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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X19
管理番号 1247967 
審判番号 取消2011-300054 
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-01-17 
確定日 2011-11-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第1961851号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1961851号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、毛筆書き風の「木の香」の文字からなり、昭和59年10月5日に登録出願、第7類「建築または構築専用材料、その他本類に属する商品」を指定商品として、同62年6月16日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされて、さらに、平成19年8月1日に指定商品を第19類「陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,建造物組立てセット(金属製のものを除く。),土砂崩壊防止用植生板,窓口風防通話板,区画表示帯,セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス」ほか、第6類、第9類、第11類及び第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成23年2月8日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標は、第19類『しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,セメント及びその製品,木材』についての登録を取り消す。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
なお、請求人は、審判請求書の「請求の趣旨」において、「商標法第50条第1項の規定により、商標登録第1961851号についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申立てたが、平成23年2月2日提出の手続補正書により、請求の趣旨を「本件商標の指定商品中、『第19類 しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,セメント及びその製品,木材』についての登録を取消す。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」旨補正した。
1 請求の理由
本件商標は、「第19類 しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,セメント及びその製品,木材」について、過去3年間使用されていない。
よって、商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)通常使用権について
被請求人は、本件商標権についての通常使用権(範囲・全部)を許諾していると主張している。
ア しかし、本件商標は、第6類、第9類、第11類、第19類及び第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品が全部であるところ、乙各号証をみても「木材」以外の使用が存在しておらず、また、住友林業クレスト株式会社(以下「住友林業クレスト」という。)のホームページ(乙第4号証-1)をみても、木材以外の使用を明示したものはない。
第19類に限定解釈したとしても、指定商品「陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,・・・」等の使用を明示したものはない。
したがって、商品として販売していないにもかかわらず、黙示又は口頭等による許諾による商標権の通常使用権の設定はあり得ない。
イ 加えて、例えば、「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説(第17版)」の商標法第31条(通常使用権)の説明で、「通常使用権にあっては登録が対抗要件なので通常使用権の許諾をしたがその登録をしなくてもその効力はなんら影響されず、ただ、第三者に対抗できないだけである。」と記載されており、通常使用権の許諾を立証するものがなく、かつ、第三者に対抗できる要件を欠くにもかかわらず、関連会社であるから通常使用権の契約書がなくてもよいとの論理は成立しない。
したがって、本取消審判事件において、立証なき通常使用権が設定されていたとの主張は、事実関係が全く不明であり、矛盾点も存在することから、根拠なく採用されるべきものでなく、関連会社といえども、専用使用権又は通常使用権の別なく契約書を作成するのが普通であり、実施契約内容の不明なものを漠然と通常使用権が設定されていたとは認めることはできない。
(2)被請求人の使用について
