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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 117
管理番号 1131017 
審判番号 取消2000-31334 
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-03-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2000-11-08 
確定日 2006-01-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第706387号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第706387号商標の「第17類 被服(但し、洋服、コートを除く)布製身回品、寝具類」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第706387号商標(以下「本件商標」という。)は、昭和39年9月10日に登録出願、「アネックス」の文字を横書きしてなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同41年5月12日に設定登録、その後、同51年8月9日、同61年6月24日及び平成8年8月29日の3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
(1)本件商標は、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品中「被服(但し、洋服、コートを除く。)布製身回品、寝具類」について継続して3年以上日本国内において使用された事実がないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)旭蝶繊維株式会社(以下「旭蝶(株)」という。)が通常使用権者であるとの証明がされていないことについて
被請求人は、本件商標の使用許諾を同人の繊維を購入する旭蝶(株)に対して行っており、旭蝶(株)は、それに基づき商品「シャツ」(長袖シャツ)を製造、販売しており、その商品「シャツ」(長袖シャツ)に、本件商標を使用している旨主張している。
しかしながら、被請求人が旭蝶(株)に対して、本件商標の使用許諾を行った事実を立証するために提出しているのは、報告書のみである。
そして、当該報告書は、被請求人の繊維を購入するが故に被請求人の側に立つ者であることが明らかな旭蝶(株)が何らの裏付けもなく一方的に述べているのであって、旭蝶(株)が、本件商標をその指定商品に使用することについて、被請求人により客観的に使用許諾がなされたことを証明しているものとは考えられない。
取引の経験則からすれば、営利企業が、取引上自己の所有に係る商標権について使用許諾をするにあたっては、その使用の条件・対価・期間等の様々な事項を詳細に定めた使用許諾契約書を取り交わすのが常である。営利企業が、単なる口頭で他の営利企業に商標の使用許諾をすることは、少なくとも、現在の日本の取引事情においてはあり得ない。
そうすると、被請求人が旭蝶(株)に対して、本件商標の使用許諾をしたのであれば、当然その契約書が存在するはずであり、その契約書の提出は容易であるのに、当該契約書は提出されていない。この状況下では、旭蝶(株)が、本件商標に係る商標権の通常使用権者であることが証明されていないといわざるを得ない。
しかも、報告書によれば、被請求人は、旭蝶(株)に対し、自己の商品である防汚加工素材の織物(商標「アネックス」)を販売するとともに、旭蝶(株)の最終製品群に添付するラベルを支給しているにすぎない。
繊維製品の分野では、布地を供給するメーカーがその布地を用いて製造される被服等に、その布地を用いたことを被服等の需要者に知らしめるために、その布地を表すラベルを被服等の商標を表示したラベル以外に、被服等に付することが往々にして行われている。
したがって、被請求人が旭蝶(株)に支給したラベル上の「防汚加工素材 Annex」という表示の場合も、単に、被請求人が旭蝶(株)の商品に被請求人の織物が使用されていることを需要者に知らしめるためのものにすぎない。
してみると、被請求人は、旭蝶(株)の商品(最終商品)に被請求人の(「アネックス」ないし「Annex」という商標の防汚加工素材)織物が用いられていることを示すラベルを供給しているにすぎない。
この点においても、旭蝶(株)が本件商標に係る商標権の通常使用権者であるとは考えられない。なお、このようなラベルの供給という関係があることをもって、本件商標の使用許諾がされたことにならないことは、いうまでもない。
