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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
審判199831328 審決 商標
取消200530788 審決 商標
審判199830905 審決 商標
取消2008300167 審決 商標
審判199830904 審決 商標

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審決分類 審判 全部取消 商53条の2正当な権利者以外の代理人又は代表者による登録の取消し 無効としない X12
管理番号 1208284 
審判番号 取消2008-301387 
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2008-10-30 
確定日 2009-11-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第5111437号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5111437号商標(以下「本件商標」という。)は、「NANKANG」の欧文字と「ナンカン」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、平成19年3月22に登録出願され、第12類「自動車並びにその部品及び附属品,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」を指定商品として、同20年2月15日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、「商標法第53条の2の規定により本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第35号証(枝番号を含む。なお、枝番号の全てを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。
1 取消事由
本件商標の登録は、商標法第53条の2の規定により取り消されるべきものである。
2 取消原因
(1)請求人
請求人は、パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者(以下、「商標所有者」という。)である(甲第3号証の1ないし8、甲第4号証ないし甲第11号証)。
たとえば、請求人は、台湾(中華民国)における商標登録第00093867号(以下「台湾登録商標」という。)を受け(甲第3号証の1のNo.1及び甲第4号証の1)、この商標権の存続期間は延長されている(甲第4号証の2)。
また請求人は、台湾(中華民国)における、台湾登録商標についての連合商標第00792873号(以下「台湾連合商標」という。)を受けた(甲第3号証の1のNo.5及び甲第5号証)。
上記した台湾登録に加え、台湾その他の世界貿易機関の加盟国、パリ条約の同盟国若しくは商標法条約の締約国においても、本件審判請求人は、商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有している(甲第3号証の1ないし8、甲第4号証ないし甲第11号証)。
したがって、請求人は、上述したように、パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者に該当する。
(2)商標の標章及び商品・役務の類似について
本件商標は、パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務を指定商品又は指定役務とするものである(甲第1号証ないし甲第28号証)。
以下に、例を挙げる。
ア 本件商標と台湾登録商標との対比
本件商標は、下段部「ナンカン」、上段部「NANKANG」とに分離でき、これら双方が識別力を有する部分となる。また、識別力を有する部分である上段部と下段部とから、いずれも「ナンカン」の称呼を生じる(甲第1号証)。
一方、請求人が有する台湾登録商標(甲第4号証の1及び甲第4号証の2)に係る商標の標章は、「南港\Nankang」(2段横書き黒色標章で、上段に「南港」、下段に「Nankang」(語頭のみ大文字、残りの文字は小文字表記のアルファベッドで、丸みのある書体)を配置した標章)である。
この台湾登録商標は、上段部と下段部とに分離でき、これら双方が識別部となる。この識別力を有する部分のうち、下段部「Nankang」から「ナンカン」の称呼が生じる。
そのため、本件商標の標章と台湾登録商標は、ともに称呼が「ナンカン」である点で共通するから、両者は称呼において類似する。
また、本件商標は、識別力を有する部分である上段部が「NANKANG」である。「NANKANG」は、請求人の名称(英語表記)「NANKANG RUBBER TIRE CORPORATION,LTD.」の一部であって、日本国内において、請求人の商品であるタイヤとともに、この出所である請求人の名称の一部が雑誌やインターネットのホームページ等に広告宣伝されていること(甲第24号証ないし甲第28号証)や、請求人は商品の販売実績があること(甲第12号証ないし甲第28号証)などから、需要者は、上記識別力を有する部分「NANKANG」(甲第1号証)から、請求人又はその商品を想起する(甲第3号証ないし甲第28号証)。
