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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X0305
管理番号 1241565 
異議申立番号 異議2009-900172 
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2011-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2009-05-20 
確定日 2011-07-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第5205165号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5205165号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第5205165号商標(以下「本件商標」という。)は、「華やぐカンパリグレープフルーツ」の文字を標準文字で表してなり、平成19年6月8日に登録出願、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,つや出し剤,グレープフルーツの香りを有するせっけん類,グレープフルーツの香りを有する歯磨き,グレープフルーツの香りを有する化粧品,グレープフルーツの香りを有する芳香剤(身体用のものを除く。),グレープフルーツの香りを有するその他の香料類」及び第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,はえ取り紙,防虫紙」を指定商品として、平成20年12月26日に登録査定、同21年2月20日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第702484号商標(以下「引用商標」という。)は、「CAMPARI」の欧文字を横書きしてなり、昭和39年11月13日に登録出願、第28類「酒類」を指定商品として、同41年3月25日に設定登録され、その後、4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、平成18年6月21日に指定商品を第32類「ビール」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とする書換登録がされているものである。
そして、当該商標権には、第29類「清涼飲料,果実飲料」を指定商品とする防護標章登録第1号が平成2年5月28日に設定登録され、同13年3月9日に防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録がされているものである。

3 登録異議の申立ての理由(要旨)
申立人は、本件商標が、以下の(1)ないし(3)に該当するものであるから、商標法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものであると主張している。
(1)商標法第4条第1項第8号該当性
本件商標は、申立人「ダビデ カンパリ-ミラノ ソシエタ ペル アチオニ」(以下「カンパリ社」という。)の著名な略称である「カンパリ」を含むことが明らかであり、かつ、同社の承諾を得ていないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性
本件商標は、カンパリ社の著名登録商標「CAMPARI」の称呼と同一である「カンパリ」を含むことから、両商標は類似と判断される。したがって、本件商標をその指定商品に使用した場合は、その出所について混同するおそれがあると考えられ、少なくとも、カンパリ社と経済的または組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性
本願商標と引用商標が類似すること、及び引用商標がカンパリ社の業務に係るリキュール酒を表示するものとして日本国内または外国において著名であることは明らかであり、本件商標をその指定商品に使用する行為は、その著名商標に化体した信用や名声を毀損・破壊するとともに、同商標の出所表示機能を希釈化するものであるから、この出願は、信義則に反する不正の目的でなされた出願といえ、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 本件商標に対する取消理由
当審において、登録異議申立に基づき、平成21年12月25日付けで商標権者に対して通知した取消理由は、要旨以下のとおりである。
(1)申立人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 申立人(Davide Campari-Mirano.S.p.A.)は、イタリアのミラノ市でカフェを開いていたガスパーレ・カンパリが、1860年に開発し販売した「ビッテル・アルーソ・ドランディア」(オランダ風苦酒)と称する商品(リキュール)に由来し、その後、該商品は、息子のダビィデ・カンパリによって「CAMPARI(カンパリ)」と名前を変えられ、現在は申立人が製造元となっている。申立人は「CAMPARI(カンパリ)」と略称され、ヴェルモットのチンザノ、ウオッカのSKYYなどを傘下におさめる酒造業界の一大グループとなっている。また、「カンパリ(CAMPARI)」と称する上記商品は、鮮やかな赤い色と苦みを特徴とし、カクテルのベースとして使われることが多く、「カンパリソーダ」、「カンパリオレンジ」、「カンパリグレープフルーツ」等がカクテルとして知られている(甲第6及び第8号証)。
イ 申立人を中核とするカンパリグループは、世界では第6位のグローバルな飲料メーカーであり、イタリア及びブラジルにおいてはトップメーカー、米国、ドイツ及びスイスにおいて大手メーカーとなっており、3つの主要事業領域(スピリッツ、ワイン、ソフトドリンク)において40銘柄を超える自社ブランドを保有し、その商品は世界190カ国以上で販売され、2007年には売上高が957.5百万ユーロ(約1,340億円)に達している(甲第4及び第5号証)。
