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審決分類 審判 一部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) Y05
審判 一部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) Y05
管理番号 1205345 
異議申立番号 異議2006-90628 
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2009-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2006-12-07 
確定日 2009-09-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第4985231号商標の登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4985231号商標の指定商品中、第5類「消臭剤(身体用のもの及び工業用のものを除く),防臭剤(身体用のもの及び工業用のものを除く),脱臭剤(工業用のものを除く),その他の薬剤,食餌療法用食品及び飲料」についての登録を取り消す。 本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第4985231号商標(以下「本件商標」という。)は、「オレンジミントの香り」の文字を標準文字で表してなり、平成15年8月4日に登録出願、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,身体用消臭剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,つけづめ,つけまつ毛」及び第5類「消臭剤(身体用のもの及び工業用のものを除く。),防臭剤(身体用のもの及び工業用のものを除く。),脱臭剤(工業用のものを除く。),その他の薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,おりもの専用シート,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工受精用精液,食餌療法用食品及び飲料」を指定商品として、同18年9月8日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の登録は、その指定商品中の第5類「消臭剤(身体用のもの及び工業用のものを除く),防臭剤(身体用のもの及び工業用のものを除く),脱臭剤(工業用のものを除く),その他の薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,おりもの専用シート,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工受精用精液,食餌療法用食品及び飲料」について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものであるから、取り消すべき旨主張し、証拠方法として、甲第1ないし第11号証(申立人の提出に係る資料は甲号証として読み替えた。)を提出している。

3 本件商標に対する取消理由
当審は、商標権者に対し、意見書を提出する期間を指定して、平成19年2月16日及び同年6月20日付けで商標登録の取消の理由を通知した。その要旨は、次のとおりである。
(1)平成19年2月16日の取消理由
ア 申立人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)「オレンジミント」は、シソ科ハッカ属の多年草であって、ほのかにラベンダーのような柑橘系のような香りのするミントであって、ペパーミントの変種で、芳香性が高いため「オーデコロンミント」ともいわれ、ペパーミントと同様に、薬品、香料、たばこ、菓子類、アイスクリーム、リキュールなどの香りづけに使われること、そして、このオレンジミント、ぺパーミントなどを総称したものを「ミント」といい、「ミント」は、ハーブとして料理や菓子、薬用酒などの材料となるほか、その精油は、香料として食品や歯磨き粉などに添加されたり、アロマテラピーに用いられること、また、ミントは、漢方薬としても清涼、解熱、発汗、健胃などの目的で用いられること(甲第2、第4及び第5号証)。
(イ)厚生省生活衛生局企画課、生活化学安全対策室が、平成12年3月31日に作成した「芳香・消臭・脱臭・防臭剤 安全確保マニュアル作成の手引き」の項目11. 付録(11)「配合成分について」の「芳香・消臭・脱臭・防臭剤の処方例」によれば、「トイレ用芳香消臭防汚剤」及び「防臭剤」の成分として、「香料」又は「粉末香料」が用いられること(甲第8号証)。
