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審決分類 再審 全部取消  無効としない 112
管理番号 1195659 
審判番号 再審2006-95010 
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標再審公報 
発行日 2009-05-29 
種別 再審 
審判請求日 2006-11-15 
確定日 2008-07-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第2711850号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本再審請求における手続の経緯
本再審請求にかかる審決(以下「原審決」という。)は、再審被請求人(原審請求人)が平成17年7月27日(予告登録日平成17年8月16日)に登録2711850号商標(以下「本件商標」という。)についての商標登録の取消の審判を請求し、取消2005-30906号事件として審理された結果、平成17年12月19日に本件商標の登録を取り消す旨の審決をし、平成18年5月8日に確定したものである。
原審の審判請求書における被請求人の欄は、「住所 台湾台中県大甲鎮中山路一段1012号」「名称 維楽工業有限公司」と記載してあるものである。
その審判請求書副本は平成17年8月26日に、また、その審決書謄本は平成18年1月5日に、郵便送達報告書に記載された「東京都港区虎ノ門3-5-1 青木朗」にいずれも送達されたものである。

2 再審請求人の主張
再審請求人(原審被請求人)は、原審決を取消すとの審決を求め、その理由及び弁駁の理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
再審請求人は、原審の取消審判請求時において、弁理士服部雅紀を特許管理人として選任しており、原審の取消審判請求前に、同代理人が本件商標の更新登録申請(平成17年6月28日)を行っている事実がある。
よって、原審の取消審判請求時において再審請求人(原審被請求人)にかかる特許管理人は同代理人であって、弁理士青木朗は原審取消審判事件にかかる代理権を欠いていたものである。
したがって、原審は、審判請求書副本が、本件商標の出願時の代理人である弁理士青木朗に送達され、同氏を被請求人の代理人として審理が進められた結果、被請求人から何ら答弁がないことを理由として本件商標が取り消されることとなったものである。
また、本件商標の出願中に提出した昭和62年8月3日付委任状には、弁理士青木朗他2名に、商標登録願に関する一切の件他を委任する旨の記載がある(甲第3号証)が、その委任事項には、本件商標の登録後についての授権に関する記載はなく、弁理士青木朗の代理権の範囲は商標登録願に関する事項のみに制限している。
これに対し、本件商標の更新登録申請を行った特許管理人である弁理士服部雅紀は代理権の範囲が制限されておらず、本件商標に関する一切の手続きについて代理権がある。
してみれば、弁理士青木朗が特許管理人であったとしても、その代理権の範囲は再審請求人によって商標登録願に関する事項のみに制限しているので、弁理士青木朗には、本件商標登録後の取消審判(原審)に関する代理権はなかった(商標法第77条第2項において準用する特許法第8条第2項 但し書)。
したがって、原審決には、商標法第57条第2項において準用する民事訴訟法第338条第1項第3号の再審の事由がある。

3 再審被請求人の答弁
再審被請求人(原審請求人)は、結論同旨の審決を求め、その理由及び弁駁に対する答弁の理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし第3号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)仮に弁理士服部雅紀が特許管理人として選任されていたとしても、その事実は青木朗弁理士の代理権を失わせるものではない(商標法第77条第2項において準用する特許法第12条)から、再審請求人の主張は理由がない。
(2)登録時委任状発行時の代理権の範囲
ア 登録時委任状発行時の法律に基づく解釈
登録時委任状が発行されたのは昭和62年8月3日であるが、この時点である平成8年法律第68号による改正法以前の商標法第77条第2項において準用する特許法第8条2項は、「特許管理人は、特に授けられた権限のほか、一切の手続及びこの法律又はこの法律に基づく命令の規定により行政庁がした処分を不服とする訴訟について本人を代理する。」と規定されていた。
代理人の権限の範囲は、代理権授与行為により定められるのが原則である(当該授与行為から範囲が明らかにならないときは、民法103条によりその範囲が定められる。)。
しかし、平成8年法律第68号による改正法以前の商標法第77条第2項において準用する特許法第8条2項は、在外者に手続をする特許庁の事務軽減のため、上記原則に対する例外を定めたものであり(乙第1号証:工業所有権法逐条解説[第10版]55頁)、代理人の権限の範囲は「一切の手続」(「手続」の意義については特許法3条2項参照)に及ぶ。
