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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z25
管理番号 1126201 
審判番号 取消2004-31411 
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-12-22 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2004-10-27 
確定日 2005-10-31 
事件の表示 上記当事者間の登録第4206837号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4206837号商標(以下「本件商標」という。)は、「JUST DO IT」の文字を標準文字で書してなり、平成9年7月28日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、同10年10月30日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録は取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、過去3年間商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実がない。
よって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証-1ないし4及び乙第5号証について
(ア)乙第1号証(使用に係る商品「紳士用礼服」(以下「使用商品」という。)の写真)は、撮影日付、撮影者、撮影場所が不明である。当該写真は、本件審判の請求書の副本の送達後に撮影したものとのことだが、(2)で述べるように、乙第2号証及び乙第3号証(納品書)との関係が立証されていないので、たとえ、その撮影時点に使用商品が存在したことは証明できるとしても、本件審判の請求の登録前3年間に存在したという証明にはならない。
(イ)仮に使用商品が本件審判の請求の登録前3年間に存在したとして、乙第1号証-1ないし4(使用商品の上着の写真)についてみると、本件商標を表示した布のパッチは、上着内側に縫い付けられているが、通常商標が表示される襟ネームには何らの表示もないようにみえる。一方、上着の内ポケットに縫い付けられている商品タグには、本件商標は表示されていない。また、被請求人の名称も表示されていない。
(ウ)乙第1号証-3の商品タグの左上には登録商標を意味するマルアールを付けた商標が表示されているが、これは登録第3182047号商標(甲第2号証、権利者:東京都千代田区所在の「全日本紳士服工業組合連合会」)と同一とみられる商標である。
また、上記商品タグに表示されている「全日本紳士服産業協議会」及び「5-400」について、被請求人は、「5-400」の数字は、被請求人が加盟する団体「全日本紳士服産業協議会」において登録されている被請求人の登録番号であり、被請求人が製造する商品には当該登録番号を付すことで、商品の製造者が被請求人であることが特定される旨述べているが、インターネット検索によれば、「全日本紳士服産業協議会」という団体は発見できず(甲第3号証)、「登録番号連絡票」に記載されている同協議会の電話番号「052-211-2131」(乙第5号証)は、「名古屋メンズアパレル製造卸協組」という団体が該当する(甲第4号証)。
よって、商品タグに表示されている「5-400」という数字が被請求人を示すものであることの立証は不十分である。
(エ)乙第1号証-4の着脱可能なタグによっては、本件商標の使用は何ら立証されていない。
(オ)以上のとおり、乙第1号証-1ないし4によっては、本件商標が被請求人によって本件審判の請求の登録前3年間に使用されたことは何ら立証されていない。
(2)乙第1号証-5ないし7について
乙第1号証-7の商品タグに表示されている商標は、甲第2号証の商標のみであり、本件商標は何ら表示されていない。
(3)乙第2号証、乙第3号証及び乙第6号証について
(ア)乙第2号証及び乙第3号証には、本件商標の表示はなく、本件商標と関連付けられる表示も全くない。
