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審決分類 審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効としない Z30
管理番号 1253493 
審判番号 取消2010-301249 
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-11-22 
確定日 2012-02-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第4558279号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4558279号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成13年6月5日に登録出願、第30類「菓子」を指定商品として、同14年4月5日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第106号証(枝番を含む。以下「甲1?106」のように略して表記する。甲5?50、甲52?59、甲79、甲80、甲82?89及び甲91?100は欠番である。枝番の欠番は省略する。なお、枝番の全てを引用する場合には、以下、枝番の記載を省略する。)を提出した。
1 請求の理由
以下のとおり、本件商標の商標権者(以下、単に「商標権者」という。)は、故意に、指定商品について登録商標に類似する商標を使用して、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものを行っている。
したがって、本件商標の登録は、商標法第51条第1項の規定により、取り消されるべきものである。
(1)商標権者の使用に係る商標(以下ア?エに示す商標について、順次、「使用商標1」、「使用商標2」といい、これらを総称する場合は、以下、単に「使用商標」という。)
ア 使用商標1
使用商標1は、商品「おかき」の中型包装袋の正面の下半分ほぼ全面に七福神の図形を表し、その右上部に「七福神」の文字を、黒色の縦長方形の枠の中の、茶色の地に、他の文字に比べてかなり大きい太字で表し、さらに、その右側に「七福神」の二分の一程の小ささの文字で、離して、かつ、1字分ほど頭を下げて、白地に「御宝」の文字を縦書きして表したものである。また、「七福神」の左横上部には、「作るは心」、「菓子は夢」、「美味しいおかきで」、「七つの幸」の文字群を「七福神」の文字の九分の一程の小ささで、向かって左側に向けて斜め下がりに頭を少しずつ下げて縦四行に配して表し、その左下方に四角い枠の中に「福」の一字を赤色で落款風に付加して、表したものである(甲2の1)。
イ 使用商標2
使用商標2は、店頭表示用の商品説明票(ポスター)の中央よりやや右上に、「七福神」の文字を大きく茶色で縦書きして表し、そのやや右上方に「御宝」の文字を、離して、「七福神」の文字の四分の一程の小ささの黒色で、「七福神」の文字より半字分ほど上げて縦書きして表したものである。また、「七福神」の左横には「華の銀座は」、「味の賑わい。」、「一袋で七つの幸。」の文字群を「七福神」の九分の一程の小ささの黒色で頭を揃えて縦三行になるようにして表し、それらの左下方に四角い枠の中に「福」の一字を赤色で落款風に付加して表し、その下部には七福神の図形を表したものである(甲2の2)。
ウ 使用商標3
使用商標3は、商品「おかき」の包装用巾着袋に貼付された商品説明票(シール)正面中央上部に、「品名 七福神」として表示したものである(甲2の3)。
エ 使用商標4
使用商標4は、商品「おかき」の中型包装袋の正面の下半分ほぼ全面に七福神の図形を表し、その右上部に「七福神」の文字を、黒色の縦長方形の枠の中の、茶色の地に、他の文字に比べてかなり大きい太字で表し、さらに、その右側に「七福神」の二分の一程の小ささの文字で、離して、かつ、1字分ほど頭を下げて、白地に「御宝」の文字を縦書きして表したものである。また、「七福神」の左横上部には、「作るは心」、「菓子は夢」、「美味しいおかきで」、「七つの幸」の文字群を「七福神」の文字の九分の一程の小ささで、向かって左側に向けて斜め下がりに頭を少しずつ下げて縦四行に配して表し、その左下方に四角い枠の中に「福」の一字を赤色で落款風に付加して、表したものである(甲2の4)。