一方、台湾登録商標では、識別力を有する部分である下段部は「Nankang」である。上述のように、請求人の商品であるタイヤとともにその出所である請求人の名称の一部「NANKANG」が、日本国内において、雑誌やインターネットのホームページ等に広告宣伝されていること(甲第24号証ないし甲第28号証)や、請求人は商品の販売実績があること(甲第12号証ないし甲第28号証)などから、「NANNKANG」と同一称呼の識別力を有する部分「Nankang」から、請求人またはその商品を想起する(甲第3号証ないし甲第28号証)。
したがって、本件商標と、台湾登録商標とは、商標所有者またはその商品を想起させるから、互いの観念が共通する。そのため、両者は、観念において類似する。
このように本件商標と台湾登録商標とは、称呼および観念が類似するので、総合的にみて、両標章は出所の混同のおそれがあり、そのため両標章は互いに類似する。
また、本件商標の指定商品は、第12類「自動車並びにその部品及び附属品,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」である。
一方、台湾登録商標の指定商品(和訳)は、登録証(甲第4号証の1)によれば、第70類「他類(第70類でない類)に属しないプラスチックおよびゴムの製品(タイヤのゴムトレッド及びタイヤなど)」であり、この商標権の登録の存続期間の延長を認めた書面(甲第4号証の2)によれば、その指定商品(和訳)は「タイヤ、チューブ、チューブレスタイヤ、穿刺修理用パッチ、トレッドベルト、トレッドリング、タイヤバルブ」である。
本件商標の指定商品「自動車並びにその部品及び附属品,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」と、請求人の上記権利(台湾登録商標)に係る商品・役務「他類(70類でない類)に属しないプラスチックおよびゴムの製品(タイヤのゴムトレッド及びタイヤなど)(甲第4号証の1)または「タイヤ、チューブ、チューブレスタイヤ、穿刺修理用パッチ、トレッドベルト、トレッドリング、タイヤバルブ」(甲第4号証の2)とは、商品の生産部門、需要者の範囲、販売部門等が一致し、又は完成品と部品の関係にある。
したがって、本件商標は、台湾登録商標に係る商品若しくは役務「他類(70類でない類)に属しないプラスチックおよびゴムの製品(タイヤのゴムトレッド及びタイヤなど)」(甲第4号証の1)若しくは「タイヤ、チューブ、チューブレスタイヤ、穿刺修理用パッチ、トレッドベルト、トレッドリング、タイヤバルブ」(甲第4号証の2)、又はこれらに類似する商品若しくは役務を、指定商品又は指定役務「自動車並びにその部品及び附属品,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」とするものである。
イ 本件商標と台湾連合商標との対比
本件商標は、上記アで述べたように、識別部である上段部と下段部とから、いずれも「ナンカン」の称呼を生じる(甲第1号証)。
一方、上記台湾登録商標の連合商標「NANKANG」(一段横書き黒色標章)の商標は、「NANKANG」全体が識別力を有する部分であり、「ナンカン」の称呼を生じる(甲第3号証の1のNo.5及び甲第5号証)。
そのため、本件商標と請求人が有する権利に係る商標は、ともに称呼が「ナンカン」である点で共通するので、両者は称呼において類似する。
また、本件商標は、上記アで述べたように、識別力を有する部分である上段部「NANKANG」から、需要者は、請求人またはの商品を想起する(甲第1号証、甲第3号証ないし甲第28号証)。
一方、請求人が有する権利(台湾連合商標)に係る商標では、識別力を有する部分は商標全体「NANKANG」である。この商標と同一称呼「ナンカン」を生ずる「NANKANG」は、上記アで述べたように、日本国内において、請求人の商品とともにの出所として広告宣伝されていること(甲第24号証ないし甲第28号証)や、商品の販売実績があること(甲第12号証ないし甲第28号証)などから、需要者は、上記識別力を有する部分「NANKANG」から請求人またはの商品を想起する(甲第3号証ないし甲第28号証)。
したがって、本件商標と、請求人が有する権利(台湾連合商標)に係る商標とは、請求人またはの商品を想起させるから、互いの観念が類似している。したがって、両者は、観念において類似する。
以上のことから、本件商標と、請求人が有する権利(台湾連合商標)に係る商標とは、称呼および観念が類似するので、総合的にみて、両標章は出所の混同のおそれがあり、そのため両者は互いに類似する。
また、本件商標の指定商品は、第12類「自動車並びにの部品及び附属品,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」であるのに対し、請求人が有する台湾連合商標の指定商品(和訳)は、登録証(甲第5号証)によれば第12類「タイヤ、チューブ、チューブレスタイヤ、穿刺修理用パッチ、トレッドベルト、トレッドリング、タイヤバルブ」であるから、両者は、商品の生産部門、需要者の範囲、販売部門等が一致し、又は完成品と部品の関係にある。
したがって、本件商標は、請求人の上記権利(台湾連合商標)に係る商品若しくは役務「タイヤ、チューブ、チューブレスタイヤ、穿刺修理用パッチ、トレッドベルト、トレッドリング、タイヤバルブ」(甲第5号証)、又はこれらに類似する商品若しくは役務を、指定商品又は指定役務「自動車並びにの部品及び附属品,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」とするものである。