(イ)被請求人は、納品書に記載された商品コード「2210000」が乙第1号証の商品タグの表示の「2100」と一致すると主張するところ、乙第6号証によれば、商品コード「2210000」の最初の数字の大分類区分コードがフォーマルに対応する「2」であることは是認できるとしても、年区分コードについては、「礼服については、年区分コードを便宜的に『0』を記入し礼服であることを明確にしている」との事実の裏付けはなく、さらに、中分類区分コードの「0」は、ジャケットとなっている。礼服は、通常上下一揃いで販売されるものであり、納品書に表示される中分類コードは、乙第6号証によれば、スーツを示す「1」となっているはずである。よって、乙第1号証に示されている「NO 2100」が乙第2号証及び乙第3号証に表示されている品番「2210000」と一致するということは立証されていない。
(ウ)乙第1号証-4には、納品書の品名と同じ表示がされているが、たとえ乙第1号証の撮影時の使用商品に当該タグが付いていたとしても、撮影された同一タグが、使用商品について、乙第2号証及び乙第3号証の日付である2003年4月28日の時点で使用されたものか不明である。
(エ)乙第2号証及び乙第3号証に示される売上げ数量は、同一の会社(株式会社森長)の支店2ヶ所に対する極めて少量の販売であり、名目的な使用といえる。
(オ)以上、乙第2号証及び乙第3号証によっては、本件商標の使用は何ら立証されていない。
(4)乙第4号証について
乙第4号証(納品書)にも本件商標の表示はなく、本件商標と関連付けられる表示も全くない。また、販売数量も合計8点とやはり極めて少量である。
さらに、乙第4号証の日付は2004年5月17日であるが、後記3で述べるように、この時点で被請求人は既に、本件審判を請求される可能性があることを知っているので、乙第4号証がたとえ本件商標の使用を立証し得るとしても、商標法50条第3項によりいわゆる駆け込み的使用とみなされるものである。
(5)乙第7号証及び乙第8号証について
前記したように、乙第2号証ないし乙第4号証の納品書自体が本件商標の使用を立証していないので、両得意先が存在しているとしても、何ら本件商標の使用の立証と関連のないものである。
(6)乙第9号証
本件商標の使用の立証と関連のないものである。乙第2号証ないし乙第4号証それ自体が本件商標の使用を立証していない。また、乙第4号証については、前記及び後記3で述べるように、商標法50条第3項によりいわゆる駆け込み的使用とみなされるものである。
(7)乙第10号証について
乙第10号証(加工指示書)は、「海外 加工指示書(生産管理)」とあり、使用商品の商品タグに「MADE IN CHINA」とあるので、中国の工場での加工についての指示書とみられる。このような書類は、社内文書であって、取引書類とはいえない。工場名に記載されている「(有)グレック」が被請求人とは別法人であるとしても、加工を中国の工場に取り次ぐ被請求人の手足機関であり取引先ではない。
また、当該加工指示書には「裏ネーム/上前/JUSTDOIT」との記載があるが、記載どおりに、「JUSTDOIT」の裏ネームが指示書によって製造された衣服に付されたという証拠はない。付されたとしても、それは海外(中国)においてであり、国内における商標の使用ではない。当該標章を付した商品が国内に輸入、販売されたという立証はなされていないし、また、そのうちの「JUSTDOIT」は、「JUST」、「DO」及び「IT」の各語の間にスペースがなく、別の称呼も生じ得るので、本件商標とは同一性のない標章である。
(8)乙第11号証について
乙第11号証(加工指示書)は、本件商標の使用の立証と関連のないものである。
(9)乙第12号証について
乙第12号証(被請求人会社概要)は、本件商標の使用の立証と関連のないものである。
(10)以上のとおり、上記証拠によっては、乙第2号証及び乙第3号証に示されている品名「RF レイフク CP DB4X1」が2003年4月28日の時点で、少数量販売されたことは立証できるとしても、その商品が本件審判の請求書副本の送達後に撮影した乙第1号証の商品と、同一の商品であるという証明はされていない。たとえ、両品名が一致していることが認められるとしても(この点も、「RF レイフク CP DB4X1」の表示によって両者を関連付けるものは、乙第1号証-4の着脱可能なタグのみである。)、当該写真と納品書の商品が同一の商品であるということは全く立証されていない。
3 駆け込み使用について
請求人は、本件審判の請求前である平成15年10月30日に、本件商標に対して登録無効審判(以下「無効審判事件」という。)を請求し、その登録は同年11月19日にされた。本件商標は、請求人の著名なスローガン「JUST DO IT.」と同一性のある商標であるが、無効審判事件において、上記スローガンは、わが国では著名なものではないとの審決がされた(甲第1号証及び甲第5号証)。