(ウ)商品「粒ガム」に、「オレンジ・ミント」の文字が使用されていること(甲第10号証)。
イ 本件商標は、「オレンジミントの香り」の文字よりなるところ、その構成中の「オレンジミント」について、上記アのとおりの事実が認められる。
そうすると、本件商標は、その構成全体から、シソ科ハッカ属の多年草で、柑橘系のような香りのする「オレンジミント」の香りを想起させるものであって、その指定商品中の第5類「薬剤,食餌療法用食品及び飲料」との関係においては、「オレンジミントの香りを添加した商品」であることを容易に理解、認識させるものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品中の「オレンジミントの香りを添加した商品」、例えば、「オレンジミントの香りを添加した消臭剤(身体用のもの及び工業用のものを除く。)、オレンジミントの香りを添加した防臭剤(身体用のもの及び工業用のものを除く。)、オレンジミントの香りを添加した脱臭剤(工業用のものを除く。)及びオレンジミントの香りを添加した食事療法用食品及び飲料」について使用するときには、その商品の品質、原材料を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本件商標を「オレンジミントの香りを添加した商品」以外の「薬剤,食餌療法用食品及び飲料」について使用するときには、商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号にも該当する。
ウ 以上のとおり、本件商標は、その指定商品中の第5類「薬剤,食餌療品及び飲料」については、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消すべきである。
(2)平成19年6月20日付けの取消理由
ア 申立人の提出に係る甲第1ないし第11号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)ハーブリストに「オレンジミント」が掲載され、その用途に「ティー」、コメントに「オレンジの香り・ポプリ等にも」との記述、「柑橘系の香りがするミント」、利用法としては、「葉にお湯を注いでミントティー、アイスクリーム等のデザートのトッピング」との記述があること(甲第1号証)。
(イ)ペパーミント系、スペアミント系、アップルミント系、オレンジミント系に分けることができるミントは、「ハーブとして料理や菓子、薬用酒などの材料となるほか、精油(エッセンシャルオイル)は香料として食品や歯磨き粉に添加されたり、アロマテラピーに用いられる・・・」との記述があり(甲第2号証)、調味料辞典にも同様の記述があること(甲第5号証)。
(ウ)ハーブ図鑑の「ミントの仲間」の花の特徴欄に「品種によって香り、味、精油成分は様々です、ペパーミント・スペアミント・アップルミントが三大品種です。この他にシトラスミント・オレンジミントにグレープフルーツミントなど種類も香りも大変豊富です。」、「シソ科ハッカ属 多年草」との記述があること(甲第3号証)。
(エ)オーデコロンミントの説明には「ペパーミントの変種で、芳香性が高いため『オーデコロン』という名を持っています。柑橘系の香りもするので『オレンジミント』、『ベルガモットミント』、『レモンミント』ともいわれます。」、楽しみ方の項には「オーデコロンミントはペパーミントと同様、薬品、香料、たばこ、菓子類、アイスクリーム、リキュールなどの香りづけに使われます。また、香りが濃厚なので、香水用ラベンダーオイルの原料にもなるようです。ドライにしても香りが強いので、ポプリやハーブバスにも向いています。」との記述があること(甲第4号証)。
(オ)厚生省生活衛生局企画課、生活化学安全対策室が、平成12年3月31日に作成した「芳香・消臭・脱臭・防臭剤 安全確保マニュアル作成の手引き」の項目11. 付録(11)「配合成分について」の「芳香・消臭・脱臭・防臭剤の処方例」によれば、「トイレ用芳香消臭防汚剤」及び「防臭剤」の成分として、「香料」又は「粉末香料」が用いられること(甲第8号証)。
イ 商標法第43条の8において準用する同法第56条第1項で準用の特許法第150条第5項に基づいてした職権による証拠調べによれば、以下の事実が認められる。
(ア)2000年2月4日付け日本食糧新聞には、「バレンタイン特集:主要メーカの販売戦略」の見出しのもと、「▽ネスレマッキントッシュ・・・ミント・イン・チョコレート『アフターエイト』の五〇〇円、一二〇〇円を展開、新たにオレンジミント味を投入。」との記事が掲載された。