ウ 我が国においては、サントリー株式会社が輸入代理店として引用商標を付した商品(リキュール等の洋酒)の輸入・販売を行っており、その売上高は、千ケース(9L換算)単位で2000年が108、2001年及び2002年が120、2003年及び2004年が101、2005年が100、2006年が92、2007年が77となっている(甲第6及び第7号証)。そして、上記商品については、1990年代より独特な手法を用いて宣伝広告され、2003年12月に六本木駅において「カンパリレッドパッション」として壁面、柱等に大々的な広告を行ったのを初め、その後も現在に至るまで、青山、六本木、西麻布等のビルの屋外広告、大阪駅及び東京駅での目立つ箇所における広告を行っているほか、月刊誌「LEON」とのタイアップ広告(2005年)、「VOGUE」、「ELLE」、「Numero」、「FIGARO」、「NIKITA」、「GQ」、「Pen」等のファッション/ライフスタイル誌における広告(2007-2008年)が行われ、2006年には全国展開の飲食店チェーン店等でプロモーション活動が行われている。これらはいずれも赤色を基調とした目立つ態様で行われている(甲第7号証)。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、引用商標を構成する「CAMPARI」の語及びその片仮名表記である「カンパリ」は、本件商標の登録出願時には既に、申立人の業務に係るリキュール等の洋酒について使用する商標として取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきであり、そして、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。
(3)他方、本件商標は、上記1のとおりの構成からなるところ、「華やぐ」の文字部分と「カンパリグレープフルーツ」の文字部分とは、字種を異にすることから、視覚上分離して看取されるばかりでなく、常に全体をもって一体不可分にのみ認識されるべき格別の理由は見出し難いものである。加えて、その構成中の「華やぐ」の文字は、「はなやかになる。はなばなしくなる。時めき栄える。」等の意味を有し、しばしば他の語を形容するために用いられる語であり、また、「グレープフルーツ」の文字は、「ミカン科ザボン類の大型柑橘類」を指称する語であって、本件商標の指定商品中の「グレープフルーツの香りを有するせっけん類,グレープフルーツの香りを有する歯磨き,グレープフルーツの香りを有する化粧品,グレープフルーツの香りを有する芳香剤(身体用のものを除く。),グレープフルーツの香りを有するその他の香料類」に見られるように、商品の品質を表示するものとしても認識し理解されるものである。
そうすると、本件商標は、「カンパリ」の文字部分が看者の注意を強く惹く要部というべきである。
(4)本件商標は、上記で述べたとおり、「カンパリ」の文字部分を要部とし、単に「カンパリ」の称呼をも生ずるものであるから、引用商標とは称呼を共通にする類似の商標である。そして、引用商標は周知著名であって、また、独創的な語であることなどを総合勘案すると、本件商標権者は、引用商標の存在を知らなかったものとは考え難く、引用商標の周知著名性を熟知した上で、引用商標に化体した信用や名声を利用し、ひいては不正の利益を得る目的、他人である申立人に損害を加える目的等の不正の目的をもって本件商標を登録出願し登録を受けたものといわざるを得ない。よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
(5)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。

5 商標権者の意見
(1)引用商標の周知性について
申立人の引用する商標の指定商品「酒類、清涼飲料等」の業務分野における周知性の認否はさておき、引用商標の指定商品とは類似しない本件商標の指定商品「第3類 せっけん類,歯磨き,化粧品等」「第5類 薬剤等」の業務分野において一般需要者、取引者の間で周知であることの主張及び証拠となるものは何も示されていない。したがって、本件商標に接する需要者等が、直ちに申立人の商標であることを想起するとはいいえないことから、本件商標をその指定商品に使用しても、申立人、又は同人と関係のある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがない。
(2)不正の目的の有無について
上記したとおり、引用商標は、申立人の業務に関する指定商品「酒類、清涼飲料」においてはいざ知らず、本件商標の指定商品について、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識され、周知・著名性を獲得するに至っていたとする証拠がなく、また、申立人の業務と本件商標の指定商品とは、目的、用途、業種、流通系統、需要者層等を異にするものであって、関連性が乏しいものである。さらにまた、申立人が多角経営等により本件商標の指定商品等の異業種に参入していることをうかがわせるような証拠、事実も発見できない。
かかる事情の下において、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標権者の業務に係るものと混同を生じるようなことはないというべきであり、本件指定商品が申立人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
以上のように、各参考資料によって、商標権者が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものであるということはできない。
(3)本件商標と引用商標との類否
本件商標は、「華やぐカンパリグレープフルーツ」と横書きしてなるものであり、一般に親しまれ、かつ発音しやすい語からなるものであるから、全体を一連に「ハナヤグカンパリグレープフルーツ」と称呼されるとみるのが自然であり、単なる「カンパリ」の称呼を有する引用商標とは称呼において類似しないものであり、また、外観及び観念においても類似しないことは明らかである。

6 当審の判断
(1)本件商標についてした商標法第4条第1項第19号に該当するとした前記4の取消理由通知は妥当なものであり、これに対する商標権者の意見は、以下の理由により採用することができない。
