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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Y03
審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y03
管理番号 1181186 
審判番号 無効2007-890136 
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-15 
確定日 2008-07-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第4849407号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4849407号商標(以下「本件商標」という。)は、「DHCサンブロック」の文字を標準文字で表してなり、平成15年7月16日に登録出願、第3類「日焼け止め化粧品」を指定商品として、同17年3月25日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第1063069号商標(以下「引用商標」という。)は、「サンブロック」の文字を書してなり、昭和46年11月2日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同49年4月18日に設定登録、その後、商標権存続期間の更新登録が3回にわたりなされ、さらに、指定商品については、平成16年5月26日に第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第44号証を提出した。
1 理由
本件商標は、以下の理由から明らかのように、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。
(1)本件商標と引用商標の構成について
本件商標は、欧文字の「DHC」と片仮名の「サンブロック」を一連に横書きにしてなる商標であることから、全体として「ディーエイチシーサンブロック」の称呼が生ずる商標である。
また、本件商標中「DHC」の文字部分は、後述のとおり、商標権者である「株式会社ディーエイチシー」の周知・著名なハウスマークであることから、本件商標は「DHC」部分と「サンブロック」とに分離判断され、その結果、「サンブロック」の文字部分も要部となり、そこから「サンブロック」の称呼をも生ずるものと考える。
なお、本件商標中「サンブロック」の文字部分については、判定2004-60006号において、「サンブロック」が普通名称であるとの主張を認めず、自他商品識別機能を発揮するものと認められている(甲第3号証)。
さらには、請求人が精査した限り、化粧品及び化学分野に関する専門書においても、「日焼け止め化粧品」等の意味合いで当該文字を紹介するものは確認されなかった(甲第19号証及び甲第28号証)。
したがって、当該文字は、「日焼け止め化粧品」等の意味で普通に使用されているものではなく、他の商標との類否判断の対象となることは明らかである。
また、本件商標はその指定商品を「日焼け止め化粧品」とするものであるが、「日焼け止め化粧品」を示す英語・片仮名文字として一般的に使用されているのは、「UV対策」、「UV CUT」等であって、「日焼け」を英語にした場合には「SUNBURN(「SUN」=日、「BURN」=焼ける)」、若しくは「SUNTAN(「SUN」=日、「TAN」=皮膚を日焼けさせる)」であって(甲第20号証ないし甲第24号証)、「サンブロック」は「日焼け」又は「日焼け止め」の化粧品の種類を示す普通名称ではなく、それ故、化粧品の種類を示す一般名称としては、辞書等にも掲載がされていない(甲第19号証ないし甲第30号証)。この点、上記の判定2004-60006号において、本件商標の商標権者は、「サンブロック」の文字が、英語の「日焼け止め」を意味した普通名称「SUNBLOCK」の読みを片仮名で表したものであるとして、複数の辞書に記載があることを主張していたが、特許庁は、乙号証として提出された、化粧品販売に係る各社のインターネットのホームページの表示についても勘案し、この中には、これが普通名称として表示されているとは明らかにいい得ないものもあり、この程度の用例をもって「サンブロック」の文字が商品「日焼け止め乳液」の普通名称であると認めることはできないものであると判断しており、例え一部の辞書に「SUNBLOCK」の掲載があろうともこれが、直ちに「サンブロック」が、商品、日焼け止め化粧品の普通名称であるとはいい得ないものというべきである。
近年、化粧品業界及びインターネット通信販売を含む化粧品小売業界において「日焼け止め化粧品」を指称するものとして一般的に使用されている語は、上記のように「UV対策」、「UV CUT」等が見られるが、例えば、日本の代表的なインターネット通信販売サイトである「Yahoo!ショッピング」では、「美容、健康」のカテゴリーの下に「スキンケア」のカテゴリーがあり、その下に「日焼け止め」というカテゴリーがある(甲第33号証)。また、「gooショッピング」サイトにおいては、「美容・健康」というカテゴリーの下に「化粧品」というカテゴリーがあり、商品が検索できるようになっている(甲第34号証)。さらに、化粧品・健康食品等のインターネット通信販売サイトである「ケンコーコム」においては、「化粧品」のカテゴリーの下に「UVケア」のカテゴリーがあり、さらに「UV・日焼け止め」のカテゴリーが存在し、商品が検索できるようになっている(甲第35号証)。また、化粧品に関する情報を多数掲載しているサイト「@cosme」においても「日焼け止め部門」というカテゴリーの中で、各社商品を紹介している(甲第36号証)。すなわち、これらインターネット上で商品を検索する際にも、カテゴリーの名称として「サンブロック」が用いられている形跡は見当らず、商品の一般名称として広く需要者等に認識されているものとは考えられない。