(審決注:請求人は、商標権者の使用する本件商標以外の登録商標の使用や商標権者以外の者による本件商標の使用を挙げ、甲3として提出しているが、本件審判が商標法第51条に基づく取消審判であることにかんがみて、これらについては、省略する。)
(2)本件商標と使用商標との類否
ア 使用商標1及び4
本件商標は、「御宝七福神」の文字を同書、同大、等間隔で縦書きしてなるものであるのに対し、使用商標1及び4は、「御宝」の文字と「七福神」の文字とを、別々に、少し離し、大きさと書体を異にし、縦二行になるように配して表したものであるから、本件商標と同一の商標とはいえない。また、使用商標1及び4は、「御宝」と「七福神」の文字を要部とするものであるから、そこからは「御宝」と「七福神」の文字からなるものとの観念及び「オタカラシチフクジン」の称呼を生ずるものである。使用商標1及び4に付加された「作るは心」、「菓子は夢」、「美味しいおかきで」、「七つの幸」の四行の文字群は、記述的なものであり、さらに、四角の枠の中に「福」の字を表した図形は、比較的小さいものであり、それらは独立して商品の出所の識別機能を有しないものである。
したがって、本件商標と使用商標1及び4とは、外観の相違にもかかわらず、「御宝」と「七福神」の文字からなるものとの観念及び「オタカラシチフクジン」の称呼を共通にする、全体として類似する商標である。
イ 使用商標2
使用商標2は、本件商標と同一の商標とはいえない。また、使用商標2は、「御宝」と「七福神」の文字を要部とするものであるから、そこからは「御宝」と「七福神」の文字からなるものとの観念及び「オタカラシチフクジン」の称呼を生ずるものである。使用商標2に付加された「華の銀座は」、「味の賑わい。」、「一袋で七つの幸。」の文字群、四角い枠の中に「福」の一字を赤色で落款風に付加して表したもの、及び、七福神の図形の存在は、「使用商標2」から、「御宝」と「七福神」の文字からなるものとの観念及び「オタカラシチフクジン」の称呼を生ずることの妨げとはならないものである。
したがって、本件商標と使用商標2とは、外観の相違にもかかわらず、「御宝」と「七福神」の文字からなるものとの観念及び「オタカラシチフクジン」の称呼を共通にする、全体として類似する商標である。
ウ 使用商標3
使用商標3は、本件商標と同一の商標とはいえない。また、使用商標3は、「御宝」の文字を省略して「七福神」の文字を表したものであるから、これより「七福神」の文字からなるものとの観念及び「シチフクジン」の称呼を生ずるものである。
したがって、本件商標と使用商標3とは、外観の相違にもかかわらず、「七福神」の文字からなるものとの観念及び「シチフクジン」の称呼を共通にする、全体として類似する商標である。
(3)請求人がその業務に係る商品「あられ、おかき、せんべい」(以下「請求人商品」という。)に使用する商標(以下ア?トに示す商標について、順次、「引用商標1」、「引用商標2」といい、これらを総称する場合は、以下、単に「引用商標」という。)
ア 引用商標1は、包装用小袋に、恵比寿、大黒など七福神の一体の図形の上部に「七福神あられ」の文字を表したものである(甲4の1)。
なお、「七福神」は、第30類「菓子及びパン」について、登録第4004283号商標として登録され(甲1の2の1)、「七福神あられ」は、第30類「あられ」について、登録第5069835号商標として登録されている(甲1の2の4)。
イ 引用商標2は、中型の包装用袋に、恵比寿、大黒など七福神の一体の図形の下部に「七福神あられ」の文字を表したものである(甲4の2)。
ウ 引用商標3は、中型の包装用袋に、「アメとあられの」と「七福神」の文字を二段に表し、その下部に「七福神が乗った宝船」の図形を表したものである(甲4の3)。
エ 引用商標4は、中型の包装用袋に、恵比寿、大黒など七福神の一体の図形の下部に「七福神あられ」の文字を表したものである(甲4の4)。
オ 引用商標5は、やや大きめの中型の包装用袋に、「七福神あられ」の文字を表し、その下部に「七福神が乗った宝船」の図形を表したものである(甲4の5)。
カ 引用商標6は、大型の包装用巾着袋に、「七福神が乗った宝船」の図形と、その下に「七福神あられ」の文字を表したものである(甲4の6)。
キ 引用商標7は、包装紙に、「七福神」と「あられ」の各文字を、細い円輪郭の中に輪郭に接するよう配し、該円輪郭の周りに七福神の七体の図形を表したものである(甲4の7)。
