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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 X09 審判 全部申立て 登録を維持 X09 |
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管理番号 | 1228581 |
異議申立番号 | 異議2010-900121 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2010-05-07 |
確定日 | 2010-12-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5299229号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5299229号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第第5299229号商標(以下「本件商標」という。)は、「AIX」の欧文字を標準文字で表してなり、平成21年9月14日に登録出願、第9類「電子計算機その他の電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,電子計算機用プログラム」を指定商品として、同22年1月21日に登録査定、同年2月5日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する国際登録第1018558号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおり、「A|X」の欧文字と縦線との構成からなり、2009年4月22日にスイス連邦においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、第9類「Scientific, nautical, surveying, photographic, cinematographic, optical, weighing, measuring, signalling, checking (supervision), life-saving and teaching apparatus and instruments; apparatus and instruments for conducting, switching, transforming, accumulating, regulating or controlling electricity; apparatus for recording, transmission or reproduction of sound or images; magnetic data carriers, recording discs; automatic vending machines and mechanisms for coin-operated apparatus; cash registers, calculating machines, data processing equipment and computers; fire extinguishing apparatus.」他、第3類、第12類、第14類、第16類、第18類、第24類、第25類、第26類、第28類及び第35類に属する日本国において指定された商品及び役務を指定商品及び指定役務として、2009年(平成21年)7月3日に国際商標登録出願されたものである。 第3 異議申立て理由の要点 1 引用商標「A|X」の周知・著名性 (1)申立人は、イタリアの世界的に著名なデザイナー、ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)(以下「アルマーニ」という。)のデザインに係る商品の取り扱い及びそれに関する知的財産権の管理を行うスイス法人である。 引用商標は、世界的に著名なデザイナー、アルマーニのデザインに係る商品、同人のカジュアルライン「A|X ARMANI EXCHANGE」ブランドの商品を表示するものとして、世界中の需要者・取引者の間で周知・著名になっていて、その周知・著名性は本件商標の登録出願日(平成21年9月14日)は勿論、現在も維持されている。 「A|X ARMANI EXCHANGE」は、1991年にヤング向けカジュアルラインの1ブランドとして発表されたものであり、引用商標は、その店舗、広告、下げ札、商品などに長年に亘って使用されている(甲第3号証ないし甲第10号証)。 とりわけ、引用商標「A|X」をそのまま、あるいはデザイン化して使用した商品は展開当初から多数販売していて(甲第4号証ないし甲第10号証)、すでに1999年発行の別冊ジェイ・ジェイ(甲第7号証)では「…有名なA|X。