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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y41
管理番号 1246345 
審判番号 取消2010-300418 
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-04-13 
確定日 2011-10-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4828667号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4828667号商標の指定役務中、「第42類 ポリエチレン反応装置のコンピュータベース制御用ソフトウェアの設計・開発,ポリエチレン反応装置のコンピュータベース制御用ソフトウェアのインストール,ポリエチレン反応装置の操作用ソフトウェアの設計・開発,ポリエチレン反応装置の操作用ソフトウェアのインストール」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4828667号商標(以下「本件商標」という。)は、「PREMIER」の欧文字を標準文字で表してなり、2003年5月5日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成15年5月22日に登録出願、第42類「ポリエチレン反応装置のコンピュータベース制御用ソフトウェアの設計・開発,ポリエチレン反応装置のコンピュータベース制御用ソフトウェアのインストール,ポリエチレン反応装置の操作用ソフトウェアの設計・開発,ポリエチレン反応装置の操作用ソフトウェアのインストール,ポリエチレンをベースとした製品の製造技術に関する情報の提供,気相流動層ポリエチレン反応装置の加工技術に関する情報の提供」及び第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同16年12月24日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成22年4月28日にされた。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、本件商標の商標登録原簿謄本及び商標公報を提出した。
1 請求の理由
商標権者は、本件審判の請求前3年以内に日本国内において本件商標を指定役務中、「第42類 ポリエチレン反応装置のコンピュータベース制御用ソフトウェアの設計・開発,ポリエチレン反応装置のコンピュータベース制御用ソフトウェアのインストール,ポリエチレン反応装置の操作用ソフトウェアの設計・開発,ポリエチレン反応装置の操作用ソフトウェアのインストール」について使用していない。よって、本件商標は商標法第50条の規定により、その登録の取消しを免れないものである。
2 弁駁の理由
(1)プレゼンテーション資料について
ア 乙第1号証は、英語の資料であり、添付された一部の訳文によっては、その内容を十分に把握することができない。一応、被請求人の主張を検討すると、一部に本件商標と同様の「PREMIER」の文字や、商標権者の名称の英語表記らしきものは見えるが、同人であることを特定するための住所の表示が欠けており、該資料の作成者が商標権者であるかは確認できない。
また、該資料中の「November 11, 2008」の表示のみによっては、当該プレゼンテーションが2008年11月11日に我が国において行われたとすることはできないし、添付の訳文に照らすと表紙においての「戦略連合会議」というものが開かれているにすぎず、そのような会議が被請求人のいう広告活動といえるものかは不明であり、その裏付けとなる事実は何ら示されていないから、該資料が本件商標の使用を証明する証拠となるということはできない。
イ 乙第3号証は、上記とは別会社を対象としたプレゼンテーション資料であり、ここには本件商標の表示とともに、商標権者の名称や「November 2008」の日付が記載されているため、これをもって我が国での本件商標の使用が証明されるというものであるが、該資料の作成が商標権者によるものか住所・名称による特定がなされておらず、プレゼンテーションというもののその実態が不明であることは、乙第1号証と同様である。
(2)本件指定役務について
乙第1号証について、被請求人は、該資料に記載の「PE(ポリエチレン)」「operations training(操作の訓練)」、「Software(ソフトウェア)」、「transitions(移行、変更)」及び「resin(樹脂)」とのことばを取り出し、総合すると本プレゼンテーションは、「ポリエチレンに関する装置に使用されるソフトウェアの設計・開発・インストール」に係るものであると主張する。
また、乙第3号証では「resin(樹脂)」との記載がないものの、上記と同じ主張をする。
上記主張は、断片的な単語を取り出して、それを総合することでひとまとまりの役務らしきものを作り出すものであるが、このような主張に十分な説得力があるということはできない。
本件指定役務は、簡単には「ソフトウェアの設計・開発」と「ソフトウェアのインストール」であるが、上記の単語には、ソフトウェアの「設計」あるいは「開発」を意味することばも、またそれを直ちに連想させることばも含まれていないものであって、この点は「インストール」についても同様である。
