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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 X03
審判 一部申立て  登録を維持 X03
管理番号 1235042 
異議申立番号 異議2010-900186 
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2011-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2010-06-28 
確定日 2011-03-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第5311613号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5311613号商標の指定商品中、登録異議の申立てに係る指定商品についての商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5311613号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成21年8月21日に登録出願、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」を指定商品として、同22年3月10日に登録査定、同月26日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
1 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録第4364425号商標(以下「引用商標」という。)は、「AROMESSENCE」の欧文字を標準文字で表してなり、平成10年11月17日に登録出願、第3類「クレンザー,化粧せっけん,シャンプー,ハンドクリーナー,便器洗浄剤,水せっけん,その他のせっけん類,植物性天然香料,動物性天然香料,調合香料,精油からなる食品香料,化粧品」、第5類「寄生性皮膚疾患用剤,殺菌消毒剤,鎮痒剤,てんか粉,浴剤,その他の外皮用薬剤,その他の薬剤」及び第16類「洋紙,その他の紙類,衛生手ふき,型紙,紙製テーブルクロス,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製のぼり,紙製旗,紙製ハンカチ,紙製ブラインド,紙製幼児用おしめ,裁縫用チャコ,荷札,印刷物,文房具類」を指定商品として、同12年3月3日に設定登録され、その後、同22年3月9日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
2 申立ての理由の要点
(1)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 取引の実情
申立人「ラボラトワール デクレオール」は、フランスの化粧品メーカーであり(甲3)、資生堂社の子会社である(甲4の1、甲4の2)。
申立人に係る化粧品は、フェースケア用化粧品、アロマエッセンス用化粧品であり、後者は、引用商標である「AROMESSENCE」商標の下に販売されている(甲3)。
これらの化粧品は、トリートメント用の基礎化粧品であり、我が国において「Decleor」(第5文字目の「e」の文字の上部にアクサン記号が付されている。以下、アクサン記号が付されている場合とない場合があるが、ない場合のみ単に「アクサン記号なし」と括弧書きする。)のビューティーサロンで用いられている。
「Decleor」のビューティーサロンは、資生堂の美容室が全国に7店舗、百貨店に開設したサロンが2店舗、ホテルに開設したサロンが全国に21店舗、Decleorの「AROMESSENCE」等の化粧品を取扱うサロンが、全国に64店舗あり、「Decleor」のトリートメントが受けられるスパが国内に7店舗ある(甲3)。
YAHOO! JAPANの日本語の頁で「Decleor」(アクサン記号なし)で検索すると約32万8000件ヒットし(甲5)、「AROMESSENCE」で検索すると約1万4500件ヒットする(甲6)。
そして、申立人のハウスマーク「Decleor」を付し、引用商標を付したトリートメント用化粧品(甲3、甲6)は、「アロマエッセンス」の称呼の下に、販売され(甲7ないし甲17)、多くのファッション関連の雑誌で「アロマエッセンス」の称呼の下に告知、広告、紹介されている(甲18の1ないし甲18の61)。
また、引用商標を付した化粧品の日本における売上高は、2005年から2009年まで1億9400万円に上る(甲19)。
以上のとおり、申立人は、フランスのスキンケア化粧品、トリートメント用化粧品のメーカーとして、我が国の需要者の間に周知であり、「Decleor」は、申立人がその商品に使用するハウスマークとして我が国においても周知であり、引用商標は、申立人のアロマトリートメント用の化粧品に使用する商標として、我が国の需要者の間において周知である。
イ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、その上段の2重の円からなる図形と下段の「aroma ess.」(やや太字で語頭の「a」と「e」の文字がやや大きい。以下同じ。)とは明白に可分であり、また、「aroma ess.」とその両側に配した木の葉状の図形とも可分である。
「aroma ess.」において、「.」は、ある単語を途中で省略したことを示す記号であることは、我が国において広く知られているから、「ess.」が「essence」の省略形であることは、需要者の容易に想着することである。
そして、「essence」は、「本質、(植物・薬物などから抽出した精(粋)、精油、エキス」等を意味する英語であるが(甲20)、「本質的なもの植物から抽出した香気の高い精油」等の意味の英語に由来する外来語「エッセンス」として(甲21)、日常生活で広く使用されている。
また、本件商標の指定商品中、特に、化粧品や香料類において、植物から抽出したエッセンスを配合することは広く行なわれている。
