用具」を指定商品として,同22年6月29日に商標権の分割移転がなされ,現に有効に存続しているものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成23年3月29日である。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求めると申し立て,その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のとおり述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において被請求人,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,商標法第50条第1項の規定により,その登録を取り消すべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に,「遊戯用器具」の範疇に属する商品である「回胴式遊技機」に,本件商標と同?性の範囲にある,乙第2号証,第4号証の3等に表示された,ボールを打撃している黄色のバットの図形と「CHANCE」の欧文字からなる商標を使用しており,現在も使用を継続していると述べる。
商標法第50条では,登録商標の使用について,登録商標と社会通念上同一と認められる商標の使用も含むとされている(第50条第1項カッコ書き)。
しかしながら,使用された商標は,本件商標の同一性の範囲を超えるものであり,本件商標と社会通念上同一のものと認められるものではない。
したがって,被請求人の提出する証拠からは,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において被請求人,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品についての本件商標(社会通念上同一のものを含む。)の使用をしていることの証明ができているとはいえない。
(2)使用された商標の概要
使用された商標は,被請求人によれば,被請求人の製造する回胴式遊技機(スロットマシン)「マックスノトリプルクラウンWII-30」の筐体(第4号証の2,以下「本件回胴式遊技機」という。)の回転リール部の右上部(第4号証の3)やその広告に表示されたものであり(乙第2号証),ボールを打撃している黄色のバットの図形(以下「バット図形」という。)と「CHANCE」の欧文字とが結合された表示のようである。
また,使用された商標は,被請求人の製造する「マックスノトリプルクラウンWII-30」において,内部抽選での当たりを告知するランプの模様,すなわち,内部抽選の結果,「ビッグボーナス」や「レギュラーボーナス」などの当たりフラグが成立した際に大量のコイン獲得のチャンスが到来したことを遊技者に知らせるランプの模様として用いられるものである(乙第2号証裏面左上等)。
(3)使用された商標の詳細
使用された商標は,別掲1のとおり,バットのグリップ部分を左下側,ボールの打撃部分を右上側となるように,また,「CHANCE」の文字がバット図形上部に重なるように配置され,バット図形と「CHANCE」の文字の周囲を黄土色一色で縁取りされた構成からなる(以下「表示商標」という。)。
特に,表示商標では,バット図形が中心に大きく配置され,かつ,ボールもバットの横にバランスよく配置され,さらに,その人目を引くような黄色を中心とした配色,バットのグリップ部分の丸み,バットとボールの図形周囲の縁取り態様等に大きな特徴があり,表示商標は,端的にバット図形部分が特徴的部分であるといえる。
他方,表示商標の構成中の「CHANCE」の文字部分は,表示商標が使用されている商品である回胴式遊技機(スロットマシン)分野においては,一般的には遊戯中に発生する「ビッグボーナス」,「レギュラーボーナス」など大量のコイン獲得が期待できる状態など,特定の状態となったことやそのようになりそうな状態にあることを示す一般的用語であり,同文字自体は,同分野においては識別標識として機能しない。すなわち,「CHANCE」という用語は,スロットマシン分野の取引者,需要者であるパチンコ店,スロット店の経営者や,そこで遊技する遊技者の間においては,単にゲーム性を表す言葉として,一般的,普遍的な文字として使用されているにすぎない用語である。