以上のように、被請求人提出の証拠によっては、旭蝶(株)が本件商標の通常使用権者であることを証明したことにはならない。
(イ)本件商標が取消請求に係る商品に使用されたことが証明されていないことについて
被請求人は、旭蝶(株)の商品「シャツ」(長袖シャツ)が、ワイシャツ類に属すると主張している。
しかしながら、旭蝶(株)の商品の写真に見られる該商品には、大きなポケットが二つ付いており、そのポケットには、ジッパーが付いていること等からして、それは、洋服等の下に着るワイシャツ類に属する開襟シャツ、ワイシャツ等とは、大きくかけ離れたものといわざるを得ない。
むしろ、当該商品は、作業服ないしは制服と考えるのが自然である。
現に、旭蝶(株)の企業ガイド(会社案内パンフレット)には、同社が、専らユニフォーム(制服)を製造している旨が記載されている。
そして、被請求人提出の納品書(乙第2号証の2)において、旭蝶(株)から当該商品の販売を受けたとされる「石川県金沢市彦三町1-3-10」に所在の「株式会社園田商会」(以下「(株)園田商会」という。)の事業内容は、「ユニフォーム販売」であり(甲第1号証)、同じく、乙第2号証の3において本件取消審判請求の登録後に旭蝶(株)から当該商品の販売を受けたとされる「兵庫県神戸市東灘区御影中町1-6-6」に所在の「阪神被服株式会社」(以下「阪神被服(株)」という。)の事業内容も「学生衣料、運動服、作業服販売(小売り)」である(甲第1号証)。このように、写真に写っており、納品書に「374 ナガソデシャツ ライム」と記載されている渦中の商品は、ユニフォーム(制服)製造業を営む者旭蝶(株)が製造し、ユニフォーム・作業服の販売業を営む者(株)園田商会及び阪神被服(株)に対して販売されているものである。すなわち、該商品は、現実には、ユニフォーム(制服)・作業服として取引されている。
商標法による商標の保護の趣旨が流通取引秩序の維持を目的とするものである以上、写真に写っており、納品書に「374 ナガソデシャツ ライム」と記載されている渦中の商品が、いかなる商品の範疇に属するかは、該商品がいかなる商品として取引されているかによって判断されるべきである。
そして、商標法第50条における商品の帰属に関する判断がこれと異なるものとされるべき理由は、何ら見いだせない。
したがって、本件商標が使用されている商品は、その外形からして、作業服ないし制服と考えるのが自然であって、現実の取引において、ユニフォーム(制服)・作業服として取り扱われているのであり、ワイシャツ類に属するものではない。
そして、この制服・作業服は、「洋服、コート」の範疇に属するものである(甲第2号証)。
以上のように、被請求人提出の証拠では、本件商標が取消請求に係る商品「被服(但し、洋服、コートを除く。)布製身回品、寝具類」に使用されたことが証明されていない。
(ウ)商標「Annex」が旭蝶(株)の商品(最終製品)に係る商標として使用されていたことが、証明されていないことについて
上述のように、商標「Annex」が表示されているラベルは、旭蝶(株)の商品(最終製品)に被請求人の防汚加工素材の織物(商標「Annex」)として使用されていることを需要者に知らしめるために、旭蝶(株)の前記商品に付されているにすぎないものであって、それは、旭蝶(株)の商品(最終製品)についての自他商品識別標識として使用されているものではない。
したがって、被請求人提出の証拠によっては、本件商標が旭蝶(株)の商品(最終製品)の商標として使用されていたことが、何ら証明されていない。
(エ)まとめ
以上のように、被請求人提出の証拠によっては、本件商標が商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、取消請求に係る商品について自他商品識別標識として使用されたことが証明されていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第2項によって、取り消されるべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由及び請求人の弁駁に対する再答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。)を提出した。
審決注:なお、乙第2号証の添付資料(1)及び(2)並びにそれに続く丸括弧( )番号のない「(副)納品書 平成13年1月18日」については、便宜上、乙第2号証の1ないし3の書類が提出されたものとして取り扱う。同様に、乙第3号証に添付の別紙1ないし3についても、便宜上、乙第3号証とは別に、乙第3号証の1ないし3の書類が提出されたものとして取り扱う。ただし、乙第2号証及び乙第3号証(いずれも報告書)は、そのままの表示とする。