なお、引用商標7は、第30類「あられ」について登録された登録第4271574号商標と同一のものである(甲1の2の2)。
ク 引用商標8は、小型Aの包装用紙箱に、縦書きの「七福神」及び横書きの「七福神」の文字を表したものである(甲4の8)。
ケ 引用商標9は、小型Bの包装用紙箱に、縦書きの「七福神」及び横書きの「七福神」の文字を表したものである(甲4の9)。
コ 引用商標10は、中型Aの包装用紙箱に、縦書きの「七福神」及び横書きの「七福神」の文字を表したものである(甲4の10)。
サ 引用商標11は、中型Bの包装用紙箱に、縦書きの「七福神」及び横書きの「七福神」の文字を表したものである(甲4の11)。
シ 引用商標12は、大型Bの包装用紙箱に、「七福神」と「あられ」の各文字を、細い円輪郭の中に輪郭に接するよう配し、「七福神」の文字と「あられ」の文字を、細い円輪郭の中に輪郭に接するように表したものを帆印とする「七福神が乗った宝船」の図形を配したものである(甲4の12)。
なお、「七福神」と「あられ」の各文字を、細い円輪郭の中に輪郭に接するよう配した商標は、登録第4576030号商標として登録されている(甲1の2の3)。
ス 引用商標13?15は、小型ないし中型の包装用缶に貼付されたラベルに、縦書きの「七福神あられ」の文字と、その右に「招福七福神」の文字を帆印とする「七福神が乗った宝船」の図形を配したものである(甲4の13?15)。
セ 引用商標16は、小型の包装用手提げ袋に、「七福神あられ」の文字を表したものである。
ソ 引用商標17及び18は、中型ないし大型の包装用手提げ袋に、「七福神あられ」の文字を横書きし、その下部に、「七福神が乗った宝船」の図形を表したものである(甲4の17・18)。
タ 引用商標19及び20は、中型の包装用ダンボール箱の側面に表したもので、引用商標19は正面と背面に「七福神あられ」の文字を、引用商標20は横面に「七福神」の文字を、それぞれ表したものである(甲4の19・20)。
チ 引用商標21?27は、インターネット上で表示されたものである。
(ア)引用商標21は、「七福神」の文字と「あられ」の文字を、細い円輪郭の中に輪郭に接するように表したものを帆印とする「七福神が乗った宝船」の図形を配したものである(甲4の21)。
(イ)引用商標22?27は、「七福神」の図形及び「七福神あられ」の文字が表示されている(甲4の22?27)。
ツ 引用商標28及び29は、中型の包装用袋又は大型Aの包装用紙箱に、横書きした「開運七福神あられ」の文字と、その下に「七福神が乗った宝船」の図形を配したものである(甲4の28・29)。
テ 引用商標30は、中型の包装用袋に、縦書きにした「鎌倉七福神」の文字と、その左に「七福神」の図形等を配したものである(甲4の30)。
ト 引用商標31は、中型の包装用袋に、縦書きにした「日本橋七福神」の文字と、その左に「七福神」の図形等を配したものである(甲4の31)。
(4)請求人の営業活動
ア 請求人は、「おかき、あられ、せんべい」などの製造・販売業者として、明治29年に東京日本橋において創業し、明治42年に群馬県前橋市へ営業拠点を移した後、個人営業から有限会社幸煎餅、株式会社幸煎餅へと組織変更を経て現在に至るまで、100有余年の間、営業活動を継続してきた。平成20年4月現在、請求人は、群馬県前橋市千代田町4-19-3所在の本店をはじめ、群馬県、東京都及び静岡県の直営店並びに子会社店の合計4店を擁している。また、取扱店は、三越銀座店、高島屋高崎店、ダイエー大宮店など、群馬県を中心に67店舗に及ぶ。(以上甲51)
イ 広告・宣伝活動
(ア)ホームページの開設
請求人は、平成14年1月ころに、ホームページを開設し、「七福神あられ」などの文字と共に請求人商品を紹介している(甲61)。
(イ)新聞
請求人は、上毛新聞・桐生タイムス・静岡新聞などの地方紙、菓子食品新報、東京中日スポーツ・スポーツ報知・日刊スポーツ・スポーツニッポンなどのスポーツ紙、メトロガイド等に「七福神あられ」などの文字と共に請求人商品の広告をした。その他、読売新聞や毎日新聞などの全国紙にも「七福神あられ」などの商品の広告をした(甲62)。
(ウ)雑誌
請求人は、「文藝春秋」、「オール讀物」、「月刊ぷらざ」、「パリッシュ」、「週刊文春」、「NHKウィークリーステラ」、「クロワッサン」等の雑誌に「七福神あられ」などの文字と共に請求人商品の広告をした(甲63)。
(エ)ちらしその他