そうとすれば,表示商標がスロットマシンに使用された場合,バット図形部分が,取引者や需要者に対し商品の自他商品識別標識としてより強く支配的な印象を与えることになり,一方で,スロットマシンと密接に関連し,かつ,一般的,普遍的な文字である「CHANCE」の文字部分は,自他商品識別機能は全く発揮されないのであるから,表示商標は,バット図形にもっとも特徴があることが優に理解できる。
また,表示商標中に,「CHANCE」の文字が存在することを最大限考慮したとしても,表示商標は,バット図形が中央に大きく配置され,「CHANCE」という文字がバット図形上部に重なるように,さらに,バット図形と「CHANCE」の文字の周囲を黄土色一色で縁取りした一体的な構成であることからすれば,表示商標では,バット図形と文字部分を切り離して評価することはできず,これらを一体のものとして評価しなければならない。
これらの点について,乙第2号証の表面右側には表示商標が表示され,その左横に「伝説再輝 あの光るバットが帰ってきた」との記載があり,さらに,同号証の裏面左上部には表示商標が表示され,その上部に,「ダブルCHANCEバット」(表示商標と,表示商標の構成中のバット図形の方向を変化させた表示とが,回転リール部の左右上部2箇所に表示されているため,ここでは「ダブル」と記載されていると思われる。)の記載がある。このことからも,表示商標は,「バット」,「CHANCEバット」などと称呼され,表示商標が「バット」部分に特徴があること,及び「CHANCE」部分を独立して評価できないことを被請求人も自認しているのである。
以上のとおり,表示商標は,バット図形に最も特徴がある。
(4)表示商標と本件商標との対比
表示商標や本件商標の使用される商品,回胴式遊技機(スロットマシン)は,パチンコ店,スロット店に一度設置されれば,それ以後,転々流通する性質の商品ではなく,また,商品購入に際しては,商品の機種名はもちろん,そのゲーム性やデザイン(模様)も重視され最終的に購買に至るものであり,商品を識別する上で外観が極めて重視される。また,商品設置後も,遊技者が実際にスロットマシンの外観を見てその出所を識別するものであり,このようなスロットマシン業界の特殊な取引実情からすれば,登録商標との社会通念上同一か否かを検討するにあたっても,外観の相違は,称呼や観念と比較して最も重視されなければならない。
そして,前述のように,「CHANCE」の文字の存在を考慮するか否かにかかわらず,表示商標は,バット図形に特徴があるところ,本件商標は「CHANCE」及び「チャンス」の各文字のみからなる商標であり,表示商標の特徴的部分であるバット図形の構成を一切含まず,両者の外観は著しく相違する。
また,表示商標からは,「バット」という称呼が生じ,「CHANCE」の文字部分を考慮し表示商標全体を評価したとしても,「バットチャンス」などの称呼が生じる。一方で,本件商標は「チャンス」の称呼が生じるのみであるから,両者の称呼も著しく相違する。
さらに,表示商標がバット図形に特徴がある点からすれば,表示商標からは野球やバットなどの野球に関連する観念が,また,仮に「CHANCE」の文字部分を考慮し表示商標全体を評価したとしても,野球において「チャンス」という用語は得点するチャンスという意味で普通に用いられている用語であるから,商標全体としても「野球において得点を入れる機会の到来」,「得点チャンス」など,「野球」と「チャンス」が融合した形の観念が想起される。
他方,本件商標は,単に「CHANCE」及び「チャンス」の各文字からなる商標であり,「チャンス」とは,「物事をするのによい機会。好機。」を意味する用語であるから,そのような観念が生じ,両者は観念も著しく相違する。
以上のとおり,表示商標と本件商標は,もっとも評価すべき外観が著しく異なり,また,称呼や観念も著しく相違するものであるから,社会通念上同一であるとはいえない。
(5)表示商標の使用態様の考慮
スロットマシン業界においては,機種名に関する商標の他に,「CHANCE」,「BONUS」,「LUCKY」などスロットマシンのゲーム性を表す一般的普遍的な文字と図形からなる模様が,マシンの識別標識を果たす場合がある。たとえば,株式会社北電子製の「ジャグラーシリーズ」では,「CHANCE」の文字と,図形を組み合わせた表示が筐体の模様の一部として使用されている(甲第2号証)。さらに,山佐株式会社製の「レキオ2-30」,「ティーダ」においても,「CHANCE」の文字と図形とが組み合わされた態様で使用されている(甲第3号証及び甲第4号証)。また,サミー株式会社製の「Mr.Magic NEO」や「けものっち!」では,「BONUS」の文字と図形とが(甲第5号証及び甲第6号証),株式会社アリストクラートテクノロジーズ製の「Mr.CASHMAN」,「ズーマニア」では,「LUCKY」の文字と図形とが(甲第7号証及び甲第8号証),山佐株式会社製の「ニューパルサーシリーズ」では,「WIN」や「LUCKY」の文字と図形とが(甲第9号証),それぞれ組み合わされて使用され,同模様が商品の識別標識として機能している。