ウ 上記した台湾登録商標、台湾連合商標に加え、台湾の他の世界貿易機関の加盟国、パリ条約の同盟国若しくは商標法条約の締約国における商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)(甲第3号証の1ないし8、甲第4号証ないし甲第11号証)についてみても、本件については、「登録商標が、パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務を指定商品又は指定役務とするもの」を満たしている(甲第1号証ないし甲第28号証)。
(3)代理人等の出願
請求人は、日本国内において、遅くとも2006年から、流通業者(販売業者)である本件商標権の商標権者を介し、請求人の商品を販売しており、その販売は2008年10月においても継続して行われている(甲第12号証ないし甲第28号証)。
したがって、請求人は、本件商標権の商標権者を介し、本件商標の商標登録出願の出願日である平成19年(2007年)3月22日時点において、あるいは、その出願日前一年以内に、請求人の商品を販売していた(甲第1号証、甲第2号証、甲第12号証ないし甲第28号証)。このように本件商標権者は請求人の代理人として日本国内において、請求人の商品を販売していた事実があるのだから、本件商標権者は、請求人の「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者」に該当する。
また、本件商標の商標登録出願は、請求人の承諾を得ないで行われた。
以上のことから、本件商標の商標登録出願は、請求人の承諾を得ないで、その代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたものである(甲第1号証、甲第2号証、第12号証ないし甲第28号証)。
(4)正当な理由
本件商標の商標登録出願は、正当な理由がないのに、本件商標権者によってなされたものである(甲第1号証、甲第2号証)。
(5)なお、本審判の請求時点において、本件商標権の設定登録の日である平成20年(2008年)2月15日から5年を経過していない。
(6)以上のことから、登録商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品もしくは役務を指定商品又は指定役務とするものであり、かつ、その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願のに日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたものであるから、本件商標登録は取り消されるべきである。
3 答弁に対する弁駁の要点
(1)商標法第53条の2の「代理人」は、法律上の代理権限があるもののみと解するべきではなく、広く海外における輸出元であるパリ条約の同盟国等において商標権に相当する商標に関する権利を有する者(以下、「外国商標所有者」という。)の商品を輸入し、販売し、広告する者が含まれるのであり、また「代理人」は、外国商標所有者との間に契約に基づく継続的な法的関係があるか、又は少なくとも、外国商標所有者との間に継続的な取引から慣行的な信頼関係が形成され、外国商標所有者の販売体系に組み込まれている者であることを要する。
商標法第53条の2の規定は、外国商標所有者と何らかの信頼関係にある者がその信頼関係に反して、外国商標所有者の商標を、自らの名で登録を行うことを禁止するパリ条約の要請から制定された規定であることに鑑みると、本条の適用については、代理権を授与された者のみならず、外国商標所有者と被請求人との間に契約或いは慣行上、信頼関係を形成する特別な関係にあるものをすべて包含して解釈されるべきだからである。
上記した「代理人」の意味を前提とすると、「当該商品取引に関して、パリ条約の同盟国等において商標権に相当する商標に関する権利を有する者と、代理店、特約店、総代理店にように何らかの継続的な契約関係の存在等により代理権が授与された者」は「代理人」に該当することは当然であるが、外国・商標所有者と被請求人との間に慣行上、信頼関係を形成する特別な関係がある場合にも、被請求人は単なる得意先または顧客ではなく「代理人」に該当する。
(2)被請求人は、甲第1号証、甲第2号証、甲第12号証ないし甲第28号証によって、請求人の商品の販売に関し、請求人と被請求人との間に継続的な契約関係による代理権が存在していた代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者に該当すると認めることは到底できない、と主張している。
しかしながら、甲第12号証ないし甲第23号証からみて、外国商標所有者である請求人は、遅くとも出願日2007年3月22日の前である2006年3月01日(甲第13号証)から、当該請求人の商品を被請求人に販売しており、その後も、2006年6月30日(甲第14号証)、2006年9月5日(甲第15号証)、2006年10月12日(甲第16号証)、2006年10月17日(甲第17号証)、2006年11月28日(甲第18号証)、台湾歴96年(西暦2007年)1月5日(甲第19号証)、07年(西暦2007年の略である)1月8日(甲第20号証)、台湾歴96年(西暦2007年)1月9日(甲第21号証)、台湾歴96年(西暦2007年)1月16日(甲第22号証)、台湾歴96年(西暦2007年)3月27日(甲第23号証)にみられるように、請求人は継続的に該請求人の商品(タイヤ等)を被請求人に販売し、その販売に際して、商品あるいは商品の取引書類等に、請求人所有の商標と同一又は類似の商標を付している。(甲第12号証ないし甲第23号証、甲第24号証の3、甲第25号証の3、甲第26号証の3等)。