加えて、本件指定役務にいうソフトウェアの設計・開発・インストールは、「ポリエチレン反応装置のコンピュータベース制御用ソフトウェア」の設計・開発・インストールであり、また、「ポリエチレン反応装置の操作用ソフトウェア」の設計・開発・インストールである。
この点、被請求人は、本件プレゼンテーション資料が、「ポリエチレンに関する装置に使用されるソフトウェア」の設計・開発・インストールに係るものであるとするが、これは本件指定役務に対応していない。
(3)まとめ
以上のとおり、乙第1号証及び乙第3号証からは、これが商標権者の作成によるのか、該資料を用いた会議が我が国で開催されたのか、当該会議資料への商標の記載が本件商標の使用といえるのかといった事柄が何ら裏付けられていない。また、該資料の所々に記されたものにより、それが本件指定役務に該当するのか、そもそもそこでいう役務が独立した取引対象として提供されているのかといった事項も全く不明である。
したがって、本件商標がその指定役務について使用されていたことは証明されない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 乙第1号証は、東洋エンジニアリング株式会社(以下「東洋エンジニアリング社」という。)を対象にしたプレゼンテーション資料である。
(1)本件商標が使用されたことについて
乙第1号証には、欧文字「PREMIER」が記載されており、本件商標が使用されている(55ページないし57ページ等)。
(2)商標権者等が本件商標を使用したことについて
乙第1号証には、「Univation TECHNOLOGIES」の文字が記載されており(表紙、54ページ等)、商標権者がこれを使用してプレゼンテーションを行ったことは明らかである。
なお、表紙、54ページ等の該表記には「エルエルシー」の語句は含まれていないが、119ページに「Univation TECHNOLOGIES, LLC」の記載があり、商標権者と乙第1号証を使用してプレゼンテーションを行った主体は同一である。
(3)請求の登録前3年以内に本件商標が使用されたことについて
本プレゼンテーションは、2008年11月11日に行われており、これが本件審判の請求の登録前3年以内に行われたことは明らかである。
(4)本件商標が日本国内で使用されたことについて
本プレゼンテーションは、日本企業(Toyo Engineering Corp.東洋エンジニアリング社)を対象に行われていることから、日本国内で行われたことに疑いはない。
確かに、乙第1号証は英語で書かれているが、プレゼンテーターである商標権者は米国法人であり、英語を使用してプレゼンテーションを行うことは便宜である。他方、これを受ける東洋エンジニアリング社は、海外に多くの支店を有していることから、英語でのプレゼンテーションに特に支障はない(乙第2号証)。
(5)本件商標が取消請求に係る役務に使用されたことについて
乙第1号証には、「PE」(54ページないし56ページ等)、「operations training」(55ページ、56ページ)、「Software」(57ページ)、「transitions」(57ページ)、及び「resin」(58ページ)の語句が記載されており、それぞれの意味は、「PE」は「ポリエチレン」、「operations training」は「操作の訓練」、「Software」は「(コンピュータ)ソフトウェア」、「transitions」は「移行、変更」、及び「resin」は「樹脂」である。
そして、これらを総合すると、本プレゼンテーションは、「ポリエチレンに関する装置に使用されるソフトウェアの設計・開発・インストール」に係ることが分かる。これは、本件審判請求に係る役務に該当する。
また、本プレゼンテーションは、上記役務についての広告活動の一つと認められるので、本件商標は商標法上の「使用」がされている。
2 乙第3号証は、日本ポリエチレン株式会社(以下「日本ポリエチレン社」という。)を対象にしたプレゼンテーション資料である。
(1)本件商標が使用されたことについて
乙第3号証には、欧文字「PREMIER」が記載されており、本件商標が使用されている(60ページないし62ページ等)。
(2)商標権者等が本件商標を使用したことについて
乙第3号証には、「Univation TECHNOLOGIES」の文字が記載されており(表紙、3ページ等)、商標権者がこれを使用してプレゼンテーションを行ったことは明らかである。
なお、表紙、3ページ等の「Univation TECHNOLOGIES」の表記には「エルエルシー」の語句は含まれていないが、66ページに「Univation TECHNOLOGIES, LLC」の記載があり、商標権者と乙第3号証を使用してプレゼンテーションを行った主体は同一である。
(3)請求の登録前3年以内に本件商標が使用されたことについて
本プレゼンテーションは、2008年11月に行われており、これが本件審判の請求の登録前3年以内に行われたことは明らかである。
なお、乙第3号証の表示に当るページの日付は「2007年」となっているが、これは誤記である(その他のページが2008年となっているので、こちらが正しい表記である。)。
