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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 035
管理番号 1157534 
審判番号 取消2002-30975 
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2002-08-12 
確定日 2007-05-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第3102644号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3102644号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3102644号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成4年9月29日に登録出願され、第35類「経営の診断及び指導,商品の販売に関する情報の提供」を指定役務として、平成7年12月26日に設定登録、その後、平成18年4月28日付けで商標権存続期間の更新登録がなされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べている。
1 請求の理由
商標権者は、本件商標の出願中である平成6年10月19日に商号をアトミクス株式会社に変更している。このため、本件商標は、本審判請求前3年の間使用されていないものと思われる。
2 弁駁の理由
(1)乙第1号証及び乙第2号証(枝番号を含む。)について
乙第1号証の1及び2は、願書及び使用説明書であって、使用事実を証明するものではない。
また、乙第2号証は、商標使用許諾契約書であり、直接使用を証明するものではない。
(2)乙第3号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)について
商標法第50条第2項では、被請求人は「指定役務」について「登録商標」を使用していることを証明しなければならないとしている。
ここで、商標法上の「役務」とは有償サービスと解されており、商品の販売促進のためにする無償サービスや付随的サービスは法上の「サービス」に該当しないとされている。
かかる観点を中心に、以下、乙第3号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)を検証する。
ア 乙第3号証の1及び2
乙第3号証の1は、「金物店 何でも無料相談」と題するダイレクトメールであって、被請求人アトミクス株式会社の家庭事業部が金物店(小売店)に配布する目的で印刷したものと思われる。すなわち、被請求人会社の取扱商品である塗料の販売を促進するために、金物店に対して、無料で経営診断等を行うことを内容としているに過ぎない。
したがって、このダイレクトメールが金物店に対して配布された事実があるとしても、被請求人会社の取扱商品である塗料の販売を促進するために行う付随的役務であって、商標法でいう役務に該当しない。
なお、乙第3号証の2は、このダイレクトメールを印刷した事実を証明するものであるが、乙第3号証の1及び2によっても、現実に配布された事実を何ら証明しておらず、商標法第2条第3項第7号にいう、「使用」に該当しない。
イ 乙第4号証
乙第4号証は、エム・アール・エス 石井貴和が証する証明書である。
この乙第4号証には、証明者石井貴和が各地の金物店のコンサルテーション(経営の診断及び指導、商品の販売に関する情報の提供)を行っている事実を証明している。
しかしながら、この証明書で証明しているのは、単に石井貴和がコンサルテーションを行った事実であって、このコンサルテーションにおいて、本件商標が使用された事実は全く示されていない。
また、被請求人又は独占的通常使用権者であるアトムサポート株式会社が、本件商標を使用したことと何ら関係のない証明書である。
さらに付言すると、乙第3号証の1との関連を考慮すれば、被請求人又は独占的通常使用権者であるアトムサポート株式会社が自己の取扱商品である塗料の販売を促進するために、無料で金物店に対して行っている付随的役務を行ったことを示すに過ぎないものであると思われる。
ウ 乙第5号証
乙第5号証は、本件審判請求日後の平成14年8月24日付けでエム・アール・エス 石井貴和が発行する請求書であって、請求先が不明であるばかりでなく、本件商標が使用されておらず、何ら使用された事実を証するものでもない。
エ 乙第6号証及び乙第7号証
乙第6号証は、アトムサポート株式会社ハードウェア部会による「2001年度ハードウェア部会開催のお知らせ」と題するリーフレットである。このリーフレットにおいても、本件商標が使用されている事実は全く存在しない。また、乙第7号証は、この部会が開催されたかんぽヘルスプラザによる請求書であって、これらを総合しても、本件商標が使用されている事実をうかがい知ることができない。