被請求人代理人は、平成15年11月28日付に、請求人に対し、本件商標の譲渡の申し入れをした(この事実は、無効審判事件の審決において、被請求人の主張として「現時点において、被請求人と請求人との間で、本件商標の譲渡についての契約交渉を継続中である。」との記載によって裏付けられる(甲第5号証12頁))。
しかしながら、請求人は、もともと自己のスローガンである商標を高額で譲り受けることには同意しかねたことから、交渉が成立しなかったものである。
すなわち、無効審判事件の請求の登録の時点で、被請求人は、その請求が成立しない場合には、本件商標に対して取消審判の請求がされる可能性があることを知り、譲渡交渉を開始していたことになる。
したがって、平成15年(2003年)11月20日以降の本件商標の使用は、いわゆる駆け込み的使用に当たるものである。
4 以上述べたとおり、本件商標が本件審判の請求の登録前3年間に、しかも、被請求人が本件商標に対して取消審判が請求されることを知る前に、指定商品について真正に使用されていたことは何ら証明されていない。
したがって、本件商標の登録は取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証(枝番を含む。)を提出した。
1 被請求人は、スーツ、ジャケット、礼服等を主商品とした紳士服類の製造、販売を継続的に行うアパレルメーカーである(乙第12号証)。
2 使用の事実
(1)乙第1号証ー1ないし7は、被請求人が製造した使用商品の写真である。
なお、乙第1号証の各写真は、本件商標の使用態様及び本件商標を使用した使用商品の商品タグの各種情報を明示するために、本件審判の請求書の副本の送達後に撮影したものである。
(ア)使用商品の左胸の内ポケットには、商品タグ及び本件商標と社会通念上同一と認められる商標が縫い付けられている(乙第1号証-1ないし4)。
また、使用商品の左袖のボタンには、透明のビニールケースに入った商品タグが付されている(乙第1号証-4)。この商品タグは、乙第1号証-1ないし3に示す商品タグに表示された情報の一部及びバーコードを印刷したものであり、商品が陳列された状態で商品の各種情報が分かりやすいように上記ボタンに掛けられたものである。
(イ)上記左胸の内ポケットの商品タグの上から二段目には、使用商品の品番を表す品番区分コード「NO 2100」の表示がある(乙第1号証-2)。
なお、商品タグには、品番区分コード以外に、被請求人が製造段階で製品の種類を管理するためのロットナンバー「LOT LW3-08」が最上段に記載され、品番区分コードの下方には、胸囲等のサイズ及び衣服の型を示す「94AB4」の表示(ABは、“やや肥満型”の体型表示であり、4は衣服の号数を示している)や、製造現場が国内か海外かの区別等を示すモデルコード「モデル Z188」、製造を行った工場のコード「66」、「MADE IN CHINA」の表示が記載されている。品番区分コードやサイズ、型については、乙第1号証-4にも同様の表示がなされている。
(ウ)上記(イ)の商品タグの他面には「ウール」等の原材料表示のほか、「全日本紳士服産業協議会」の表示及びその連絡先電話番号とともに「5-400」の数字が記載されている(乙第1号証-3)。該数字は、被請求人が加盟する団体「全日本紳士服産業協議会」に登録されている被請求人の登録番号であり、被請求人が製造する商品には該登録番号を付すことで、商品の製造者が被請求人であることが特定される(乙第5号証)。なお、全日本紳士服産業協議会は、主に愛知、岐阜、大阪の紳士服メーカを会員とする製造者団体である。
(エ)使用商品は、上着とズボンがセットで製造されるが、ズボンに縫いつけられた商品タグにも、ロットナンバー「LOT LW3-08」、品番区分コード「NO 2100」、登録番号「5-400」など、上着の商品タグと同一の情報が記載されている(乙第1号証-5ないし7)。
(2)乙第2号証ないし乙第4号証は、被請求人が得意先に商品とともに引き渡した納品書の控え(写し)である。
なお、被請求人が使用する商品コード体系は、2001年秋冬物以降の商品について適用しており、被請求人が発行する各納品書には、当該商品コード体系によって決定される7桁(色番区分コードも含む場合は8桁)の商品コードが記載される。具体的には、商品コードは左端から1桁目が商品の大分類区分コード、続く4桁が品番区分コード、次の1桁が年区分コードであって西暦年の下1桁、さらに次の1桁が商品の中分類区分コードである(乙第6号証)。
(ア)2003年4月28日に、品名「RF レイフク CP DB4X1」、品番「2210000」、色「A」(フォーマル商品については、乙第6号証に示すように、その色番区分コードはAとなる。)、型「AB」であって、3、4、5号の商品をそれぞれ1着ずつ計3着を「株式会社森長、御所野店」に納品した(乙第2号証、項目2)。