もともと、「日焼け」を防ぐためには「紫外線」を吸収するか、反射(散乱、遮断)させて防止するという方策をもって「日焼け止め化粧品」が製造・販売されているところ(甲第31号証)、「紫外線」の英語である「ultra violet」の頭文字「UV」が、「紫外線」を指称するものとして使用され、その「紫外線」を「防止」という商品の目的を表示するために「UV対策」、「UV CUT」という表現が用いられ、これら「UV対策」、「UV CUT」であれば、商品の品質表示に該当するかと考える。そして、これら「UV対策」、「UV CUT」という表示は、化粧品業界において、一般的に使用されている様子が見受けられる。
しかしながら、「日焼け止め化粧品」の本来の目的は「紫外線」の防止であるので(その方法が「吸収」であるとしても「反射」であるとしても)、「SUN(太陽)」を「BLOCK」するという意味で「サンブロック」の語が、「太陽をブロックする」というような意味合いを想起させるとしても、「日焼け止め化粧品」という化粧品の種類を指すものとして、化粧品業界で、一般的に使用されているものとは考えられない。
特許庁において、過去に、片仮名「サンケア」と欧文字「SUNCARE」の2段書きからなる商標について、その識別力の有無が争われた拒絶査定不服審判及び登録異議申立て事件(平成元年審判第4874号)において、構成中の「サン」、「SUN」の文字部分が「太陽、日光」等の意味合いを有し、「ケア」、「CARE」の文字部分が「注意、心配」の意味合いを有し、全体として「太陽の手入れ」、「日光の注意」程度の意味合いを看取させるとしても、その意味するところは、現実的でない不可能で意味不明なものであり、一般に知られ、親しまれて使用され、商品の効能、用途、品質等を表すものとは認められず、「サンケア/SUNCARE」が、一種の造語よりなるものといわざるを得ないとして、登録が認められている(甲第32号証)。
すなわち、本件においても、前記のように、「日焼け止め化粧品」の本来の目的は「紫外線の防止」であって、「太陽(「SUN」)のブロック」ではなく、引用商標が、「太陽をブロックする」というような意味合いを想起させるとしても、それは、「SUNCARE」同様、意味するところは、現実的でない不可能で意味不明なものであって、商品の品質表示としても使用されているとはいえないものと思料する。
したがって、本件商標はその著名な商号の一部である「DHC」部分とともに「サンブロック」部分も、自他商品識別機能を発揮する部分であるといえ、「DHC」部分が著名であるが故に、「DHC」の「サンブロック」であると理解されることには疑う余地もなく、著名な部分を分離、抽出して、引用商標との類否判断をされるべきである。
以上より、本件商標からは「ディーエイチシーサンブロック」の称呼の他、「サンブロック」の称呼も生ずる。
一方、引用商標は、前記第2のとおりの構成からなり、その表記から「サンブロック」の称呼が生ずる商標である。
(2)本件商標が分離判断されるべき点について
本件商標が「DHC」部分と「サンブロック」部分とに分離判断される点については、以下に述べる理由からも、明らかである。
すなわち、本件商標のうち、「DHC」の欧文字部分は、商標権者である「株式会社ディーエイチシー」の商号の英語表記として需要者に広く知られた、周知・著名なものである。(甲第4号証)
すなわち、かかる商標権者の商号の英語表記である「DHC」は、商標権者を表す基本商標として、全商品に使用される性質のものであり、商標権者に係る代表的出所標識として広く知られた周知・著名なハウスマークというべきである。
一方、本件商標中「サンブロック」部分は、かかる周知・著名な商標権者たる「DHC」の取り扱いにかかる個別の商品の出所標識として独立して認識される部分というべきである。
したがって、本件商標における「DHC」の文字部分は、商標権者の業務主体を表す周知・著名な代表的出所表示標識として把握される部分であることから、本件商標の構成においては分離判断され、それのみで独立して認識される部分となる一方、「サンブロック」の文字部分においても、商標権者の取り扱いに係る個別の商品商標として、独立して認識される部分となると思料する。
以上のことから、商標権者に係る代表的出所標識として広く知られた周知・著名なハウスマークである「DHC」の文字部分と商標権者の取り扱いに係る個別の商品商標である「サンブロック」の文字部分をそれぞれその構成中に含む本件商標は、それぞれの部分が、独立して取引の対象となる要部となる。
そして、かかるそれぞれの要部は、いずれも他の商標との類否判断の対象となる部分といえ、したがって、かかる点からも本件商標からは、「ディーエイチシー」及び「サンブロック」のそれぞれの称呼をも生ずるものというべきである。
(3)引用商標と本件商標の類否について
上記で述べたとおり、本件商標から、「サンブロック」の称呼が生ずる一方、引用商標からも同様に「サンブロック」の称呼が生ずるものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼上、類似する商標というべきである。
また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品中「化粧品」は同一又は類似することが明らかであり、また引用商標は本件商標の登録出願日である平成15年7月16日以前に登録出願されたものである。
(4)過去の審決例について
上記に述べた判断は、商標が分離判断される結果、互いに類似するとした、平成12年(行ケ)第461号審決取消請求事件(甲第5号証)、平成4年(行ケ)第218号審決取消請求事件(甲第6号証)、平成6(行ケ)第32号審決取消請求事件(甲第7号証)からも、明らかである。
