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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
管理番号 1138001 
審判番号 無効2004-89108 
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-11-30 
確定日 2006-05-31 
事件の表示 上記当事者間の登録第4699238号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成17年9月7日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成17年(行ケ)第10741号平成18年2月15日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第4699238号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4699238商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成15年2月3日に登録出願、第30類「菓子及びパン,即席菓子のもと」を指定商品として、同15年8月8日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の指定商品「菓子及びパン、即席菓子のものと」に含まれる商品「パイ」及び「パイ」以外の指定商品「菓子及びパン、即席菓子のもと」のすべてを品質の誤認・混同を生じるものとして無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第22号証を提出した。
1 請求の理由
(1)請求の利益について
請求人は、商品「ミートパイ」及び役務「パイの提供」に引用商標を使用している。本件商標は、引用商標に類似しており、本件商標を商品「パイ」に使用すれば、消費者において出所の誤認・混同を生じる。
また、指定商品「パイ」がなくなれば、標章内でパイ(Pie)を指定しているのであるから、消費者において品質の誤認・混同を生じる。よって、本件審判請求をするについて利害関係を有する。
(2)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標と引用商標の類否について
引用商標
登録第4058700号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成7年11月16日に登録出願、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,酒かす」を指定商品として、同9年9月19日に設定登録され、その後、商標登録の取消審判により、指定商品中「菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと」について取り消す旨の審決がされ、同14年8月14日にその確定審決の登録がされたものである。
登録第4093369号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成7年11月22日に登録出願、第42類「飲食物の提供」を指定役務として、同9年12月19日に設定登録されたものである。
以下、引用商標1及び引用商標2を一括していう場合は「引用商標」という。
(a)外観の類似
本件商標は、その「14March」「π(Pi・Pie)Day」という各構成部分が、引用商標の「3.14」「π(パイ)の日」という各構成要素をそのまま英語に直訳したものであり、さらに、それぞれを等号で結ぶ形式も全く同一である。日付の部分にわずかに表記上の差があるが、本件商標は、「14March」の下に「(3.14)」と表記し、引用商標の「3.14」と同一であることを自ら認めている。
(b)観念の類似
本件商標は、公報(甲第5号証)に示された称呼に照らしてみれば、ジューヨンマーチ、イチヨンマーチとなっていて、英語本来のフォーティーンスマーチは認められない。このことは、本件商標の表記が月日の表示として日本人の慣れ親しんだものになっていることの証といえる。
構成要素の「March」、「Pie」及び「Day」は、初等レベルの単語であり、中学校で修得すべきものとされている(甲第6号証及び同第7号証)。したがって、日本人のほとんどすべてが直ちに日本語の意味を了解できると判断するのが当然である。
なお、「デー」を語尾にもつ記念日は、日本記念日協会の調べ(甲9号証)では多数存在し、一般によく接している言葉であることから、「パイデー」が「パイの日」であり「パイの記念日」であることを容易に理解するものといえる。
本件商標は、一般的な日付と「パイデイ」の称呼からなる商標であり、その観念結合こそは、引用商標と全く同一の「3月14日」と「円周率(π)3.14」とを掛け合わせ、これにより「3月14日は、パイの日」であるという特殊な観念を生ずるものである。
したがって、本件商標は、この観念に関して引用商標と全く同一のものといわなければならない。
(イ)指定商品・指定役務の類否
(a)引用商標1の指定商品のうちの一つである「ミートパイ」は、ラビオリなどと同じ類似枠内に置かれ、本件商標の指定商品「菓子及びパン」といわゆる短冊を異にしているが、「菓子及びパン」に含まれる「パイ」を単独で取り出した場合、ミートパイと酷似する。