オ 乙第8号証
乙第8号証は、金物店の店舗内外の四枚の写真である。答弁書によれば、「前記コンサルテーンョンを行った…店舗」とされる写真である。これら各写真にも本件商標が全く表されておらず、提出の趣旨も不明なものである。
(3)以上、被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)のいずれにも、商標権者又は使用権者のいずれもが、指定役務について、本件商標を本件審判の請求の登録前三年以内に、使用していた事実を証明していないことから、商標法第50条の規定に基づいて取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)本件商標の商標権者(被請求人)は「アトミクス株式会社」であるが、本件商標は、平成6年10月19日付けの名称変更届前のアトム化学塗料株式会社の当時から、継続してその指定役務について使用してきたものである。
したがって、本件商標は出願中に出願人の商号が変更されたから、使用されていないはずである、とする請求人の主張は全く理由がない。
(2)被請求人は、被請求人の製品である塗料等の販売系列が金物店から大型店舗のホームセンター等に移行してしまう、という時代の趨勢から、近時においては、第35類「経営の診断及び指導,商品の販売に関する情報の提供」の役務の宣伝をパンフレット配布等のような大々的な形態では行っていないが、従来からの金物店においても依然として塗料を取り扱う店舗もあることから、塗料等の販売形態を含めた総合的な経営コンサルタントを行っているのである。
(3)一方、被請求人の商品の販売会社アトム商事株式会社を平成13年4月2日にアトムサポート株式会社(以下、「アトムサポート」という。)に商号変更し、本件商標を含む被請求人の有する多数の商標権について、平成13年10月1日に被請求人とアトムサポートとの間に商標使用許諾契約(乙第2号証)を締結すると共に、被請求人は、「経営の診断及び指導,商品の販売に関する情報の提供」等に関しては、茨城県取手市駒場2-16-4所在、エム・アール・エス(所長 丸田達夫、チーフコンサルタント 石井貴和)の協賛のもとに、本件商標が表示された「2001年あなたの店は…勝ち組として生き残れるか…<今必要な緊急対策は何か・・・>」と題するダイレクトメール(乙第3号証の1)を作成(乙第3号証の2)して発送したり、前記エム・アール・エスとの業務契約のもとに、被請求人及びアトムサポートは、各地の金物店に赴いてコンサルテーションを行ったり、商品アトムハウスペイントの取扱代理店で組織する「アトムハウスペイント代理店会」(ハードウェア部会)(単に「ハード部会」、「アトム会」又は「アトムオーナー会」と称することがある。)のメンバーにもコンサルテーションをしている(乙第4号証ないし乙第7号証)。
そして、前記コンサルテーションを行った金物店の中には、現に店舗の改装や商品陳列の形態を変える等のリニューアルを行っている店舗もある(乙第8号証)。
(4)請求人の弁駁に対する答弁
ア 請求人の反論及び主張は実社会における商取引や商慣習等を無視したものであり、特に被請求人が取り扱っている塗料の商実体及び塗料メーカーと塗料の販売店である金物店との関係等を理解しない下での解釈によるものであって、何ら理由がない。
イ 被請求人は塗料等のメーカーであるが、塗料は近時においては各地のホームセンター等で販売されることが主流となっている。
しかし、そのようなホームセンターがない地方やホームセンターがあっても当該地域の金物店と地域住民との結びつきの強い地域等では、量的には少ないとはいえ、塗料等は依然として金物店でも販売されているのである。そして、このような商品取引の現象は商品「塗料」に限らず、金物や工具類等についても言い得ることである。とはいえ、大規模な販売形態をもたない金物店では経営的に厳しい事実には変わりはないのが現実である。
一方、商品「塗料」は古くから販売系列として金物店に依存する形態が多く、このような販売系列によって共存してきた、という歴史的事実があるから、各塗料メーカー、就中、被請求人はその経営姿勢として、販売数量が少ないからといって金物店を見捨てるのではなく、そのような厳しい経営形態にある金物店に対して経営戦略的なアドバイスやコンサルティングを行うべきである、との信念の下に、コンサルタント業務を行っているのである。
乙第9号証として提出する被請求人の商業登記簿謄本写しは平成7年12月19日付けで認証された謄本であるが、これによれば、被請求人の「目的」の欄に「(9)塗料の製造、販売および技術に関するノウハウの提供ならびに指導」が既に業務の一つとして掲載されており、このことからも被請求人の前記経営姿勢及び被請求人がこれらの業務を行っていることが理解される。