また、このように請求人が被請求人に販売したタイヤの年間の販売数量(甲第12号証)をみると、2006年では194,733であり、2007年では255,714であり、2008年では少なくとも249,230であるから、2006年から2008年までの間の年間のタイヤの販売数量からみて、請求人は被請求人に、請求人の商品を継続的に大量に販売している。
また、より具体的に各取引における、請求人が被請求人に販売したタイヤの数量をみても、2006月3月1日付けの取引書類(甲第13号証)では990個、2006年6月30日付けの取引書類(甲第14号証)では2,199個、2006年9月5日付けの取引書類(甲第15号証)では合計4,889個、2006年10月12日付けの取引書類(甲第16号証)では1,010個、2006年10月17日付けの取引書類(甲第17号証)では1,811個、2006年11月28日付けの取引書類(甲第18号証)では835個、96年(西暦2007年)1月5日付けの取引書類(甲第19号証)では1,000個、07年1月8日付けの取引書類(甲第20号証)では1,444個、96年(西暦2007年)1月9日付けの取引書類(甲第21号証)では140個、96年(西暦2007年)1月16日付けの取引書類(甲第22号証)では600個、96年(西暦2007年)3月27日付けの取引書類(甲第23号証)では5,640個であるから、請求人は、被請求人に対し、請求人の商品を継続的に大量に販売している。
また、請求人が日本国内に流通させた販売数量のうち、被請求人に販売したタイヤの数量の割合をみると(甲第12号証)、2006年に約4割4分、2007年に約5割4分、2008年に約6割2分であるから、これらの各割合からみても、請求人は被請求人に、請求人の商品を継続的に大量に販売していることは明らかである。
また、このように被請求人は、請求人の商品の販売を継続的に大量に行っており(甲第12号証ないし甲第23号証)、その商品販売に際し、商品に関する取引書類等に商標所有者の商標と同一又は類似の商標を付している(甲第12号証ないし甲第23号証、甲第24号証の3、甲第25号証の3、甲第26号証の3等)。
さらに、雑誌「ドリフト天国」の、2007年(平成19年)4月号(甲第24号証の1)、2007年6月号(甲第25号証の1)、2007年11月号(甲第26号証の1)や、2008年10月24日付けのインターネットでの被請求人のサイト(甲第27号証の1ないしの3、甲第28号証の1ないしの5)にもみられるように、被請求人は、請求人の商品の販売・広告宣伝等(商品に関する広告等を内容とする情報の電磁的方法による提供を含む。以下同じ。)を継続的に行っており(甲第24号証の3、甲第25号証の3、甲第26号証の3、甲第27号証の1ないしの3、甲第28号証の1ないしの5)、その販売・広告宣伝等に際しても、商品あるいは商品に関する広告、価格表等に外国商標所有者の標章と同一又は類似の標章を付している(甲第24号証の3、甲第25号証の3、甲第26号証の3、甲第27号証の1ないしの3、甲第28号証の1ないしの5)。
また、被請求人は、請求人から購入した商品を、インターネットの巨大販売サイト「楽天市場」において開設した「オートウェイ楽天市場店」(甲第29号証)で、請求人所有の商標と同一または類似の商標を用いて、請求人の商品を販売・広告宣伝等をしている。
また、被請求人は、インターネットの巨大オークションサイト「Yahoo!JAPAN オークション」において開設した「オートウェイ ヤフーオークション店」(甲第30号証)でも、請求人所有の商標と同一または類似の商標を用いて、請求人の商品を販売・広告宣伝等をしている。
また、被請求人は、インターネットの巨大販売サイト「Yahoo!JAPAN ショッピング」において開設した「オートウェイ Yahoo!ショッピング店」(甲第31号証の1及び2)でも、請求人所有の商標と同一または類似の商標を用いて、請求人の商品を販売・広告宣伝等している。
また、被請求人は、インターネットのオークション及び販売サイト「オークション&ショッピングのビッダーズ」において開設した「オートウェイ ビッダーズ店」(甲第32号証の1及び2)でも、請求人所有の商標と同一または類似の商標を用いて、請求人の商品を販売・広告宣伝等している。
したがって、甲第1号証、甲第2号証、甲第12号証ないし甲第28号証からみて、またさらにこれらの証拠と甲第29号証ないし甲第32号証を合わせてみてみても、請求人は継続的かつ大量に被請求人へ請求人の商品を販売しており、被請求人は継続的に請求人の商品を輸入して販売・広告宣伝等を行っていることは明らかである。しかも被請求人が請求人の商品の輸入販売・広告宣伝等する際には請求人所有の標章と同一又は類似の商標を付している。
そのため、本件の被請求人は、請求人のために日本国内で、請求人有の商標と同一または類似の標章を用いて、継続的に請求人の商品の輸入し、販売し、広告宣伝等をしている者であるといえるから、被請求人は、請求人から、商品取引に関して、代理店、特約店、総代理店のように被請求人と請求人との間に継続的な契約関係等による代理権が実質的に授与されている、あるいは少なくとも、継続的な取引から慣行的な信頼関係が形成され、外国商標所有者(請求人)の販売体系に組み込まれている者であったことは明らかである。
そのため、被請求人は、請求人の「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者」に該当する。
