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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2012890070 審決 商標
無効2011890101 審決 商標
無効2013890034 審決 商標
無効2012890020 審決 商標
無効2011890023 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
管理番号 1251613 
審判番号 無効2010-890020 
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-03-16 
確定日 2012-01-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第4847925号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成23年2月7日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成23年(行ケ)第10094号、平成23年6月16日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第4847925号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4847925号商標(以下「本件商標」という。)は、「江戸深川七福神」の文字を標準文字で表してなり、平成16年8月18日に登録出願、第30類「菓子」を指定商品として、同17年3月18日に設定登録され、その後、同22年12月13日に商標法第51条第1項により登録を取り消す旨の審決(取消2010-300232号事件)が確定したことにより、同23年1月7日にその商標権の抹消登録がされたものである。

第2 引用商標
請求人が無効事由として挙げる商標法第4条第1項第11号に関連して引用する登録商標は、以下のとおりであり、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第2342717号商標(以下「引用商標1」という。)は、「お江戸七福神」の文字を表してなり、昭和63年10月4日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、平成3年10月30日に設定登録されたものである。その後、同13年10月30日及び同23年11月15日に商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、指定商品については、同13年12月26日に第30類「菓子及びパン」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(2)登録第2463631号商標(以下「引用商標2」という。)は、「大江戸七福神」の文字を表してなり、昭和63年10月4日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、平成4年10月30日に設定登録されたものである。その後、同14年10月15日に商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、指定商品については、同年12月18日に第30類「菓子及びパン」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
(3)登録第4004283号商標(以下「引用商標3」という。)は、「七福神」の文字を表してなり、平成6年12月16日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同9年5月30日に設定登録され、その後、同18年12月26日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(4)登録第4271574号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成からなり、平成9年5月8日に登録出願、第30類「あられ」を指定商品として、同11年5月14日に設定登録され、その後、同21年4月14日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
(5)登録第4576030号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成からなり、平成13年7月12日に登録出願、第30類「あられ」を指定商品として、同14年6月14日に設定登録されたものである。
(6)登録第4654632号商標(以下「引用商標6」という。)は、「深川七福神」の文字を標準文字で表してなり、平成14年6月25日に登録出願、第30類に属する別掲(3)に記載の商品を指定商品として、同15年3月20日に設定登録されたものである。
以下、上記引用商標を一括していうときは、「引用商標」という。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第4号証、甲第51号証、甲第60号証ないし同第78号証、甲第81号証、甲第90号証及び甲第101号証ないし同第105号証(いずれも枝番を含む。)を提出した。
1 無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号、同第16号及び同第19号に該当するものであるから、本件商標は、商標法第46条第1項の規定によりその登録を無効とされるべきものである。
2 無効原因
(1)商標法第4条第1項第7号該当性
被請求人は、請求人が表示する七福神の図形を知っており、請求人の商品と誤認・混同を生じることを認識しながら、本件商標を変更して「江戸深川 七福神」とし、請求人が使用する「七福神の図」を翻案した「七福神の図」とともに、その指定商品「あられ」に使用しているものである。