ウ 金物店においては商品の取扱量、販売量が低下している現状にあるから、被請求人の前記業務については、対費用効果との関係からして大々的に宣伝したりしてこれを行うことはできず、まして、被請求人は営利企業である以上、前記業務を「無料」で行ったり、ボランティア活動として行うものではない。
エ 請求人は、「乙第1号証ないし乙第8号証を精査するも、」これらは本件商標を使用した事実を直接立証するものではない、と種々述べており、例えば、乙第1号証の1及び2は本件商標の願書及びこれに添付した商標の使用説明書であり、乙第2号証は商標使用許諾書であるから、使用の事実を証明するものではない、と主張している。
しかし、これらの主張は被請求人の答弁の内容を理解しない「否認のための否認」にすぎない。
すなわち、乙第1号証の1及び2は、本件商標の継続的使用と商号変更とは関係のないことを立証するために提出したものである。乙第2号証は、本件商標を含む被請求人の有する多数の商標権について、平成13年10月1日に被請求人とアトムサポートとの間に商標使用許諾契約(乙第2号証)を締結していることを立証しようとするものである。
オ 乙第3号証のダイレクトメールは本件商標の指定役務に関する広告であり、該ダイレクトメールには本件商標が付されており、これが頒布されたのであるから、このダイレクトメールの頒布は商標法第2条第3項第8号に該当し、商標の「使用」に該当するものであることは明白であるところ、請求人は、乙第3号証は「無料相談」と題するダイレクトメールに関するものであって、被請求人の商品「塗料」の販売を促進するために、金物店に対して無料で経営診断等を行うことを内容としているにすぎず、被請求人の商品「塗料」の販促のための付随的役務である、と主張している。
しかし、被請求人にとってダイレクトメールは、見込み客発見からその後の経営診断→コンサルティング→店舗改装や商品陳列提案等を介しての金物店の経営改善等に結びつく出発点となる重要かつ主体的なツールである、と認識しており、このような金物店の経営形態の改善によって結果として被請求人の商品「塗料」のシェアアップに繋がることはあるとしても、金物店は被請求人の商品「塗料」のみを取り扱っているわけではないから、請求人が「付随的役務」である、と主張する点は不当である。
一方、このようなダイレクトメールでは、そのようなコンサルティング等を「有料」と記載すると見込み客の反応が期待できにくいことから敢えて「無料」と表示し、ダイレクトメールによって依頼のあった金物店に対し無料で臨店(店舗訪問すること)した上で経営診断を行い、売上不振や集客力、品揃え等の悩みごとについて相談を受けると共に、具体的なアドバイスを提供しているのである。
その上で金物店の相談内容に応じて、例えば、資料の作成を伴う等経営改善のための総合的なコンサルティングが必要な場合には、被請求人と金物店との合意のもとに別途有料により資料に基づく提案等を行っており、このような形態の業務を過去15年以上前から現在に至るまで継続して行っているのである。
これらの診断、コンサルタント業務は専門的知識を要することから、被請求人が委託した専門家(現在はエム・アール・エス)が被請求人と協力しながら役務を行っているが、営利企業である被請求人が、金物店へのダイレクトメール発送から始まる一連の業務を全て「無料」で行っていると解することは非現実的であり、企業人であれば容易に理解し得るところである。
したがって、請求人のこの点に関する主張は全く理由がない。
なお、請求人は前記ダイレクトメール(乙第3号証の1)に「無料相談」とあることを唯一の理由として、本件商標の使用の事実が証明されていない、と主張している。
そこで、前記臨店に際しては、無料による臨店相談を受けた後においても、経営の改善の提案に際して資料を作成して総合的、抜本的なコンサルティングをすることが必要な場合等には有料となることを納得してもらった上で相談に応じていることを被請求人が委託した専門家、エム・アール・エスのチーフコンサルタント石井貴和氏の証明書(乙第10号証)により、これを立証する。
カ 請求人は乙第4号証ないし乙第8号証について、本件商標を使用している事実を証明するものではない、と縷々述べているが、これらの主張は実社会における経験則や実状を無視したものであって全く理由がない。
例えば、乙第4号証について、証明者石井貴和がコンサルテーションにおいて本件商標が使用された事実は全く証明されていないとしている。
しかし、前記「臨店」は本件商標が付されたダイレクトメールにより申し込みのあった金物店に臨店したのであって、臨店報告には本件商標から生じる称呼「アトムハウスペイント」と表示されているのである。実社会において臨店報告にわざわざ本件商標の構成を忠実に表示したりするわけがない。