さらに、昭和57年審判第16169号外9件の各審決においても、周知・著名商標以外の部分から独立の称呼が生じる結果、商標が互いに類似すると判断されている(甲第8号証ないし甲第17号証)。
また、引用商標と本件商標とが称呼上類似する商標というべきことは、特許庁の審査基準上も明らかである(「商標審査基準の解説(第5版)」(工藤莞司著)甲第18号証)。
2 答弁に対する弁駁
(1)「サンブロック」の文字は、「日焼け止めクリーム(ローション)」の一般名称として取引界で普通に使用されているものではなく、自他商品識別機能を発揮することは明らかである。この点につき、改めて主張する。
ア 商標の「普通名称」の意義・判断基準について
被請求人は、「サンブロック」の文字が「日焼け止めクリーム(ローション)」の普通名称であると断じているが、そもそも如何なる基準に基づきこのように判断したのか不明である。
特許庁の工業所有権法逐条解説(甲第38号証)によると、「普通名称」は「取引界においてその名称が特定の業務を営む者から流出した商品又は特定の業務を営む者から提供された役務を指称するのではなく、その商品又は役務の一般的な名称であると意識されるに至っているものをいう」と定義されている。
そして、この認定の人的判断基準については、一般需要者及び取引者が特定の商品・役務の一般名称として認識しているかどうかを考慮するべきと考えるのが学説・判例の傾向である(甲第39号証ないし甲第43号証)。
よって、「サンブロック」の文字が我が国で「日焼け止めクリーム(ローション)」の普通名称か否かについても、かかる基準に基づき判断されるべきである。そして、乙第2号証ないし乙第28号証を検討したところ、そのいずれも、被請求人の主張を裏付けるものとは到底いえないと考えるので、以下に請求人の考えを述べることとする。
イ 乙第2号証ないし乙第28号証について
(ア)乙第2号証ないし乙第17号証
乙第2号証ないし乙第17号証(乙第15号証を除く)は、「sun block」の欧文字が「日焼け止めクリーム(ローション)」の訳語で記載されている英和・和英辞書の該当部分の写しである。これらの文献は、「sun block」が「日焼け止めクリーン(ローション)」という意味を有する英単語であることを示してはいるものの、我が国の一般取引者・需要者の間で「日焼け止めクリーム(ローション)」の一般名称として認識されていることを直ちに立証するわけではない。
また、乙第15号証は、医学用語辞典の該当部分の写しであるが、医学用語「サンスクリーン」の訳語が「sun block」であることを示すに留まり、上記と同様に、「サンブロック」の文字が、我が国において、実際に一般名称として普及していることを立証するわけではない。
さらに付言すれば、ある文字が多くの辞書や学術書等に定義や一般名称的に掲載されていることのみをもって、その文字が普通名称化したと直ちに判断はできないと考える(甲第41号証及び甲第42号証)。
我が国の商標権者には、そもそも普通名称的な使用に対する差止請求権又は登録商標である旨の表示請求権といった法的に明確な権利はない。また一般消費者は、商標とか普通名称とかの知識が乏しいのが一般であるから、辞書や学術書での掲載のみをもって普通名称化を認定するのは妥当でないと考える。
かかる考えは、過去の判例でも支持されている。たとえば、登録商標「サークライン」に関する商標無効審判の審決取消請求事件(甲第44号証)に鑑みれば、辞書や技術文献等における「サンブロック」の文字の掲載事実を挙げることは、該文字の普通名称化の有無を認定するに際し無意味であると考える。
(イ)乙第18号証及び乙第19号証
乙第18号証及び乙第19号証は、それぞれ、「知恵蔵」の2003年及び2006年度版の「サンブロック」の説明箇所の写しである。
被請求人は、かつて請求人が「この機会に発行会社に対し当社の登録商標であることを申し入れることにしたい」と判定2004-20006において述べたことに言及し、「一般的な社会状況を熟知している出版社において『サンブロック』は既に普通名称として確立していると判断したものと考えられる」と勝手に推測している。
しかしながら、このような主張は、なんら裏づけを取ることなく、あたかも請求人が実際に申し入れを行ったにもかかわらず出版社により無視されたかのような誤認を与えるものであり、撤回されるべきである。
実際のところ、請求人は、諸般の事情により同社への申し入れを行っていないのであり、「出版社において『サンブロック』は既に普通名称として確立していると判断」されたわけではない。
また辞書や専門書等での掲載のみをもってある文字の普通名称化を認定するのは妥当でないことは上述したとおりであるから、「サンブロック」の語が「知恵蔵」の2003年版に引き続き2006版にも掲載されているからといって、直ちに「サンブロック」が普通名称であると認定されるべきではない。
(ウ)乙第20号証の1ないし乙第25号証
乙第20号証の1及び乙第20号証の2は、「SUNBLOCK」の文字の権利不要求を宣言した米国での登録商標を示し、乙第20号証の1ないし乙第23号証は、指定商品に「Sunblock preparations」を含む米国の登録商標を示している。しかしながら、これらはいずれも、これらの登録当時(1999年から2002年ごろ)に、米国で欧文字「sunb1ock」が商品表記として使用されていたことを示すにすぎず、本件商標の設定登録当時(2005年3月25日)に、我が国で、「サンブロック」が「日焼け止めローション(クリーム)」を示す普通名称として使用されていることを立証するわけではない。
また、乙第24号証は、米国特許商標庁で「sunb1ock」の記載が許容されたことを示す同庁のサイトの写しであり、乙第25号証は、「sunb1ock」の用語をオンラインの英英辞典で検索したページの写しである。しかし、いずれの証拠も「サンブロック」の文字が我が国で「日焼け止めローション(クリーム)」の普通名称と認識されていることを証左するものではない。