仮に、前述の通常使用権が適法であったとしても、被請求人が提出した証拠に、第19類の指定商品「木材」の範ちゅうに属するものを使用している可能性があっても、「しっくい、石灰製の建築用又は構築用の専用材料、石こう製の建築用又は構築用の専用材料、セメント及びその製品」及びその類似商品の使用は証明されていない。
したがって、請求人が取消しを求めている第19類、特に、指定商品「しっくい、石灰製の建築用又は構築用の専用材料、石こう製の建築用又は構築用の専用材料、セメント及びその製品」に属する商品に、本件商標を被請求人が使用しているという事実はない。
(3)結語
以上のように、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証(枝番を含む。)を提出した。
1 通常使用権者について
被請求人の連結子会社(被請求人の株式出資比率100%)である住友林業クレストは、その代表取締役社長を被請求人の執行役員「安田敏男」が務めている(乙第1号証)。
そして、被請求人は、住友林業クレストに対し、本件商標権について通常使用権(範囲・全部)を具体的な契約書は存在しないものの、黙示の許諾を与えているものである。
2 通常使用権者による使用について
通常使用権者たる住友林業クレストは、本件審判の請求の登録前3年以内に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「木の香」を、商品「木製の床材」、「木製の窓枠」、「木製の巾木」、「木製の框」、「木製のドア」等に使用している。
これらの商品はすべて取消請求に係る第19類の指定商品「木材」の範ちゅうに属するものである。以下、使用の事実を述べる。
(1)カタログ等について
住友林業クレストは、本件商標を「彩椙」というブランド名を伴った態様で使用しており、表紙に「木の香 彩椙」と表示されたカタログを、平成20年3月10日に制作し、使用した。
当該カタログの本体は、主に上記「木製の床材」、「木製の窓枠」、「木製の巾木」、「木製の框」、「木製のドア」等の商品が実際に使用されている施工例の写真で構成され、森林や木材についてのコラムも掲載されている(乙第2号証-1)。また、当該カタログ本体の裏表紙の内側にはポケットがあって、そこにカタログ本体と同じく表紙に「木の香 彩椙」、そして「商品一覧表」と表示された冊子が差し込まれている。この冊子には、「木の香 彩椙」に係る全商品について、品番、納期、サイズ、スペック(仕様)等の情報が記載されている。また、注文を検討する際に使用される「見積り依頼シート」、発注の際に必要な「部材注文書」の書式も掲載されていて、当該ページを印刷して使用できるようになっている。これらの書式には、左上に「木の香 彩椙」と表示されている(乙第2号証-2)。
当該カタログは、住友林業クレストが、株式会社産業編集センターにその制作を依頼し、平成20年3月10日に同社より5000部の納品を受けたものである(乙第3号証)。
(2)カタログのウェブサイト上での掲載について
上記カタログは、住友林業クレストのウェブサイト上において、「商品一覧表」の部分を除いたカタログ本体が、PDFファイルの形式で2008年6月19日に作成され、閲覧できるようになっている(乙第4号証-1ないし-3)。
(3)サンプルについて
また、上記カタログの制作と共に、掲載商品の一部についてはサンプルも制作している。これは、「床材(床)」、「段板(階段段板)」、「サッシ枠(窓枠)」、「面材(建具面材)」、「巾木(巾木・廻縁)」のサンプルを1セットとしたものである。それぞれのサンプルの裏面及びこれらが収まる包装容器に「木の香 彩椙」と表示されている。当該サンプルは、顧客に商品を説明する際に使用され、必要に応じて配布される(乙第5号証)。
(4)実際の取引について
住友林業クレストの新潟営業所は、指定納材店である株式会社トーアから、株式会社森山建設が施工するモデルハウスの建築用部材として、「木の香 彩椙」に係る商品を受注し、平成22年11月26日に上記商品を製造する同社の新居浜工場宛に、「床材」、「框」、「ドア」、「巾木」の商品について発注書を作成し、部材注文書と共にFAXにて送信した(乙第6号証-1及び-2)。追加発注分として、平成22年12月2日に「窓枠」を、平成23年1月5日に「床材」を、さらに平成23年1月8日に「カウンター」を発注した(乙第7号証ないし乙第9号証)。
そして、住友林業クレストは同社の新潟営業所の扱い分として、これら部材の請求明細書を納入先である株式会社トーア宛に2011年1月31日付けで発行した(乙第10号証)。
3 結語
以上のとおり、本件商標は、取消請求に係る指定商品「木材」について、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、通常使用権者によって使用されている。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定によりその登録を取り消されるべきものではない。

第4 当審の判断
1 請求の趣旨の補正について
本件審判請求は、審判請求書の「請求の趣旨」において、その請求に係る指定商品は、本件商標の指定商品のすべてを対象としていたが、請求人は、平成23年2月2日提出の手続補正書により、請求の趣旨を補正して、取消請求に係る指定商品を「第19類 しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,セメント及びその製品,木材」と縮減している。