被請求人は、意図的に、特徴のある他人の図形を真似て、著作権法の目的に反するような方法で個別の絵画(7体)にもとづく図形を翻案し、かつ、請求人の所有する登録商標と同一又は類似する商標である「七福神」などの文字とともに使用し、商業道徳などの、善良の風俗を害し又は害するおそれのある行為を行っているものである。
本件商標は、その使用方法において、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であり、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性
請求人が使用する「七福神」や「七福神あられ」などの商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、商品「菓子」の需要者に周知であった。
本件商標の構成のうち、「江戸深川」、「江戸」及び「深川」は、いずれも地理的名称であり、識別力が弱く、独立して商品の出所識別標識としての機能を果たすものではない。したがって、本件商標からは、「江戸深川」の「七福神」の観念、「江戸」の「深川七福神」の観念のほか、「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼が生じ得るものである。請求人の周知商標「七福神」も、「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼を有するから、両商標は観念及び称呼が同一であり、類似する商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第11号該当性
本件商標は、「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼をも生じ得るものであり、引用商標も、同様に、「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼を有するから、両商標は観念及び称呼が同一であり、類似する商標というべきである。また、本件商標及び引用商標の指定商品は、いずれも類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性
「七福神」及び「七福神あられ」は、商品(あられ)についての請求人の周知商標であるところ、上記周知商標と本件商標とは、いずれも「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼を有するものであって類似する商標というべきである。したがって、被請求人が本件商標をその指定商品について使用すると、需要者は,請求人が商品(あられ)等について使用する「七福神あられ」及び「七福神」との関係で、商品やその出所について混同を生ずるおそれがあるものである。
以上からすると、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(5)商標法第4条第1項第16号該当性
請求人は、原料の米・生地・焼き方・包装方法などについて、厳格で高度な一定の品質を確保しており、賞味期限も、他企業より短めに設定している。請求人が確保してきた高い品質に対して、これと異なる品質のあられについて、被請求人が請求人の周知商標である「七福神」及び「七福神あられ」と類似する本件商標を使用することは、請求人の商品の品質の誤認又はそのおそれを生じさせているものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するものである。
(6)商標法第4条第1項第19号該当性
被請求人は、日本国内において需要者の間に広く認識されている請求人の商標「七福神あられ」及び「七福神」と類似する商標である本件商標を取得したものである。
前記(1)において指摘したとおり、請求人の本件商標の登録に至る出願の経緯には著しく社会的妥当性を欠くものがあるから、被請求人による本件商標の取得が「不正の目的をもって使用するもの」であることは、明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第35号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、「江戸深川七福神」の文字を横書きした構成からなるものであって、請求人が使用していると主張している「七福神の図形」を構成中に含むものではない。
いうまでもなく、無効審判は登録商標が所定の登録要件を満たしていたか否かを判断するものであるから、本件商標の構成に全く関連性のない「七福神の図形」を根拠に本件商標の無効を主張することは明らかに失当である。
また、本件商標が、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字であるとか、指定商品について使用することが社会公共の利益に反したり、又は社会の一般的道徳観念に反したりするようなものでないことは明らかであるし、本件商標が、他の法律によって、その使用等が禁止されている商標、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標に該当しないことも明白である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
2 商標法第4条第1項第10号について
本件商標と、請求人が引用する商標「七福神」、「七福神/あられ」、「七福神 あられ」とが、「七福神」の文字において共通するからといって、何故類似関係にあるのかについての論拠は全く示されておらず不明である。この点、特許庁においては、「秩父七福神」、「越生七福神」、「箱根七福神」、「武州七福神」、「銀座七福神」、「神戸七福神」、「伊東七福神」、「伊豆七福神」、「亀戸七福神」、「八溝七福神」、「佐倉七福神」、「三郷七福神」、「飯山七福神」、「杉戸七福神」等の商標が上記引用商標とは非類似と判断され、並存登録されているものであって、本件商標と引用商標とが非類似であることも明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