…ロゴ入りのTシャツをおみやげとして買っていく日本人は、もはや定番となってしまうほどの人気」と紹介され、現在でも「A|Xロゴでお馴染み」と称されてロゴ入りTシャツが紹介されているなど(甲第10号証)、同ブランドの人気商品として長年に亘り広く知られている。 ア アルマーニ及びそのデザインに係る商品等の周知著名性について アルマーニは、本件商標の登録出願時において、世界的に著名なデザイナーとして評価され、2007年11月にオープンした「アルマーニ銀座タワー」はじめ、そのクリエイティブ活動が、ファッション分野のみならず、家具、携帯電機機器、家庭電子機器、レストラン、ホテル等、ライフスタイル商品・サービス全般に亘ることも広く知られている。 (ア)アルマーニは、イタリアの大手百貨店のバイヤー、セルッティ・グループのメンズウェアのデザイナー等を経た後、1974年にジョルジオ アルマーニ社を設立して、最初のメンズ及びレディスウェアのコレクションを発表した(甲第11号証及び甲第12号証)。 (イ)その後、アンダーウェア、スイムウェア、アクセサリー等を次々と発表し、1979年の「GIORGIO ARMANI COLLEZIONI」(ジョルジオ アルマーニ コレツィオーニ)、1981年の「EMPORIO ARMANI」(エンポリオ アルマーニ)、「ARMANI JEANS」(アルマーニ ジーンズ)、引用商標を使用した1991年の「A|X ARMANI EXCHANGE」等、数々のラインを発表している(甲第12号証)。 (ウ) 1989年にはレストラン「エンポリオ アルマーニ エキスプレス レストラン」をロンドンにオープンし、2000年には、家具、食器、照明、リネン等のホームインテリアコレクションとして「ARMANI CASA」(アルマーニ カーザ)を発表した外、2001年には安藤忠雄デザインの劇場(ギャラリー)「ARMANI TEATRO」(アルマーニ テアトロ)をミラノで公開し、2002年にデザート類のコレクション「ARMANI DOLCI」(アルマーニ ドルチ)を発表している(甲第12号証)。 (エ)2007年11月には、東京の銀座に、ウェア・コレクションの他、ホームインテリアコレクション、スパ(リラクゼーション)、レストラン、ワイン・ラウンジ等、ライフスタイルをトータル提案する複合ブランドストアをオープンし、アルマーニのファッション分野以外のクリエイティブ活動も広く紹介されている(甲第13号証及び甲第14号証)。 (オ)2008年には、ドバイに「アルマーニホテル&リゾート」を建設し、同施設は2010年にはミラノでも竣工予定となっている(甲第15号証)。 (カ)アルマーニのデザインに係る商品等の事業を手がけるジョルジオ アルマーニ グループは、上述の幅広いブランドのもと、ファッション及びライフスタイル商品のデザイン、流通、小売等を手がけており、2008年1月時点での小売ネットワークは46カ国に広がり、ジョルジオ アルマーニ81店舗、エンポリオ アルマーニ171店舗、A|X アルマーニ エクスチェンジ175店舗等、全世界での店舗総数は500店にのぼる(甲第15号証)。 (キ)本件商標の指定商品の分野については、2007年に韓国のサムスン電子と提携して携帯電機機器及び家庭電子機器の共同開発に着手し(甲第16号証及び甲第17号証)、高級液晶テレビをミラノ国際家具見本市で発表し(甲第17号証)、「GIORGIO ARMANI」ブランドの携帯電話を欧州等で発売して注目され(甲第18号証ないし甲第20号証)、2008年には「EMPORIO ARMANI」ブランドの携帯電話を欧州全域で発売している(甲第18号証)。2009年には、日本で、「EMPORIO ARMANI」ブランドの携帯電話とアップル社製iPhone(アイフォーン)用ケース「ARMANI for iPhone」を発売し(甲第21号証ないし甲第24号証)、イタリア、英国、ドイツ、オランダ、スペイン、ロシア、中国、UAEで発売予定のアルマーニデザインのスマートフォンも発表して話題となっている(甲第25号証)。 イ 「A|X ARMANI EXCHANGE」ブランドの周知著名性について 「A|X ARMANI EXCHANGE」ブランドは、1991年にヤング向けブランドとして発表されたものであり、本件商標の登録出願時においてアルマーニのデザインに係るカジュアルラインの1ブランドとして世界中の需要者・取引者の間に広く知られていて、その周知・著名性は、現在まで継続している。 (ア)1991年、米国とアジアでメンズ及びレディスのコレクションを発表し、ニューヨークのソーホーに、第一号店をオープンして話題となり、その後40店舗あまりを次々にオープンした(甲第12号証及び甲第26号証)。 (イ)第一号店のオープン時の商品のラベルは「アルマーニ ジーンズ」であったが、1995年には全商品が「A|X ARMANI EXCHANGE」に変更され(甲第27号証の2)、現在まで継続している。 (ウ)1991年の第一号店オープン後、世界的に店舗展開し(甲第28号証ないし甲第40号証)、とりわけ2005年に世界戦略を強化した後は(甲第27号証の24)、急速にビジネスを拡大し、2008年1月には全世界で175店舗となり(甲第14号証)、新市場として日本、英国、南米、中東などに進出したことなどから、卸売りも含めた2009年1月期の売上高は約5億5000万ドルに至っている(甲第27号証の32)。 (エ)日本でのショップ展開は2007年からであるが、1991年のニューヨークの第一号店オープン直後から、アルマーニのデザインに係るヤング向けカジュアルラインとして日本でも注目され話題となり、繊研新聞(甲第27号証(枝番号を含む。))などの業界紙はもちろんのこと、NNAアジア経済情報(甲第41号証(枝番号を含む。))や、1992年6月24日付け毎日新聞(甲第42号証)、「AERA 1992年12月15日号」(甲第43号証)などの一般紙及び雑誌でも、海外での展開や商品が紹介されていて、日本の取引者及び需要者に継続しで情報が伝えられている。 (オ)ニューヨーク、ハワイ、ロスアンジェルス等、日本人観光客の多い都市にある海外の店舗は、多数の海外旅行ガイドブックでも紹介されていて(甲第44号証ないし甲第50号証)、1997年1月発行「個人旅行39 ’97-’98/ニューヨーク」では、「人気商品のA/Xシャツは$19.5?…」(甲第44号証)、1999年3月10日発行「JJ HAWAII BOOK・3」では、「アルマーニのカジュアルラインとして有名なA|X」、「ロゴ入りのTシャツをおみやげとして買っていく日本人はもはや定番となってしまうほどの人気」(甲第45号証)等、1990年代からすでに日本人にとって有名な人気ブランドとして紹介されている。 2007年発行の「地球の歩き方 ’07-’08/ロスアンジェルス」及び2008年発行の「地球の歩き方 ’07-’08/ハワイI オアフ島&ネイバーアイランド」では、ショッピングエリアの紹介記事で「主要ブランドブティック一覧」に掲載され(甲第48号証及び甲第49号証)、さらに、2009年発行「ワールドガイド/ハワイ」でも「レディスもメンズもファッショナブルなカジュアルが人気をよんでいる。」(甲第50号証)等の記事と共に紹介されていて、今日まで、日本人に人気のある主要ブランドとしての地位を維持していることは明らかである。 (カ)実際に、かかる人気を受け、日本でのショップ展開以前から、海外ブランドの輸入品を販売するセレクトショップなどの専門店で商品が販売されていて(甲第27号証の4、14及び16)、着用した消費者も一般紙に掲載されている(甲第51号証)。 (キ)2007年には日本でのショップ展開を始め、3月に千葉・流山おおたかの森ショッピングセンター店(386平米)とららぽーと横浜店(340平米)をオープンし、9月には、ロンドンと同時に渋谷にフラッグシップショップ(1階と地下1階の合計507平米)をオープンしている(甲第27号証の24、甲第52号証及び甲第53号証他)。その後、2008年5月にららぽーとTOKYO-BAY店(330平米、千葉県)(甲第27号証の30及び甲第54号証)、同年10月に越谷レイクタウン店(埼玉県)(甲第27号証の31)をオープンした他、2009年夏には軽井沢に期間限定ショップをオープンし(甲第27号証の33)、さらに2010年4月にデックス東京ビーチ店シーサイドモール(甲第55号証)、同年6月に大阪ビックステップ店(100坪)など大型店舗を次々とオープンし(甲第56号証)、着実にビジネスを拡大している。 (ク)2009年にエイズ予防キャンペーンを展開し(甲第57号証の1)、ファッションイベント「ODAIBA COLLECTION 2009-2010 A/W」(2009年9月22日実施)に参加した他(甲第58号証)、公式モバイルホームページを開設してプロモーションや店舗の情報等を発信するなど(甲第5号証及び甲第59号証(枝番号を含む。))、積極的な広告・プロモーション活動を実施している。 さらに、2010年3月には人気ブランドの一つとして神戸コレクションにも参加して話題となった(甲第57号証の2)。 ウ 引用商標の周知著名性 引用商標は、上記「A|X ARMANI EXCHANGE」ブランドの商標として、長年に亘り世界各国で共通して使用されていて(甲第3号証から甲第10号証、甲第26号証ないし甲第59号証(枝番号を含む。))、本件商標の登録出願時以前に、著名なアルマーニのデザインに係る商品、同人のカジュアルライン「A|X ARMANI EXCHANGE」ブランドの商品を表示するものとして世界的に広く知られ、その周知・著名性は現在まで維持されている。 引用商標は、「ARMANI EXCHANGE」の文字とともに使用される場合もあるが、店舗の看板や店内のサイン、下げ札、商品など、引用商標のみで使用される場合が多く(甲第3号証ないし甲第10号証)、このことは、多くの記事で、「A|X アルマーニ エクスチェンジ」、「A|X ARMANI EXCHANGE」あるいは「A|X」又は「A/X」と記載されていることからも明らかである。 