(イ)2000年10月23日付け日本食糧新聞には、「フルーツ感強調『キャンディスプレー・オレンジミント』発売(カネボウフーズ)」の見出しのもと、「・・・2月に発売し好調の『キャンディスプレー』を〈オレンジミント〉〈アップルミント〉〈グレープミント〉の新ラインアップで・・・」との記事が掲載された。
(ウ)2005年10月19日付け日本食糧新聞には、「『Film AID ブルーベリーミント味』発売(シードウェル)」の見出しのもと、「◆商品特徴=保健機能食品(栄養補助食品)手軽に水なしで、いつでもどこでも摂取できるサプリメントフィルム・・・A=〈ブルーベリーミント味〉・・・B=〈ピーチミント味〉・・・C=〈オレンジミント味〉1日の摂取目安量3枚。タンパク質からのエネルギーの産生と皮膚や粘膜の健康維持を助けるビタミンB6を配合。・・・」との記事が掲載された。
(エ)「チックタック ミント」(http://www.kanshin.com/keyword/801605)のホームページには、「日本では江崎グリコが2002年6月から首都圏で一時期だけフレッシュミント味とオレンジミント味を輸入販売・・・アメリカではフレッシュミントのほか、シナモンミント、スペアミント、オレンジミント、ライムミントなど・・・ドイツではフレッシュミントとオレンジミントしか売っていなかった。」との記述がある。
(オ)「J-STORE」(http://jstore.jst.go.jp/cgi-bin/patent/advanced/pat/detail_pat.cgi?patid=11769detail_id=13010)のホームページには、特開2006-111564、発明の名称または考案の名称の欄に「血小板擬集抑制剤」、要約の欄に「ハーブ由来の血小板擬集抑制剤を提供する。」、特許請求の範囲の欄に【請求項1】として「ルビーバジル・・・オレンジミント・・・からなる群から選択される1種あるいは2種以上の植物あるいはその抽出物を有効成分とする、血小板擬集抑制剤。」との記述がある。
(カ)「平成17年3月新発売『ドアコロン』」(http://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/0457/index.html)の請求人のホームページには、「ドアを開閉するたびに香りが広がる、ドア掛けタイプの芳香消臭剤。」、製品説明の欄には「香りのアイテムは、リラックス感を与えてくれるラベンダーソープ、清涼感あふれるオレンジミントの2種類です。」との記述がある。
(キ)「LION」(http://www.lion.co.jp/press/2006107.htm)のホームページには、「-発表資料-2006年8月29日」として「4.(3)油汚れのニオイもスッキリ/オレンジオイル配合。清涼感のある爽やかなオレンジミントの香りで、気持ちよく掃除ができ、洗剤特有の不快なニオイも残りません。」との記述がある。
(ク)「SPECIAL2004(2004年1月2号掲載)」(http://www.v-shinpo.com/04maple/02maple/maple.html)のホームページには、「ハーブで暮らしに香りを添えよう」の見だしのもと「ハーブ(herb)を英和辞書で調べると『風味用(薬用、香料)植物』とある。ここでは香りや風味を添える植物ととらえて、代表的なハーブの利用法についていくつが紹介していこう。★ハーブティーを楽しもう/・ミント/ミントには数多くの種類がある。そのなかでも特にティーに合う種類は、オレンジミントやオーデコロンミント、ペパーミントなど。歯磨きやガムでご存じの通り、ミントのスーッとした香りは、心身をリフレッシュさせてくれる。」との記述がある。
(ケ)2004年1月22日付けの毎日新聞中部朝刊8頁には、「[ビジネス情報]バラやオレンジの香り、女性向け育毛剤--カネボウ」の見だしのもと「同社は、女性の抜け毛がストレスと関係していることに着目し、毛髪の成長サイクルを制御する毛乳頭と香りの関連を研究。その結果、バラやオレンジなどの香り成分が毛乳頭を活性化させることを発見した。」との記事が掲載された。
(コ)2004年10月19日付けの毎日新聞東京夕刊4頁には、「[暮らしWORLD]家庭用洗剤 注目される“オレンジパワー”をうたう商品」との見だしのもと「スーパーなどの家庭用洗剤の売り場で最近、オレンジのパワーをうたった商品が目立つ。さわやかな香りや色だけでなく、すぐれた汚れ落としの効果があるという、かんきつ系の力とは。・・・東京都渋谷区の化粧品メーカー『石澤研究所』は、98年からオレンジオイル入りのシャンプーを販売。『リモネンは毛穴に詰まった脂や古い角質を除去する強力な洗浄力の一方で、肌にもやさしい。オレンジの香りも好評です。』と話す。」との記事が掲載された。