よって、本件商標中の「ess.」が「essence」の省略形であることは、本件商標に接する需要者の容易に知るところである。
よって、本件商標は、「aroma ess.」 に対応して、「アロマエッセンス」の称呼が生じ、「香りの(植物などから抽出した)精」の観念が生ずる。
一方、引用商標は、その構成に応じて「アロムエッセンス」の称呼が生ずる。
本件商標から生ずる称呼「アロマエッセンス」と引用商標から生ずる称呼「アロムエッセンス」とは、「ア」「ロ」「エ」「ッ」「セ」「ン」「ス」の7音節を共通にし、わずかに第3音節「ム」と「マ」との相違にすぎないが、「ム」と「マ」とは五十音の同行の音であり、子音「m」を共通にし、母音「u」と「a」とにおいてのみ相違するにすぎない。
よって、本件商標は、引用商標と称呼において類似する。
同時に引用商標は、「アロマエッセンス」と称呼されているから、引用商標からは「アロマエッセンス」の称呼も生ずる。したがって、本件商標は、引用商標と称呼において同一又は類似する。
そして、引用商標は、申立人のトリートメント用化粧品に使用する商標であり、「AROMESSENCE」が「aroma essence」の変形であることは容易に需要者の知るところであるから、引用商標からは「香りの(植物などから抽出した)精」の観念が生じる。したがって、本件商標は、引用商標と観念において同一又は類似する。
よって、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念において類似するから、本件商標は、引用商標と類似する商標である。
本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品中、第3類「クレンザー,化粧せっけん,シャンプー,ハンドクリーナー,便器洗浄剤,水せっけん,その他のせっけん類,植物性天然香料,動物性天然香料,調合香料,精油からなる食品香料,化粧品」と類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 周知、著名性について
申立人は、化粧品、特に、トリートメント用化粧品のメーカーとして、我が国においても需要者の間で周知であり、また、「Decleor」は、申立人のハウスマークとして、我が国の需要者の間で周知であり、さらに、引用商標も、申立人のトリートメント用化粧品の商標として、我が国の需要者の間で周知である。
イ 本件商標について
本件商標の構成中の「aroma ess.」の文字部分は、「aroma essence」の省略形であると需要者に認識されるものであり、本件商標からは「アロマエッセンス」の称呼が生じ、「香りの(植物などから抽出した)精」の観念が生じ、引用商標から生ずる「アロマエッセンス」の称呼及び「香りの(植物などから抽出した)精」の観念と類似するから、本件商標は、引用商標と紛らわしい。
ウ 出所の混同のおそれ
以上のとおりであるから、本件商標をその指定商品中、化粧品、とりわけ、トリートメント用化粧品に使用したときは、本件商標を使用した商品は、申立人の製造販売する化粧品と誤認混同されるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に違反してされたものであるから、その登録は取り消されるべきものである。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標
本件商標は、別掲のとおり、上段中央部に太字の二重円内にデサイン化した植物の葉と幾何図形を組み合わせた図形を配し、その下段の中央に「aroma ess.」(語頭の「a」と「e」の文字は他の文字よりやや大きく表されている。以下同じ。)の文字とピリオド(以下、これを「本件文字部分」という。)を配し、その左右に植物の葉状の図形を配した構成からなるものである。
そして、本件商標の構成中の各図形部分と本件文字部分とを常に一体のものとしてのみ認識、把握しなければならないとする格別な事由も見当たらないから、本件文字部分のみをもってしても自他商品の出所識別標識としての機能を果たし得るとみるのが相当である。
しかして、本件文字部分は、同じ書体をもって全体として極めてまとまりよく一体的に表されているものであり、その構成中の後半部分の「ess」が「横書きの文の末尾に付する点。終止符。」(「広辞苑第六版」)を表す「.」(ピリオド)を伴って表されているとしても、この「ess.」が親しまれた意味を有するものとして本件商標の指定商品に係る需要者の間に広く知られているとする格別な事由は見当たらないものである。
そして、「.」(ピリオド)は、通常の商取引において、これを殊更取り立てて称呼しない場合が多いことからして、本件商標は、本件文字部分全体から「アロマイイエスエス」又は「アロマエス」の称呼を生じ、特定の観念を有しないものとみるのが自然である。
(2)引用商標
引用商標は、前記第2の1のとおり、「AROMESSENCE」の文字からなるところ、該文字は親しまれた特定の観念を有するものとは認められないものであり、このような造語に接する需要者は、我が国において慣れ親しんだ英語風の読みをもって称呼されるとみるのが相当である。
そうすると、引用商標は、これを英語風に読んだ「アロムエッセンス」の称呼を生じるとみるのが相当であり、また、後述のとおり、「AROMESSENCE」の文字に係る取引の実情からすると、「アロマエッセンス」の称呼をも生ずるということができる。
(3)本件商標と引用商標との類否
ア 本件商標から生ずる「アロマイイエスエス」又は「アロマエス」の各称呼と引用商標から生ずる「アロムエッセンス」又は「アロマエッセンス」の各称呼について、以下検討する。
先ず、本件商標から生ずる「アロマイイエスエス」の称呼と引用商標から生ずる「アロマエッセンス」の称呼についてみるに、両者は、前半の「アロマ」の各音を共通にするとしても、それぞれの後半部において、前者の「イイエスエス」の音と後者の「エッセンス」の音において明らかな差異を有し、音感、音調を異にするものであるから、十分に区別し得るものである。
次に、本件商標から生ずる「アロマイイエスエス」の称呼と引用商標から生ずる「アロムエッセンス」の称呼についてみるに、両者は、上記よりも更に、その後半部の「マイイエスエス」の音と「ムエッセンス」の音において、明らかな差異を有するものであるから、十分に区別し得るものである。