(エ)乙第26号証の1ないし乙第26号証の4
乙第26号証の1ないし乙第26号証の4は、米国とフランスを基礎とする国際特許出願の公表特許公報である。しかし、これらは、化学研究という技術分野で「sunblock」が組成物を意味する専門用語として用いられていることを示すにとどまり、我が国の化粧品の取引界において「サンブロック」の文字が一般名称として普通に使用されていることを示唆するものではない。
(オ)乙第27号証の1ないし乙第27号証の7
乙第27号証の1は、有限会社銀座赤レンガという会社が「Sun B1ock」を通販していること、乙第27号証の2は、アベンヌというメインブランドの下で「アベンヌサンブロック」が楽天市場で紹介されていること、乙第27号証の3は、株式会社フリーゾーンという会社が「野がいこ」という商品に「サンブロックミニ」という商品をセット販売していること、乙第27号証の4は、Sun Pharmaceuticals Corp社という者の「バナナボートウルトラサンブロック」という商品が個人輸入によってHapima.comという通販サイトで紹介されていること、乙第27号証の5及び乙第27号証の6は、乙第27号証の3と同様の商品が、それぞれ、シルキーズ、びーけんどっとこむという名の通販サイトで、過去に販売されていた(証拠には、販売を中止している旨の記載がある)こと、乙第27号証の7は、「サンブロック(日焼け止め)」の文字がケンコードットコムというサイトに記載されていたことをそれぞれ示す。
このうち、乙第27号証の2は、請求人がその関連会社をして引用商標を使用させている事例であり、我が国でも著名な通販・情報サイトである楽天市場で販売されているものである。よって、「サンブロック」の文字の自他商品識別機能を否定する証拠にはならない。
その他の証拠についても、そこに掲載されているいずれの販売・製造事業者も化粧品の取引分野で広く知られている事業者とは到底いえず、実際に掲載商品を一般消費者へ販売した実績があるのかさえ不明である。仮に販売実績があったとしても、販売数量、販売期間、販売地域などが立証されていないのであるから、乙第27号証の1ないし乙第27号証の7(乙第27号証の2を除く)から「サンブロック」又は「Sunblock」の文字が「日焼け止めクリーム(ローション)」の一般名称として一般取引者・需要者の間で認識されていると判断することは不可能である。
(カ)乙第28号証
乙第28号証は、請求人の商標「デュアルサンブロック」が拒絶査定を受けた出願経過を示すものである。しかし、請求人は、本拒絶査定に対し、現在、拒絶査定不服審判にて争っており、「デュアルサンブロック」の文字が識別性を有さないとの最終判断が確定したわけではない。また、当該商標は、片仮名文字の「デュアルサンブロック」を一連に表してなり、本件商標及び引用商標のいずれとも構成態様が異なる商標であるから、「サンブロック」の文字の識別性の有無を判断する本件とは事案を異にする。よって、乙第28号証に基づき、「サンブロック」の文字に識別性がないとする被請求人の主張は、到底首肯できない。
(キ)小括
以上のとおりであるから、乙第2号証ないし乙第28号証のいずれに証拠も、「サンブロック」の文字が我が国で「日焼け止めクリーム(ローション)」の普通名称であることを立証するものとは到底いえない。
ウ まとめ
上記のとおり、「サンブロック」の文字が「日焼け止めクリーム(ローション)」の普通名称であるとの被請求人の答弁は失当というべきである。
(2)本件商標と引用商標が類似しないとの被請求人の答弁について
ア 本件商標の要部について
本件商標中「サンブロック」の文字が「日焼け止め化粧品」との関係で自他商品識別機能を発揮しうることは上記(1)において請求人が述べたとおりであるから、本件商標より「サンブロック」の称呼が生じる可能性は十分あるというべきである。
さらに付言すれば、本件商標は、前半部分「DHC」と後半部分「サンブロック」がそれぞれ欧文字と片仮名文字という異なる文字種で表示されており、両部分を外観上常に一体的に記憶しなければならない特段の事情はない。
また、被請求人も認めているように(答弁書2頁)、前半部分の「DHC」は被請求人の周知・著名な商号の略称であるから、過去の特許庁における審査・審決例に鑑みれば(甲第5号証ないし甲第17号証)、本件商標に接する取引者・需要者は、「サンブロック」の部分を、被請求人の商品名として記憶すると考えるが自然である。
そうすると、やはり、本件商標は「サンブロック」の文字部分が分離して理解されると考えるのが妥当である。
イ 本件商標と引用商標との類似性について
上記のとおり、本件商標は、後半部分の「サンブロック」に相応して「サンブロック」の称呼をも生じるというべきである。また引用商標は、その文字に相応して「サンブロック」の称呼が生じることに争いはないから、本件商標は、引用商標と称呼において類似する商標と判断されて然るべきである。
3 以上のことから、本件商標は、登録出願日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品又はこれらに類似する商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号によって無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第45号証(枝番を含む。)を提出した。
1 本件商標と引用商標について