(サ)1998年1月27日付け日刊工業新聞19頁には、「H+Bライフサイエンス、歯磨きと洗口液を発売。『林原プロポリス』配合」の見だしのもと「新発売の二商品は、歯垢を取り除き、歯石の沈着や口臭を防いで口中を清浄に保つ。スペアミントの香りを入れた。」との記事が掲載された。
(シ)2000年3月17日付け日本食糧新聞には、「歯に優しい『ハローキティガムコミュニケースアップルミント』発売(ブルボン)」の見だしのもと「〈アップルミント〉(内容量七枚)は、(1)アップルミントの香りで息スッキリ・・・」との記事が掲載された。
(ス)2003年10月10日付けの読売新聞東京朝刊12頁には、「イチゴとミントで悪臭退治する消臭剤を発売へ/エステー化学」の見だしのもと、「エステー化学は消臭剤・・・を発売する。悪臭を取り除き、イチゴとミントの香りがする季節限定商品。」との記事が掲載された。
(セ)2004年5月18日付けの読売新聞東京朝刊11頁には、「『死海のにがり』入浴剤、夏用2商品発売へ/赤城化成」の見だしのもと「紫外線で傷んだ肌向けにアロエエキスを配合した『なめらかタイプ カモミールの香り』と、ハッカ油入りの『さわやかタイプ ミントの香り』がある。」との記事が掲載された。
ウ 以上によれば、オレンジのパワーをうたった商品が注目され、オレンジの香りのする商品や心身をリフレッシュさせるミントの香り、アップルミントの香り、スペアミントの香り及びオレンジミントの香りのする種々の商品が製造、販売されていることが認められ、また、香りは、精神的な疲れを癒したり、ストレスを解消したりする効果があるものとして広く知られているものである。
そして、本件商標は、前記のとおり、「オレンジミントの香り」の文字を書してなるところ、その構成中の「オレンジミント」の文字部分は、前記ア及びイで認定した事実によれば、柑橘系ミントの香りがする「シソ科ハッカ属」に属する「ミント」の一種であって、ミントティーに適しているが、また、料理や菓子、薬用酒などの材料となるほか、精油(エッセンシャルオイル)は香料として食品や歯磨き粉に添加されたり、アロマテラピーに用いられるものであり、本件商標の登録審決時においても、香料として食品や消臭剤等に使用され、該商品は「オレンジミントの香り」のする商品として紹介されていることが認められる。
そうすると、前記構成文字よりなる本件商標は、これをその指定商品中、第5類の商品について使用した場合、これに接する需要者は、全体として、「オレンジ(柑橘類)ミントの香りのする商品」程の意味合いを表したものと認識するにとどまるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、これを登録異議の申立てに係る第5類の指定商品中、「オレンジ(柑橘類)ミントの香りのする商品」について使用しても、単に商品の品質、原材料を表示するものにすぎないものと認められ、前記商品以外の商品について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。
エ 以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中、第5類「消臭剤(身体用のもの及び工業用のものを除く),防臭剤(身体用のもの及び工業用のものを除く),脱臭剤(工業用のものを除く),その他の薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,おりもの専用シート,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工受精用精液,食餌療法用食品及び飲料 」について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものというべきである。

4 商標権者の意見の要旨
上述した取消理由の通知に対し、商標権者は要旨以下のとおり意見を述べ、証拠方法として乙第1ないし第32号証(甲号証は乙号証として読み替えた。)を提出した。
(1)申立人の提出に係る資料(甲各号証)について
ア 申立人の提出に係る甲第1号証によれば、「ハーブリスト」で「オレンジミント」が紹介されているが、「用途」欄を見れば「ティー」とされ、「オレンジの香り・ポプリ等にも」のコメントが付されているにすぎず、また、「オレンジミント」では「柑橘系の香りがするミント」とされ、利用法としては、「葉をお湯に注いでミントティー、アイスクリーム等のトッピング」とされているのみで、要するに葉をそのままティーなどに利用することが開示されているのみであり、本件指定商品とは全く無関係である。