なお、請求人は、本件商標が、「七福神の図」に「江戸深川七福神」の文字を配した構成からなる旨述べているが、本件商標の構成中には「七福神の図」は含まれてはいない。
3 商標法第4条第1項第11号について
「七福神」とは「福徳をもたらす神として信仰される七体の神であって、恵比寿、大黒天、毘沙門天、弁財天、布袋、福禄寿、寿老人の七神」をいう。そして、近世においては、新年に七福神の寺社を巡拝して福徳を祈ることが盛んになり、これを「七福神詣で」あるいは「七福神参り」と呼び、現在にも受け継がれている(乙第1号証)。
日本各地には、「地名」と「七福神」の文字からなるご当地の七福神が多数存在している。例えば、「秩父七福神」、「越生七福神」、「箱根七福神」、「武州七福神」、「銀座七福神」、「神戸七福神」、「伊東温泉七福神」、「伊豆国七福神」、「亀戸七福神」、「八溝七福神」、「佐倉七福神」、「三郷七福神」、「飯山七福神」、「杉戸七福神」等の如くである(乙第2号証及び乙第3号証)。そして、ご当地の七福神を祭った寺社の門前町は、七福神詣での参拝客で賑わい、各門前町では、ご当地の七福神の名称を用いたお菓子を販売し、名物となっているものである。
上記した事情から、特許庁においても、「秩父七福神」、「越生七福神」、「箱根七福神」、「武州七福神」、「銀座七福神」、「神戸七福神」、「伊東七福神」、「伊豆七福神」、「亀戸七福神」、「八溝七福神」、「佐倉七福神」、「三郷七福神」、「飯山七福神」、「杉戸七福神」等、ご当地の七福神の名称を表す、「地名」と「七福神」の文字からなる商標が、請求人所有の登録商標とは非類似と判断され、並存登録されており、互いに区別して取引されているものである(乙第4号証ないし乙第22号証)。
すなわち、この種商標にあっては、「地名」の部分は商品の産地、販売地を指すものではなく、「地名」と「七福神」とが一体となって日本各地に点在する七福神の名称を表していると認識されるものである。
なお、被請求人は、「深川七福神」の「布袋尊」の近隣に所在するところ、本件商標は、当該「深川七福神」に由来するものであるが(乙第3号証及び乙第4号証)、「深川」という地名は東京都江東区以外に北海道の深川市(乙第1号証)等が存在することから、東京都江東区の深川であることを明示すべく、「江戸」の文字を冠したものであって、本件商標を付したお菓子は、深川七福神界隈の商品として愛されているものである(乙第23号証)。
したがって、引用商標中、「お江戸七福神」、「大江戸七福神」、「深川七福神」や、本件商標は、その構成全体で一体の商標としてのみ認識されるものであって、「七福神」の文字部分が要部となるものではない。
よって、引用商標と本件商標とは非類似であり、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
4 商標法第4条第1項第15号について
請求人は、「七福神」(引用商標3)、「七福神/あられ」(引用商標4)、「七福神 あられ」(引用商標5)、「七福神あられ」を引用し、これらの引用商標が請求人の業務に係る商品を表示するものとして、商品「菓子」の需要者の間に広く認識されてた旨を主張するが、いつ頃からどの地域でこれら引用商標が使用され、どの程度の販売数量があるのか等の具体的な事情は何ら説明されていない。したがって、これらの引用商標が「広く認識されていた」ことを認めることは到底できない。
特に、当該規定に該当するか否かは、本件商標の出願時においても「広く認識されていた」ことが必要であるところ、上記引用商標がいつ頃から「広く認識」されていたのかについては具体的な立証はない。
請求人は、引用商標と本件商標とが類似する旨主張するが、引用商標と本件商標とが類似しないことは既に述べたとおりである。
請求人は、「請求人が多額の広告費用を充てた」、「被請求人は『七福神』商標の高い識別力に只乗りしており、『七福神』商標についての顧客吸引力が減殺されている」と主張するが、その具体的な根拠は何ら示されていない。また、「本件商標が『七福神』商標の姉妹商標、ファミリーマークの一種であると一般需要者に認識されており、その結果請求人の販売されていない地域・店舗において被請求人の販売額は上昇している」と主張するが、これについても何らの根拠も示されていない。
よって、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しないことは明らかである。
5 商標法第4条第1項第16号について
請求人は、同人が確保してきた高い品質に対して、これと異なる品質の商品「あられ」について、被請求人が本件商標を使用し、数多くの引用使用商標との関係で、商品の品質の誤認を生じせしめている旨主張するが、その具体的な説明は何らされていない。また、根拠として「甲第4号証の1の1ないし甲第70号証の7の1」を挙げているが、どの甲号証を根拠とし、あるいはどの甲号証との関係でこのようなことを主張しているのか全く理解できない。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第16号に該当するとの主張も何らの根拠のないものであり、本件商標が当該規定に該当しないことは明白である。
6 商標法第4条第1項第19号について
請求人は、被請求人が請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標を不正の目的をもって使用してきたものである旨主張するが、請求人が引用する商標が広く認識されていたとは認められないこと、及び本件商標が引用商標とは非類似であることは上述したとおりであるから、他の要件について論述するまでもなく、本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当しないことは明らかである。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標の登録の無効事由は、前記第3のとおりのところ、事案に鑑み、まず商標法第4条第1項第11号について検討する。
(1)商標の類否判断
本件商標は、漢字で記載された「江戸」、「深川」及び「七福神」(あるいは「江戸深川」と「七福神」)から構成されている、いわゆる結合商標である。