(4)本件商標が日本国内で使用されたことについて
本プレゼンテーションは、日本企業(Japan Polyethylene Corporation 日本ポリエチレン社)を対象に行われていることから、日本国内で行われたことに疑いはない。
(5)本件商標が取消請求に係る役務に使用されたことについて
乙第3号証には、「PE」(3ページ、59ページ、60ページ等)、「operations training」(60ページ、61ページ)、「Software」(62ページ)、及び「transitions」(62ページ)の語句が記載されており、その意味は、前記1(5)のとおりである。
そして、これらを総合すると、本プレゼンテーションは、「ポリエチレンに関する装置に使用されるソフトウェアの設計・開発・インストール」に係ることが分かる。これは、本件審判請求に係る役務に該当する。
また、本プレゼンテーションは、上記役務についての広告活動の一つと認められるので、本件商標は商標法上の「使用」がされている。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標が本件審判の請求に係る役務について、請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者により、使用されていたことは明らかである。

第4 当審の判断
1 認定事実
被請求人の提出に係る乙第1号証ないし乙第3号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は、商標権者が行ったプレゼンテーション資料(抜粋写し)及びその部分訳文である。
ア 乙第1号証の表紙には、中央に「Univation Bidding Contractor」、「Strategic Alignment Meeting」、「Toyo Engineering Corp.」、「November 11,2008」の各記載及び部分訳文に「戦略連合会議」、「東洋エンジニアリング株式会社」との記載がされている。
そして、左上には、一部図案化された「Univation TECHNOLOGIES」が記載されており、これは、各ページの右下にも記載されている。
また、各ページの左下には、「November 11, 2008」と記載されている。
イ 乙第1号証の56ページの下線がされた箇所に「PE Process」と「perations training」の記載、及び部分訳文には「ポリエチレン工程」と「操作の訓練」との記載がされている。
なお、該ページには「■ PREMIER TM(審決注:「TM」の文字は、「PREMIER」の右肩に小さく表示されている。以下同じ。) Operations Improvement Services」の記載、また、55ページにも「PREMIER TM Operations training」の記載がある。
ウ 乙第1号証の57ページの下線がされた箇所に「Software」と「Automated transitions」の記載、及び部分訳文には「ソフトウェア 自動化された移行・変更」との記載がされている。
なお、該「Software」の箇所は「■ PREMIER TM Advanced Process Control(APC+)TM Software」との一連の記載となっている。
エ 乙第1号証の58ページの下線がされた箇所に「resin」の記載、及び部分訳文には「樹脂」との記載がされている。
なお、該ページには「■ PREMIER TM Product Enhancement Services」の記載、また、59ページにも「■ PREMIER TM Technology and Performance Support」及び119ページの「Trademarks」の見出しの下に、「Univation Technologies, LLC」の記載と共に「PREMIER TM」等の記載がある。
(2)乙第2号証は、東洋エンジニアリング社について掲載するウェブページ(写し)とするものであり、「会社概要」の見出しの下に、商号を「東洋エンジニアリング株式会社(Toyo Engineering Corporation)」との記載などがされている。
また、「海外事務所」の小見出しの下、「北京、上海、ジャカルタ、ドーハ、テヘラン、モスクワ」と記載されている。
(3)乙第3号証は、商標権者が行ったプレゼンテーション資料(抜粋写し)及びその部分訳文である。
ア 乙第3号証の表紙には、中央に「Japan Polyethylene Corporation」及び「November 2007」の記載並びに部分訳文には「日本ポリエチレン株式会社」との記載がされている。
そして、左上には、一部図案化された「Univation TECHNOLOGIES」が記載されており、これは、各ページの右下にも記載されている。
また、各ページの左下には、「November 2008」と記載されている。
イ 乙第3号証の3ページの下線がされた箇所に「PE Market」と「PE Process」の記載、及び部分訳文には「ポリエチレン市場 ポリエチレン工程」との記載がされている。
ウ 乙第3号証の59ページの下線がされた箇所に「PE Process」の記載、及び部分訳文には「ポリエチレン工程」との記載がされている。