(1)本件商標は、取消請求に係る商品について現に使用されている。
被請求人会社は、1907年(明治40年)に設立され、1993年(平成5年)に現在地へ移転して、各種繊維製品等の製造・販売を営んでいる。
被請求人は、繊維部門の、紡、織、編、加工の各分野について、開発から生産まで一貫体制を有する世界でも数少ない繊維、テキスタイルの総合メーカーであり、それらを中心に、メンズウェア、レディースウェア、ホームテキスタイル、産業用資材、ユニフォーム、デニム、ニットなどの関連領域まで広範な商品展開を行っている(乙第7号証)。
商標「アネックス」及び「Annex」は、被請求人及び被請求人から使用許諾された旭蝶(株)によって、少なくとも、平成5年以来、その製造に係る防汚加工織物及びその最終製品である各種衣服に付されて、販売されている。商標「アネックス」及び「Annex」が付された商品は、被請求人がその織技術と特殊加工とを組合せて開発したテキスタイルであって、ソフトな風合いと、洗濯後も縮みが少ないことを特徴とし、特に、汚れが付きにくい等の特質を有する。
商標「アネックス」及び「Annex」を付した各種繊維製品は、被請求人会社の繊維事業部において、取り扱っている(乙第3号証)。
被請求人は、その繊維を購入する旭蝶(株)に対し、本件商標の使用を許諾し(乙第3号証)、旭蝶(株)は、その使用許諾に基づき、自己の製造に係るシャツ、ブルゾン、パンツ等の各種被服製品について、商標「アネックス」及び「Annex」を使用している(乙第2号証)。
乙第2号証及び乙第3号証並びに乙第2号証の1ないし3及び乙第3号証の1ないし3に示されているとおり、被請求人の防汚加工織物を原材料として、旭蝶(株)は、商品「シャツ」(長袖シャツ)を製造し、販売している。
乙第2号証の1及び乙第3号証の3の写真に示されているとおり、旭蝶(株)の商品「シャツ」(長袖シャツ)には、その優れた機能を示す商標として、欧文字「Annex」を図案化して大きく表示し、かつ、その下部に、やや小さく片仮名文字の「アネックス」を表示した長方形のラベル(下げ札)が付されている(商標法第2条第3項第1号)。
乙第2号証の2は、旭蝶(株)が(株)園田商会(石川県金沢市彦三町1-3-10)に対し、シャツ2枚を卸した際の納品書(写)である。
また、乙第3号証の3の写真に写っているシャツの衿には、「品番374 ライム」の文字が見られるところ、乙第2号証の2及び3の納品書(写)中には、「374 ナガソデシャツ ライム」の記載があるので、これらは、品番374により特定される乙第3号証の3の写真に示されている商品であることがわかる。ちなみに、「ナガソデシャツ」は、「長袖シャツ」を意味し、「ライム」は、色を表示している。
この納品書(写)は、平成12年10月26日付けであって、本件審判請求の登録(平成12年12月6日)前3年以内に、商標「アネックス」及び「Annex」の付された「シャツ」(長袖シャツ)が旭蝶(株)から単価1,940円で2点、(株)園田商会に販売された事実を示している(商標法第2条第3項第2号)。
被請求人からの使用許諾に基づき、旭蝶(株)は、商標「アネックス」及び「Annex」を表示したラベル(下げ札)をその商品に付している。
乙第5号証は、旭蝶(株)に納入した当該ラベル(下げ札)を印刷した会社が旭蝶(株)に宛てた出荷案内書(控)(写)である。この案内書(控)(写)には、旭蝶(株)の担当者名、ラベルを特定した「アネックス札」という品名が表示されている。なお、このラベル(下げ札)は、その時以降現在に至るまで継続して使用されている。
そして、当該ラベル(下げ札)に使用されている片仮名文字で表された「アネックス」は、本件商標と同一の構成態様からなるものであって、これが本件商標そのものの使用であることは明白である(乙第3号証の3)。この「アネックス」の文字は、白抜きした書体で明瞭に表されており、これが自他商品識別標識たる商標の使用であることは、いうまでもない。
さらに、その上部に図案化して表示された欧文字の「Annex」は、片仮名文字「アネックス」の自然かつ当然の発音をローマ字の表示に変更したものであって、本件商標と社会通念上同一と認められ、この使用は、商標法第50条第1項括弧書きの規定により、本件商標の使用と認められる。
商標「アネックス」及び「Annex」の使用に係る商品「シャツ」(長袖シャツ)は、上半身に着る洋風の衣類であって、これは、本件商標の指定商品中の「ワイシャツ類」に属し、本件取消審判請求の対象である商品「被服(但し、洋服、コートを除く)布製身回品、寝具類」中の「セーター類、ワイシャツ類、下着、ねまき類」の類似群(17A02)に含まれる。
旭蝶(株)は、上記商標を付した商品を譲渡している。
よって、本件商標が使用されている事実は、証明されている。
(2)請求人の弁駁に対する再答弁