パイという概念、外観はほかの菓子及びパンから容易に切り離し得るし、逆にミートパイからみても、ラビオリなど同じ短冊内の商品以上に菓子のパイに類似している。外観、名称からパイ類を一つにまとめるのが自然であるし、説明を必要としない。ミートパイを他のパイ類から離して、ラビオリ、ぎょうざと同一グループに分ければ、「肉類を何らかの皮で包んだもの」との説明が必要になる。
よって、現行の分類では異なるとされているが、「ミートパイ」と「パイ」をそれぞれ単独で取り出せば類似といわなければならない。
(b)辞典・事典類に鑑みても、「パイ」の概念はミートパイと菓子のパイを同一のものと捉えているものが多い。
例えば、国語大辞典(小学館)では「洋菓子の一つ。小麦を水とバターを加えてねったたねをのばして折り重ね、天火で焼いたもの。中に果物の甘煮やジャム・肉類などを包んだものなどがある。」。外来語辞典第二版(角川書店)では、説明の後に例を挙げ、「ミートパイ(肉菓子)」と明確にミートパイを菓子と定義している。また、ブリタニカ国際大百科事典(TBSブリタニカ)では「小麦粉にバター、ショートニング、マーガリンなどの固形油脂を混ぜて、層状に焼上げた食品。肉を詰めたミートパイ、果物を入れたアップルパイ、レモンパイなどが代表的。(中略)菓子として用いるほか、主菜、前菜、スナックにも供する。」とし、「ミートパイ」も含めて菓子を第一義としている。さらに、調理用語事典では「コムギ粉とバターなどの油脂を主材料にして作ったパイ生地に果実の甘煮や肉類などを包み込み、オープン等で焼き上げた料理、およびパイ生地を焼き上げたパイ殻に種々の材料を詰め込んだ料理の総称。パティスリー(パン菓子、焼き菓子)に属する。」として、肉類を詰めたパイが菓子に属することを明確に定義している(甲第10号証ないし同第13号証)。
以上のように、一般的な認識も飲食業界での認識も揃って肉類を詰めたパイと菓子のパイが一つの定義に含まれるものであることを示している。
したがって、両者は、類似という以上に同一のものといわなければならない。
(c)さらに、洋菓子店でミートパイ及び牛肉を使用したパイが販売されているのであり(甲第14ないし同第17号証)、「ミートパイ」と「菓子及びパン」の中の「パイ」は、用途、製造業者、販売場所、需要者が一致している。このことからも類似は明らかである。
(d)本件商標の権利者が保有する登録商標においても、同様の類似指定商品「パイ」が無効になった経緯がある(甲第18号証)。
(e)一方、引用商標2の指定役務「飲食物の提供」に含まれる「パイの提供」と、本件商標の指定商品「菓子及びパン」に含まれる「パイ」とは、同じ洋菓子店あるいはパン屋で販売及び提供するものであり、製造業者、販売場所、需要者が一致しており、役務と商品の類似の規定により類似していると判断できる。
洋菓子店・パン屋では店内で飲食できる店が一般的になってきている。さらに、需要者は、本件商標および引用商標2の観念に促されて「パイ」の消費を行うのであって、その観念が同一である以上、形態が販売によるのか、提供によるのかを全く区別しない。需要者は、それぞれの商標の観念に示されているように、3月14日がパイの記念日であることに意義を感じるのであり、物として楽しむのか、食事として楽しむのかを区別することなく、「パイの日」だから「パイ」を選ぶことに意味を感じるのである。
(ウ)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標2は、類似の商標であり、指定商品及び役務も請求人が指摘する部分、商品「パイ」において同一又は類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第16号について
(ア)標章内に指定商品を含んでいることについて
本件商標が上述の理由によって指定商品「パイ」を無効とされた場合、残余の指定商品の中に標章自体が指し示している「パイ」を当てはめるべき商品が存在しない。
前述のとおり、標章内に含まれる英単語はすべて初歩的なものであり、消費者のほとんどすべてが理解できるものと判断できる。
そして、「Pie」という文字は、試みに5種類の英和辞典で確かめても、第一義的に菓子などの「パイ」を意味している(甲第6号証、同第7号証及び同第19号証)。標章自体も「π」が「Pi(円周率)」と「Pie(菓子のパイ)」の二重の意味があると自ら定義している。
(イ)アンケートについて
さらに、広告代理店の実施したアンケート(甲第20号証)によれば、一般消費者が本件商標に接して、75%もの人が容易に菓子のパイとの関係を認識できることを示している。この数字は商標の文字だけから得られた連想の結果であり、菓子売場や広告で商品(パイ)とともに表示されれば当然、その確率は一層高まると容易に判断できる。
以上のことから、本件商標は、明らかに菓子の「パイ」を指示する機能を有しているといわなければならない。
(ウ)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであることは明らかである。
2 被請求人の答弁に対する弁駁の理由
被請求人は、引用商標も「ミートパイ」、「パイを主とする飲食物の提供」以外の指定商品・役務を持っている、との主張をしているが、肝心な点は、本件商標は、標章が指示している指定商品「パイ」を一切所有しなくなるのであり、商標使用の意志を発動させるやいなや、どの指定商品について使用しようとも消費者に品質の誤認混同を生じせしめざるをえない事態になるということである。