エ 乙第3号証の60ページの下線がされた箇所に「Operations training」の記載、及び部分訳文には「操作の訓練」との記載がされている。
なお、該記載箇所は「-PREMIER TM Operations Training」との一連の記載であり、また、61ページには「■ PREMIER TM Operations Improvement Services」との記載がある。
オ 乙第3号証の62ページの下線がされた箇所に「Software」と「Automated transitions」の記載、及び部分訳文には「ソフトウェア 自動化された移行・変更」との記載がされている。
なお、該「Software」の箇所は「■ PREMIER TM Advanced Process Control(APC+)TM Software」との一連の記載となっており、また、64ページには「■ PREMIER TM Product Enhancement Services」の記載、65ページにも「■ PREMIER TM Technology and Performance Support」及び66ページの「Trademarks」の見出しの下にも、「Univation Technologies, LLC」の記載と共に「PREMIER」等の記載がある。
2 判断
前記1の認定事実によれば、以下のように判断できる。
(1)本件商標の使用について
乙第1号証及び乙第3号証は、商標法第2条第3項第8号に規定する取引書類に該当するものといい得るところ、同号証に記載された「PREMIER」の欧文字は、本件商標とつづりを同じくするものであるから、それぞれの称呼及び観念において相違するものではない。
したがって、上記「PREMIER」の文字は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(2)使用者について
乙第1号証及び乙第3号証の表紙並びに各ページの右下に記載された「Univation TECHNOLOGIES」、最終ページに記載された「Univation Technologies, LLC」は、商標権者の略称ないし名称と認められる。
そうすると、上記乙各号証は、商標権者に係るプレゼンテーション資料といえるから、本件商標の使用者は商標権者といえる。
(3)使用時期について
乙第1号証は、「November 11, 2008」の記載、乙第3号証は、「November 2007」又は「November 2008」の記載から、2007年(平成19年)11月又は2008年(平成20年)11月11日と認められ、これらは本件審判の請求の登録前3年以内に該当する。
しかし、乙第1号証及び乙第3号証をもって、上記月日にプレゼンテーションが真実行われたとみるべき証拠は、ほかにない。
(4)本件商標の使用をする役務について
本件審判の請求に係る指定役務は、「第42類 ポリエチレン反応装置のコンピュータベース制御用ソフトウェアの設計・開発,ポリエチレン反応装置のコンピュータベース制御用ソフトウェアのインストール,ポリエチレン反応装置の操作用ソフトウェアの設計・開発,ポリエチレン反応装置の操作用ソフトウェアのインストール」である。
乙第1号証及び乙第3号証における「PE Process」、「Software」、「operations training」、「Automated transitions」及び「resin」の各語句は、2以上のページにわたって表示されているものであり、それぞれが「ポリエチレン工程」、「ソフトウェア」、「操作の訓練」、「自動化された移行・変更」、「樹脂」の意味を理解させるとしても、「Software」(ソフトウェア)の語が乙各号証に記載されていることをもって、直ちに取消請求に係る指定役務である「・・・ソフトウェアの設計・開発」又は「・・・ソフトウェアのインストール」を具体的に示すものとは到底いえず、まして、かかる「Software」が「ポリエチレン反応装置のコンピュータベース制御用」又は「ポリエチレン反応装置の操作用」のものであるとみるべき具体的な記述も見いだせない。
そのほか、乙第1号証及び乙第3号証の記載を総合的にみても、取消請求に係る指定役務のいずれかに該当するものとは認められない。
してみれば、乙第1号証の55ページないし59ページ及び119ページ並びに乙第3号証の60ページないし62ページ、64ページないし66ページに、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる「PREMIER」の記載があるとしても、これを取消請求に係る指定役務のいずれかについて使用をしていたということはできない。
これに対して、被請求人は、乙第1号証及び乙第3号証に記載の「PE」は「ポリエチレン」、「operations training」は「操作の訓練」、「Software」は「(コンピュータ)ソフトウェア」、「transitions」は「移行、変更」及び「resin」は「樹脂」であるとし、これらを総合すると、本プレゼンテーションは、「ポリエチレンに関する装置に使用されるソフトウェアの設計・開発・インストール」に係ることが分かると述べて、これは取消請求に係る指定役務に該当する旨主張する。
確かに、乙第1号証及び乙第3号証に各語句がそれぞれ記載されていることは認められるが、これらの語句を総合して把握したとしても、上記のとおり、取消請求に係る指定役務のいずれかを具体的に示すとみるような合理的な理由やそれを裏付ける証左はない。