請求人は、請求人商品に関し、ちらし、パンフレットを作成し、これらを頒布した。また、請求人商品について、その包装容器にはもちろんこと、電飾サインボードや新橋演舞場のプログラム等に掲載したり、ラジオやテレビを媒介して広告をした(甲64?70)。
以上のように、請求人は、多額の費用を費やし、数多の広告・宣伝を行っている。例えば、月刊「文藝春秋」(甲63の1)の平成21年度の1年だけの広告費用は、約540万円を超える(甲60の1の1)
ウ 紹介情報
「七福神あられ」などの請求人商品は、郵便局が取り扱う「ゆうパック」や「ふるさと小包」などのパンフレット、雑誌、新聞、パンフレット等で紹介された(甲71?78)。
(5)出所の混同について
ア 引用商標の周知・著名性
前記(4)のとおり、引用商標は、請求人商品を表示するものとして、取引者、一般需要者に広く認識されていたものである。
イ 使用商標と引用商標の類似性
使用商標1、2及び4は、いずれもその構成中の「御宝」の文字は、「七福神」の文字とは、離して表してあり、かつ、文字も小さく書されているものである。また、「御宝」の文字と「七福神」の文字は、結合して特定の観念を生ずるものではない。使用商標1及び4中の「作るは心」、「菓子は夢」、「美味しいおかきで」、「七つの幸」の各文字、使用商標2の「華の銀座は」、「味の賑わい。」、「一袋で七つの幸。」の各文字、使用商標1、2及び4中の「福」の文字は、「御宝」の文字と共に、独立して商品の識別機能を有しないものである。
したがって、使用商標1、2及び4は、「七福神」の文字が独立して商品の識別機能を有するから、これより、「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼を生ずるものである。また、使用商標3は、「七福神」の文字よりなるから、これより、「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼を生ずるものである。
そうとすると、使用商標は、引用商標と、「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼を共通にするものであるから、外観の相違点を考慮しても、それらは、全体として類似する商標である。
ウ したがって、商標権者が、本件商標と類似する使用商標を、「あられ、おかき、せんべい」について使用するときは、これに接する取引者及び一般需要者に、該商品があたかも請求人又は請求人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生じさせ、若しくは、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。
(6)商標権者の故意について
商標権者は、東京都品川区南大井3丁目12番16号に本社を置く「あられ、おかき、せんべい」などの米菓の製造・販売業者であり、請求人と同業者である(甲101の2の1)。請求人が「七福神」及び「七福神」を要部とする引用商標を、請求人商品について長年にわたり使用し、かつ、広告・宣伝を行った結果、「七福神」商標は、遅くとも平成13年7月ころには、とりわけ、関東一円において、請求人商品を表示するものとして、取引者、一般需要者に広く認識されていたものであり、商標権者は、その事実を当然知っていたものである(甲4の1の1?甲70の6の2,甲71の1の1?甲78の2の2)。商標権者は、請求人が請求人商品について使用する引用商標を知った上で、本件商標を「御宝」と「七福神」とに分断し、別々の態様で、離して縦二行に表すなどして、「七福神」を際立たせ、一般需要者が請求人の業務に係る商品と混同を生ずることを認識しながら、自己の業務に係る商品「おかき」又は「せんべい」について、使用商標を使用したものである。
したがって、商標権者は、故意をもって、請求人の業務に係る商品と混同を生ずる商標を、本件商標の指定商品について使用しているものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)使用商標1ないし4について
ア 使用商標1について
使用商標1の商品の販売者は、「(株)東京ひよこ」である。このことは、ポスター(商品説明票)に表された「ひよこ本舗吉野堂」の表示によって知ることができる(甲3の2の1)。
その商品「おかき」の製造者は、パネルに表された「ぎんざ 花のれん」の表示によって、それが「株式会社銀座花のれん」であることを知ることができる(甲3の4の4,甲3の6の5)。