また、請求人から被請求人へ大量に販売された商品が、日本国内で大量に需要者に販売されていることは、甲12号証ないし甲第32号証から明らかであり、さらに、このことはインターネットの巨大オークションサイト「Yahoo!JAPAN オークション」におけるサイト(甲第33号証)にも、「NANKANG(ナンカン)タイヤを最も多くヤフオクに出品しているAUTOWAY(オートウェイ)」との記載からも明らかである。
また、請求人から被請求人へ大量に販売された商品は、日本国内で請求人の商品として需要者に販売されているのであるから、この商品について用いられた商標に化体する信用は、請求人に蓄積されるものである。この信用は、請求人と被請求人との継続的な取引によって慣行的な信頼関係が形成され、被請求人が請求人の商品を販売したことによって獲得できたものである。
(3)被請求人は、被請求人は30社以上のタイヤメーカーのタイヤを販売しているタイヤ通販会社である。請求人の商品は、通販品目の一つに過ぎず、請求人と代理店契約を交わしているわけではない。このことは、被請求人が本件商標の登録出願時又はその登録出願の日前一年以内に代理人としての地位にあった者又は代表者であった者と認めるに足りる証拠を、請求人が何ら提出していないことからも推察できる、と主張している。
しかし、仮に被請求人が30社以上のタイヤメーカーのタイヤを販売しているタイヤ通販会社であり、請求人の商品が通販品目の一つに過ぎないとしても、それを理由として、被請求人は本件商標の登録出願時又はその登録出願の日前一年以内に代理人としての地位にあった者又は代表者であった者ではないとは到底認められない。
請求人は、甲第12号証ないし甲第33号証を提出しており、上記(2)で述べたように、甲第12号証ないし甲第33号証により、被請求人が、本件商標の登録出願時又はその登録出願の日前一年以内に代理人としての地位にあった者又は代表者であった者であることは明らかである。
(4)被請求人は、販売店契約と代理店契約の一般的な相違をもとに、被請求人が、本件商標の登録出願時又はその登録出願の日前一年以内に代理人としての地位にあった者又は代表者であった者に該当しない、と主張する。
しかし商標法第53条の2の規定の「代理人」は、上述したように法律上の代理権限があるもののみと解するべきではないから、この被請求人の主張は認められない。
(5)上述した甲第1号証、甲第2号証、甲第12号証ないし甲第28号証、あるいは、これらの証拠と甲第29号証ないし甲第33号証とを合わせてみても、請求人は継続的、かつ大量に請求人の商品を被請求人に販売しており、被請求人は継続的に請求人の商品を輸入し販売・広告宣伝等を行っており、しかも被請求人が請求人の商品の販売・広告宣伝等する際には請求人所有の標章と同一又は類似の商標を付している。
したがって、本件の被請求人は、請求人のために日本国内で、請求人所有の商標と同一または類似の標章を用いて、継続的に請求人の商品の輸入販売・広告宣伝等をしている者であるから、総合的にみて、被請求人は、請求人から、商品取引に関して、代理店、特約店、総代理店のように被請求人と請求人との間に継続的な契約関係等による代理権が実質的に授与されていた、あるいは少なくとも、継続的な取引から慣行的な信頼関係が形成され、請求人(外国商標所有者)の販売体系に組み込まれている者に該当する。
本件登録は、被請求人と請求人との間の信頼関係を裏切って出願され、登録されたものであるから、本件登録は取り消されるべきである。
特に、請求人が日本国内に流通させた販売量に対する、請求人が被請求人に販売した請求人のタイヤの数量の割合(甲第12号証)は、2006年に約4割4分、2007年に約5割4分、2008年に約6割2分にも達する。
また、請求人が日本国内に流通させたタイヤの販売金額に対する、請求人が被請求人に販売した請求人のタイヤの販売金額の割合(甲第12号証)をみても、2006年に約4割2分、2007年に約5割0分、2008年に約5割6分である。
このように、2006年から2008年までの間、被請求人は、日本国内におけるタイヤ販売の数量・販売金額全体に対して占める販売数量・販売金額割合がいずれも大きい販売業者であるから、被請求人と請求人との間の信頼関係が特に深く、本件登録はこの深い信頼関係を裏切って出願され、登録されたものである。したがって本件登録は取り消されるべきである。
以上のことから、被請求人は「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者」に該当する。
(6)被請求人のホームページのサイトと請求人のホームページのサイトのリンク
被請求人のインターネットのサイト(甲第34号証の1)と、請求人のインターネットのトップサイト(甲第34号証の2)とがリンクされ、さらに請求人のトップサイト(甲第34号証の2)が請求人の日本語のサイト(甲第34号証の3)にリンクされている。
(7)被請求人の自認
被請求人と同じ名称(住所が請求人の住所と異なる)の者「株式会社 オートウェイ」が、自らの紹介で「FEDERAL TYRE、NANKANG TYRE、SONAR TYRE…等の日本総代理店です。」と掲載しているインターネットのサイト(甲第35号証の1)がある。
このサイト(甲第35号証の1)に掲載された者「(株)オートウェイ」の住所を含む企業の基本情報が掲載されたインターネットの別サイト(甲第35号証の2)には、この企業の創業年「1969年」が記載されており、この創業年は、甲第27号の3(第2ページ)の被請求人の設立年と同一である(なお、代表者「岡本精二」(甲第35号証の2)は、被請求人と同一敷地内の関連会社の代表者(甲第27号証の3、第2ページ)と同一である。)。