一方、請求人は、引用商標1においては指定商品「ミートパイ」を所有し使用している(甲第21号証)。その他「ピザ」「穀物の加工品」などを類似範囲として所有している。これらは、自己の商標を他人の汚染的使用から防ぐ目的で防衛的に所有しているにすぎない。
また、請求人は、引用商標2においては、指定役務「飲食物の提供」の中に「パイの提供」が含まれており、現にその部分について使用している(第22号証)。そのかぎりにおいて消費者が品質の誤認混同をすることはありえない。
なお、役務は、商品と異なり、モノとモノが対応するのではなく、サービスの概念を広く指し示している。引用商標2は、「3月14日にパイを提供する」ことを示している。そのことは「飲食物の提供」のどの場であるかに関係なく行うことができる。つまり、喫茶、レストラン、ワインバーなど「飲食物の提供」を営業形態ごとに分類する考え方にしばられることなく、すべてのジャンルで「パイを提供する」ことができる。「パイの提供」はいわば縦割りの全分類に横断的に併存する横割り的考え方と捉えるべきであり、被請求人の主張は、最初から本質を捉えていない。
したがって、「飲食物の提供」という役務指定をすることと、「パイの提供」という具体的な内容は矛盾しない。
引用商標をパイ以外の商品提供に使用する訳ではなく、あくまで「パイ菓子」「パイ料理」の提供に関して使用するのである。消費者がサービスの内容を誤認することはありえない。
したがって、被請求人が主張する引用商標も無効になるという意見は根拠がない。
3 むすび
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第16号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により登録を無効とすべきである。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。 請求人は、「本件商標は標章内に指定商品を指示する言葉を含みながら、指定商品内に指示された商品を持たなくなる。その状態は商標法第4条第1項第16号に違反している。」と宣言した。
すなわち、指定商品の「パイ」を無効とされた場合、商標に「パイ」なる文言を含むにもかかわらず、「パイ」以外の商品を指定商品とすることとなるから、「パイ」以外の商品を「パイ」といって使用することは、「羊頭をかざして狗肉を売る」の例えのように、需要者、取引者に品質の誤認をさせるので、商標法第4条第1項第16号に違反していると主張しているのである。
してみれば、請求人自身の所有する引用商標1及び引用商標2でも、「ミートパイ」以外の商品を指定商品とし(甲第1号証及び同第2号証)、「パイを主とする飲食物の提供」以外の飲食物の提供を指定役務とするのであるから、本件審判を請求することは、請求人自身の引用商標1及び引用商標2の無効理由を宣言したことになるため、本件審判請求には利益がない。

第4 当審の判断
1 請求の利益について
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有するか否かについて当事者間に争いがあるので検討する。
本件審判の請求は、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同第16号に違反して登録されたことを理由としてその登録を無効にすることを求めるものであるところ、請求人は、引用商標に類似する本件商標をその指定商品中の「パイ」に使用した場合、請求人の業務に係る商品「ミートパイ」又は役務「パイの提供」との間に、出所の混同を生するおそれがあり、かつ、本件商標をその指定商品中「パイ以外の商品」に使用した場合、商品の品質について誤認を生ずるおそれがある旨主張しているのであるから、請求人は、本件審判を請求するにつき法律上の利益を有するといわなければならない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、別掲のとおり「14March=π(Pi・Pie)Day」の文字と「14March」の文字の下部に「(3.14)」の文字を表してなるところ、その構成中の「March」は3月、「Pi」は円周率:3.14,「Pie」はパイ料理,パイ菓子及び「Day」は日の意味を有する平易な英単語であるといえる。
そうすると、本件商標中の前半部の「14March」及び「3.14」の文字は、全体で「3月14日」を意味するものということができる。また、後半部の「π(Pi・Pie)Day」の文字は、(菓子の)「パイ」を円周率の「π(パイ)」に語呂合わせして表した「π(Pi・Pie)」の文字と「Day」の文字よりなるとみることができるから、全体として「3月14日はπ(パイ)の日」の意味を容易に理解させるものと認められる。 これに対し、引用商標は、「3.14=π(パイ)の日」の文字よりなるところ、我が国において、月日を表す場合に「月」「日」の文字を省略して「3.14」のように表すことは日常的に広く行われているところであり、かつ、月日を示唆する「π(パイ)の日」の文字が後半部に配されていることからすれば、引用商標に接した取引者、需要者は、これから「3月14日はπ(パイ)の日」の意味を容易に理解するものと認められる。
そうとすれば、本件商標は、引用商標と「3月14日はπ(パイ)の日」の観念を同一にするものであり、また,英単語を配したその構成をみれば、引用商標を英語で表したものと容易に看取されるものである。
してみれば、本件商標は、引用商標とそれぞれの構成文字より生ずる称呼において区別し得るとしても、「3月14日はπ(パイ)の日」の観念を同一にする類似の商標といわなければならない。
