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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 Y29 審判 全部申立て 登録を維持 Y29 審判 全部申立て 登録を維持 Y29 |
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管理番号 | 1176092 |
異議申立番号 | 異議2007-900331 |
総通号数 | 101 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2008-05-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2007-07-13 |
確定日 | 2008-03-31 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5038085号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5038085号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5038085号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、平成18年3月20日に登録出願、第29類「クリームチーズ(塗るチーズ)」を指定商品として、同19年4月6日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人の引用する商標 本件登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件商標の登録の取消理由として引用した登録第3199855号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、平成5年11月11日に登録出願、「乳製品」を含む第29類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同8年9月30日に設定登録、同18年8月1日に商標権存続期間の更新登録、その後、商標登録の放棄により、同20年2月5日に抹消登録がされたものである。 3 登録異議の申立ての理由の要点 申立人は、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)理由の要約 本件商標の構成中、「REQUEIJAO」(「A」の上には記号「チルダ(?)」が付されている:以下同じ。)は、引用商標「REQUEIJAO」(「A」の上には記号「オーバーライン(-)」が付されている:以下同じ。)と構成文字の綴りが同一であるから、同一の称呼及び観念を生じ、かつ、「REQUEIJAO」の綴字の外観において類似する。 また、引用商標の指定商品中、「乳製品」は、本件商標の指定商品と同一又は類似である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきである。 (2)詳細な理由 (ア)両商品の類似について 本件商標の指定商品は、「クリームチーズ(塗るチーズ)」であり、引用商標の指定商品中、「乳製品」とは商品の製造者、販売者、需要者を同じくするので、両商品は類似する。 (イ)両商標の類似について (a)本件商標の構成中、上段に大書した「Agua na bocA」と「REQUEIJAO」との間には約3文字分の空白があるから、両文字は分断されており、全体として一連一体のものと看取されることはない。 また、下段に、「(REQUEIJAOはポルトガル語で“塗るチーズ”)」と書されているとしても、該文字は、上段の文字に比し、顕著に小さいことから、上段の文字のみが分離・抽出され、看取される。 (b)本件商標の商標権者は、その登録出願段階において、「『REQUEIJAO』はポルトガル語で『クリームチーズ』を意味する語であり、『スプレッドチーズ』、『塗るチーズ』と同意語である。本件商標は、『Agua na bocA REQUEIJAO』という欧文字の下に、『(REQUEIJAOはポルトガル語で“塗るチーズ”)』という文字が付加されているから、該『REQUEIJAO』の文字部分が商品名であることを取引者、消費者等に示しているものであり、実際の取引において、『アグアナボカ』、『アグアナボカリクエイジャオ』又は『アグアナボカヘケイジョン』の称呼をもって取引される。したがって、商品との関係においては、『REQUEIJAO』からのみ単独の称呼は生じないし、『REQUEIJAO』は、既に我が国において慣用商標となっている。それというのも、本件商標は、ブラジル人向けのマーケットで販売されている商品に使用されており、ポルトガル語で表示するからである。」という旨主張し、「REQUEIJAO」の識別性を否定している。 しかしながら、本件商標の商標権者が証拠として提出したポルトガル語小辞典と同じ出版社から発行されている「カナ発音 葡和小辞典」には、前記ポルトガル語小辞典中から頻度の多い語を選択した旨が記載されているものの、そこに「requeijao」の語の掲載はされていない。 よって、該語は、日常頻繁に使用されている語ではない。 (c)また、ポルトガル語の国語辞典には、「requeijao」(「a」の上には記号「チルダ(?)」が付されている:以下同じ。)について、「家庭や工場で生産される、加熱処理によって凝固させたクリームで作る一定の(特殊な)チーズ」といった旨の記載があるものの、「クリームチーズ」や「塗るチーズ」である旨の記載はない。 したがって、たとえ、一部の葡和辞典に「requeijao」の語が掲載されていたとしても、そのことにより、該語が我が国で日常頻繁に使用されていることにはならない。 (d)また、仮に、「requeijao」が「クリームチーズ」であるとする記載があったとしても、その記載はポルトガル語の国語辞典における「requeijao」の意味合いを忠実に訳したものではなく、やや飛躍した和訳となっているから、「requeijao」は、一義的に「クリームチーズ」や「塗るチーズ」を意味するものではない。 (e)さらに、インターネットにおいて、「REQUEIJAO」が「クリームチーズ」の検索によりヒットしたとしても、インターネットでは同一のサイトや同一会社の商品が重複してヒットすることから、それをもって、「REQUEIJAO」が我が国で慣用されているとはいい得ない。 (f)もっとも、「REQUEIJAO」が慣用されているのであれば、本件商標の構成中、「REQUEIJAO」の称呼は、「ヘケージョン」又は「ヘケイジョン」のみでなければならないところ、英語読み風の「リクエイジャオ」の称呼も認められるというのでは、「REQUEIJAO」の語が我が国では、むしろ慣用されていないことの証拠であり、そのとおりであるからこそ、その称呼が特定されていないのである。 (g)さらに、商標権者は、本件商標を付した商品がブラジル人向けのマーケットで販売されているということを理由に、「REQUEIJAO」の識別性を否定するが、本件商標の商標権は、日本全国に及ぶものであり、ブラジル人向けのマーケットのみに及ぶものではない。 したがって、「REQUEIJAO」の識別性は、我が国の全体(日本全国)を基準として判断すべきである。 (ウ)「REQUEIJAO」の語の我が国における浸透度 次に、「REQUEIJAO」の語が我が国において浸透しているか否かについて検討するに、そもそもポルトガル語自体、我が国の外国語専門大学や多国語を取り扱う外国語学校でなければ学ぶことのできない語であり、一般の大学で修得可能な第二外国語と異なり、特殊な言語である。 (a)しかも、我が国の国民が、特に、ポルトガル語に対して興味を持つような出来事が本件商標の登録査定時から現在に至るまで生じた事実はない。 (b)それに加えて、我が国で外国製チーズといえば、イタリア、スペイン、フランス、デンマーク、スイス産が多数を占めており、それらが我が国に輸入され、店頭でよく見かけられるのに対し、ポルトガル産やブラジル産のチーズは、ほとんど見かけない。 (c)さらに、ドイツ語と医薬品名、フランス語と化粧品名のように、取引の際、商品と言語との強い結び付きがあるものに比べると、ポルトガル語と乳製品との間には、そうした結び付きはない。 (d)してみれば、ポルトガル語は、我が国において親しまれた言語ではなく、本件商標の登録時に、「REQUEIJAO」が我が国において、商品の普通名称や慣用商標として知られていたとはいい難く、「REQUEIJAO」の語自体、我が国の国民にとっては、どこの国の言語かさえもわからない。 それゆえ、本件商標の構成中、「REQUEIJAO」の語の称呼が特定できないのと同様に、我が国の国民には、「REQUEIJAO」の正しい称呼さえもわからない。 (e)このように称呼のわからない「REQUEIJAO」に、小さな文字の「塗るチーズ」が付記されているとしても、ポルトガル語に慣れ親しんでいない我が国の国民にとっては、「REQUEIJAO」と「チーズ」、「クリームチーズ」又は「塗るチーズ」とは結び付かないから、「REQUEIJAO」は、一種の造語としか把握できない。 (f)さらに、申立人は、指定商品の普通名称を表す外国語が、我が国において、商品の普通名称等を表す語として一般に知られていない場合に、自他商品識別力を有すると判断された事例を挙げる(甲第6号証ないし甲第10号証(枝番号を含む。))。 これらの登録・異議決定・審決例は、「REQUEIJAO」が我が国では、一種の造語として認識され、自他商品識別力を有すると主張する申立人の正当性を立証するものである。 (3)したがって、本件商標の構成中、「REQUEIJAO」は、我が国の国民には、一種の造語として認識されるものであり、該文字部分は、引用商標と綴りが同一であるから、「ヘケイジョン」、「リクエイジャーオ」又は「レケイハーオ」等の同一の称呼を生じ、造語としても同一の造語と観念されるものであり、また、引用商標とは文字の外観においても類似するから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 3 当審の判断 (1)引用商標の商標権の抹消登録 商標登録原簿の記載によれば、引用商標の商標権は、上述2のとおり、平成20年2月5日に抹消登録されているものである。 しかしながら、これにより、本件登録異議の申立ての審理が左右されるものではない。 