また、乙第5号証については、請求の内容をみれば請求人宛であることは明白であり、他社宛の請求書が請求人に舞い込むわけはないのに、乙第5号証の請求書には宛名が記載されていないとか、乙第8号証については、改装された店舗の写真には本件商標が表示されていない等という非現実的な、或いは意味不明な点が主張されている。
そもそも、商標の使用事実を証明する証拠資料については、商品商標であれば当該商品に商標が付されていてこれが使用されている事実は容易に判明するが、役務商標については、役務内容によっては使用の事実を証明することがきわめて困難な場合があり、ましてや、将来的に不使用の取消審判が請求されるかもしれない、等ということを慮って、各資料にわざわざ登録商標を付した資料を残していたり、写真に登録商標を焼き込んでおく、等のことはしないのが一般である。したがって、請求人のこれらに関する主張は現実を無視した不当なものである。
キ 次に、商標不使用取消審判事件における証拠の評価に関する判例について検討すると、東京高等裁判所平成14年行(ケ)第346号審決取消請求事件についての平成15年7月14日言い渡し判決(乙第12号証)では、商標の使用の事実を陳述する陳述書と関係証拠が存在する場合において、関係証拠に示された注文番号、品物の名称、色番号、個数、梱包数、重量、代金額などの要素がほぼ完全に一致しており、同一の取引に関する証拠であることが明らかであって、しかも該関係証拠と前記陳述書の記載とが符合していることによって証拠価値が総合的に高まるから、使用の事実を証明する証拠となり得るとしている。
本件不使用取消審判事件についてみると、乙第1号証ないし乙第10号証の各証拠を総合的に検討すれば、本件商標をその指定役務について過去から現在に至るまで継続的に使用していることは明白である。
請求人主張のように、商標の使用事実に関する証明の完全性を追求して本件商標を取り消すことによる利益と、財産権である本件商標を取り消されることによる被請求人の不利益との比較衡量の上からしても、なお、本件商標を取り消すべき利益を優先させなければならない合理的理由はない。
(5)以上説明したように、本件商標は継続して3年以上日本国内において被請求人及び通常使用権者がその指定役務である「経営の診断及び指導,商品の販売に関する情報の提供」に使用しているものであるから、商標法第50条第1項の規定の適用はなく、本件審判請求は理由がない。

第4 当審の判断
(1)被請求人が、本件商標を本件取消しに係る指定役務「経営の診断及び指導,商品の販売に関する情報の提供」に使用していることを証明する資料として提出している乙第3号証ないし乙第11号証(枝番を含む。)によれば、以下のことが認められる。
ア 乙第3号証の1は、被請求人が発送したという「ダイレクトメール」であるところ、同ダイレクトメールには、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が表示されているものの、「金物店 何でも無料相談」との記載があることからして、被請求人は、同ダイレクトメールの送付先に対して、例えば、商品「塗料」等の販売に付随して、又はその販売促進のために「経営の診断」等の相談に無料で応じているものとみるのが相当である。しかして、商標法上の「役務」とは、他人のためにする労務又は便益であって、付随的でなく独立して商取引の対象となり得るものをいうと解するのが相当である。
したがって、このダイレクトメールのみをもってしては、被請求人が請求に係る指定役務である「経営の診断及び指導,商品の販売に関する情報の提供」について、本件商標を使用しているものとは認められず、また、乙第3号証の2の「納品書(控)」は、そのダイレクトメールを印刷した事実について立証しているにすぎない。
イ 乙第4号証は、被請求人及び被請求人と商標使用許諾契約(乙第2号証)を締結しているアトムサポート株式会社と業務契約をしているエム・アール・エスのチーフコンサルタント石井貴和の「証明願」を表紙とする「臨店報告書」であるとしているが、その「臨店報告書」には「アトムハウスペイント」の文字の記載がみられるも、これは「臨店報告書」の記載事項の表題として記載されているにすぎず、これをもって本件商標をその指定役務について使用しているものとは認められない。しかも、この臨店報告書に表示された「アトムハウスペイント」の文字は、本件商標と社会通念上同一の商標ということもできない。
また、被請求人は、乙第4号証の「臨店報告書」は、本件商標が付されたダイレクトメールによって依頼(申込み)のあった金物店に対する臨店報告書であって、その相談内容に応じて、必要な場合には、被請求人と金物店との合意のもとに、別途有料により、資料に基づく提案等を行っている旨述べているので、以下、同報告書の内容を検討する。
なお、便宜上、臨店依頼元「アトミクス(株)」及び臨店依頼先「(有)油米商店」の臨店報告(報告書と費用明細の2枚で1組)を「臨店報告書1」とし、以下、「臨店報告書8」までの連続番号で、それぞれの臨店報告書を表示する。