そして、商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断しなければならない(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
しかるところ、複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、原則として許されない。他方、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも、許されるものである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
そこで、以上説示した見地から、本件商標と引用商標との類否について検討する。
(2)本件商標と引用商標との類否
ア 本件商標から生じる称呼及び観念について
本件商標は、「江戸深川七福神」の文字を横書きに表してなるものであり、各文字の大きさ及び書体は同一であって、その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものではあるが、「江戸」、「深川」及び「七福神」の各文字部分をその構成部分とするものであることは、視覚上、容易に認識することができるものである。
そして、本件商標の「江戸」の文字部分は、「東京の旧名。吉原・深川あたりで内神田・日本橋辺を指していった称。」を意味する語(広辞苑第6版 岩波書店)、「深川」の文字部分は、「北海道中央部の市。東京都江東区の一地区。」を意味する語、「七福神」の文字部分は、「七福徳をもたらす神として信仰される7体の神であって、恵比寿、大黒天、毘沙門天、弁財天、布袋、福禄寿、寿老人の七神」を意味する語(乙第1号証)であるから、本件商標の「江戸」及び「深川」の文字部分は、「七福神」が所在する地域を意味する語にすぎないものである。
したがって、本件商標からは、「エドフカガワシチフクジン」という一連の称呼が生じ、また、「江戸の深川地区」に所在する「七福神」といった観念が生じることは否定し得ないが、「江戸深川」の部分から「七福神」の部分と一連となった称呼ないし観念が生じ得るとしても、それ自体で独立した、出所識別標識としての称呼及び観念までは生じないというべきであって、本件商標の称呼ないし観念が「江戸深川七福神」以外に生じる余地がないということはできない。
そうすると、本件商標からは、「江戸深川七福神」という当該商標の全体に対応した称呼及び観念とは別に、「七福神」の部分に対応した「シチフクジン」の称呼及び「福徳をもたらす神として信仰される7体の神。恵比寿、大黒天、毘沙門天、弁財天、布袋、福禄寿、寿老人。」という観念も生じるといわざるを得ないのであって、本件商標と引用商標との類否判断に際して、本件商標から「七福神」の部分を抽出することは当然に許されるべきものである。
イ 引用商標3から生じる称呼及び観念について
他方、引用商標のうち、引用商標3についてみると、同商標は、「七福神」の文字を横書きに表してなるものであり、各文字の大きさ及び書体は同一であって、その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものである。
そして、引用商標3は、「シチフクジン」の称呼及び「福徳をもたらす神として信仰される7体の神。恵比寿、大黒天、毘沙門天、弁財天、布袋、福禄寿、寿老人。」という観念を有するものということができる。
ウ 本件商標と引用商標3との類否
前記ア及びイによると、本件商標と引用商標3とは、称呼及び観念において共通するものであり、両商標の外観の相違は、出所識別標識としての称呼及び観念が生じない「江戸深川」部分の有無が異なる程度にとどまるものであるから、そのような外観の相違を考慮してもなお、本件商標と引用商標3とが同一又は類似の商品に使用された場合には、当該商品の出所について混同が生じるおそれがあるというべきであって、本件商標は、引用商標3と類似するものと認めるのが相当である。
エ 指定商品の同一性
本件商標の指定商品は「菓子」であり、引用商標3の指定商品は「菓子及びパン」であるから、両商標の指定商品は同一又は類似であることは明らかである。
オ 本件商標と引用商標1、2及び6との類否
前記アないしエにおいて説示したところは、「七福神」に、地域を示す「お江戸」、「大江戸」及び「深川」が結合された引用商標1、2及び6についても当てはまるから、本件商標は、引用商標1、2及び6とも類似するものと認めるのが相当である。
2 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、その余について判断するまでもなく、商標法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)引用商標4

(色彩については、原本を参照されたい)

(2)引用商標5


(3)引用商標6の指定商品
「菓子及びパン,アイスクリーム凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」

審理終結日 2010-12-15 
結審通知日 2011-10-27 
審決日 2011-02-07 
出願番号 商願2004-76148(T2004-76148) 
審決分類 T 1 11・ 262- Z (Y30)
T 1 11・ 263- Z (Y30)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 幸一 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 田中 敬規
酒井 福造
登録日 2005-03-18 
登録番号 商標登録第4847925号(T4847925) 
商標の称呼 エドフカガワシチフクジン、シチフクジン 
代理人 村田 幸雄 
代理人 幡 茂良 
代理人 橋本 良樹 
代理人 蔵田 昌俊 
代理人 石川 義雄 
代理人 吉田 親司 
代理人 佐藤 久美枝 
代理人 佐久間 光夫 
代理人 小出 俊實 
代理人 潮崎 宗 

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