ところで、請求の趣旨の補正が要旨を変更するか否かは、審判請求書の「請求の趣旨」の欄の記載と手続補正書の「補正の内容」の欄の記載を対比して検討するのではなく、審判請求書ないしその添付書類を総合して、その「請求の趣旨」の欄の記載が明らかな誤記といえる場合には、その補正は要旨を変更するものではないと解される。
これを本件についてみるに、本件審判請求書の「請求の理由」の欄には、「本件商標」の項に、「指定商品 第19類:陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,建造物組立てセット(金属製のものを除く。),土砂崩壊防止用植生板,窓口風防通話板,区画表示帯,セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス」などと記載され、「取消事由」の項に、「本件商標は、『第19類 しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,セメント及びその製品,木材』について、過去3年間使用されていない。」旨記載されている。
そうすると、請求人は、本件商標の商標登録の取消しを求める指定商品を、上記「取消事由」の欄に記載された「第19類 しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,セメント及びその製品,木材」としたものと解されるものであるから、審判請求書の請求の趣旨の欄の記載は明らかな誤記といえる。そして、上記「取消事由」の欄に記載された指定商品は、上記手続補正書の「補正の内容」の欄の請求の趣旨に記載された指定商品と一致するものである。
以上によれば、本件請求の趣旨の補正は、要旨を変更するものではないと認められる。
そこで、本件商標の使用について、以下検討する。
2 認定事実
被請求人の提出に係る乙第1号証ないし乙第3号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)乙第1号証は、商標権者の「有価証券報告書」(自 平成21年4月1日 至 平成22年3月31日)の抜粋とするものであり、6ページには「関係会社の状況」(平成22年3月31日現在)の見出しの下に、住友林業クレストは、商標権者に係る連結子会社であり、商標権者による議決権の所有割合が100%であること、また、28ページには「執行役員 安田敏男 住友林業クレスト(株)社長」との各記載がされている。
(2)乙第2号証-1は、表紙及び裏表紙に「住友林業クレスト株式会社」の表示がされたカタログであり、別掲2のとおり、「木の香」と「[Ayasugi]」を二段に書し、その右側に大きく「彩椙」の文字を配した構成からなる表示(以下「使用商標」という。)が表紙、裏表紙ほか、各ページにも散見されるものである。
そして、当該カタログには、「Entrance」の見出しの下、「…椙をふんだんに使用し、贅沢に仕上げたエントランスです。」と記載され、「椙に秘められた可能性。」の見出しの下、「下地板製材品」、「間柱製材品」のほか「木に学ぶプロフェッショナリズム。」の項に「…椙の魅力を活かしながら、現代のライフスタイルに合った内装建材に仕上げました。」などと記載されている。
(3)乙第2号証-2は、上記カタログの裏表紙のポケットに差し込まれている「商品一覧表」とする冊子であり、表紙に「住友林業クレスト株式会社」と共に使用商標の表示がされいるほか、各ページにも使用商標が散見される。
そして、この冊子には、例えば、6ページに「床」の見出しの下、「材」の項に「背板積層材」、「玄関框」の見出しの下、「材」の項に「背板積層材」、7ページに「巾木」の見出しの下、「材」の項に「背板集成材」、8パージに「階段」の見出しの下、「段板」及び「桁」の項に「間柱集成材」などの記載がされている。
(4)乙第3号証は、上記カタログ(乙第2号証-1)及び冊子(乙第2号証-2)が添付された東京都在の「株式会社産業編集センター」からの住友林業クレスト宛の証明書であり、上記カタログ及び冊子について5000部制作して、平成20年3月10日に納品した旨が証明されている。
3 判断
前記2で認定した事実によれば、次のように判断することができる。
(1)通常使用権者について
商標権者の「有価証券報告書」(乙第1号証)によれば、住友林業クレストは、商標権者に係る連結子会社であり、商標権者による議決権の所有割合が100%であること、及び商標権者の執行役員である「安田敏男」が住友林業クレストの社長を兼務していることが認められ、その事実からして両会社は密接な関係にあるということができ、口頭によるか黙示的であるのかは定かでないとしても、住友林業クレストは、商標権者から本件商標の使用を許諾された者、すなわち、本件商標に係る通常使用権者の立場にある者と認めて差し支えないものである。
これに対して、請求人は、関連会社といえども、専用使用権又は通常使用権の別なく契約書を作成するのが普通であり、実施契約内容の不明なものを漠然と通常使用権が設定されていたとは認めることはできない旨主張する。
しかしながら、通常使用権の許諾は、明文の契約に限らず、黙示の契約によっても可能であり、また、商標法第50条における通常使用権者による登録商標の使用というために通常使用権の登録を要するものではない(知的財産高裁平成21年(行ケ)第10290号、平成22年2月25日判決参照)と解されるから、請求人のこの点に関する主張は、採用の限りでない。
(2)本件商標の使用について
ア 使用者