(ア)まず、臨店報告書1には、臨店依頼日が平成12年6月9日、希望臨店日及び臨店日が平成12年6月13日と、また、臨店指導日が平成12年6月13日との記載がある。しかるに、乙第3号証の2によれば、前記ダイレクトメールの納品日は平成12年8月4日であることから、この臨店報告書は、該ダイレクトメールによって依頼のあった金物店に対する臨店報告書であるとは認められず、本件商標が、かかる臨店との関係で使用されたものということはできない。
(イ)臨店報告書2には、臨店依頼事項において「アトム塗料製品取扱い店新規開拓として、商品販売は勿論だが、お店のコンサルテーション(ワンポイントアドバイス)を切り口として店舗訪問を企画した。」、臨店結果において「6)主目的はあくまで、拡販であるがアトミクス社内において、金物店戦略の見直し、代理店への刺激効果を求めることである。」との記載があることからみれば、これは、被請求人(アトミクス株式会社)とエム・アール・エスとの間における今後の事業計画に関する相談内容とその結果の報告書のごときものとみるのが相当であり、そもそも金物店に対する臨店報告であるとは認められない。
(ウ)臨店報告書4には、臨店依頼事項に「(株)ノグチ足利より、児玉郡(有)芽原金物店が店舗老朽化に伴い、店舗建て直しを考えているが、悩んでいるので相談に乗れないかとの情報を得、取引確認をしたところ、口座はあるが、塗料は日本ペイントで切り崩しに苦労している。これを機会に切り崩しが可能と思えるので、アトムサービスとして、臨店を組み訪問することになった、」との記載があることからみれば、この臨店報告書は、該ダイレクトメールによって依頼のあった金物店に対する臨店報告書とは認められず、本件商標が、かかる臨店との関係で使用されたものということはできない。
(エ)臨店報告書7には、臨店依頼事項に「アトム塗料代理店会・・・アトム会会議において、金物店の現状、方向性、今後の対策についてのセミナー依頼」との記載があることからみれば、これは、依頼元である「アトムサポート株式会社」(本件商標の通常使用権者)が、エム・アール・エス(おそらくはチーフコンサルタント石井貴和氏)にセミナーの講師を依頼し、そのセミナーが行われた結果の報告書のごときものとみるのが相当であって、そもそも金物店に対する臨店報告であるとは認められない。
(オ)臨店報告書8には、臨店依頼事項に「アトム会議において、金物店の現状、方向性、今後の対策についてのセミナー依頼」等の記載があることからみれば、上記(エ)と同様に「セミナー講演」に係るものであって、金物店に対する臨店報告とは認められないものである。
(カ)さらに、臨店報告書3には、臨店依頼日及び希望臨店日が平成12年12月9日、臨店日が平成13年4月5日と記載されているのに対し、臨店指導日(「費用明細」に記載。以下同じ。)が平成12年12月9日と記載されており、臨店指導日が臨店日よりも4か月程前の日付になっているのは、不自然である。
臨店報告書5には、希望臨店日及び臨店日が平成12年12月9日(臨店依頼日は空欄。)と記載されているのに対し、臨店指導日が平成12年9月28日と記載されており、臨店指導日が希望臨店日及び臨店日よりも3か月程前の日付になっているのは、不自然である。
臨店報告書6には、臨店依頼日が平成13年6月23日、希望臨店日が平成14年6月23日、臨店日が平成13年4月5日、臨店指導日が平成13年6月23日と記載されており、臨店日が臨店依頼日よりも2か月程前の日付になっているのは不自然である。
そうすると、乙第4号証の臨店報告書は、本件商標が付されたダイレクトメールによって依頼のあった金物店に対する臨店報告書と直ちにはいえないばかりでなく、その記載内容自体、信憑性に乏しいものといわざるを得ないから、被請求人が、金物店へのダイレクトメール発送から始まる一連の業務の中で、同人が委託した専門家(エム・アール・エス)と協力しながら、有料で「経営の診断」等の役務を提供しているとの主張は、にわかに認めることができない。
ウ 乙第5号証の「請求書」は、請求先の欄は空欄であるが、平成14年8月24日付けで、エム・アール・エスを請求人とし、セミナー講師料として3万円、訪問交通費(実費)として3千9百円、消費税(税率5%)として1千5百円の合計3万5千4百円が計上されているところ、前記乙第4号証の臨店報告書7(臨店依頼元「アトムサポート(株)」及び臨店依頼先「アトム会運営部会」に係る臨店報告書)は、コンサルテーション報告書の臨店依頼日(希望臨店日及び臨店日は空欄。)及び指導費用明細の臨店指導日が、ともに平成14年8月24日と記載されており、さらに同指導費用明細の臨店指導地区がアトミクス本社と記載され、臨店指導料として3万円、交通費として3千9百円、消費税として1千5百円の合計3万5千4百円が計上されていることよりすれば、両証拠は、セミナーに係る日付と費用明細が一致していることからして、同一のセミナーに係る証拠とみるのが自然である。してみれば、この乙第5号証の請求書は、平成14年8月24日にアトミクス本社で開催されたセミナーに関し、エム・アール・エスから、依頼元である「アトムサポート株式会社」(本件商標の通常使用権者)又は被請求人(アトミクス株式会社)に対して、講師料等が請求された事実のあったことは確認し得るとしても、そのようなセミナーの開催は、直接、本件指定役務とは関連がないものであるから、乙第5号証は本件商標の使用の事実を証明するものとは認められない。