しかしながら,これらの表示のうち,「CHANCE」,「BONUS」,「LUCKY」などの文字部分について単独で識別力が発揮されていると考えることは適切ではないのはいうまでもない。すなわち,上記のような表示は,スロットマシンの機種名を直接示すものではないが,図形部分又は図形部分と文字部分とが一体となってスロットマシンの模様(デザイン)を構成すると共に,かかる模様(デザイン)に外観上の識別機能が備わり,かかる識別機能によって間接的にスロットマシン機種名を想起させるようになる。
他方で,「CHANCE」,「BONUS」,「LUCKY」等は,スロットマシンのゲーム性を表す一般的普遍的な文字であるから,スロットマシンの模様として用いられる態様では,そこから識別標識としての称呼等は全く生じない。せいぜい図形と組み合わさった外観に識別力が生じることがある程度である。
以上のとおり,スロットマシンの模様としても機能するような商標の使用態様においては,商標の構成のうち,「CHANCE」,「BONUS」,「LUCKY」等の文字部分は,商品の識別に何ら寄与するものではない(実質的に商標を構成する部分でない。)。
そして,表示商標は,被請求人が製造する「マックスノトリプルクラウンWII-30」において,当たりフラグが成立し,チャンスが到来したことを遊技者に知らせる,スロットマシンの模様の一部として用いられるものであり(乙第2号証裏面左上等),上述のようなスロットマシンの模様としても機能するような商標の使用態様である。また,広告としての使用についても,スロットマシンの模様の一部を表わしているにすぎない。
このような使用態様であれば,かかる模様部分に外観上の識別機能が備わり(文字部分には識別力は備わらない),表示商標は,バット図形部分,又は,バット図形部分と「CHANCE」の文字とを組み合わせた全体の外観に識別力が発揮されるといえ,文字部分である「CHANCE」には何ら識別力がないのであるから,このような表示商標の使用態様を考慮すれば,単に「CHANCE」及び「チャンス」の各文字からなる本件商標と社会通念上同一であることは到底あり得ない。
(6)その他
そもそも,表示商標を分離して評価することは許されないことは既に述べたところであるが,仮に表示商標をバット図形と「CHANCE」の文字部分とを切り離して評価し,文字部分である「CHANCE」の表示のみを特定の表示として捉えたとしても,同文字単独では識別機能を発揮する態様で指定商品に使用されておらず,指定商品に対する商標の使用とはいえない(商標的使用態様ではない。)。
すなわち,表示商標の使用態様は,「ビッグボーナス」や「レギュラーボーナス」などの当たりフラグが成立した際に大量のコイン獲得のチャンスが到来したことを遊技者に知らせる模様として,筐体のリール部の横に用いられていること(又はそれを現わす広告として表示されていること)は明らかであるところ,同模様のうち「CHANCE」の文字は,大量のコイン獲得のチャンスが到来した際に当該部分が光ることからも理解できるように,単にコイン獲得のチャンスが到来したことを示す表示にすぎず,同文字は,識別機能を発揮する態様で指定商品に使用されているものではない。
したがって,表示商標を「CHANCE」の文字部分であると捉えたとしても,指定商品について商標を使用しているとはいえない。
(7)結論
以上のとおり,表示商標と本件商標とは,その構成からみて社会通念上同一のものとは言えないし,表示商標の使用態様を考慮すれば,それがより明確に理解できる。また,仮に表示商標のうち,「CHANCE」の文字部分の表示のみ取り出して評価した場合であっても,同表示は商標的使用態様で使用しているとはいえない。
したがって,被請求人の提出する証拠からは,その請求に係る指定商品である「回胴式遊技機」についての本件商標(社会通念上同一のものを含む。)の使用をしていることを証明できたとはいえず,本件商標は,その登録の取消しを免れない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め,その理由を,答弁書,陳述要領書及び口頭審理での陳述において要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証(枝番を含む。)を提出している。