そして、「株式会社銀座花のれん」が被請求人の関連会社であることは、インターネットの映像面に表された被請求人の広告の中の、「工場 株式会社銀座花のれん」の表示により明らかである。
イ 使用商標2について
使用商標2の使用場所がどこかにかかわらず、そのポスター(商品説明票)に表されている「御宝 七福神」商標、「名菓 ひよ子」の表示、「ひよ子本舗吉野堂」の表示からして、そのポスターが被請求人又はその関連会社によって作成されたことは明らかであり、その「七福神」の文字を明示した価格票の表示から「(株)東京ひよこ」の店頭である。
ウ 使用商標3について
「七福神」の文字からなる使用商標3の使用者がその商品説明票の「販売者」として明示されている「(株)東京ひよこ」であるが、そのような「販売者」が表示されている場合、本件商標「御宝七福神」の商標権者からその登録商標の使用について通常使用権が許諾されているのが普通である。
その商品説明票に表された「七福神」商標は、「御宝 七福神」の文字からなる使用商標1が表示され、「おかき」が入った包装用中型袋が入れられ、「銀座 七福神」商標が表示された包装用巾着袋の底辺に貼付して使用されている(甲2の3の2・3,甲2の4の2)。
エ 使用商標4について
「御宝 七福神」の文字からなる使用商標4が表された「おかき」が入った包装用中型袋は、使用商標1が表された「おかき」が入った包装用中型袋と同じもので、「銀座 七福神」商標が表された包装用巾着袋に入っていたものである(甲2の3の3,甲2の4の2)。
したがって、その使用者は、「(株)東京ひよこ」であり、その販売時期は、2006年12月28日を含む(甲2の1の4)、2007年5月17日まで販売されたものである(甲2の3の1?3)。
(2)包装袋表面の表示について
甲2の1の1及び甲2の4の1に示す包装用中型袋に表された商標は、「七福神」の文字と「七福神」の図形を顕著に表したものであるから、使用商標1及び使用商標4からは「七福神」の観念と「シチフクジン」の称呼が生じるものである。
甲2の3の3及び甲2の4の2に示した包装用巾着袋に表されている「銀座 七福神」の商標並びに甲2の3の1?3の商品説明票に表されている「七福神」の商標は、使用商標1及び使用商標4から「七福神」の観念と「シチフクジン」の称呼が生じることに預かって力が大なるものがある。
(3)商標第51条の該当性について
「七福神」の観念と「シチフクジン」の称呼が生じる使用商標1及び使用商標4をその指定商品「おかき」について使用することは、請求人が「あられ」について使用する「七福神あられ」などの商標との関係で、商品の混同、商品の出所の混同又は商品の出所の混同のおそれがあるものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べた。
1 使用商標について
(1)使用商標1は、甲2の1の1として提出されているが、当該証拠(おかきの包装袋)によっては、その製造者、販売者の表示はなく、また、いつ、どこで販売されていたのかも不明である。
したがって、当該証拠を基に本件商標が商標法第51条に該当するとの主張は失当である。
(2)使用商標2について
使用商標2は、甲2の2の1として提出されているが、当該証拠(店頭に貼られたポスターの写真)によっては、それがどこの店頭なのか、また、いつ撮影されたものなのかが不明である。
したがって、当該証拠を基に本件商標が商標法第51条に該当するとの主張は失当である。
(3)使用商標3について
使用商標3は、甲2の3の1として提出されているところ、当該証拠は米菓の包装袋のようであるが、その販売者は商標権者ではない。
また、甲2の3の1と甲2の3の2、甲2の3の3との関係も不明確である。
したがって、当該証拠を基に本件商標が商標法第51条に該当するとの主張は失当である。
(4)使用商標4について
使用商標4は、甲2の4の1として提出されているが、当該証拠(おかきの包装袋)によっては、その販売者、販売時期が不明である。
したがって、当該証拠を基に本件商標が商標法第51条に該当するとの主張は失当である。
2 包装袋表面の表示について
請求人が、登録商標のいわゆる不正使用の根拠として指摘する使用商標については上記1で述べたとおりであるが、使用商標1について敷えんして述べる。
当該包装袋には、右端上方に「御宝」の文字、その左隣に「七福神」の文字、さらにその左隣に「作るは心」、「菓子は夢」、「美味しいおかきで」、「七つの幸」の4列の文字群が縦書きされている。そして、これら文字群の下部には、七人のキャラクター図形が描かれているものである。