本件商標を構成する「DHC サンブロック」の文字は、「DHC」と「サンブロック」の文字との結合であるところ、「DHC」の文字は被請求人の商品の出所を示す標識であるばかりでなく、被請求人の組織及び製造・販売に係る製品を表徴する社標であり、化粧品業界における著名な商標の表示であるのに対し(乙第1号証)、「サンブロック」の文字は、英語の「日焼け止めクリーム(ローンヨン)」を意味する「SUNBLOCK」の読みを片仮名文字で表示してなるものであって(乙第2号証ないし乙第19号証)、商品「日焼け止めクリーム(ローション)」の普通名称を表示するものである。
さらに、「サンブロック」の原語表記である「SUNBLOCK」は、商品名として広く海外を含めて世界的に認識されていることからすれば(乙第20号証の1ないし乙第25号証)、例えば、該文字を「サンブロック商品売場」又は「サンブロック販売コーナー」等の如く用いても、特定のメーカーの商標表示とはいえないものである。
したがって、本件商標を構成する「サンブロック」の文字は、「日焼け止めクリーム(ローション)」を意味するものであるから、商品「化粧品」の範疇において「サンブロック」又は「SUNBLOCK」は自他商品の識別標識としての機能を有しているとは到底いえないものである。
このことは、上述の辞書(乙第2号証ないし乙第19号証)の記載に限るものではなく、以下の証拠にも基づくものである。
すなわち、我が国を指定国とする特許協力条約に基づく国際出願は、指定国段階で日本語への翻訳文を提出し、その内容は「公表特許公報」に掲載されるものである。しかして、係る公報によると「日焼け止め(剤)」を「サンブロック」と表し、「sunb1ock」の日本語訳として用いられている(乙第26号証の1ないし4)。つまり、上記特許出願に係る優先権主張国の明細書に「sunblock」の記載があったことがはじまりで我が国の公表特許公報にも「日焼け止め(剤)」という記載がなされたのであるから、「sunb1ock」が我が国だけでなく、海外においても普通名称として用いられていることの証左となるものである。
また、米国特許商標庁における商標電子調査によれば、登録商標(第1754782号)は、これを構成する「SUNBLOCK」の文字が「日焼け止め」を意味するとして、権利不要求の文字部分となっていることを確認でき(乙第20号証の1及び2)、同じく登録商標(第2264212号、当該商標は請求人が所有する商標である)は、その国際分類第3類の指定商品中の「日焼け止め剤」を「sunb1ockpreparation」と、請求人自らが指定しているものであって(乙第21号証の1及び2)、同様に請求人が所有する米国商標「SUNMEDIC」(登録第78187557号、乙第22号証)及び英国商標「IPSA」(登録第2180386号、乙第23号証)においても指定商品中に「sunb1ock」の表示があるものである。
そうとすると、「SUNBLOCK」の文字が国際的に「日焼け止めクリーム」「日焼け止めローション」等の化粧品を表示する普通名称となっていることは明らかなところであって、このことは、請求人においても充分に承知しているところである。
被請求人は上記主張の更なる根拠として、米国において「sunb1ock」が商品表示として認容可能であることを示す米国特許庁ホームページの該当頁(乙第24号証)、及び「sunb1ock」は「日焼けを防ぐ調合剤」を意味するとした米国の辞書の該当頁(乙第25号証)を提出する。
さらに、被請求人は、乙第18号証及び乙第19号証について付言する。
請求人は先の判定(判定2004-60006)において「知恵蔵2003」に「サンブロック[sun block]日焼け止め」と記載されていることについて、「知恵蔵2003に記載されていることについては請求人も気づいていなかったので、この機会に発行会社に対し当社の登録商標であることを申し入れることにしたい。」と主張していた(判定請求書)。
しかしながら、「知恵蔵2006」においても「サンブロック」の記載に変更はない(乙第19号証)。
そうとすると、請求人は「サンブロック」が登録商標であると認識しているとしても、一般的な社会状況を熟知している出版者において「サンブロック」は既に普通名称として確立していると判断したものと考えられるのである。
また、現在、化粧品の取引において、各化粧品会社が展示する商品「日焼け止めクリーム(ローション)」は、「サンブロック」と称され、普通に使用されている商品名であり普通名称でもある(乙第27号証の1ないし7)。
そして更に、被請求人は、請求人の出願商標「デュアルサンブロック」に対する特許庁の最新審査例によって、「サンブロック」に関する社会一般の認識を反映した審査がなされていることを証するものである(乙第28号証)。
したがって、本件商標を構成する「DHC サンブロック」の文字は、商品「日焼け止め化粧品」に使用する限り、該文字に相応して「ディーエイチシーサンブロック」の一連の称呼及び「DHCの日焼け止めクリーム(ローション)」の観念を生じ、又は、同じく「DHC サンブロック」の文字から、識別性を有しない「サンブロック」の文字部分を除いた「DHC」の文字部分に相応して「ディーエイチシー」のみの称呼及び観念を生ずるのであって、本件商標より「サンブロック」の称呼及び観念は生じないものである。
これに対し、引用商標は、その構成文字に相応して、「サンブロック」の称呼を生じ、「日焼け止めクリーム(ローション)」の観念を生ずるものである。
2 本件商標と引用商標が類似しないことについて
(1)称呼について
本件商標と引用商標は、上述の理由により、本件商標より「ディーエイチシーサンブロック」又は「ディーエイチシー」のみの称呼を生ずるものである。
そこで、この「ディーエイチシーサンブロック」又は「ディーエイチシー」と引用商標より生ずる「サンブロック」の称呼について比較すると、両称呼は、構成音数及び配列音を異にし、互いにその語感を全く異にする異質の称呼であり、互いに聞き誤るおそれがない別異の称呼として聴取されるものである。