特に、引用商標「A|X」をそのまま、あるいはデザイン化してワンポイントに使用した商品が継続して販売され、人気を博していることは上述したとおりである(甲第3号証ないし甲第10号証)。 エ 審決例及び判決例 アルマーニ及びそのデザインに係る商品に使用する商標については、無効2000-35382号、平成19年(行ケ)第10142号はじめ、多数の審決、判例で、著名性が認定されている。 引用商標についても、平成10年審判第35281号において、アルマーニ、「ARMANI」の文字を含む商標、「ARMANI EXCHANGE」商標とともに、「本件商標の登録時(平成9年6月20日)はもとよりその登録出願時(平成4年10月19日)において、当該標章『A|X』は、前記『ARMANI EXCHANG』商品について使用される標章として、取引者・需要者間で広く認識されるに至っていたものと推認することができる」と認定されている(甲第60号証)。 2 本件商標の指定商品の取引の実情 (1)需要者 本件商標の指定商品第9類「電子計算機その他の電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,電子計算機用プログラム」は、パーソナルコンピューター、スマートフォン、それに用いられるソフトウェア、テレビ、携帯電話などの商品を含んでいる。こうした商品は、電子応用機械器具、電気通信機械器具ではあるものの、10代の学生から高齢者まで、広く一般消費者を需要者に含むものであって、かかる一般消費者が該商品を購入する際に払う注意力は、専門家が払う注意力ほど高いものではない。 (2)ブランドコラボレーションモデル携帯の人気 近年、ファッションブランドを中心とした、ブランドコラボレーションモデルの携帯電話が多数発売され人気となっている。 ア 2007年に、上記「GIORGIO ARMANI」他、バッグ類等の人気ブランド「PRADA」(プラダ)の携帯が欧州等の海外で発売され話題となった(甲第61号証)。 イ 2008年には、NTTドコモ株式会社から同「PRADA」と人気ファッション系セレクトショップ「UNITED ARROWS」(ユナイテッド・アローズ)、KDDI株式会社(au)からバッグ等の人気ブランド「COACH」(コーチ)、ソフトバンク株式会社からジュエリー等の人気ブランド「Tiffany」(ティファニー)のモデルが発売され、所謂「ブランド携帯」がトレンドとなっている。その他海外では時計の人気ブランド「TAG Heuer」(タグ・ホイヤー)、国内では家具ブランドの「amadana」(アマダナ)やインテリアブランドの「Francfranc」(フラン・フラン)のコラボレーション・モデルが企画されるなど、アパレルだけでなく多くの人気ブランドが携帯電話市場に進出している(甲第62号証)。 ウ 2009年も、上記のとおり、「EMPORIO ARMANI」ブランドの携帯電話とアップル社製iPhone用ケース「ARMANI FOR iPhone」が日本で発売され、「もはや珍しくないファッションブランドとのコラボケータイ・‥」(甲第22号証)、「アルマーニ携帯vsプラダ携帯 - ブランド携帯電話戦争 in東京」(甲第63号証)などと紹介され、ブランド携帯が継続して注目され人気となった。 エ さらに、NTTドコモ株式会社は、2010年夏モデルとしてイタリアのファッションブランド「EMIGLIO PUCCI」やバッグ等で有名な「kate spade new york」等の5つのブランドコラボレーションモデルを販売していて(甲第64号証)、ファッションブランドを中心としたブランドコラボレーションモデルという商品傾向は今日まで継続している。 (3)商標の表示 本件商標の指定商品中、パーソナルコンピューター、スマートフォン、それに用いられるソフトウェア、テレビ、携帯電話など、一般消費者を主たる需要者とする商品は、通常商品の外観に商標が付されていて、店頭で陳列された商品の確認や、インターネット上のショッピングサイトでの購入にあたって、一般消費者が商品に付された商標を見て出所を確認する場合が多い。 とりわけ、上記のブランドコラボレーションモデル携帯電話など、ブランドとのコラボレーション企画商品は、その外観に商標が明確に表示されていて(甲第20号証ないし甲第25号証)、出所識別にあたって、商標の外観は重要な要素であるといえる。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について 本号の「混同を生ずるおそれ」の有無は、最高裁平成10年(行ヒ)第85号に判示されている。 以下、本件について詳述する。 (1)本件商標と引用商標 上記のとおり、本件商標は「A」、「I」、「X」の文字を横書きした標準文字商標であり、「A」、「|」、「X」の文字からなる引用商標と外観上極めて相紛らわしい。