イ 甲第2号証は、インターネット上の多言語百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」の記事でオープンコンテント方式のものであるから、情報の精度・信憑性が保証されるものではなく、異議申立の資料としては不適切なものである。また、「ミント」に関する説明として、「ハーブとして料理や菓子、薬用酒などの材料となるほか、精油(エッセンシャルオイル)は香料として食品や歯磨き粉に添加されたり、アロマテラピーに用いられる。・・・漢方薬としても清涼、解熱、発汗、健胃などの目的で用いられる。」と記載されているが、「オレンジミント」については、ミントの種類として「ペパーミント系・スペアミント系・アップルミント系」と並んで「オレンジミント系」があるとするにすぎず、上記目的のために用いられるか不明であり、料理や菓子、薬用酒、食品や歯磨き粉、アロマテラピーなどが用途として例示されているが、本件指定商品とは全く無関係である。甲第5号証は、調味料辞典と題するサイトで、記載内容は前記と同様のものであり、本件商品とは全く無関係である。
ウ 甲第3号証は、「四季の花 HERB」と題するウエブページで、ハーブの中に「ミント」があり、その種類は豊富であることを紹介しているにすぎず、本件指定商品との関係を示すものではない。
エ 甲第4号証は、「花いっぱい.com」のサイトであり、「オーデコロンミント」が「オレンジミント」、「ベルガモットミント」、「レモンミント」ともいわれるとしているが、オーデコロンミントとオレンジミントは別品種であり、例示されている用途も本件指定商品とは無関係である。
オ 甲第8号証について、「トイレ用芳香消臭防汚剤」及び「防臭剤」に「香料」又は「粉末香料」が用いられるとの指摘であるが、前記商品に香料が用いられることは通常行われていることであり、このことと「オレンジミント」が直ちに結びつくものではなく、上記アで示されるとおり、オレンジミントが柑橘系の香りがするミントで葉にお湯を注いでミントティー、アイスクリーム等のデザートのトッピングに利用されるものであり、このような用途に用いられるミントが「トイレ用芳香消臭防汚剤」及び「防臭剤」の配合成分とされることは考えにくい。
(2)職権証拠調べによる資料について
ア ミント・イン・チョコレートについて、「オレンジミント味を投入」とされている記事を引用しているが、「オレンジミント」が「オレンジ」と「ミント」の味を複合した味として使用されている合成語であるのか、「オレンジミント」の味なるものが定着した味覚表示なのか不明である。しかも、食品のフレーバーとしての使用を示すにすぎず、本件指定商品とは無関係である。
イ 「キャンディスプレー」における「オレンジミント」は、液状キャンディに関するフレーバーであり、同様に、サプリメントフィルム、ミント系清涼菓子についてもフレーバーであって、本件指定商品とは無関係である。
ウ 「血小板擬集抑制剤」において、オレンジミントあるいはその抽出物を有効成分とするものが開示されているが、種々の植物中の一例として示されているにすぎず、オレンジミントが「血小板擬集抑制剤」の原材料として定着しているものではない。
エ 請求人のホームページにおいて、オレンジミントが香りのアイテム名として記載されていたことは、香りのアイテム名として一般的な表示としての採用でなく、請求人が香りのイメージとして創出したアイテム名である。
オ 洗剤、ハーブティー、歯磨きと洗口液等における使用についての記載は、本件指定商品とは無関係である。
(3)本件ついては、拒絶査定不服審判(2004年審判第24220号)において、本件商標は全体をもって一種の造語を表すものであって、これをその指定商品に使用しても自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり、かつ、商品の品質について誤認を生じるおそれもないものと判断され、登録されたものである。
(4)乙第1ないし第22号証によれば、「ウォーターミント」、「ミントミント」、「キシリミント」等、「ミント」とそれ自体顕著性が認められない語句とを結合した商標が登録されており、本件商標のみが登録を取り消されるとするならば、審査の一貫性を欠くものである。
(5)以上のとおり、本件商標は、全体をもって一種の造語を表すものであって、これをその指定商品に使用しても商品の品質を表したものとはいえず、商品の品質について誤認するおそれもないものである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものでないから、その登録は、維持されるべきである。

5 当審の判断