したがって、被請求人は、自ら「FEDERAL TYRE、NANKANG TYRE、SONAR TYRE…等の日本総代理店です。」と記載した者であると推認でき、これにより被請求人は自ら、請求人の商品「タイヤ」についての「日本総代理店」であると記載したのであるから、被請求人は自ら、請求人の商品「タイヤ」についての「日本総代理店」であると認識していた。
(8)上述した(6)および(7)の事実(甲第34号証、甲第35号証)を、上記した甲第1号証、甲第2号証、甲第12号証ないし甲第33号証に基づく事実と併せてみても、被請求人は、請求人から、商品取引に関して、代理店、特約店、総代理店のように被請求人と請求人との間に継続的な契約関係等による代理権が実質的に授与されている、あるいは少なくとも、継続的な取引から慣行的な信頼関係が形成され、外国の商標権者(外国商標所有者)の販売体系に組み込まれている者であったことは明らかである。
したがって、被請求人は、請求人の「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者」に該当する。
(9)外国登録商標の保護および信義則等
請求人の所有する商標は、外国において登録されており(甲第3号証ないし甲第11号証)、ヨーロッパ、北米、オーストラリアを中心に世界72カ国に販売網を持ち、1年間で840万本ものタイヤを出荷している(甲第33号証)。なお、英国、トルコ、スペイン、ポルトガル等での市場もある(甲第12号証)。
この請求人の外国登録商標が、我が国で、請求人とは別の者により登録されていることは、国際的取引上、混乱を招くおそれがあり好ましくない。
また、本件のように、外国所有者(請求人)の知らないうちにみだりに外国商標所有者の商標と同一又は類似の商標が被請求人によって登録された場合には、自己の意思に反して被請求人に、一手販売権を付与しなければならないことがあり、外国商標所有者が、日本国での市場を自己の意思によりコントロールすることできなくなり、外国登録商標の国際的保護に欠け、また国際取引上の信義にも反する。
そのため、商標法第53条の2に規定する取消審判により、本件商標登録は取り消されるべきである。
(10)結論
以上のことから、被請求人は、「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者」に該当する。
4 したがって、本件商標は、商標法第53条の2の規定により、その登録を取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次の通り述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 商標法第53条の2の規定によれば、登録商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であること、当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務を指定商品又は指定役務とするものであること、その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたものであること、のいずれの要件も満たす場合に当該商標登録を取り消すことができる。
2 上記規定における「代理人」とは、当該商品取引に関して、パリ条約の同盟国等において商標権に相当する商標に関する権利を有する者と、代理店、特約店、総代理店のように何らかの継続的な契約関係の存在等により代理権が授与された者を指すものであって、そのような関係の無い単なる得意先又は顧客の関係にとどまる者は上記「代理人」に含まれないものと解される。
3 請求人は、請求人とその商品を購入(輸入)し販売する被請求人との商取引を示す証拠並びに被請求人が請求人の商品を販売していることを示す広告及びサイト情報を提出し、「請求人は、本件商標権の商標権者を介し、本件商標の商標登録出願の出願日である平成19年(2007年)3月22日時点において、あるいは、その出願日前一年以内に、請求人の商品を販売していた(甲第1号証、甲第2号証、甲第12号証ないし甲第28号証)。このように本件商標権者は請求人の代理人として日本国内において、請求人の商品を販売していた事実があるのだから、本件商標権者は、請求人の『代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者』に該当する。」と主張している。即ち、請求人の商品を販売していた事実があるのだから、被請求人は、請求人の代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者に該当すると主張している。
4 しかしながら、上記各証拠によっては、被請求人は、請求人の商品を輸入し、販売する会社であり、我が国における取引先又は得意先であることは認められるが、請求人の商品の販売に関し、請求人と被請求人との間に継続的な契約関係による代理権が存在していた代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者に該当すると認めることは到底できない。
被請求人は、30社以上のタイヤメーカーのタイヤを販売しているタイヤ通販会社である。請求人の商品は、通販品目の一つに過ぎず、請求人と代理店契約を交わしているわけではない。このことは、被請求人が、本件商標の登録出願時又はその登録出願の日前一年以内に代理人としての地位にあった者又は代表者であった者と認めるに足りる証拠を、請求人が何ら提出していないことからも推察できる。