それというのも、本件登録異議の申立て後に、引用商標の商標権が抹消登録となっても、申立て時には適法に存在していたこと及び商標登録の放棄による効果は、遡及効でなく抹消登録日から将来に向けて生ずると解されるから、本件の審理に何らの影響も及ぼさない。 そこで、以下、本案に入って審理する。 (2)本件商標と引用商標の類否 本件商標は、別掲(1)に示すとおり、大書した「Agua na bocA REQUEIJAO」の欧文字と小書きした「(REQUEIJAOはポルトガル語で“塗るチーズ”)」の文字とを上下二段に横書きした構成よりなり、第29類「クリームチーズ(塗るチーズ)」を指定商品とするものである。 これに対し、引用商標は、別掲(2)に示すとおり、「REQUEIJAO」の欧文字を横書きしてなり、「乳製品」を含む第29類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品とするものである。 そして、引用商標の指定商品は、本件商標の指定商品を含むものである。 そこで、本件商標と引用商標との類否について検討するに、本件商標の構成中、上段の「REQUEIJAO」の文字は、下段の記述「(REQUEIJAOはポルトガル語で“塗るチーズ”)」により、自他商品の識別機能を打ち消されているから、本件商標は、その全体の構成文字より生ずる「アグアナボカヘケイジョン」という一体の称呼のほかに、自他商品識別力を発揮する主要部と認識される「Agua na bocA」の文字に相応し、「アグアナボカ」の称呼をも生ずるとみるのが相当である。 そうとすれば、本件商標より「ヘケイジョン」のみの称呼及び全体としての観念を生じないといえるから、「REQUEIJAO」の文字を書してなり、「ヘケイジョン」の称呼を生ずる引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても、非類似の商標であるといわなければならない。 (3)取引界の実情 本件商標の審査段階において提出された参考資料1(株式会社大学書林平成16年5月30日第127版発行「ポルトガル語小辞典」の443頁)には、「requeijao」は、「クリームチーズ」と明記されていることが認められるだけでなく、職権により調査したところによれば、インターネットの記事として、例えば、(a)「ブラジルクリームチーズ!日本国内で作られているヘケイジョン。ポルトガル語で"ぬるチーズ"。」「ブラジル ヘケイジョン クリーミィ塗るチーズ 150g REQUEIJAO ブラジルクリームチーズ! 日本国内で作られているヘケイジョン!Requeijaoはポルトガル語で"ぬるチーズ"ブラジルの朝食には欠かせない!」(http://www.links-kk.co.jp/shopdetail/005007000003/order/)(b)「ほんとうは、クリームチーズではなく『Requeijao(ヘケイジョン)』というチーズを使うのですが、日本ではそれにあたるチーズが思い当たらないのでクリームチーズで代用しちゃいます。Requeijaoは、プロセスチーズとクリームチーズの中間のような味で、クリーミーなタイプの(塗るタイプのような)チーズです。」(http://cookpad.com/tomohi/recipe/254424/)等というように、「Requeijao」がポルトガル語で「クリームチーズ」あるいは「塗るタイプのチーズ」であることを示す記載が多数見受けられる。 そうすると、たとえ、我が国に馴染みのないポルトガル語であっても、本件商標は、その構成中に、「(REQUEIJAOはポルトガル語で“塗るチーズ”)」の文字が表示されていることより、これに接する取引者等は、「REQUEIJAO」の文字を「塗るチーズ」の意味の語として認識するというのが相当であり、また、上述のとおり、「REQUEIJAO」の文字は、食品「クリームチーズ(塗るチーズ)」の普通名称として取引者等の間で知られていることが否定し得ない以上、該語が独立して自他商品の識別力を発揮するとみることはできないといわなければならない。 (4)むすび したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとはいい得ないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 (1)本件商標 (2)引用商標 |
異議決定日 | 2008-03-12 |
出願番号 | 商願2006-24962(T2006-24962) |
審決分類 |
T
1
651・
262-
Y
(Y29)
T 1 651・ 261- Y (Y29) T 1 651・ 263- Y (Y29) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 平松 和雄 |
特許庁審判長 |
山口 烈 |
特許庁審判官 |
鈴木 新五 寺光 幸子 |
登録日 | 2007-04-06 |
登録番号 | 商標登録第5038085号(T5038085) |
権利者 | 有限会社アグア ナ ボカ |
商標の称呼 | アーガナボッカヘケージャオン、アーガナボッカ、アグアナボカ、ヘケージャオン、レクエージャオ、リクエージャオ、ヘケージャオンワポルトガルゴデヌルチーズ |
代理人 | 瀧野 文雄 |
代理人 | 垣内 勇 |
代理人 | 館石 光雄 |
代理人 | 今井 貴子 |
代理人 | 萼 経夫 |
代理人 | 瀧野 秀雄 |