加えて、当審は、被請求人に対して、乙第1号証及び乙第3号証が取消請求に係る指定役務のいずれについての使用を主張するものかについて、平成23年2月28日付け審尋により釈明を求めたが、被請求人は何ら釈明するところがない。
そうすると、乙第1号証及び乙第3号証には、取消請求に係る指定役務のいずれかについて本件商標の使用をしたとはいえない。
したがって、被請求人の上記主張は、採用することができない。
(5)日本国内における使用について
乙第1号証及び乙第3号証のプレゼンテーション資料は、いずれも英文のみからなるものであり、前者には、東洋エンジニアリング社と認められる「Toyo Engineering Corp.」の記載があり、後者には、日本ポリエチレン社と推認される「Japan Polyethylene Corporation」の記載が認められる。
これについて、被請求人は、同人は米国の法人であるから、乙第1号証について、海外に支店を有する東洋エンジニアリング社に対して英語でプレゼンテーションをすることに支障はない旨主張する。
確かに、外国の法人が日本国内における我が国の法人に対して、英語をもって取引に当たる場合があることを否定するものではないが、乙第1号証のプレゼンテーション資料に記載された東洋エンジニアリング社は、北京、ドーハ等の外国にも事務所を有している(乙第2号証)のであるから、同号証は、外国においてプレゼンテーションされたものとも理解されるものである。
そして、乙第1号証のプレゼンテーション資料が日本国内で東洋エンジニアリング社に配布又は展示されたことを具体的に裏付ける証左はない。
したがって、乙第1号証をもって、商標権者が東洋エンジニアリング社に対して日本国内においてプレゼンテーションをしたものと認めることはできない。
また、被請求人は、乙第3号証について、日本企業である日本ポリエチレン社に対してプレゼンテーションをしたものであるから日本国内において使用した旨主張する。
しかし、通常、プレゼンテーション資料の表紙には、その内容等を簡潔にまとめた標題などが表記されるものであるが、乙第3号証の表紙は、左上の商標権者の略称と認められる記載を除き、「Japan Polyethylene Corporation」と「November 2007」の記載のほか、プレゼンテーションの内容を表す標題等の記載が認められないものであり、プレゼンテーションをする相手の名称と日付のみを大きく表記することは極めて不自然なものである。
加えて、乙第3号証の2枚目以降には、「November 2008」と記載されているところ、被請求人は、表紙の「November 2007」は、誤記と主張するが、そもそも、上記のとおり、乙第3号証の表紙が不自然なものである上、プレゼンテーション資料の表紙のみを誤記することも不自然といわざるを得ない。
そして、乙第3号証のプレゼンテーション資料が日本国内で日本ポリエチレン社に配布又は展示されたことを具体的に裏付ける証左はない。
したがって、乙第3号証をもって、商標権者が日本国内においてプレゼンテーションをしたものと認めることはできない。
よって、被請求人の上記各主張は、いずれも採用することができない。
(6)小括
以上を総合して考慮すれば、商標権者が商標法第2条第3項第8号に規定する取引書類に本件商標と社会通念上同一の商標を付したとしても、日本国内において取消請求に係る指定役務のいずれかについて本件商標を使用したということはできない。
なお、当審は、平成23年2月28日付け審尋により、被請求人に対して、乙第1号証ないし乙第3号証のほかに、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消請求に係る指定役務のいずれかについて本件商標の使用を証明する証拠の提出を求めたが、被請求人は、新たな証拠を提出するところがない。
3 まとめ
以上によれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定役務のいずれかについての本件商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定役務中、「結論掲記の役務」について取り消すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-05-19 
結審通知日 2011-05-23 
審決日 2011-06-03 
出願番号 商願2003-41944(T2003-41944) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y41)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加園 英明 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 末武 久佳
酒井 福造
登録日 2004-12-24 
登録番号 商標登録第4828667号(T4828667) 
商標の称呼 プリミアー、プレミア 
代理人 山本 秀策 
代理人 森下 夏樹 
代理人 小谷 武 
代理人 木村 吉宏 
代理人 安村 高明 

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