恵比寿、大黒天、毘沙門天、弁財天、布袋、福禄寿、寿老人の七神が「七福神」を構成することは我が国国民であれば周知のことであり、各神の様相も同様で広く知られている。そうであれば、需要者は、当該包装袋に表示された図形が「七福神」を表現していることを容易に理解するものであって、「七福神」の文字を含めた全体で包装袋のデザインを構成しているものと認識するものと見るのが自然である。
したがって、「七福神」の文字のみを抜き出してこれを商標と認識されるようなことはない。
3 商標法第51条の該当性について
上記のように、請求人が提出する証拠によっては、商標権者が、登録商標に類似する商標を請求人が使用する商標と混同を生ずる態様で使用していると認めることは到底不可能であり、また、その証拠に表示された「七福神」の文字部分は、包装袋に表示されたデザインの一部であって、識別標識として認識されるようなものではない。
したがって、請求人の主張、証拠によっては、本件商標が商標法第51条に定める態様で使用されていることを認めることはできず、同規定に該当するものではない。

第4 当審の判断
1 商標法第51条第1項は、「商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であって商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定しているところ、請求人は、商標権者による指定商品についての使用商標の使用は請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものを行っている旨主張するので、以下検討する。
2 使用商標の態様及びその使用者
(1)甲2の1?4によれば、以下のとおりである。
ア 使用商標1及び4
(ア)使用商標1及び4は、別掲(2)のとおり、宋朝体風に表した「御宝」の文字を右上部に縦書きし、その左に、黒色の縁を有する茶色地矩形内に宋朝体風に表した「七福神」の文字を黒色で大きく縦書きし、さらに、これらの文字の左に、「作るは心」、「菓子は夢」、「美味しいおかきで」、「七つの幸」の各文字を四行にして小さく縦書きにしてなり、これらの文字中の「幸」の下には、赤色の正方形輪郭内に赤色で表された「福」の文字を小さく配してなり、そして、これらすべての文字の下に、「七福神」の図形を、包装袋表面の約三分の二を占める面積で描いてなるものである。
(イ)使用商標1が表示された包装袋の裏面には、中央より右側に、「賞味期限 07.5.17」、「商品名:御宝七福神」などの文字が記載され、同左側には、「名称:米菓」、「原材料:もち米・・」、「賞味期限:裏面右に記載」、「量目」などの文字が記載されているが、商品の製造者又は販売者の記載はない(甲2の1の1・3)。また、使用商標4が表示された包装袋は、使用商標4が表示された表面のみの写真であり、これより商品の製造者又は販売者は明らかではない(甲2の4)。
なお、甲2の1の4として提出されたレシートには、「錦糸町TokyuStore/名菓ひよこ」、「2006年12月28日(木)16:23 No:0164」、「小計 ¥1,050/合計 ¥1,050」等が記載されている。
イ 使用商標2
使用商標2は、別掲(3)のとおり、清朝体風に表した「御宝」の文字を右上部に黒色で縦書きし、その左に、清朝体風に表した「七福神」の文字を黄色で着色し、これを縦書きに大きく表し、その左に、「華の銀座は」、「味の賑わい。」、「一袋で七つの幸。」の各文字を三行にして小さく縦書きにしてなり、これらの文字中の「幸」の左に、赤色の正方形輪郭内に赤色で表された「福」の文字を小さく配してなるものであり、そして、「華の銀座は」、「味の賑わい。」、「一袋で七つの幸。」の各文字及び「福」の文字の下には、「七福神」の図形を配してなるものである。さらに、「七福神」の図形の下には、横書きにした「七福神」の文字、「七福神」の図形、「¥1050」、「ひよこ本舗吉野堂」などと記載された矩形の枠が配され、該枠外の左には、縦書きにした「名菓ひよこ」の文字が記載されている。
ウ 使用商標3
使用商標3は、「七福神」の文字よりなるものであり、使用商標3が表示されたラベル(包装袋に貼付されたもの)には、「品名 七福神」、「名称 米菓」、「原材料 もち米・・」、「内容量」、「賞味期限 07.5.17」、「販売者 (株)東京ひよこ」などと記載されている(甲2の3)。