5 一般に、販売店契約は、販売店側が、メーカー(サプライヤー)から製品を仕入れ、在庫を抱えてビジネスをおこなう契約である。このため、販売店は、当然ながら在庫を抱えるリスクがあるが、仕入れと販売価格の差額をそのまま利益とすることができる。これに対して、代理店契約は、代理店が、メーカー(サプライヤー)の代理として、商品を販売する契約である。いわば、営業の代行や業務委託のようなものである。このため、販売店とは違って、在庫を抱えるリスクは無いが、利益は、あくまで販売手数料という形でしか得ることができない。
請求人が提出した証拠が示すように、請求人は被請求人の要求に応じて商品を販売するのみであって、請求人自身がそれら販売に対するリスクを何ら負うものではない。即ち、被請求人は、請求人の商品を輸入し、販売する取引先又は得意先であって、本件商標の登録出願時又はその登録出願の日前一年以内に代理人としての地位にあった者又は代表者であった者ではないことは明らかである。
6 以上のとおり、本件商標は、本件商標の登録出願時又はその登録出願の日前一年以内に、請求人の代理人としての地位にあった者又は代表者であった者によって登録されたものではなく、商標法第53条の2の要件を満たしていない。
よって、本件商標は、商標法第53条の2の規定により取り消すことはできず、本件審判請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 本件取消審判は、商標法第53条の2の規定により取り消されるべきものと請求されているものであるところ、商標法第53条の2に規定する取消審判の請求があったときは、審判請求に係る登録商標がパリ条約の同盟国等において我が国の商標権に相当する権利を有する者の商標と同一又は類似の範囲であること、またその商標登録出願が、正当な理由がないのに、その同盟国等の権利者の承諾を得ないで、その商標登録出願の日若しくは当該商標登録出願の日前1年以内に当該登録商標のいずれかの指定商品(類似する商品を含む。)について、当該同盟国等の権利者の取引上の代理人であった者又はその権利者の代表者であった者によってされたものであることのいずれの要件も満たす場合に、当該登録商標の登録を取り消すべきものと解される。
2 これを前提として、以下、甲各号証及び請求人の主張について検討する。
(1)本件商標(審判請求に係る登録商標)について
本件商標は、上記第1のとおり、「NANKANG」の欧文字と「ナンカン」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなり、平成19年3月22日に登録出願され、第12類「自動車並びにその部品及び附属品,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」を指定商品として、同20年2月15日に設定登録されたものである。
(2)パリ条約の同盟国等においてわが国の商標権に相当する権利を有する者の商標について
甲第3号証及び甲第11号証(枝番を含む。)によれば、請求人は、台湾、中国、米国、カナダを始め多数の国々に「NANKANG」の欧文字をその構成中に顕著に有する登録商標又は「NANKANG」の欧文字よりなる登録商標を所有しており、具体的には、台湾商標登録第00093867号(以下「引用商標」という。)は、「南港」の文字と「Nankang」の文字とを上下二段に書してなり、第70類「他類(第70類でない類)に属しないプラスチック及びゴムの製品(タイヤのゴムトレッド及びタイヤなど)」を指定商品とし、保護期間を1997年12月1日より1987年11月30日までとし(甲第4号証の1)、この商標権の登録の存続期間の延長(2017年11月30日まで)を認めた書面(甲第4号証の2)によれば、その指定商品(和訳)は「タイヤ、チューブ、チューブレスタイヤ、穿刺修理用パッチ、トレッドベルト、トレッドリング、タイヤバルブ」とするものである。
なお、請求人は上記のとおり台湾、中国、米国、カナダ等多数の外国に登録商標を所有しているが、本件においてはそれらの全ての登録商標を挙げる必要はないと考えられるから、これらの登録商標については省略する。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標の構成態様は上記とおりであるから、引用商標の欧文字部分「NANKANG」は、本件商標の欧文字部分の「NANKANG」と綴り字を共通し、この欧文字部分より生ずると認められる「ナンカン」の称呼を共通するものである。
また、本件商標と引用商標は、共に指定商品中に商品「タイヤ」を包含していることから、互いに同一又は類似する商品を有するものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、「ナンカン」の称呼及び欧文字部分「NANKANG」の文字を共通にする全体として類似の商標というのが相当である。
(4)商標法第53条の2中の「…その商標登録出願の日若しくは当該商標登録出願の日前1年以内に当該登録商標のいずれかの指定商品(類似する商品を含む。)について、当該同盟国等の権利者の取引上の代理人であった者又はその権利者の代表者であった者によってされたもの」であるか否かについて
ア 請求人は、甲第1号証、甲第2号証、甲第12号証ないし甲第35号証よりすると、「被請求人は、請求人から、商品取引に関して、代理店、特約店、総代理店のように被請求人と請求人との間に継続的な契約関係等による代理権が実質的に授与されている、あるいは少なくとも、継続的な取引から慣行的な信頼関係が形成され、外国の商標権者(外国商標所有者)の販売体系に組み込まれている者であったことは明らかである。したがって、被請求人は、請求人の「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者に該当する。」旨主張する。
