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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y03
審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y03
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y03
管理番号 1180944 
審判番号 無効2007-890076 
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-06-07 
確定日 2008-06-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4825593号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4825593号商標(以下「本件商標」という。)は、平成16年4月9日に登録出願、「ニュートラコスメティクス」の文字を標準文字で表してなり、第3類「化粧品」を指定商品として、同年12月17日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録は無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第35号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求人の引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4106638号商標(以下「引用商標1」という。)は、「NEUTRA」の欧文字と「ノイトラ」の片仮名文字とを上下二段に書してなり、平成8年6月18日に登録出願、第3類「せっけん類,化粧水,クリーム,頭髪用化粧品,その他の化粧品」を指定商品として、同10年1月30日に設定登録され、その後、同19年11月13日に商標権存続期間の更新登録がなされ、同第663717号商標(以下「引用商標2」という。)は、「Neutrogena」の欧文字を横書きしてなり、昭和38年10月3日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同40年1月7日に設定登録され、その後、同50年5月26日、同59年12月14日、平成7年2月27日及び同16年9月7日の四回にわたり、商標権存続期間の更新登録がなされ、また、指定商品については、平成16年11月17日に指定商品の書換登録があった結果、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品」となっている。(以下、まとめていうときは「引用商標」という。)
2 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
(イ)本件商標は、「ニュートラコスメティクス」の文字からなるところ、その構成文字中、後半の「コスメティクス」の文字は、「化粧品」の意を有する「COSMETICS」の表音として容易に理解され、商品の品質を表す文字として認識されるものであるから、本件商標にあって自他商品の識別標識としての機能を果たすのは前半の「ニュートラ」の文字部分であるといわざるを得ない。したがって、本件商標は、「ニュートラ」の文字に相応する「ニュートラ」の称呼を生ずるものというべきである。
一方、引用商標1は、「NEUTRA」の欧文字及び「ノイトラ」の片仮名文字を上下二段に書してなるところ、上段の欧文字は、世人一般に親しまれている英語の「NEUTRAL」が「ニュートラル」と発音されるのにならって、「ニュートラ」と称呼されるものとみるのが自然であるから、引用商標1は、「ニュートラ」の称呼をも生ずるものというべきである。
してみると、本件商標と引用商標1は、「ニュートラ」の称呼を同じくする類似の商標であることは明らかである。
(ロ)引用商標2を構成する文字は、請求人の名称「Neutrogena Corporation」の略称(法人等の意味を表す「Corporation」を略したもの)を表したもので、「ニュートロジーナ」の称呼を生ずるものであることは明らかである。しかして、この称呼は7音にも及ぶ長い称呼であって「ニュートロ」と「ジーナ」の間に段落を生ずるから、これは単に語頭の「ニュートロ」と略称される場合も決して少なくないものである。すなわち、化粧品を取り扱う業界において、引用商標2は、「ニュートロ」と略称をもって取引に資される場合も少なくないのが実情であるから、引用商標2は、「ニュートロ」の称呼をも生ずるというべきである。
そして、本件商標から生ずる称呼「ニュートラ」と引用商標2から生ずる称呼「ニュートロ」は、4音中、前方からの3音を同じくし、わずかに末尾において「ラ」の音と「ロ」の音の差異があるにすぎず、しかも該差異音は、ともに同行音に属し、子音を同じくするばかりでなく、「ラ」の音の母音と「ロ」の音の母音は、近似した母音であるから、両称呼は、極めて相紛らわしいものといわざるを得ない。
したがって、本件商標と引用商標2も、その称呼上、互いに類似する商標であるというべきものである。また、本件商標の指定商品が、両引用商標の指定商品に含まれているものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第10号又は同第15号について