1 本件商標の使用について
(1)被請求人は,本件審判の請求の登録日である平成23年3月29日の前3年以内に,「遊戯用器具」の範疇に属する商品である「回胴式遊技機」に本件商標,すなわち,登録商標と同一性の範囲にある商標を使用しており,現在も継続して使用している。写真1(乙第4号証の1)に示すように,被請求人が製造販売する本件回胴式遊技機は,被請求人の岡山工場で製造されている。写真2(乙第4号証の2)は,本件回胴式遊技機を正面から撮影したものであり,写真3(乙第4号証の3)は,その回転リール部の左上部の箇所を拡大したものであって,本件回胴式遊技機本体の中央にある回転リールの上部左右に表示された「CHANCE」の文字(以下「使用商標」という。)は,本件商標と同一性の範囲にある商標である。写真4及び5(乙第4号証の4及び5)は,商品の正面下部を拡大したものである。
なお,これらの写真は,撮影日時点においても被請求人の商品が製造されていることを示すものであって,本件商標は,本件回胴式遊技機について本件審判の請求の登録前から現在に至るまで使用されているものである。
(2)被請求人は,本件審判の請求の登録前から現在に至るまで,商品「回胴式遊技機」を製造し,これに本件商標を使用し販売(譲渡)している。
乙第2号証は,本件回胴式遊技機のカタログであり,その表紙中央やや上部及びその裏面左上部(乙第2号証)に本件商標と同一性の範囲にある使用商標を表示している。被請求人は,このカタログの作成を東京都品川区東品川4-10-7 住友不動産品川ビル2Fに所在の株式会社アートプレストに発注し,カタログ1,000枚等が平成22年9月30日に株式会社アートプレストから納品されている(乙第3号証,乙第9号証の1及び2)。そして,被請求人は,このカタログを宣伝広告材料として配布している(乙第10号証の1及び2)。
(3)本件商標は,「CHANCE」の文字と「チャンス」の文字とを二段に横書きしてなり,これより,「チャンス」の称呼及び「チャンス,機会」の観念を生ずる。
これに対し,本件回胴式遊技機及びそのカタログに表示された使用商標は,上述のとおり,「CHANCE」の文字からなるものであって,本件商標とその構成文字を同一とし,単に書体が変更されているにすぎないものであるから,使用商標からは,「チャンス」の称呼及び「チャンス,機会」の観念が生ずる。
よって,使用商標は,本件商標と社会通念上同一のものである。
(4)乙第2号証や乙第4号証の3に示されている使用商標の使用態様からすれば,当該使用商標が自他商品を識別させる機能を発揮する態様で用いられていることは明らかである。
2 本件回胴式遊技機の販売(譲渡)について
商品「回胴式遊技機」を設置するためには,各都道府県の公安委員会が遊技機の認定及び型式の検定を依頼している財団法人保安電子通信技術協会の型式試験を受け,適合の場合,各都道府県の公安委員会により設置許可がされるところ,以下に示すように,被請求人は,型式試験を受け,公安委員会より設置許可を受けた本件回胴式遊技機を販売(譲渡)しているものである。
(1)乙第5号証は,本件回胴式遊技機の型式試験申請書(型式試験番号:OSO17100)の写しであり,乙第6号証は,上記申請による試験の結果が「適合」であるとされた型式試験結果書の写しである。
(2)乙第7号証の1ないし15は,本件回胴式遊技機の売買契約書の写しである。
(3)乙第8号証の1ないし19は,沖縄県公安委員会に対し提出された本件回胴式遊技機の「遊技機設置作業確認書」の写しである。
3 まとめ
上記のとおり,被請求人は,本件商標と同一性の範囲にある商標を指定商品中の「遊戯用器具」の範疇に属する商品である「回胴式遊技機」に本件審判の請求の登録前3年以内及び現在も継続して使用していることに相違ないのであって,本件商標が,商標法第50条の規定により,取り消されるべきという請求人の主張に係る取消理由がないことは明瞭である。
よって,本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠について
被請求人は,本件審判の請求の登録(平成23年3月29日)前3年以内に,「遊戯用器具」の範疇に属する本件回胴式遊技機について本件商標を使用しているとして,証拠を提出しているので,該証拠について検討する。