本件商標と、引用商標とは、中間の文字「I」(アルファベット)及び「|」(バーティカルライン)で相違するが、「I」は、書体やデザインによっては、バーティカルライン「|」と同様に直線で表現される場合があり、他方、引用商標中のバーティカルライン「|」も商品デザインや記事中において、「A」及び「X」と同じ高さ、同じ太さで表現される場合も多いことから(甲第7号証、甲第9号証及び甲第10号証など)、両商標は実際の取引において、同一もしくは極めて近似した外観で表現される場合がある。 さらに、本件商標の指定商品に含まれる携帯電話やスマートフォンなどの携帯機器等では、必然的に小さな文字で商標が商品に使用されるため(甲第20号証ないし甲第25号証)、「I」と「|」の相違は見誤りやすい。 称呼についてみると、本件商標「AIX」は、「エイアイエックス」あるいは「アイエックス」、「アイックス」の称呼が生じ、他方、引用商標からは「エイエックス」の称呼が生じる。両者の称呼は、全体的に語調語感が似ていて、とくに「アイエックス」と「エイエックス」とは、語頭の「ア」、「エ」の1音で相違するが、両者は類似する母音であるため、両称呼は全体として区別し難い。 加えて、本件商標は引用商標と外観が近似するため、本件商標中の「I」が「|」と見間違われた場合は引用商標と同様に「エイエックス」と発音され、著名なアルマーニのデザインに係る商品、同人のカジュアルライン「A|X ARMANI EXCHANGE」ブランドの商品という引用商標の観念が想起される蓋然性が極めて高い。 してみれば、本件商標と引用商標は、外観上近似し、称呼も類似する上、同一の称呼及び観念が生じる蓋然性があり、両者の類似性は高いといえる。 (2)商品の関連性 我が国で、本件商標のファッションブランドを中心としたブランドコラボレーションモデルの携帯電話がトレンドとなっていて、アルマーニ自身も、携帯電機機器や家庭電子機器の共同開発をし、ライフスタイル全般のクリエイティブ活動を行っていることが広く知られているのは上述したとおりである。 してみれば、本件商標の指定商品、とりわけ、パーソナルコンピューター、スマートフォン、それに用いられるソフトウェア、テレビ、携帯電話などの本件商標の指定商品と引用商標が長年使用されてきたファッション関連商品とは、関連性が高いといえる。 (3)小括 本件商標は、引用商標と外観が近似する類似性の商い商標であり、本件商標の指定商品と引用商標の使用商品とは関連性が高い。 加えて、(a)引用商標がファッション関連商品について長年使用され、本件商標の登録出願時及び査定時において、著名なアルマーニのデザインに係る「A|X ARMANI EXCHANGE」ブランドの商品を表示するものとして広く知られていること、(b)一般消費者が商品購入の際に払う注意力が専門家ほど高くはないこと、(c)ブランドとのコラボレーション企画商品は商品の外観が重要な要素であることなど、上記詳述した取引の実情を考慮すれば、本件商標がその指定商品に使用される場合、それに接した取引者及び需要者が、その商品を申立人又はその関連会社の取り扱い業務に係る商品であるかのように認識し、その商品の出所について混同を生じるおそれがあるというべきである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるをえない。 4 商標法第8条第1項該当性について 本件商標は、上記詳述したように、引用商標と類似する商標であって、引用商標の指定商品「apparatus for recording,transmission or reproduction of sound or images; magnetic data carriers,recording discs;data processing equipment and computers」と同一の商品を含む類似する商品に使用する商標である。 さらに、引用商標の周知著名性やその他、上述した指定商品の取引の実情を考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、引用商標が付された商品と出所混同を生じるおそれがある。 ところで、本件商標は、引用商標(甲第2号証)(先願権発生日:2009(平成21)年4月22日)の後願であるにも係わらず、引用商標の登録前である平成22年1月21日付で登録査定され、平成22年2月5日に設定登録されている。 よって、本件商標は、商標法第8条第1項に違反して登録されたものに相違ない。 5 結語 叙上に徴し、本件商標は、商標法第4条第1項第15号又は同法第8条第1項に違反して登録されたものであるから、取り消されるべきである。 第4 当審の判断 1 商標法第8条第1項について (1)本件商標について 本件商標は、前記第1のとおり、「AIX」の欧文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成文字全体に相応して、「エイアイエックス」の称呼が生じ、格別の観念を生じないものである。 (2)引用商標について 他方、引用商標は、別掲のとおり、欧文字の「A」、細い縦線「|」(バーティカルライン)、欧文字の「X」からなるものであって、全体としては、欧文字の「A」と細い縦線(バーティカルライン)及び欧文字の「X」の組み合わせてなる商標と認識・把握され、商標の自他商品・役務識別標識としての称呼及び観念は直ちには生じないというのが相当である。 (3)本件商標と引用商標との類否について 本件商標の構成と引用商標の構成は、前記第1及び別掲のとおりであるところ、本件商標は明らかに欧文字3文字の「A」「I」「X」よりなるものであるのに対し、引用商標は、欧文字2文字の「A」と「X」の隙間程度の間に細い縦線「|」(バーティカルライン)を配してなり、極めて特徴のある構成からなる商標として認識、把握し、取引に当たるというべきである。 そうとすれば、両者は、「I」の欧文字と「|」(バーティカルライン)との字形において明らかな差異を有するものであるから、外観上容易に区別し得るものである。 また、前記(1)のとおり、本件商標は、「エーアイエックス」の称呼を生じるものであるが、引用商標よりは、前記(2)のとおり、自他商品・役務識別標識としての称呼は直ちには生じないものであるから、両者は称呼上比較できない。 さらに、観念については、いずれも特定の観念の生じないものであるから、両者は比較することができないものである。 その他、本件商標と引用商標とを類似の商標とみるべき理由は見出せない。 してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。 したがって、本件商標は、商標法第8条第1項に該当しないというべきである。 2 商標法第4条第1項第15号について 申立人の提出に係る甲第3号証ないし甲第59号証及び甲第61号証ないし甲第64号証(枝番を含む。)よりすると、1991年、ニューヨークで「アルマーニ エクスチェンジ(A/X)一号店」がオープンし(甲第26号証、甲第43号証)、その後、我が国以外の各国で、主として、被服等のファッション商品に「ARMANI EXCHANGE」の文字とともに「A|X アルマーニ エクスチェンジ」、「A|X ARMANI EXCHANGE」あるいは「A|X」又は「A/X」と表示されて使用され、相当程度知られるに至っていたと認められるが、我が国においては、2007年3月に「A|X アルマーニ エクスチェンジ」のショップを上陸させ(甲第52号証、甲第53号証)、その後、数店をオープンさせたに過ぎず、売上等の販売実績も明らかでないから、我が国においては、引用商標「A|X」が本件商標の登録出願日及び登録査定時において、直ちに周知著名なものであったとは認め難いものである。 そして、携帯電話に関して、人気ファッションブランドとのコラボレーションの事実があるとしても(甲第61号証ないし甲第64号証)、本件の指定商品である「電気通信機械器具」と被服等のファッション関連商品とは、生産・販売部門、用途等が相違するものであって、関連性があるとは認め難いものである。 加えて、前記1のとおり、本件商標と引用商標とは、十分に区別し得る別異の商標というべきものであってその印象を全く異にするものである。 そうとすれば、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして、引用商標を連想又は想起させるとはいえないものであって、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。 3 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第8条第1項及び同法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 (引用商標) |
異議決定日 | 2010-11-19 |
出願番号 | 商願2009-70256(T2009-70256) |
審決分類 |
T
1
651・
4-
Y
(X09)
T 1 651・ 271- Y (X09) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 薩摩 純一 |
特許庁審判長 |
鈴木 修 |
特許庁審判官 |
前山 るり子 内山 進 |
登録日 | 2010-02-05 |
登録番号 | 商標登録第5299229号(T5299229) |
権利者 | インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション |
商標の称呼 | エーアイエックス、アイクス、エイアイエックス |
代理人 | 寺田 花子 |
代理人 | 勝見 元博 |
代理人 | 太佐 種一 |
代理人 | 上野 剛史 |
代理人 | 川本 真由美 |
代理人 | 鮫島 睦 |
代理人 | 田中 光雄 |
代理人 | 市位 嘉宏 |