ちなみに、本件商標と引用商標と同様、識別性がないか又は識別性の極めて薄い登録商標(α)と該登録商標を含む商標の対比について、αを含む商標からは、αの称呼を生じないと認定し、称呼上類似しないと認定された乙第29号証ないし乙第31号証のような審決例に徴しても明らかなところである。
同じく、本件商標と引用商標の関係と同様、登録商標を含む商標「リポビタンD/プラス」と登録商標「プラス」及び「PLUS」との対比について、両商標は類似しないと判断した審決(無効2000-35621)を支持した平成14年10月24日付け東京高裁の平成14年(行ケ)第79号の判決が存在する(乙32号証)。
本件商標についても、これらの審決例及び判決例と同様の認定がなされるべきものである。
さらに、請求人は、「サンブロック」に関する判定(判定2004-60006)の存在を主張するが、当該判定は、該文字使用に係る事件限りの判断であり、結果について反論する機会が与えられておらず、一事不再理の適用もないので、その結果に本事件が何ら拘束されることのないものである。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼において相紛れるおそれがないものである。
(2)観念について
本件商標と引用商標は、その構成いずれも前記のとおりであり、本件商標がその構成態様から「商標権者(DHC)の日焼け止めクリーム(ローション)」又は「商標権者(DHC)」を観念させるのに対し、引用商標は「日焼け止めクリーム(ローション)」を観念させるので、両者の意味合が全く異なるので、互いに観念を異にするものである。
したがって、本件商標と引用商標は、観念において相紛れるおそれがないものである。
(3)外観について
本件商標と引用商標は、いずれもその構成前記のとおりであり、本件商標が欧文字と片仮名文字からなり、引用商標が片仮名文字のみの表示であり、互いに構成文字の綴り字及び書体の態様を全く異にするのであるので、外観上において判然と区別されるものである。
したがって、本件商標と引用商標は、外観において相紛れるおそれがないものである。
2 まとめ
以上のように、本件商標は、引用商標と称呼、観念及び外観において非類似であり、指定商品が互いに抵触するとしても、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。

第5 当審の判断
1 本件商標について
(1)本件商標は、前記第1のとおり、標準文字で「DHCサンブロック」の文字を同大、等間隔で一連一体に書したものであるから、全体としては、「デイエッチシイサンブロック」の称呼を生ずるものである。
しかして、本件商標は、前半部が「DHC」の欧文字、後半部が「サンブロック」の片仮名文字という異種文字にて構成されているから、視覚上それぞれの部分が分離して認識、把握される場合があるといえるものである。
そこで、本件商標を構成する「DHC」と「サンブロック」の各文字について、以下、検討する。
(2)本件商標の「DHC」の文字部分について
本件商標中の前半部の「DHC」は、甲第4号証、乙第1号証及びテレビによる宣伝広告よりすると、商品「化粧品」の取引者、需要者をして、商標権者「株式会社ディーエイチシー」の商号の英語表記の著名な略称に相当すると認められる。
(3)本件商標の「サンブロック」の文字部分について
本件商標中の後半部「サンブロック」の文字部分についてみるに、以下の各辞典類、米国特許商標庁の商標電子調査システムによる米国商標例、英国商標例及びホームページにおける使用例等の記載が認められる。
ア 各辞典類
(ア)「小学館ランダムハウス英和大辞典(1994年1月1日 株式会社小学館発行)頁不明の「sun b1ock」の項に、「日焼け止め(クリーム,ローション)」の記載があること(乙第2号証)。
(イ)「新グローバル英和辞典」(1994年1月15日 株式会社三省堂発行)1356頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止めクリーム」の記載があること(乙第3号証)。
(ウ)「新英和中辞典」(1994年11月 株式会社研究社発行)1799頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止めクリーム〔ローション〕」の記載があること(乙第4号証)。
(エ)「英和中辞典」(1994年11月28日 株式会社講談社発行)2036頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止めクリーム」の記載があること(乙第5号証)。
(オ)「プログレッシブ英語逆引き辞典」(1999年7月1日 株式会社小学館発行)167頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止め(クリーム,ローション)」の記載があること(乙第6号証)。
(カ)「リーダーズ英和辞典」(1999年5月 株式会社研究社発行)2467頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止め(クリーム)《sunscreenよりも効果が強い》」の記載があること(乙第7号証)。
(キ)「研究社 医学英和辞典」(1999年7月 株式会社研究社発行)1188頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止め(クリーム)(cf.SUNSCREEN)」の記載があること(乙第8号証)。
(ク)「大きな活字のコンサイス英和辞典」(2002年4月20日 株式会社三省堂発行)1770頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止めクリーム」の記載があること(乙第9号証)。