したがって、登録時委任状の発行時点においては、前代理人(弁理士青木朗他2名)が不使用取消審判に関しても代理権を有していたことは明らかである。
イ 請求人の意思解釈
なお、念のため登録時委任状発行時の請求人の意思を検討しておくと、当該委任時は、平成8年法律第68号による改正法以前の商標法第77条第2項において準用する特許法第8条の代理権の限定ができない時期のものであり、前代理人(弁理士青木朗他2名)は充分これを説明していたはずである。
とすれば、仮に委任状(甲第3号証)の委任事項において「商標登録願」とだけ記載されていたとしても、これは例示列挙と解するのが合理的である。
請求人の主張は、委任事項の制限が不可能であった時代にその限定列挙の意思表示をなしたとする不自然なものであって、認められない。
ウ 小括
よって、登録時委任状発行時における前代理人(弁理士青木朗他2名)の代理権の範囲は制限のないものであって、その後に代理権消滅(ないし限定)の事実が主張・立証されない限り、原審についての代理権を有することとなる。
(3)平成8年法律第68号による改正法以後の商標法第77条第2項において準用する特許法第8条の代理権の範囲
ア 平成8年法律第68号による改正法の概要と本件で検討すべきポイントについて
平成8年法律第68号による改正法により、請求人の指摘する特許法8条2項但書が挿入され、在外者は特許管理人の代理権の範囲を制限することができるようになった。ただし、上記改正法の経過措置等をみても、改正前の、無制限であった特許管理人の代理権について、代理権を消滅させ、又は範囲を限定させるような特別規定を定めていない。
とすれば、本件では請求人が前代理人(弁理士青木朗他2名)に対して授与した代理権を消滅させる意思表示をしているか否かにかかることになる。
イ 代理権を消滅(ないし限定)させる意思表示の有無について
(ア)再審請求書において再審請求人は、弁理士服部雅紀の選任によって、前代理人の権限を消滅させる新たな意思表示がなされたとの主張をするものと解される。
しかし、特許管理人は複数存在させることが可能であるから(特許法12条)、請求人のいう上記解釈を採り得ないことは明らかである。
この点は再審被請求人が平成19年7月4日付答弁書で指摘したものの、請求人はこれに対する反論をしておらず、もはやこの理由は成り立たない。
(イ)その他本件の記録をみる限り、請求人が平成8年改正法の施行日(平成9年4月1日)以降、前代理人(弁理士青木朗他2名)の代理権を消滅させ、又はその範囲を制限するような書面は存在しない。
特許法施行規則第9条第1項及び第2項は、代理権の内容の変更又は消滅を届け出る場合は定められた様式によること、すなわち書面によってなすべき旨を定めている。
したがって、このような書面が存在しない本件においては、請求人及び前
代理人の内部的な合意内容の如何にかかわらず、代理権の内容の変更又は消滅を特許庁に対抗できないものと解さざるを得ない。
ウ 表見代理
また、本件において仮に再審請求人と前代理人(弁理士青木朗他2名)内部で委任契約終了に関する何らかの合意があったとしても、特許庁に対しその旨の通知がなされない限り、表見代理(民法112条)の規定が適用されるものと解される。
この規定によっても、再審請求人は上記委任契約終了を対抗できない。
エ 追認
さらに、原審において、特許庁は4度にわたり前代理人(弁理士青木朗他2名)に対し手続に関する通知をしており、前代理人(弁理士青木朗他2名)の事務所が、これらの通知を受領していることは明らかである(乙第2号証、乙第3号証の1、乙第3号証の2、乙第3号証の3)。
前代理人(弁理士青木朗他2名)の主宰する事務所の規模、陣容、又信頼度に鑑みれば、上記受領書面の内容が再審請求人に対しまったく通知されていないということは、到底考えられない。
再審請求人がこの通知を受けていたとすれば、その後原審確定に至るまで、特許庁に対し自ら何らの通知、釈明を行わなかったという事実は、黙示的な追認の意思表示をなしたものと評価されるべきである。
したがって、仮に委任契約が終了していたとしても、上記追認により、前代理人(弁理士青木朗他2名)の代理権は治癒されることとなる。
オ 小括
以上のとおり、平成8年改正法施行後においても、代理権の消滅、又は権限の範囲への変更はなく、前代理人(弁理士青木朗他2名)は原審の時点において一切の手続に関する代理権限を有していたものとみるべきである。
(4)結語
原審の審決の結果を踏まえ、被請求人は商標登録を得て(国際登録第788319号)、それを元に営業活動を行い、種々の法律関係を構築している。
請求人自身又は請求人関係者内部の問題によって、一方的に上記現状を覆すことは、再審被請求人に対し、経済的・社会的に著しい不利益を生ぜしめるばかりでなく、商標制度の安定性、信頼性をも大きく損なうことになる。
安定した状況を早期に取り戻すためにも、不成立の審決を求める。

4 当審の判断
商標法第57条第1項の規定による再審の請求については、同法第58条第1項及び同法第57条第2項において準用する民事訴訟法第338条第1項の規定に掲げる理由に限られるところ、再審請求人は本件再審の請求の理由として第同条同項第3号を主張するので、該主張における当該再審事由の存否につき判断する。