(1)乙第4号証の2ないし5は,本件回胴式遊技機の全体や一部を平成23年4月27日に撮影した写真といえるところ,該回胴式遊技機筐体の回転リール部の左上部には,特異な態様の「CHANCE」の文字とバット図形の周囲を黄土色一色で縁取りされた構成からなる表示商標が表示されている。同じく,回転リール部の右上部には,表示商標とバット図形のバットの向きを反対にする以外は同一の構成からなる標章が認められる。また,筺体下方左隅に,「マックスノトリプルクラウンWII-30」,「株式会社WIZARD」,「WIZARD」等の文字及び図形が表示されたシール状のものが貼付されていることが窺える。
(2)乙第2号証は,二つ折りからなる本件回胴式遊技機のカタログであるところ,その表紙には,バットを振り上げた人物と淡く描かれた本件回胴式遊技機などを背景として,看者の注意を惹くように,中央やや上方部分に表示商標が,中央下方部分に「MAX NO TRIPLE CROWN」の欧文字が特異な図形に重ねて大きく横書きで表示されている。
また,該カタログの内側は見開きで,中央に本件回胴式遊技機を描いた図形が大きく表され,それを取り囲むように各種の説明が図形と共に付されている。そのうち,左側上方には,「ダブルCHANCEバット」の文字などと共に表示商標が大きく表示されている。
該カタログの裏面には,その下方部分に,円図形と「WIZARD」の文字が顕著に表され,その右側に,製造元として「株式会社WIZARD」の文字が住所等と共に表示されている。
(3)乙第3号証は,株式会社アートプレストが商標権者あてに発行した平成22年9月30日付けの「納品書」の写しといえるところ,品名欄に「トリプルクラウン受注用カタログ1種」と記載されており,乙第2号証のカタログを指すものということができる(乙第9号証の1)。
(4)乙第5号証及び乙第6号証は,本件回胴式遊技機に関する「型式試験申請書」(平成22年2月10日付け)と,その結果である「型式試験結果書」(同年3月23日付け)の各写しであり,いずれにも遊技機の種類として「回胴式遊技機」と,型式名として「マックスノトリプルクラウンWII-30」と,製造業者名として「株式会社WIZARD」と,それぞれ記載されている。
(5)乙第7号証の1ないし11は,2010年(平成22年)8月21日から同年12月3日の間に商標権者が兵庫県加古川市野口町長砂在の「有限会社山星」ほかの顧客と交わした「売買契約書」の写しであるところ,いずれも,商品名欄に「マックスノトリプルクラウンWII-30」と記載されているほか,数量,金額,支払内容等が記載されている。
(6)乙第8号証の1ないし12は,平成22年6月24日から同年12月14日の間に遊技機設置業者が兵庫県又は沖縄県の公安委員会に提出した「遊技機設置作業確認書」の写しであるところ,いずれも,設置遊技機型式名として「マックスノトリプルクラウンWII-30」との記載,購入設置ホール名,所在地,設置台数,設置作業日時,設置作業実施会社,作業従事者等が記載されている。
(7)乙第5号証ないし乙第8号証(枝番を含む。)の各書面に記載された商品「回胴式遊技機」は,その記載内容に照らし,乙第4号証の2ないし5に示す本件回胴式遊技機を指すものといえる。
(8)乙第9号証の1は,株式会社アートプレストによる平成24年1月27日付けの「証明書」であり,資料1として添付された納品書(納品書No.170327)に記載された「トリプルクラウン受注用カタログ」は,資料2として添付されたカタログに相違ない旨の証明(資料1は乙第3号証及び資料2は乙第2号証の写し)であり,乙第9号証の2は,同社の印鑑証明書である。
(9)乙第10号証の1は,有限会社レキオスによる平成24年2月3日付けの「証明書」であり,資料1として添付されたカタログを,平成22年10月5日時点において,回胴式遊技機の宣伝広告の目的で被請求人より受領していた事実に相違ない旨の証明(資料1は乙第2号証の写し)であり,乙第10号証の2は,同社の印鑑証明書である。
2 本件商標について
本件商標は,前記第1のとおり,「CHANCE」の欧文字と「チャンス」の片仮名とを二段に書してなり,構成各文字より「チャンス」の称呼を生ずるものである。
そして,「CHANCE」の欧文字は,「(特に好ましい)見込み,可能性,(偶然の)機会,好機」等の意味合いを有する親しまれた英語であって,その読みと認められる「チャンス」の片仮名も,我が国においてよく親しまれた語であることから,本件商標からは,「好ましい見込み,可能性,偶然の機会,好機」程の観念を生ずるものである。