当該カタログ及び冊子(乙第2号証-1及び-2)は、住友林業クレストの作成になるものであり、そこでの使用商標の使用者は、上記(1)で認定判断した本件商標に係る通常使用権者である住友林業クレストということができる。
イ 使用商標
使用商標は、別掲2とおりの構成態様からなるところ、その「木の香」の文字は、下段の欧文字「[Ayasugi]」及び右側の顕著な「彩椙」の文字とは、視覚上、明らかに分離して看取されるものであり、かつ、「木の香」の文字とその余の文字とは、観念的なつながりもなく、その他「木の香」とその余の文字とを常に不可分一体のものとしてみなければならないような特段の事情も見いだせない。そうすると、「木の香」の文字は、それ自体が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすとみるのが自然である。
そして、「木の香」の文字は、本件商標とは、その表現手法に若干の差異を有するものであるとしても、構成文字を同じくするものであって、また「キノカ」又は「キノカオリ」の称呼及び文字どおりの「木の香り」の観念をも同じにするものであるから、本件商標と社会通念上同一の商標ということができる。
ウ 使用時期
カタログ(乙第2号証-1)及び冊子(乙第2号証-2)は、平成20年3月10日に納品(乙第3号証)されたものと認められるから、住友林業クレストは、これ以降の本件審判の請求の登録前3年以内(平成20年2月8日から同23年2月7日)に顧客に対し当該カタログ及び冊子を頒布したものと推認できる。
エ 使用商品
カタログ(乙第2号証-1)には、「下地板製材品」、「間柱製材品」及び「…椙の魅力を活かしながら、現代のライフスタイルに合った内装建材に仕上げました。」と記載されていること、また、これらの商品についての「商品一覧表」とする冊子(乙第2号証-2)には、「背板積層材」を使用した「床」、「玄関框」、「背板集成材」を使用した「巾木」及び「間柱集成材」を使用した「階段」などが記載されていることが認められるから、これらの掲載された商品は、取消請求に係る指定商品中、「木材」の範ちゅうに属する商品と認めることができる。
オ 小括
以上のアないしエによれば、本件商標の通常使用権者は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる商標を本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、取消請求に係る指定商品中、「木材」について使用をしたということができる。
そして、これら商品カタログでの使用は、商標法第2条第3項第8号でいう「商品…に関する広告、…に標章を付して…頒布」する行為に該当する。
(3)請求人の主張について
請求人は、第19類の指定商品「木材」の範ちゅうに属するものを使用している可能性があっても、請求人が取り消しを求めている第19類、特に、指定商品「しっくい、石灰製の建築用又は構築用の専用材料、石こう製の建築用又は構築用の専用材料、セメント及びその製品」及びその類似商品に属する商品に、本件商標を被請求人が使用しているという事実はない旨主張する。
しかし、商標法第50条第2項は、「前項の審判の請求があつた場合においては、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」(審決注:下線は、当審が付した。)と規定しているのであるから、二以上の指定商品又は指定役務について同条第1項の規定による商標登録の取消し審判の請求がされた場合には、被請求人は、その請求に係る指定商品又は指定役務のうち、いずれか一の指定商品又は指定役務についての使用を証明すれば、その余の指定商品又は指定役務を含めたすべての請求に係る指定商品又は指定役務について商標登録の取消しを免れることは明らかである。
そして、上記オのとおり、本件商標の通常使用権者が本件商標の使用をしたと認められる商品「木材」は、請求人が本件商標の取消しを求めた指定商品中に含まれるものである。
したがって、取消請求に係る指定商品中、「しっくい、石灰製の建築用又は構築用の専用材料、石こう製の建築用又は構築用の専用材料、セメント及びその製品」について、本件商標の使用の事実がない旨述べる請求人の上記主張は、独自解釈にすぎないというべきであるから、採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を取消請求に係る指定商品中の「木材」について、通常使用権者が使用していたことを証明したというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
1 本件商標


2 使用商標


審理終結日 2011-09-08 
結審通知日 2011-09-15 
審決日 2011-09-28 
出願番号 商願昭59-106339 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X19)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 末武 久佳
田中 亨子
登録日 1987-06-16 
登録番号 商標登録第1961851号(T1961851) 
商標の称呼 キノカ、キノカオリ 
代理人 特許業務法人 Vesta国際特許事務所 
代理人 亀川 義示 

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