イ 確かに、請求人と被請求人との間で商品「タイヤ」の取引が2006年3月1日から2007年3月27日に架けて11回行われたこと(甲第13号証ないし甲第23号証、なお、甲第13号証に記載の会社の住所は、被請求人の住所と相違する)は認められるが、これらの取引書類を徴するも、不定期な取引であって、通常の商品の製造・販売元と顧客・得意先との関係の取引範囲以外に、商品を輸入、販売するについての法律上の関係ないし特約店、輸入総代理店等日本における商品の販売するについての特別の契約上の慣行上の関係が存していたものとは認めることができず、その間に取引上格別の信頼関係が形成されていたものとは直ちには認め難いものといわざるを得ない。
また、請求人は、「甲第12号証より、請求人が我が国に販売した「タイヤ」の販売量の内、被請求人に対する販売量が相当の割合である」旨主張するが、例えば、甲第12号証によれば、2006年の数量は、194,733個と記載されているが、甲第13号証によれば、2006年に取引数量は、合計11,734個であるから、甲第12号証と甲第13号証とは、取引数量において符合するものではない。
したがって、甲第12号証に基づく請求人の主張を俄に採用しがたい。
他方、被請求人は、30社以上のタイヤメーカーと取引していると主張しており、例えば、請求人の提出に係る甲第28号証の1(1頁目)等によれば、「全38ブランド100種類25万本から自在にチョイス!圧倒的バリエーション!」「ANTYRE」、「BFGOODRICH」、「BRIDGESTONE」、「YOKOHAMA」等の記載から、被請求人は、計38社のタイヤメーカーの「タイヤ」の販売及び商品の紹介をネット上(ヤフーオークション、ヤフーショッピング、楽天市場、ビッダーズ)で行っていることが認められるから、販売の数量、割合はともかく、この甲第12号証他の一覧表によっては、被請求人が、請求人の代理店、特約店、輸入総代理店のような立場にあったというよりは、顧客の注文に応じて各タイヤメーカーからダイレクトにタイヤを取り寄せる輸入業者であって、請求人との関係では一輸入業者とみるのが相当である。
さらに、雑誌、インターネットにおける被請求人の商品広告は、被請求人が台湾・韓国・中国等の海外のタイヤメーカーからダイレクトに商品を輸入し、ネット上で通信販売する会社であることからすると、通常行う広告、宣伝の範囲内といえるものである。
さらにまた、請求人は、「被請求人と同じ名称(住所が請求人の住所と異なる)の者『株式会社 オートウェイ』が、自らの紹介で『FEDERAL TYRE、NANKANG TYRE、SONAR TYRE…等の日本総代理店です。』と掲載しているインターネットのサイト(甲第35号証の1)がある。」と主張しているが、請求人が自認するとおり被請求人とは住所が異なるインターネットのサイトであって、甲第13号証に記載の会社住所「福岡県京都郡苅田町磯浜町2丁目1-36」とは一致するが、これは2006年3月1日付けのインボイスであって、本件商標出願前1年以内のものではないから、このことをもって被請求人が請求人の代理店、特約店、総代理店であったとは直ちには認められないことは上記と同様である。
そして、被請求人が請求人(外国商標所有者)の代表者でないことは明らかであり、かつ、請求人(外国商標所有者)は、被請求人へ何らかの代理権を授与していたことを裏付ける具体的証拠を提出しているものでもない。
そうすると、被請求人が、本件商標の登録出願日及び本件商標の登録出願日前一年以内の時点で請求人(その商標に関する権利を有する者)の代理人若しくは代表者であったとは、上記の甲各号証のみによっては認め難いといわざるを得ない。
3 以上の1及び2を総合すると、本件商標は、登録商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であったとしても、本件商標の登録出願当時又は本件商標の登録出願の日前一年以内に、台湾、その他外国登録商標の権利者の代理人若しくは代表者であった者によって登録されたといえないものである。
4 むすび
したがって、本件商標は、その登録出願当時又は本件商標の登録出願の日前一年以内に、台湾、その他外国登録商標の権利者の代理人若しくは代表者であった者によって登録されたといえないものであるから、商標法第53条の2の規定により、その登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
審理終結日 2009-06-30 
結審通知日 2009-07-02 
審決日 2009-07-16 
出願番号 商願2007-25067(T2007-25067) 
審決分類 T 1 31・ 6- Y (X12)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 浩子 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 井出 英一郎
鈴木 修
登録日 2008-02-15 
登録番号 商標登録第5111437号(T5111437) 
商標の称呼 ナンカン、ナンカング 
代理人 木村 高久 
代理人 中前 富士男 
代理人 中川 康子 
代理人 来田 義弘 

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