さらに、本件商標から生ずる「アロマエス」の称呼と引用商標から生ずる「アロムエッセンス」又は「アロマエッセンス」の各称呼についてみるに、両者は、その音構成及び音数において明らかな差異を有するものであるから、明らかに区別し得るものである。
イ 本件商標と引用商標とは、前記(1)及び(2)のとおりの構成からなるものであるから、全体の外観はもとより文字部分の外観においても明らかな差異があり、また、観念においては、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。その他、本件商標と引用商標とを類似するものとすべき特段の取引の実情は見いだせない。
(4)小括
以上によれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の著名性について
申立人の主張及び同人の提出に係る甲第3号証ないし甲第19号証(枝番を含む。)によれば、以下の事実が認められる。
ア 申立人は、1974年に誕生したフランスの化粧品メーカーであり、現在では株式会社資生堂の連結子会社となっており、我が国における申立人に係る美容室は、30店舗、同じく同人の取扱いに係る引用商標を付した化粧品を取り扱う美容室等は、70店舗である(甲3、甲4の1、甲4の2、甲18の51等)。
イ 申立人に係る化粧品(容器、包装箱)には、「DECLEOR」(第5文字目の「E」の文字の上部に木の葉状の図形が付されている。以下、これを省略して表す。)の文字が大きく表され、「AROMESSENCE」などの標章が該「DECLEOR」の文字より小さく表されているが、「DECLEOR」の文字を省略した「AROMESSENCE」の文字のみの使用は認められない(甲3ないし甲18)。
ウ 「DECLEOR」の文字及び「AROMESSENCE」の文字を付した化粧品は、各種の通信販売のウェブサイトにおいて取り扱われており、2008年から2010年までの間に発行された雑誌「美的」、「VOCE」、「セラピスト」などでも「デクレオール」の文字と共に紹介又は宣伝広告されている(甲6ないし甲18)。このうち、Amazon.cp.jp(アマゾン)において取り扱われている商品「【デクレオール】アロマエッセンス オリエンタルローズ」及び「デクレオール アロマエッセンスホワイト」の売上ランキングは、それぞれ「21969位」、「90087位」(甲14ないし甲16)であり、「デクレオール」の文字で検索されたウエブページ(甲17)には、「デクレオール アロマエッセンス オリエンタルローズ」、「デクレオール アロマエッセンスホワイト」、「デクレオール アロマエッセンス」のほか、「デクレオール アロマスパトニック オードソワン」、「デクレオール アロマホワイト トリートメント ローション」、「デクレオール フローラルローション」などの「アロマエッセンス」の文字を使用しない商品も認められる。そして、該ウェブページの右側には、「最近3日間のみんなのチェック」の見出しの下、「人気キーワードランキング」、「人気コスメランキング」、「人気ブランドランキング」の各小見出しの下に、それぞれの順位が掲載されているが、「アロマエッセンス」又は「AROMESSENCE」(以下、これらをまとめて「使用商標」という。)の各文字は掲載されていない。
エ 「AROMESSENCE 過去5年間の売上高」と題する資料(甲19)によれば、引用商標を付した化粧品の我が国における売上高は、2005年から2009年までに1億9400万円とのことであるが、他の化粧品メーカーの取扱いに係る化粧品全体の売上高に占める割合などは不明である。
以上の認定事実を総合すると、「DECLEOR」若しくは「デクレオール」の各文字及び使用商標が化粧品に使用されていることは認められるが、使用商標は、「DECLEOR」の文字と共に使用されており、これが独立して使用されている例はほとんど見当たらず、また、我が国における化粧品全体の売上高に占める使用商標を使用した化粧品の売上高なども不明であるから、申立人の提出に係る証拠によっては、使用商標は、我が国の化粧品に係る取引者、需要者の間に広く認識されているものと認めるには不充分なものといわざるを得ない。
したがって、使用商標は、本件商標の登録出願時及び査定時において、我が国の化粧品に係る取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。
(2)混同のおそれについて
使用商標は、前記(1)のとおり、申立人の業務に係る化粧品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていると認めることができないものであり、かつ、前記1と同様の理由により、本件商標と使用商標とは、印象の全く異なる別異の商標であるから、本件商標は、これをその指定商品中、登録異議の申立てに係る「せっけん類,化粧品,香料類」のいずれに使用しても、これに接する取引者、需要者が申立人の使用商標を連想、想起するとはいえないものであって、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、登録異議の申立てに係る指定商品について、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
本件商標


異議決定日 2011-02-23 
出願番号 商願2009-64140(T2009-64140) 
審決分類 T 1 652・ 262- Y (X03)
T 1 652・ 271- Y (X03)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大塚 順子 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 小畑 恵一
末武 久佳
登録日 2010-03-26 
登録番号 商標登録第5311613号(T5311613) 
権利者 株式会社 ポーラ
商標の称呼 イイエスエス、アロマイイエスエス、エッセ、アロマエッセ 
代理人 佐藤 雅巳 
代理人 古木 睦美 

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