請求人は、引用商標2のほか、「NEUTROGENA」の欧文字を語頭に配した構成に係る多数の登録商標(以下「請求人使用商標」という、甲第4号証ないし甲第21号証)をも所有し、1963年頃より我が国においても化粧品に継続して使用しており(甲第22号証ないし甲第31号証)、引用商標2は、請求人のいわゆるハウスマークとして、化粧品の取引者及び需要者の間に広く認識されるに至っているところであり、「ニュートロジーナ」の称呼の生ずるこれらは、単に「ニュートロ」と略称されて取引に資される場合も少なくない。
本件商標は、「ニュートラコスメティクス」の文字からなるものであるが、その構成文字中、後半の「コスメテイクス」の文字は単に商品の品質をあらわす語であるから、本件商標は、これがその指定商品「化粧品」に使用された場合、前半の「ニュートラ」の文字部分が自他商品の識別標識として認識され、かつ、その文字に相応する「ニュートラ」の略称をもって取引に資される場合も多いものというべきものである。
しかも、本件商標から生ずる称呼「ニュートラ」と請求人使用商標の略称(称呼)「ニュートロ」が極めて相紛らわしい関係にあることを詳述する。
(ア)Neutrogena商標の歴史
初めに、本件請求人の登録商標“NEUTROGENA”の我が国における沿革と、当該商標の著名となった経緯について述べる。
その立証として、請求人は、その所有に係る前述の引用商標2の登録無効審判事件、昭和52年審判第1236号の審決公報(甲第32号証)を援用する。
引用商標2は、昭和38年(1963)10月3日の出願であって、同40年(1965)1月7日の登録に係り、旧第4類「せっけん類,歯みがき,化粧品」を指定商品とし、活字体の“Neutrogena”の標章よりなるものである(甲第33号証)。
本審決を最先に挙証したのは、現在をさかのぼる約40年も以前より、Neutrogena、称呼「ニュートロジエナ」の各商標が著名であったことを示すためのものである。
引用商標2の登録原簿(甲第33号証)より明らかなように、昭和52年(1977)2月に、ベルギー国法人より無効審判が提起されており、その請求人は、本件商標は北米並びにヨーロッパ各国で著名であり、我が国においても昭和28年(1953)以降、花王石鹸株式会社、株式会社資生堂、ライオン油脂株式会社等化粧品業界の各社で販売され、昭和38年(1963)以前に周知著名であったと主張した。なお、本請求人の他の主張、すなわち、本件の現権利者への譲渡における不正行為のあったとの主張は、立証が無く、審決で退けられている。
しかし、その当業界において、昭和28年(1953)以降、既に著名であったという主張は、登録権利者自身の主張でなく、客観的立場にあるべき本件外の第三者たる本事件の請求人の主張であって、注目すべきものである。
(イ)引用商標2の第2回目、昭和59年(1984)及び第3回目平成6年(1994)の更新登録出願に添付された使用証明の写しをそれぞれ甲第34号証、甲第35号証として提出する。これらは、何れも当時、すなわち、1984年及び1994年当時の販売経路並びに主要商品なる軟質の乳幼児向け石けんを示すものである。すなわち、これら初期ともいえるころのNeutrogenaの主要製品は、肌に優しい、スキンケア、あるいは、乳幼児用の石けんであった。
(ウ)Neutrogenaの販売経路の変遷
Neutrogenaの商品が大々的に日本市場に販売を開始されたのは、昭和52年(1977)であり、当時は、持田製薬株式会社が販売先であった。この1977年は、上の(ア)で述べた無効審判の請求されたときであり、かつ、スキンケア石けんの宣伝の一環として、都内地下鉄全車輌に水着美人の広告が行われた。その後、Neutrogena製品の主販売先は、次のとおり変遷している。
1977年 持田製薬株式会社による販売開始
1988年 日本ニュートロジーナ社による引継ぎ
1992年 中央物産株式会社に販売権の移転
1995年 ジョンソン エンド ジョンソン社による販売開始
1999年 資生堂株式会社による提携販売の開始
2005年 ジョンソン エンド ジョンソン社によるFTS事業の移転
さらに、2000年より2004年までの広報関係資料は、甲22号証に示すとおりであり、宣伝費の最大は、1億4千万円、以後各回2000万円程度である。
この間の年間総売上高は、甲第23号証に示すとおりであって、最高は、2002年の5億6千7百万円であるが、他の年度は、約2億円位の売上げ状態である。
甲第25号証ないし甲第31号証に示すごとく、本商品は、各種の皮膚の手入れ用としてほぼ薬用ともいえる化粧品が主であり、総計19件もの登録を有していて、それぞれの特定用途に向け商標の開発を行っているが、主要部のNeutrogenaは、常に不変であって、著名性を維持している。 したがって、本件商標の出願時には、請求人の業務に係る商標として広く認識されていたものといい得る。
(エ)してみれば、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用するときは、これに接する取引者及び需要者が少なくとも引用商標2を連想、惹起して、その商品があたかも本件審判請求人の製造、販売等の業務に係る商品であるか、又は、同請求人と経済的、若しくは組織的に何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所について混同を生ぜしめるおそれがあるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号又は同第15号に該当する。