職権において調査したところ、商標登録原簿によれば、再審請求人と本件商標の商標権者と同一人であること、及び郵便送達報告書(芝郵便局発行)によれば、原審における審判請求書副本及び審決書謄本が弁理士青木朗に送達(受取人は、いずれも事務員 藤井恵子である。)されていることが確認できた。
ところで、在外者の特許管理人の代理権の範囲については、商標法第77条第2項において準用する特許法第8条第2項で規定されているところ、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)において、商標法条約に「委任状は、代理人の権限を特定の行為に限定することができる。」旨規定されている(4条(3)(C))ことから、前記改正法において、同条第2項ただし書を追加して、在外者も内国人と同様に特許管理人の代理権の範囲を制限できることとした。
また、商標法条約では、代理人の代理権の範囲は、その明示があれば登録後にも及ぶ旨を規定している(4条(3)(b))が、特許管理人については、代理権の範囲に特段の制限を設けた場合を除き、登録後であっても手続をすることができるものと解される。
さらに、商標法条約では、代理に関して同条約に定める要件以外の要件を課すことを禁止している(4条(6))ことから、前記改正法において、同条第3項が削られた。
以上のとおり、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)の商標法第77条第2項において準用する特許法第8条の規定の主な改正部分は、特許法第8条第3項(特許管理人の選任等についての登録の第三者対抗要件)が削られたこと、及び同第2項(特許管理人の代理権の範囲の制限)が加えられたことである。
そして、商標法の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則によって、施行期日及び経過措置等が規定された。
その附則によれば、前記改正部分は、平成9年4月1日から施行された。
しかしながら、前記改正部分以外の部分、例えば、「2 特許管理人は、一切の手続及びこの法律又はこの法律に基づく命令の規定により行政庁がした処分を不服とする訴訟について本人を代理する。」(商標法第77条第2項において準用する特許法第8条第2項本文)は、平成9年4月1日においてもそのまま適用されるものと解される。
そこで、商標法第77条第2項において準用する特許法第8条第2項本文の弁理士青木朗の代理権の有無について検討するに、職権において調査したところ、昭和62年8月3日付け委任状(甲第3号証)によれば、「委任状 昭和62年8月3日 私議弁理士 青木朗、宇井正一、勝部哲雄を以て代理人として下記事項を委任します。1.商標登録願に関する一切の件並びに・・・5.上記事項を処理する為復代理人を選任及び解任すること。権利者 台湾台中縣大甲鎮中山路一段1012号名称 維楽工業有限公司 代表者 余彩雲」と記載され及び代表者の余彩雲の印が押印されていることが確認できた。
そして、平成17年7月27日の原審の審判請求時においても、代理権が消滅したことを証する書面、及び商標法第77条第2項において準用する特許法第8条第2項ただし書に規定する代理権の範囲を制限した旨の書面は提出されていない。
そうとすると、前記昭和62年8月3日付け委任状(甲第3号証)の「商標登録願に関する一切の件」の代理権を授与された特許管理人である弁理士青木朗は、代理権を有し、その代理権の範囲は取消審判(原審)の代理にも及ぶものというべきである。
そして、審判請求書副本は平成17年8月26日に、また、その審決書謄本は平成18年1月5日に、郵便送達報告書に記載された「東京都港区虎ノ門3-5-1 青木朗」にいずれも送達されたものである。
以上のとおりであるから、原審決は、商標法第57条第2項において準用する民事訴訟法第338条第1項第3号の再審の事由に該当しないものである
したがって、本件再審の請求には理由がない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-01-30 
結審通知日 2008-02-05 
審決日 2008-03-11 
出願番号 商願昭62-91534 
審決分類 T 5 31・ 9- Y (112)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹内 弘昌今井 信治 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 小林 和男
石田 清
登録日 1995-12-26 
登録番号 商標登録第2711850号(T2711850) 
商標の称呼 ベロ、ベル、ブイイーエル、ブイイーエルオー 
代理人 山崎 和香子 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 
代理人 加藤 義明 
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所 

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