請求人は、被請求人提出の証拠によっては、被請求人が本件商標の使用許諾を行った事実が証明されていないと主張する。
しかしながら、乙第2号証は、通常使用権者である旭蝶(株)が本件商標を自己の製造、販売に係るシャツについて使用していることを報告している。
また、乙第3号証(報告書)は、被請求人が、旭蝶(株)に対して、本件商標の通常使用権の許諾を与えたことを明確に示しているものである。
これにより、旭蝶(株)が、被請求人から本件商標の通常使用権の許諾を受けたことは、明白に証明されているので、請求人の主張には、理由がない。
請求人は、商標権について使用許諾をするには、使用許諾契約を取り交わすのが常であり、使用許諾契約書が提出されなければ、通常使用権者であることが、証明されないと主張する。
しかし、請求人の主張は、契約の成立に関する民法の基本を誤り、審決例や裁判所の判断法則にも反しており、認められない。契約の成立は、基本的に両当事者の合意の意思表示により成立するものであって、契約書の締結という書面による要式を不可欠とするものではない。審決及び判決例においても、従来から、客観的な事情の存在を基礎として、通常使用権許諾のあったことが認定されている。本件については、通常使用権者としての旭蝶(株)が作成した乙第2号証(報告書)と、被請求人が作成した乙第3号証(報告書)によって、被請求人が本件商標の使用を旭蝶(株)に許諾した事実は、証明されている。
また、請求人は、ラベルの供給の関係があることをもって、使用許諾がされたことにはならないと主張する。
しかしながら、ラベルの供給という形態により、許諾した商標の表示、使用に係る商品の数量、許諾料の徴収等を合理的かつ厳正に管理することが可能になるのであり、当業界においては、このような形態による商標の使用許諾が実際普通に見られる。
さらに、請求人は、被請求人が旭蝶(株)に対して、単に、旭蝶(株)の商品に被請求人の織物が用いられていることを示すラベルを供給しているにすぎないと主張する。
しかしながら、当該ラベルは、通常使用権の許諾に基づき商品「シャツ」の商標として使用することを前提として作成されたものであり、現に、乙第2号証の1及び乙第3号証の3に示すとおり、「シャツ」(長袖シャツ)に使用されている。
商標「アネックス」及び「Annex」の使用は、旭蝶(株)の出所に係る優れた機能を有する素材の商品「シャツ」(長袖シャツ)を表示する自他商品識別標識としての機能を有する商標の使用である。仮に、第三者が当該ラベルを無断で使用すれば、本件商標に係る商標権の侵害を構成することになることはいうまでもない。
以上のとおり、ラベルの供給の関係があることをもって、使用許諾がされたことにはならないと述べる請求人の主張には、理由がない。
乙第8号証(報告書)は、本件商標に関し、平成6年3月1日から現在まで、旭蝶(株)に対して、通常使用権が許諾されていることを、被請求人と旭蝶(株)とが確認した書面である。
本件商標に関する通常使用権の許諾は、被請求人と旭蝶(株)との業務に関する広範な契約の一環として定められている。
被請求人は、これに示された守秘義務もあり、当該契約の全体や詳細に関する資料を、その制度上、秘密保持が図れない審判事件のこの種の審理には、提出することができない。
しかし、乙第2号証及び乙第3号証、乙第8号証によって、旭蝶(株)が通常使用権者であることは、明白に証明されている。
(3)本件商標は、取消請求に係る指定商品に使用されていることの証明について
請求人は、乙第2号証の1及び乙第3号証の3の写真中の商品に、大きなポケットが二つ付いており、そのポケットには、ジッパーが付いていること等や、甲第1号証の会社年鑑における(株)園田商会等の関係会社の業務内容に関する記載の2点を理由に、被請求人が乙各号証で示している商標の使用は、シャツではなく、商品「制服、作業服」についての使用であって、商品「洋服、コート」の範疇に属する旨主張する。
しかしながら、上記2点のいずれの主張も誤りであって、認めることができない。
それというのも、ポケットとジッパーを理由に、「シャツ」と「作業服、制服」を区別するという請求人の主張は、合理的な根拠を欠く乱暴な議論である。ポケットの数、ジッパーの有無は、シャツの機能、デザインの問題にすぎない。
例えば、開きんシャツ、スポーツシャツ、ポロシャツについては、ポケットのないもの、一つのもの、あるいは二つあるものなど、様々なデザインのものがある。また、ジッパー付きのシャツも普通に見られるところであるから、乙第2号証の1及び乙第3号証の3に示す写真が「シャツ」ではないとの請求人の主張は、認めることができない。
そもそも、「シャツ」が、「上半身に着る洋風の肌着やワイシャツなど、中着又は上着として着るもの」(乙第9号証)と説明されているのに対し、「作業服、制服」は、各種現場や工場など特定の作業に向けて身体の保護や作業能率の向上を目的として、いわゆる上下が連続するツナギの作業服や、特別な業務や構成員であることを示す上下揃った制服をいうと、説明し得るものである。