(3)結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、及び同第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の上記主張に対し、答弁していない。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「ニュートラコスメティクス」の片仮名文字よりなるものであるところ、その構成中の「コスメティクス」の文字は、「化粧品」を意味する親しまれた英語「COSMETICS」の表音片仮名表記であると容易に理解され、商品の品質を表す文字として認識されるものであるから、その指定商品との関係において、これよりは、一連の「ニュートラコスメティクス」の称呼の外、単に「ニュートラ」の称呼をも生ずるものというべきである。
これに対し、引用商標1は、「NEUTRA」の欧文字と「ノイトラ」の片仮名文字よりなるものであるところ、「ノイトラ」の片仮名文字がその称呼を特定しているものと無理なく認められるものであるから、これよりは、「ノイトラ」の称呼のみが生ずるものと認められ、格別の観念の生じない造語よりなるものというべきである。
また、引用商標2は、「Neutrogena」の欧文字なるものであるところ、これよりは、該文字に照応する「ニュートロジーナ」の称呼が生じ、格別の観念の生じない造語よりなるものと認められる。
そこで、本件商標と引用商標とを比較するに、本件商標と引用商標とは、外観において明らかに相違し、称呼においては、本件商標は、「ニュートラコスメティクス」又は「ニュートラ」であるのに対し、引用商標1は、「ノイトラ」であり、引用商標2は、「ニュートロジーナ」であるから、本件商標の「ニュートラコスメティクス」との比較においてはもとより、「ニュートラ」と「ノイトラ」、又は、「ニュートラ」と「ニュートロジーナ」との比較においても、構成音及び構成音数が明らかに相違し、十分に聴別し得るものである。
また、観念においては、引用商標が格別の観念の生じない造語よりなるものであるから、本件商標と比較すべきところがないものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれから見ても、何ら相紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、引用商標2を始めとする「Neutrogena」「NEUTROGENA」の文字を含む請求人使用商標(甲第4号証ないし甲第21号証)とは、前記1認定のとおり、商標において類似しないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号について
請求人は、引用商標2を始めとする請求人使用商標を所有し、1963年頃より、我が国において「化粧品」に使用し、ハウスマークとして、本件商標の出願日前より、その取引者・需要者の間に広く認識されるに至っていた旨述べているが、本件商標は、「ニュートラコスメティクス」であるのに対し、請求人使用商標は、「Neutrogena」「NEUTROGENA」であるから、前記1認定のとおり、商標において相紛れるおそれのない、別異の商標として印象づけられるものであるから、本件商標に接する需要者は、これより引用商標2及び請求人使用商標を想起又は連想することはないというのが相当である。
なお、請求人は、当該請求人使用商標は、単に「ニュートロ」と略称されている場合も少なくない旨述べているが、そのような事実は、何ら立証されていない。
してみれば、引用商標2を始めとする請求人使用商標が盛大に使用され、広く知られていることを認め得るとしても、本件商標が、本件指定商品について使用された場合に、請求人又は請求人と何らかの経済的、組織的に関係のある者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるということはできないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 以上よりすると、本件商標の登録は、商標法第4条第1項10号、同第11号及び同第15号の規定に違反してなされたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-01-10 
結審通知日 2008-01-17 
審決日 2008-01-30 
出願番号 商願2004-33873(T2004-33873) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (Y03)
T 1 11・ 271- Y (Y03)
T 1 11・ 25- Y (Y03)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 山口 烈
特許庁審判官 寺光 幸子
鈴木 新五
登録日 2004-12-17 
登録番号 商標登録第4825593号(T4825593) 
商標の称呼 ニュートラコスメティクス、ニュートラ 
代理人 杉村 興作 
代理人 西川 幸慶 

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