(ケ)「研究社新英和大辞典」(2002年3月 株式会社研究社発行)2463頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止めクリーム」の記載があること(乙第10号証)。
(10)「グランドコンサイス和英辞典」(2002年6月20日 株式会社三省堂発行)1918頁の「日焼け止め」の項に、「sunscreen;a sun b1ock(er)/日焼け止めクリーム」の記載があること(乙第11号証)。
(コ)「新和英中辞典」(2002年9月 株式会社研究社発行)1568頁の「ひやけ【日焼け】」の項に、「日焼け止め(クリーム)sun screen;sun b1ock」の記載があること(乙第12号証)。
(サ)「図解英和大辞典」(2002年12月20日 株式会社マクミラン ランゲージハウス発行)898頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止めクリーム〔ローション〕」の記載があること(乙第13号証)。
(シ)「プログレッシブ英和中辞典」(2003年1月1日 株式会社小学館発行)1854頁の「sun b1ock」の項に、「日焼け止め(sunscreen)」の記載があること(乙第14号証)。
(ス)「医学書院 医学大辞典」(2003年3月1日 株式会社医学書院発行)967頁の「サンスクリーン〔sunscreen,sun b1ock〕」の項に、「…日焼け止め…」の記載があること(乙第15号証)。
(セ)「研究社 新和英大辞典」(2003年7月 株式会社研究社発行)2223頁の「ひやけどめ【日焼け止め】」の項に、「日焼け止めクリーム(a)sun b1ock」の記載があること(乙第16号証)。
(ソ)「ジーニアス英和辞典」(2007年4月1日 株式会社大修館書店発行)1910頁の「sun b1ock」の項に、「サンブロック(sunscreen)(紫外線を防ぐ日焼け止めクリーム・オイルローション)」の記載があること(乙第17号証)。
(タ)「知恵蔵/2003」(2003年1月1日 朝日新聞社発行)1221頁の「サンブロック」の項に、「[sun b1ock]日焼け止め」の記載があること(乙第18号証)。
(チ)「知恵蔵/2006」(2006年1月1日 朝日新聞社発行)1167頁の「サンブロック」の項に、「[sun b1ock]日焼け止め」の記載があること(乙第19号証)。
イ 米国特許商標庁の商標電子調査システムによる米国商標例及び英国商標例
(ア)2007年10月26日付け打ち出しの「米国特許商標庁の商標電子調査システムによる米国商標(登録第1754782号)(抄訳)」の文字『SUNBLOCK』」の「権利不要求」の項(訳文)に、「マーク全体とは別個に『SUNBLOCK』を独占的に使用する権利を要求しない。」の記述があること(乙第20号証の1)。
(イ)2007年10月26日付け打ち出しの「米国特許商標庁の商標電子調査システムによる米国商標『IPSA』(登録第2264212号)」の「商品/役務」の項(原文及び訳文)に、「(国際分類第3類)…、「sunb1ock preparation」が「日焼け止め剤」訳されていること、及び「商標権者」の項(訳文)に、請求人の名称の記載があること(乙第21号証の1)。
(ウ)2007年10月26日付け打ち出しの「米国特許商標庁の商標電子調査システムによる米国商標『SUNMEDIC』(出願番号78187557)」(訳文)の「指定商品/役務」の項に、「(国際分類第3類)…、即ち日焼け止め(sunscreen,sun b1ock)、…」と記載されていること、及び「出願人:」の項に、請求人の名称の記載があること(乙第22号証)。
(エ)2007年10月26日付け打ち出しの「英国商標『IPSA』(登録第2180386号)」(訳文)の「指定商品(役務)」の項に、「(第3類)…、日焼け止め(sun b1ocks)」と記載されていること、及び「商標権者」の項に、請求人の名称の記載があること(乙第23号証)。
ウ 2007年10月26日付け打ち出しのホームページ(http://www.014kenko.com/item_sunblock.htm)に、「サンブロック」(日焼け止め)」として使用されている事例があること(乙第27号証の7)。
(4)以上よりすると、各事典類においては、欧文字「sun b1ock」が「日焼け止めクリーム(ローション)」の意味を有し、「sunscreen」と同意義として用いられ、「sun b1ock」が「sunscreen」より効果が強い(乙第7号証)とも記述されていること、及び「sun b1ock」が「サンブロック」と表記され、「日焼け止めクリーム」若しくは「日焼け止め」と記載されていること(乙第17号証ないし乙第19号証)が認められる。
また、米国特許商標庁の商標電子調査システムによる米国商標例及び英国商標例において、「SUN BLOCK」の文字部分について、「独占的に使用する権利を要求しない」旨の記述(乙第20号証の1)、「sunscreen,sun b1ock」が国際分類第3類中の「日焼け止め」であるとされていること(乙第22号証及び乙第23号証)が認められる。
さらに、ホームページにおける使用例において、「サンブロック(日焼け止め)」として使用されている事例(乙第27号証の7)が認められる。
そうすると、「サンブロック」の片仮名文字は、「sun b1ock」若しくは「sunscreen」と英語表記され「日焼け止め」、「日焼け止めクリーム(ローション)」の意味を有するといえるものであり、しかも、少なくとも米国、英国の商標例中の商品表示として、「sun b1ock」が用いられている登録商標及び出願例における商標権者又は出願人が、本件審判請求の請求人であることからすると、「サンブロック」が上記意味において用いられていることを請求人自身においても充分に承知していると推認せざるを得ない。