(1)本件商標は、前記1のとおり、「オレンジミントの香り」の文字よりなるところ、前記3の申立人の提出に係る証拠及び職権による証拠調べの事実よりすると、オレンジのパワーをうたった商品が注目され、オレンジの香りのする商品や心身をリフレッシュさせるミントの香り、オレンジミントの香りの種々の商品が製造、販売されていること、また、「オレンジミント」の文字部分が柑橘系ミントの香りがする「シソ科ハッカ属」に属する「ミント」の一種であって、ミントティーに適しているが、料理や菓子、薬用酒などの材料となるほか、精油(エッセンシャルオイル)は香料として食品や歯磨き粉に添加されたり、アロマテラピーに用いられるものであり、本件商標の登録審決時においても、香料として食品や消臭剤等に使用され、該商品は「オレンジミントの香り」の商品として紹介されて、オレンジミントの香りを有する商品の香りを表示するためのものとして普通に使用されていることが認められる。
そうすると、「オレンジミントの香り」の文字よりなる本件商標は、これをその指定商品中、「オレンジミントの香りのする商品」について使用した場合、これに接する需要者は、上記事情から「オレンジ(柑橘類)ミントの香りのする商品」等を認識するにとどまり、単に商品の品質、原材料等を表示したものと理解し、自他商品の識別標識としての機能を有するものとは認識しないものと判断するのが相当であり、また、本件商標をその指定商品中、前記商品以外の「薬剤,食餌療法用食品及び飲料 」に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。
(2)請求人は、前記3の取消理由に対し、前記4のとおり意見を述べているが、ある商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するかどうかは、取引者、需要者が、商品の品質等を表したものであると認識するかどうかに重点を置いて判断されるべきであって、その商標が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきであるから(平成12年(行ケ)第76号、東京高裁平成12年9月4日判決言渡参照)、仮に、商標権者が主張するように、申立人が提出した証拠及び当審職権調査による新聞報道記事等からは、薬剤を取り扱う業界において、「オレンジミントの香り」の文字が、商品の品質、原材料を表示するものとして使用されているとはいえないとしても、本件商標が商品の品質、原材料を表示するものであるとすることの妨げにはならないものである。
また、商標権者は、指定商品が化粧品や薬剤等で「ミント」の文字とそれ自体顕著性が認められない語句とを結合した商標の審判、審査における登録例を示して、本件商標についても、全体で不可分一体の造語として登録されるべきである旨主張しているが、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるか否かは、当該商標の構成態様と指定商品に基づいて、個別具体的に判断されるべきものであることからすると、これらの登録例が存在することによって、本件商標が同号に該当することを否定することはできないものである。
(3)したがって、本件商標の登録は、その指定商品中、第5類「消臭剤(身体用のもの及び工業用のものを除く),防臭剤(身体用のもの及び工業用のものを除く),脱臭剤(工業用のものを除く),その他の薬剤,食餌療法用食品及び飲料 」について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものといわざるを得ないから、商標第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものとし、その余の指定商品については、取り消すべき理由はないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録は維持すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2009-07-31 
出願番号 商願2003-65639(T2003-65639) 
審決分類 T 1 652・ 13- ZC (Y05)
T 1 652・ 272- ZC (Y05)
最終処分 一部取消  
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 佐藤 達夫
久我 敬史
登録日 2006-09-08 
登録番号 商標登録第4985231号(T4985231) 
権利者 小林製薬株式会社
商標の称呼 オレンジミントノカオリ、オレンジミント 
代理人 大島 泰甫 
代理人 稗苗 秀三 
代理人 小原 順子 
代理人 後藤 誠司 

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