(2)上記(1)によれば、使用商標の使用者について、以下のとおり認定するのが相当である。
ア 使用商標1が表示された包装袋には、商品「おかき」の製造者又は販売者の記載はなく、また、当該商品を購入した際に発行されたものと推認することができるレシート(甲2の1の4)には、商標権者以外の販売会社の記載がある。したがって、甲2の1を総合しても、商標権者が2006年(平成18年)12月28日の時点において、使用商標1を使用していたものと認めることはできない(なお、農林水産省のホームページ「食品の期限表示について」によれば、賞味期限の表示において、「年月日」で表示されるものは、賞味期限が3ヶ月以内の食品である、との記載がある。これを使用商標1が表示された「おかき」に当てはめてみると、包装袋の裏面には、「賞味期限 07.5.17」との記載があり、当該おかきの賞味期限が3ヶ月以内であるとすると、2007年2月中旬ころに製造されたものと推認することができ、したがって、請求人の提出したレシート(甲2の1の4)が使用商標1が表示された「おかき」を購入した際に発行されたものであるかについては、疑問が残らないでもない。)。
イ 使用商標2が表示されたポスターには、商標権者以外の販売会社の記載があるが、商標権者の記載はない。したがって、商標権者が使用商標2を使用していたと認めることはできない。なお、請求人は、甲2の2の1の撮影日を、2006年(平成18年)12月28日と主張するが、これを裏付ける証拠の提出はない。
ウ 使用商標3が表示されたラベルには、商標権者以外の販売会社の記載があるが、商標権者の記載はない。そうすると、当該ラベルには、「賞味期限 07.5.17」の記載があるから、上記アのかっこ書きのとおり、使用商標3が表示されたラベルが貼付された米菓は、2007年2月中旬ころに製造されたと推認することができ、したがって、商標権者が2007年(平成19年)2月中旬の時点において、使用商標3を使用していたと認めることはできない。
エ 使用商標4は、使用商標1と同一のものと認めることができるから、使用商標1と同様に、商標権者が2006年(平成18年)12月28日の時点において、使用商標4を使用していたと認めることはできない。
(3)以上によれば、使用商標は、いずれも商標権者によって使用されたものとは認めることができない。その他、使用商標が商標権者によって指定商品に使用されたと認めるに足りる証拠の提出はない。
なお、請求人は、使用商標1ないし4の使用者が「株式会社東京ひよこ」又は「株式会社銀座花のれん」であり、その使用をもって本件商標が商標法第51条第1項により取り消されるべきであると主張するが、これらの者が本件商標の通常使用権者であるか否かはさておき、商標権者ではないことが明らかであることから、請求人の主張は採用することができない。
したがって、本件審判は、商標法第51条第1項の要件を欠くことになり、同条項の他の要件を検討するまでもなく、その請求は、成り立たないことになるというべきである。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第51条第1項の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標


(2)使用商標1及び4


(3)使用商標2



審理終結日 2011-11-25 
結審通知日 2011-11-30 
審決日 2011-12-26 
出願番号 商願2001-50915(T2001-50915) 
審決分類 T 1 31・ 3- Y (Z30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 敦子 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 田中 敬規
酒井 福造
登録日 2002-04-05 
登録番号 商標登録第4558279号(T4558279) 
商標の称呼 オタカラシチフクジン 
代理人 吉田 親司 
代理人 小出 俊實 
代理人 佐藤 久美枝 
代理人 橋本 良樹 
代理人 佐久間 光夫 
代理人 石川 義雄 
代理人 蔵田 昌俊 
代理人 潮崎 宗 
代理人 幡 茂良 
代理人 村田 幸雄 

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