(2)指定商品、指定役務間の類否について
「指定商品が類似のものであるかどうかは、商品自体が取引上誤認混同の虞があるかどうかにより判定すべきものではなく、それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞があると認められる関係にある場合には、たとえ、商品自体が互いに誤認混同を生ずる虞がないものであっても、それらの商標は商標法(大正10年法律99号)2条9号にいう類似の商品に当たると解するのが相当である。」(最高裁裁判所第3小法廷,昭和36年6月27日判決言渡(注)原文のまま)
そこで、先ず、本件商標の指定商品中「菓子」の範疇に属する「パイ」と引用商標1の指定商品中の「ミートパイ」が類似する商品であるか否かについて検討する。
前記取引の実情等を総合すれば、本件商標をその指定商品中、「菓子」の範疇に属する「パイ」について使用した場合、これに接する需要者は、本件商標と引用商標1とが商標において類似するものであるが故に、該商品が引用商標1を使用した「ミートパイ」と同一の営業者によって製造又は販売されたものであるかのように、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるというのが相当である。
したがって、本件商標の指定商品中「菓子」の範疇に属する「パイ」と引用商標1の指定商品中の「ミートパイ」は、類似の商品といわなければならない。
(3)商標法第4条第1項第16号の該当性について
本件商標は、前記(1)の認定のとおり、これを構成する「14 March」、「Pie」、「Day」、「Pi」、「π」及び(3.14)の文字及び数字等並びにその数式を模した外観から、「3月14日が菓子のパイの日である」ことも容易に想起し得るというべきである。
ところで、我が国では、3月14日は「ホワイトデー」と称され、2月14日のバレンタインデーにチョコレートなどをもらった男性がそのお返しとして贈り物をする日としてよく知られている。ホワイトデーの贈り物として定まったものはないが、マシュマロ、クッキー、キャンディ、ケーキなどの菓子類が贈り物として選択されることが多く、3月14日が近づくと、菓子店を初めとする小売店がホワイトデーの贈り物用として様々な商品を宣伝・販売していることは広く一般に知られた事実である。
(4)本件商標の観念、称呼やホワイトデーの上記習慣からすれば、本件商標が3月14日のホワイトデー用のパイ菓子に用いられるものであり、同日が菓子のパイの日であることを需要者にアピールすることによりパイ菓子を販売しようとするものであることは明らかである。また、パイ菓子は、ホワイトデーの贈り物としてはそれほど一般的であるとはいえないが、ホワイトデーの贈り物として販売される場合には、他の菓子類、即席菓子のもと、パン類等と共に販売される可能性が高いことは、商品の取引上明らかである。
(5)そうすると、たとえ本件商標がパイ菓子そのものを意味するものではなく、「Pie」の文字も本件商標の一部を構成するにすぎず、一般的な需要者にとって、本件商標が「3月14日が菓子のパイの日である」との意味を持つと即座に理解することが必ずしも容易ではないとしても、本件商標は、ホワイトデーという多くの人が限られた期間内に菓子類等を買い求める機会に使用されるものであり、商標中には、パイ菓子であることを直接的に示す平易な英語である「Pie」という言葉が使われ、さらに「π」「Pi」も「パイ」と呼称されるのであるから、ホワイトデーの贈り物として菓子類やパン類を求めにきた需要者は、本件商標に接した場合、その内容、品質がパイ菓子であって、他の種類の菓子やパンではないと認識するのが自然である。
したがって、本件商標が、パイ菓子以外の「菓子及びパン,即席菓子のもと」に使用された場合には、需要者はその商品の品質、内容が「パイ菓子」であると誤認するおそれがあるというべきである。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するものといわなければならない。
3 むすび
したがって、本件商標は、その指定商品中「パイ」については、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、その余の商品については、同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項より、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標

(2)引用商標

審理終結日 2006-04-03 
結審通知日 2005-08-25 
審決日 2005-09-07 
出願番号 商願2003-7314(T2003-7314) 
審決分類 T 1 11・ 262- Z (Y30)
T 1 11・ 272- Z (Y30)
T 1 11・ 263- Z (Y30)
最終処分 成立  
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 岩崎 良子
小川 有三
登録日 2003-08-08 
登録番号 商標登録第4699238号(T4699238) 
商標の称呼 ジューヨンマーチイコールパイデーサンテンイチヨン、ジューヨンマーチイコールパイデー、イチヨンマーチイコールパイデー 
代理人 藤井 重男 
代理人 藤井 信孝 
代理人 藤井 信行 
代理人 藤井 信孝 
代理人 藤井 重男 
代理人 藤井 信行 

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