作業服、制服など「洋服、コート」(17A01)に含まれる商品は、上半身と下半身とが一体となったもの、あるいは、下半身に関するものであって、この点からすると、上半身につける中着又は、上着である「セーター類、ワイシャツ類、下着、ねまき類」(17A02)に属する各種シャツとは、区別される。
すなわち、「シャツ」であるか否かの判断は、上半身に着るものであるか否かが基準であって、ポケットの数やジッパーの有無によるものではない。 乙各号証に示す商品は、上半身に中着又は上着として着るものであって、これが普通にいうシャツであることはいうまでもない。
また、乙第2号証の1及び乙第3号証の3の写真は、衿、ポケットを有する柔軟な素材からなり、通常、下部をズボンに収め、又は、そのままで、あるいは、その上に上着を着るものであり、立った衿を備え、ネクタイを着用することが多く、その外観よりして、そこに示されている商品は、「シャツ」(長袖シャツ)そのものである。被請求人及び旭蝶(株)が乙第2号証及び乙第3号証で記載したように、それを「シャツ」と理解し、実際の市場においても、乙第2号証の2に記載のように、「ナガソデシャツ」(長袖シャツ)と特定して取引されている。
(4)請求人は、甲第1号証に示す会社年鑑中の(株)園田商会及び、阪神被服(株)の事業内容の記載について指摘している。
しかしながら、それらの記載のみをもって、乙各号証に示す商品の種類を判断するというのは、基本的に誤りであって、合理的な主張ではない。
一般に、ユニホーム、あるいは、学生衣料、運動服、作業服と記載されていても、それらの商品の種類、意味、内容は、多様であって、それらの中に、シャツ、下着、セーター、チョッキなどが含まれないと即断することは、それ自体根本的に誤りである。
例えば、近年、作業服専門店には、数多くの「セーター類、ワイシャツ類、下着、ねまき類」に属する商品が展示、販売されている。商品が多様化し、多彩な商品展開が図られている今日の商取引の事情下においては、限定された記載に基づき実際の商品の種類、範疇を断定することは無理である。
したがって、甲第1号証(平成6年10月発行)のような古い資料をもって、平成12年の取引や商品に関する弁駁の証拠たり得るといえるものではない。
不使用取消審判においては、予告登録前3年以内の商標の使用に関する証拠を提出すべきところ、甲第1号証を、いかなる事実認定の基礎とすることができるのかは不明であるから、かかる証拠を根拠とする請求人の主張は、誤りである。
以上のとおり、甲第1号証の記載を根拠として、旭蝶(株)が製造、販売する商品が、全て作業服、制服であって、「シャツ」ではないとの請求人の主張は、合理的なものではなく、これを認めることができない。
そもそも、ある商標が原材料の由来に関係するものであったとしても、その表示態様よりして、その商品自体の商標として使用されていれば、当該商品に関する商標の使用というべきである。
商標の機能は、製造標、販売標、証明標的な性質を有するものなど多彩であり、いずれの態様においても、商標の使用を構成するものである。
複数の商標がシャツなどの衣服について併せて使用されることは、普通であって、それが原材料に関係する商標として使用されているとしても、シャツについての商標の使用であることもあり得る。
そして、素材に関する表示は、上記「Annex」及び「アネックス」とは無関係に、別の段に、きわめて小さく示されている。
乙各号証のラベルが付された商品は、「Annex」及び「アネックス」印の「シャツ」であること、すなわち、「Annex」及び「アネックス」という商標は、優れた素材からなる「シャツ」の自他商品識別標識として使用されている。これは、素材の優秀さを示す「シャツ」の商標としての使用であって、素材に関する商標の使用でないことはいうまでもない。
以上、詳述したとおり、被請求人から本件商標の使用の許諾を受けた、旭蝶(株)は、本件審判請求の登録前3年以内に、取消請求の対象である指定商品中に含まれる商品「シャツ」(長袖シャツ)について、商標「アネックス」及び「Annex」を付して製造、販売しており、当該商標が使用されていた事実は、乙各号証により、明白に証明されている。
よって、本件商標の使用は、商標法第50条の規定に該当するものではなく、本件審判請求は、理由がない。

4 当審の判断
請求人は、旭蝶(株)が、本件商標の通常使用権者ではなく、また、被請求人が提出した乙第2号証の1及び乙第3号証の3の写真の商品が、本件商標の取消請求に係る商品中の「シャツ」ではなく、しかも、その「シャツ」に付した、商標が、商品「シャツ」に係る商標として、使用されているものではないと主張しているので、以下、これらの点について検討する。