(5)以上に加えて、指定商品を「日焼け止め化粧品」とする本件商標と「サンブロック」の文字との関係からしても、本件商標の構成中の「サンブロック」の文字は、本件商標の登録査定時においては「日焼け止め」或いは「日焼け止め用」の意味合いで、商品「化粧品」の用途を表示するものといわざるを得ない。
そうすると、本件商標の構成中の「サンブロック」については、自他商品識別力が極めて弱いか、若しくは自他商品識別標識としての機能を果たし得ないというのが相当であるから、本件商標の指定商品「日焼け止め化粧品」に係る取引者・需要者は、本件商標の構成中の「サンブロック」の文字部分より生ずる「サンブロック」のみの称呼をもって取引には当たらないというべきである。
(6)してみれば、本件商標は、「DHCサンブロック」の文字全体に相応して「ディーエイチシーサンブロック」の称呼を生じ、また、その要部である「DHC」の文字部分より「ディーエイチシー」の称呼をも生じる全体として特定の観念を有しない造語というが相当である。
2 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とは、前記第1及び第2のとおりであって、前者よりは「ディーエイチシーサンブロック」又は「ディーエイチシー」の称呼を生じるのに対し、後者よりは「サンブロック」の称呼を生ずるものである。
そうすると、本件商標より生ずる「ディーエイチシーサンブロック」又は「ディーエイチシー」の称呼と、引用商標より生ずる「サンブロック」とは、それぞれ構成音数、構成音が明らかに異なる称呼上類似しない商標というべきである。
また、本件商標と引用商標の構成は、前記第1及び第2のとおりであるから、外観上は判然と区別し得るものであり、観念においては、本件商標が特定の観念を有しない造語であるから、両者は比較することができないものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、その称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
3 請求人の主張について
請求人は、「日焼け止め化粧品」を示す英語・片仮名文字として一般的に使用されているのは、「UV対策」、「UV CUT」等であって、「日焼け」を英語にした場合には「SUNBURN」、若しくは「SUNTAN」であって(甲第20号証ないし甲第24号証)、「サンブロック」は「日焼け」又は「日焼け止め」の化粧品の種類を示す普通名称ではなく、それ故、化粧品の種類を示す一般名称としては、辞書等にも掲載がされていない(甲第19号証ないし甲第30号証)旨、さらに、判定(判定2004-60006)において、自他商品の識別機能を発揮するものと認められており、また、他の審決、判決例を挙げ、引用商標が他の商標との類否判断の対象となる旨主張している。
確かに、請求人の主張のとおり、紫外線との関係で「UV対策」、「UV CUT」等の語が用いられ、また、「SUNBURN」若しくは「SUNTAN」の語が「日焼け」又は「日焼け色」について、それぞれ使用されていることは認められるとしても、上記1(2)ないし(5)のとおり、英語の「sun block」は、「日焼け止め」の意味をもって使用されているものであり、また、本件商標中の「サンブロック」の文字は、該英語の「sun block」の表音の片仮名表記と認められ、「日焼け止め」の意味を有することも上記のとおりである。
さらに、「サンブロック」の文字を本件商標の指定商品「日焼け止め化粧品」との関係においてみると、「サンブロック」の語が商品の普通名称か否かは別として、少なくとも本件商標の登録査定時においては、取引者、需要者をして、「『日焼け止め』に用いる『化粧品』」の意を認識させるものであって、自他商品識別力が極めて弱いか、若しくは自他商品識別標識としての機能を果たし得ず、要部となり得ない部分というのが相当である。
さらにまた、ある商標が、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るか否かの判断時は、通常その商標の登録査定時において、当該商標の構成態様と指定商品とに基づいて、個別具体的に判断されるべきものであって、構成、態様の異なる審決例、判決例が存在することによって、その商標の識別力が左右されるものではないし、また、判定例については、その判定に常に拘束されるものではなく、上記のとおりに判断すべきであるから、申立人のこれらの主張は採用することができない。
なお、被請求人は、平成20年4月11日付けで審理再開の申立てをし、同年同月28日付けで答弁書を提出しているところ、その内容を参酌するも、前記判断に影響を与えるものとみることはできないから、審理再開の必要は認めないものとする。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-03-27 
結審通知日 2008-04-01 
審決日 2008-05-23 
出願番号 商願2003-59782(T2003-59782) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (Y03)
T 1 11・ 26- Y (Y03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉山 和江 
特許庁審判長 小林 和男
特許庁審判官 石田 清
小川 きみえ
登録日 2005-03-25 
登録番号 商標登録第4849407号(T4849407) 
商標の称呼 デイエッチシイサンブロック、デイエイチシイサンブロック、デイエッチシイ、デイエイチシイ、サンブロック 
代理人 萼 経夫 
代理人 宮川 美津子 
代理人 田中 克郎 
代理人 舘石 光雄 
代理人 稲葉 良幸 

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