ア 商標権者は、本件商標の指定商品の業務分野において、引用商標が日本国内又は外国における需要者の間に広く認識され、周知・著名性を獲得するに至っているとはいえず、本件商標をその指定商品に使用しても、申立人又は同人と関係のある者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれはない旨主張する。
しかし、商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。) 」と規定するところ、同号は、もともと只乗り(フリーライド)のみならず、稀釈化(ダイリューション)や汚染(ポリューション)の防止をも目的とする規定であり、そこでは、例えば、同第15号が出所の誤認混同のおそれを要件として規定しているのとは異なり、これを要件として規定することはしていない。また、商標法第4条第1項第19号は、問題とされる商標が外国において周知であるときは、日本国内における周知性は問わないものとしている。これらのことからすれば、同号の要件としての周知性は、誤認混同のおそれの防止を直接の目的とするものではなく、同号によって守られるに値する商標としての最低限の資格を設定するものにすぎないというべきであり、そうであるとすれば、当該商標が周知となっている商品と出願商標の指定商品との関係は、直接には問題にはならず、ただ、両商品の関係が、他の要素(例えば、出願人の方に、周知商標の存否に関係なく、出願商標を指定商品に使用する意思や必要があったか否か、など)ともからんで、不正の目的の有無を判断するための一要素となるにすぎないというべきである(東京高等裁判所平成14年(行ケ)第97号 平成14年10月8日判決参照)。
そして、前記4の取消理由のとおり、申立人を中核とするカンパリグループは、世界では第6位のグローバルな飲料メーカーであって、イタリアにおいてはトップメーカーであることからすれば、引用商標「CAMPARI」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、日本国内又は少なくてもイタリア国において、商品「リキュール」等の需要者の間に広く認識されていた商標というべきである。
したがって、引用商標が「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」に当たらないとする商標権者の上記主張は、採用することができない。
イ 商標権者は、本件商標をその指定商品に使用しても、申立人又は同人と関係のある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがないから、商標権者が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものではない旨主張する。
しかし、商標法第4条第1項第19号は、同第15号のように「商品の出所について混同を生ずるおそれ」を要件とするものではないこと前記アのとおりであり、引用商標「カンパリ」は、創始者の名前に由来する語であって、我が国には見られない独創的な語であることからすれば、本件商標中の「カンパリ」あるいは「カンパリグレープフルーツ」の部分が、申立人の業務に係るリキュールの名称である引用商標あるいはそのリキュールを使用したカクテルの名称と、偶然に一致したものとは到底認め難いものであり、さらに、商標権者が、出願2007-57915及び2007-57916の審査の過程において提出した参考資料1(カンパリ:フリー百科事典「ウイキペディア」)に、「現在の製造元はダヴィデ・カンパリ社。」との記載、及び「カンパリを使ったカクテル」の見出しの下に、「カンパリグレープフルーツ」との記載があり、同じく参考資料2に、「『カンパリ』は鮮紅色が美しい、イタリアを代表するリキュール。・・・1860年、イタリア・ミラノのガスパーレ・カンパリ氏によって生み出された『カンパリ』は、いまや世界160カ国以上の国々で愛飲されている。」と記載されていることからすれば、商標権者は、引用商標が申立人の業務に係るリキュールを表す商標として広く知られているものであること及びそのリキュールを使用したカクテルの一つが「カンパリグレープフルーツ」と称されていることを十分に認識していたというべきであること等を勘案すると、引用商標が有する信用又は名声に便乗して利益を得ようとの目的をもって、本件商標の登録出願をしたと推認せざるを得ないから、本件商標は、商標法第4条第19号にいう「不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。・・・)をもって使用をするもの」に該当するというべきである。
したがって、商標権者の上記主張は、採用することができない。
ウ 商標権者は、本件商標「華やぐカンパリグレープフルーツ」は、一般に親しまれ、かつ発音しやすい語からなるもので、全体を一連に称呼されるとみるのが自然であり、引用商標とは類似しない旨主張する。
しかし、前記4の取消理由のとおり、「華やぐ」の文字は、「はなやかになる。」等の意味を有する他の語を形容するために用いられる語であり、また、「グレープフルーツ」の文字は、「ミカン科ザボン類の大形柑橘類」を指称する語であって、例えば、本件商標の指定商品中の「グレープフルーツの香りを有するせっけん類」等に見られるように、商品の品質を表すものとしても理解されるものであることからすれば、その構成中の「カンパリ」の文字部分が独立して認識されるとみるのが相当であり、一連の称呼以外に「カンパリ」の称呼をも生ずるものであるから、本件商標と引用商標とは称呼を共通にする類似の商標というべきであり、商標権者の上記主張は、採用することができない。
(2)結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2011-05-19 
出願番号 商願2007-57923(T2007-57923) 
審決分類 T 1 651・ 222- Z (X0305)
最終処分 取消  
前審関与審査官 箕輪 秀人 
特許庁審判長 野口美代子
特許庁審判官 内山 進
小川きみえ
登録日 2009-02-20 
登録番号 商標登録第5205165号(T5205165) 
権利者 エステー株式会社
商標の称呼 ハナヤグカンパリグレープフルーツ、ハナヤグ、カンパリグレープフルーツ、カンパリ、グレープフルーツ 
代理人 山村 大介 
代理人 葦原 エミ 
代理人 松田 省躬 
代理人 津国 肇 

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