(1)旭蝶(株)が本件商標の通常使用権者であるか否かについて
被請求人の提出に係る乙第2号証[旭蝶(株)から被請求人の代理人に宛てた「報告書」]によれば、旭蝶(株)が、被請求人製造に係る防汚加工織物を購入するとともに、商標「アネックス」を表示した添付用ラベルを最終製品に付することについて、被請求人から使用許諾を得ていることが認められる。
また、乙第3号証(被請求人のマーケティング部部長から被請求人の代理人に宛てた「報告書」)には、本件商標が、被請求人の防汚加工織物を指称する商標であり、被請求人は、当該織物(品番60T63000 100m)を旭蝶(株)に対して、平成12年7月24日に出荷していること、被請求人は、旭蝶(株)に対して、本件商標を付したこの織物を販売するとともに、その最終製品群に添付すべきラベルを印刷会社である株式会社富士工芸社を通じて支給していること、さらには、旭蝶(株)は、そのラベルを添付した商品の写真(乙第2号証の1及び乙第3号証の3)を提出したことが認められる。
加えて、乙第8号証(被請求人のマーケティング部部長から被請求人の代理人に宛てた「報告書」)には、被請求人が同社の防汚加工素材を使用して製造した商品について、旭蝶(株)に対し、平成6年3月1日より通常使用権を許諾しており、その契約が一年毎に自動更新され、今日に至っていること及び上記防汚加工素材の織物の商標が本件商標であると記載されていることが認められる。
以上の証拠よりすれば、少なくとも、旭蝶(株)は、本件商標の通常使用権者と認めて差し支えないものと判断される。
なお、商標法上における「通常使用権」の位置付けは、その性質上、債権的効力を有することから、その設定に関しては、当事者内の契約(合意)等により成立し、行政庁の許可(商標登録原簿への設定行為)等を要しないものである。
(2)被請求人の提出に係る乙第2号証の1及び乙第3号証の3の写真の商品が、本件商標の取消請求に係る商品「シャツ」か否かについて
請求人は、乙第2号証の1及び乙第3号証の3の写真の商品は、大きなポケットが二つついており、そのポケットにジッパーがついていることから、「作業服ないし制服」と考えるのが自然であり、ワイシャツ類に属する「シャツ」とは認められないと述べるとともに、乙第11号証の旭蝶(株)の企業ガイドの事業内容が「被服の製造・販売」であり、また、旭蝶(株)から商品を購入している甲第1号証の会社年鑑に示された園田商会(株)及び阪神被服(株)の事業内容がそれぞれ「ユニホーム販売」、「学生衣料、運動服、作業服販売(小売り)」と記載されていることから、本件商標は、取消請求に係る商品中の「シャツ」について、使用をしているとは認められない旨主張している。
ところで、「シャツ」に関しては、被請求人が提出した乙第9号証(岩波書店発行「広辞苑」第三版)によれば、「上半身に着る洋風の肌着やワイシャツなど、中着又は上着として着るものもいう。」との記載があることから、乙第2号証の1及び乙第3号証の3の写真の商品は、「シャツ」の範疇に属する商品と認められるものであり、また、近年、作業服専門店において、数多くの「セーター類、ワイシャツ類」が販売されていることからすると、たとえ、会社年鑑に「ユニホーム販売」や「作業服販売」と記載されているとしても、商品「シャツ」を販売していないとまではいえないものである。
そうとすれば、乙第2号証の1及び乙第3号証の3の写真の商品は、本件審判の取消請求に係る商品中の「セーター類、ワイシャツ類、下着、ねまき類」の概念下に属する商品「シャツ」と認めて差し支えない。
(3)本件商標が、通常使用権者・旭蝶(株)によって、商品「シャツ」について使用しているか否かについて
(ア)被請求人は、乙第2号証(報告書)において、旭蝶(株)が被請求人の製造した防汚加工織物を購入し、それにより「シャツ、ブルゾン、パンツ」等を製造し、それらについて、被請求人の許諾の下に、平成6年より本件商標を使用をしており、その事実は、乙第2号証の1及び乙第3号証の3の写真に示されている旨主張する。
しかしながら、乙第2号証の1及び乙第3号証の3(商標の使用態様を表す写真)に見られるラベル中には、本件商標「アネックス」と社会通念上同一の商標と認め得る「Annex」が付されていることは、確認できるものの、当該写真の撮影年月日は、本件審判請求の登録日(平成12年12月6日)より後の平成13年1月10日及び同15日であることからすれば、結局、この証拠をもってしては、取消請求に係る商品について、本件商標が商標法第50条に規定する所定の期間内に、使用をしていたものとは認めることはできない。
また、被請求人は、乙第2号証の2及び3の「(副)納品書(写)」[旭蝶(株)から、その製造した商品の販売店の(株)園田商会及び阪神被服(株)に宛てたもの]には、いずれも「374 ナガソデシャツ ライム」の記載があり、品番「374」が乙第2号証の1及び乙第3号証の3に写っている商品に付されたラベル群中の商標「アネックス」及び「Annex」であると主張する。