エ 乙第6号証は、2001年度アトムサポート株式会社のハードウェア部会の開催通知であり、乙第7号証は、当該部会が開催されたかんぽヘルスプラザ東京の平成13年(2001年)10月27日付けの領収書及びその利用明細書である。これらによれば、商品「塗料」であるアトムハウスペイントの取扱代理店で組織する「アトムハウスペイント代理店会」(ハードウェア部会)の第3回目の例会が、2001年(平成13年)10月27日に、「かんぽヘルスプラザ東京」で開催され、その部会の内容として、「アトムハウスペイント 金物店リポジショニングについてのご提案」と題するエム・アール・エス 石井氏によるセミナー又は講演の如きものが含まれているが、そのようなセミナー等の開催は、直接、本件指定役務とは関連がないものであって、本件商標の使用を証明するものとは認められない。
オ 乙第8号証は、「経営診断」等が行われた金物店の写真であるとしているが、これらの写真のみをもってしては、本件商標が使用された事実を窺い知ることができないばかりか、その撮影日、撮影場所、撮影者等も不明である。したがって、乙第8号証よりは、本件商標が、「経営の診断及び指導,商品の販売に関する情報の提供」について使用されたものであることを把握することができない。
カ 乙第9号証は、平成7年12月19日付け認証の被請求人の商業登記簿謄本の写しであるところ、その業務目的の一つとして、「塗料の製造、販売および技術に関するノウハウの提供ならびに指導」があるとしても、それ自体は、本件商標の使用事実を証明するものではない。
キ 乙第10号証は、コンサルタント社「エム・アール・エス」のチーフコンサルタント石井貴和氏の証明書であり、ダイレクトメールをみて申し込みのあった金物店に臨店して無料で各種の相談を受けるが、その内容によっては有料となることを説明した上で経営改善のための総合的なコンサルティングを行っている事実を、乙第11号証の1ないし3は、前記石井貴和氏の臨店証明書であり、乙第4号証に添付の臨店報告に記載した店舗について臨店した事実を、それぞれ立証するとしているが、提出された証拠は、いずれも利害関係人の証明であり、しかも、その事実を裏付ける客観的な証明がない以上、これをもって、請求に係る指定役務である「経営の診断及び指導,商品の販売に関する情報の提供」が、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者によって行われていることを把握することができないばかりでなく、本件商標の使用を証明するものとも認められない。
そして、他に被請求人は、本件商標をその指定役務に使用していることについて、何等立証していない。
してみれば、被請求人が提出したいずれの証拠をもってしても本件商標がその指定役務について使用されていたことを証明する証拠とはなり得ないものであるから、本件商標は、被請求人又は使用権者により、継続して本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その指定役務について使用されていなかったものといわざるを得ない。
(2)したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標


(色彩については原本参照)

審理終結日 2007-02-28 
結審通知日 2007-03-06 
審決日 2007-03-30 
出願番号 商願平4-233005 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (035)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 和男富田 領一郎 
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 森山 啓
岩崎 良子
登録日 1995-12-26 
登録番号 商標登録第3102644号(T3102644) 
商標の称呼 アトムハウスペイント、アトムハウス、ハウスペイント、アトム 
代理人 瀧野 秀雄 
代理人 金久保 勉 
代理人 神田 正紀 
代理人 今井 貴子 
代理人 垣内 勇 

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