そうとすれば,本件商標は,「CHANCE」の欧文字と「チャンス」の片仮名とが,上記のとおり,同一の称呼及び観念を生ずるものであるから,「CHANCE」のみの使用も,本件商標と社会通念上同一の商標の使用ということができる。
3 使用商標について
被請求人が,本件回胴式遊技機本体の中央にある回転リールの上部左右(乙第4号証の2)及びカタログの表紙中央やや上部及びその裏面左上部(乙第2号証)に表示したとする使用商標は,いずれも,別掲2のとおり,「CHANCE」の構成各文字をそれぞれ太字で表して黒で縁取りし,かつ,「H」と「N」とを,他の文字に比べ5分の1程度上方にずらして全体を密着させ,さらに,「C」と「A」の文字を赤色で表し,「H」,「N」及び「E」の文字をオレンジ色で表した構成態様からなるものであるから,かかる表示は,特異な態様で表された文字商標と把握されるとみるのが妥当である。
さらに,使用商標は,バット図形に重ねるようにして表わされ,かつ,それらの周囲を,黄土色一色で縁取りした構成からなる態様等に照らすと,それらの構成全体が外観において一体的なものとして視認されるものというのが相当である。
4 使用商標が本件商標と社会通念上同一であるか否かについて
商標法第50条で規定するところの「登録商標の使用」とは,その請求に係る指定商品についての登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生じる商標,外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。)ほか,同一と認められる範囲(例えば,商標の要部でない附記的な部分を多少変更して用いるとか,横書きの文字部分を縦書きにして用いるとかの場合)にあると解される。
そこで判断するに,本件商標は,「CHANCE」の欧文字と「チャンス」の片仮名とを上下二段に書した構成からなるのに対し,被請求人が本件回胴式遊技機本体及び商品カタログに使用したと主張する使用商標は,上記3に記載のとおり,特異な構成態様からなるものであって,単に本件商標の「CHANCE」の欧文字部分の書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標ということができず,本件商標と社会通念上同一のものとは認められない。
さらに,使用商標をその構成中に含む表示商標は,その全体が外観において一体性を有しているものというべきであるから,かかる構成においては,これに接した取引者,需要者が,その構成中の「CHANCE」の文字部分のみを独立した商標として認識するということもできない。
したがって,被請求人の提出に係る証拠によっては,本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標が,本件商標の指定商品中,「回胴式遊技機」について使用されたものと認めることができない。
その他,本件審判の請求の登録前3年以内に,日本国内において,本件商標が取消請求に係る指定商品について使用されていることを認めるに足る証拠はない。
5 まとめ
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,取消請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標(社会通念上同一のものを含む。)の使用をしていることを証明したものと認めることができない。
また,被請求人は,取消請求に係る指定商品について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 <表示商標>



別掲2 <使用商標>

色彩は,いずれも乙第2号証を参照されたい。


審理終結日 2012-03-13 
結審通知日 2012-03-15 
審決日 2012-04-18 
出願番号 商願昭62-79674 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (12428)
最終処分 成立  
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 田中 敬規
田中 亨子
登録日 1990-07-30 
登録番号 商標登録第2245460号の2(T2245460-2) 
商標の称呼 チャンス 
代理人 村雨 圭介 
代理人 木村 貴司 
代理人 早川 裕司 

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