しかしながら、乙第2号証の2[旭蝶(株)が(株)園田商会に宛てた(副)納品書(写)]の日付は、本件審判請求の登録日(平成12年12月6日)前3年以内の平成12年10月26日であるとしても、該納品書には、商標「アネックス」及び「Annex」が表示されていないので、商標「アネックス」及び「Annex」の使用事実を確認することができない。
さらに、乙第2号証の3[旭蝶(株)が阪神被服(株)に宛てた「(副)納品書)」(写)]には、商標「アネックス」及び「Annex」が表示されていないだけでなく、その日付は、本件審判請求の登録日(平成12年12月6日)後の平成13年1月18日であることから、結局、この証拠をもってしては、本件商標が、商標法第50条に規定する所定の期間内に、取消請求に係る商品について、使用されたことを客観的に証明したものとはいえない。
(イ)被請求人は、乙第3号証(報告書)において、本件商標は、当社の防汚加工織物及びその製品の商標であって、平成5年より使用していること、また、平成12年9月期に、その織物を旭蝶(株)に対して、半期で約8,500メートル販売したこと、さらに、被請求人は、旭蝶(株)に対し、当該織物「アネックス」を販売すると同時に、旭蝶(株)の最終製品群に添付するラベルを印刷会社である(株)冨士工芸社を通じて支給している旨を述べるとともに、乙第3号証の1(請求書データチェックリスト)に記載のとおり、平成12年7月24日に、旭蝶(株)に対して、品番60T63000の織物「アネックス」を100メートル出荷している旨述べている。
しかしながら、乙第3号証(報告書)及び乙第3号証の1によっては、通常使用権者が、本件商標の使用をしたことは把握できないから、当該商標が、通常使用権者によって商品「シャツ」の商標として使用をしていることを客観的に裏付ける証拠ということはできない。
(ウ)また、乙第3号証の2及び乙第5号証は、[(株)冨士工芸社が旭蝶(株)に宛てた出荷案内書(控)(写)]であるところ、これには平成9年8月27日に、「アネックス下札」5,000枚を同社が旭蝶(株)に対して出荷した旨記載されているが、その日付は、本件審判請求の登録日(平成12年12月6日)前3年以内よりも前であるから、これをもって、取消請求に係る商品に本件商標を使用しているとする証左とはなり得ない。
(エ)乙第4号証(「アネックス」不使用審判用出荷伝票の件)との見出しの被請求人から被請求人の代理人に宛てた書面)は、前記乙第2号証の2及び3の記載内容(374 ナガソデシャツ ライム)にすぎないから、本件商標の使用について言及のない乙第4号証をもっては、本件商標が、本件審判請求の登録日前3年以内に日本国内において、取消請求に係る商品に使用をしていた証左ということはできない。
(オ)乙第6号証は、2003年(平成15年)1月1日付けの「企業ガイド」という見出しのある通常使用権者のインターネットのホームページ中の会社案内であるが、これには、商標「アネックス」及び「Annex」の記載がないだけでなく、その日付よりして、通常使用権者が本件商標の取消請求に係る商品について、商標法第50条に規定する所定の期間内に使用をしていた証拠ということはできない。
(カ)乙第7号証は、被請求人の案内パンフレット(原本:平成12年9月現在)であるが、これよりは、被請求人が多角経営をしている会社であることは認められるとしても、該パンフレットからは、本件商標の存在及びその使用事実が把握できないものである。
(キ)乙第8号証[被請求人会社のマーケティング部部長から被請求人の代理人に宛てた(報告書:2001年11月1日付け)]は、本件商標に関し、被請求人が旭蝶(株)に対して、被請求人の防汚加工素材(織物)を使用して、旭蝶(株)が商品を製造することについて、平成6年3月1日より通常使用権を許諾していること及びその使用許諾契約が1年毎に自動更新され、今日に至っている旨が記載されている。
しかしながら、その記載をもってしても、乙第2号証の1及び乙第3号証の3の写真に写っている本件商標と社会通念上同一の商標を通常使用権者が使用しているものとは認められず、また、当該商標が商品「シャツ」の商標として使用されていることを客観的に裏付ける証拠ということはできない。
(ク)乙第9号証及び乙第10号証は、岩波書店発行「広辞苑」及び講談社発行「日本語大辞典」のそれぞれ「シャツ」についての頁(写)にすぎないから、本件商標を取消請求に係る商品に使用をしたことの証拠となるものではない。
(ケ)乙第11号証は、通常使用権者発行の「’99 SPRING&SUMMER COLLECTION」(平成11年版商品ユニフォームのカタログのコピー)と認められる。
しかしながら、この乙第11号証には、本件商標の使用事実を見いだすことができないから、これをもって、通常使用権者が、本件商標を取消請求に係る商品について使用したことの証明をしたものとはいえない。
(コ)以上を総合勘案すれば、被請求人提出の乙第2号証ないし乙第11号証(枝番を含む。)のいずれをもってしても、被請求人又は通常使用権者が、本件商標又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件審判請求の登録日前3年以内に日本国内において、取消請求に係る商品「被服(但し、洋服、コートを除く。)布製身回品、寝具類」について、使用した事実を証明しているものと認めることができない。
(4)なお、被請求人は、通常使用権者が被請求人の防汚加工織物(素材)【該織物に直接付したラベルには、商標「アネックス」及び「Annex」(以下「使用商標」という。)が表示されている。】を原材料として製造したシャツであって、旭蝶(株)の製造に係る商品「シャツ」に、本件ラベルを直接付して販売したのであるから、これにより、使用商標は、商品「シャツ」について使用されていたということができると主張する。
ところで、繊維業界においては、需要者のニーズに合った被服等を作るための品質・特性をもつ新素材(繊維、糸、織物等)の開発が化学繊維メーカーによって進められており、その新素材から製した被服等には、化学繊維メーカーの開発した新素材を用いた被服等であることを表示したラベルと共に当該被服の製造者又は販売者が、自己の商品であることを示す独自の商標を表示したラベル等も同時に添付されて、販売されることが一般的に行われている。
しかして、乙第3号証の3の下段の写真のラベルの使用商標は、直接商品「シャツ」に付されているとしても、これに接する取引者、需要者は、当該ラベルに「防汚加工素材」及び「NiSSHiNBO」の表示があることから、これより、繊維メーカーである日清紡績(株)が開発した素材(織物)を使用したシャツであることを認識し、理解するとみるのが相当である。
そうとすれば、該ラベルに表示されている使用商標は、シャツの素材(織物)に係る商標というべきである。
また、乙第3号証の3の下段の写真の「シャツ」のラベルには、通常使用権者・旭蝶(株)の略称を英文表記したと認められる「ASAHICHO」の欧文字と、その上部に、緑色で塗りつぶした楕円枠内に白抜きの「よごれん太助」の文字が表示されている。そのラベルの表示よりは、通常使用権者自らの商標を付したものと認められる。
してみれば、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標は、商品「シャツ」ではなく、専ら、「防汚加工素材(織物)」についての使用をしているものとして、取引者、需要者により認識し、理解されるものであるから、本件取消審判請求に係る指定商品中の商品「シャツ」について使用をしているものということはできない。
そして、この種商品の最終製品と素材(織物)との関係については、本件と同旨の判決〔東京高等裁判所平成16年(行ケ)第404号 平成17年3月17日言渡〕の判示事項に照らし、かつ、商品「シャツ」と素材(織物)との関係についての被請求人の主張を考慮したとしても、前記認定のとおり判断するのが相当というべきである。
ほかに、本件商標が被請求人、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかにより、商標法第50条に規定する所定の期間内に取消請求に係る商品について、使用をしていることをうかがわせる証拠はなく、また、本件商標をその取消請求に係る商品「シャツ」に使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、指定商品中、「被服(但し、洋服、コートを除く。)布製身回品、寝具類」についての登録を、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-11-11 
結審通知日 2005-11-16 
審決日 2005-11-29 
出願番号 商願昭39-42283 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (117)
最終処分 成立  
特許庁審判長 大場 義則
特許庁審判官 蛭川 一治
鈴木 新五
登録日 1966-05-12 
登録番号 商標登録第706387号(T706387) 
商標の称呼 アネツクス 
代理人 青木 篤 
代理人 高橋 康夫 
代理人 石田 敬 
代理人 勝部 哲雄 
代理人 田島 壽 
代理人 宇井 正一 

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