上記品番欄の「2210000」の大分類区分コードは、フォーマルに対応する「2」であるので、礼服が納品されたことが理解できる。そして、大分類に続く4桁の品番区分コード「2100」は、乙第1号証-2、乙第1号証-4、乙第1号証-6における品番区分コード「NO 2100」と一致している。すなわち、乙第2号証により、品番区分コード「2100」の本件商標を使用した使用商品が2003年4月28日に取引されていることが理解できる。
なお、年区分コードが「0」となっているが、これは、乙第2号証で納品された礼服が2000年のモデルであることを意味する訳ではなく、被請求人は、礼服については、他のスーツ等とは異なり、シーズン毎のモデルチェンジを行うことなく繰り返し定番のデザインとしているため、礼服には本来的に年区分が無い。そこで、礼服については、上記商品コードのうち年区分コードの部分に便宜的に「0」を記入し礼服であることを明確にしているのである。
(イ)同じく2003年4月28日に、品名「RF レイフク CP DB4×1」、品番(商品コード)「2210000」、色「A」、型「AB」であって、3、4、5号の商品をそれぞれ1着ずつ計3着を、「株式会社森長、大曲バイパス店」に納品した(乙第3号証、項目2)。すなわち、乙第3号証からも、品番区分コードが「2100」である使用商品が納品されたことが理解できる。
(ウ)2004年5月17日に、品名「礼服」、品番区分コード「2100」、色「A」、型「AB」であって、4、6、7号の商品をそれぞれ1着ずつ計3着を、「(株)住吉屋、三篠店」に納品した(乙第4号証、項目2)。乙第4号証は、商品コードのうち大分類区分コードなどは省略してあるが、4桁の品番区分コードは明確に記載されている。
(エ)上記「株式会社森長」及び「(株)住吉屋」は、いずれも国内にて紳士服等の小売業を営んでいる(乙第7号証及び乙第8号証)。
(オ)「00年4月26日」に、「レイフクCPDB6×2」を「青山商事(株)、松江店」に対して、納品した(乙第9号証)。
(3)このように、本件審判の請求の登録の日から遡って3年以内に、被請求人が指定商品「洋服」に本件商標を付し、これを販売していることは明白である。
(4)補強証拠として、使用商品を製造する際に被請求人が作成した加工指図書を提出する(乙第10号証及び乙第11号証)。
(ア)加工指図書(乙第10号証)の(1)には、製品の製造を行う工場名及び工場に関する識別コード「60266」が記載されている(ただし、同識別コードの左から1桁の「6」は生産管理が工場段階であることを意味し、続く2桁の「02」は工場の加工形態が委託加工であることを意味し、純粋に工場を識別するコードは下2桁の「66」である。)。同(2)には、製造する製品の商品コード「2210000」や、色や、柄や、製造現場が国内か海外かの区別等を示すモデルコード「Z188」や、モデル名(品名)が記載されている。(4)の記載によれば、体型AB型の製品について、4号を110着分加工することが指図されている。
(イ)上記(ア)の(1)の識別コード「60266」の下2桁「66」、(2)の商品コード「2210000」及びモデルコード「Z188」、(8)の「管理No LW3‐08」の表示は、乙第1号証の使用商品の商品タグにおける工場のコード「66」、品番区分コード「2100」、モデルコード「モデル Z188」、ロットナンバー「LOT LW3-08」とそれぞれ一致している。
また、(7)の「裏ネーム/上前/JUSTDOIT」は、この加工指図書の記載内容から、乙第1号証に示した使用商品の品番コード「2100」と同じ製品が、当該加工指図書に基づいて大量生産されたことが理解できる。
さらに、(9)(10)より、該指図書が発行されたのが2003年6月6日、該指図書に従って実際に工場現地にて裁断が行われたのが2003年7月8日、裁断された加工後の製品が工場現地から国内に納品されたのが2003年8月1日であることが理解できる。なお、被請求人は、加工指図書についても、その年月日の年数部分を西暦の下2桁で表示している。これは、乙第11号証として添付した他の加工指図書の写しにおいて、各日付が「00年2月17日」、「00年4月2日」と表示されていることからも明らかである。
(ウ)以上より、被請求人は、上記加工指図書に基づいて製造した製品を在庫として持ち、前記「(株)住吉屋、三篠店」などの各得意先からの注文に応じて、その得意先に対して販売したものである。
(5)むすび
したがって、被請求人が本件商標をその指定商品ついて使用している事実は明白である。

第4 当審の判断
1 乙第1号証ー1、乙第1号証ー2、乙第1号証ー4、乙第1号証ー6、乙第2号証ないし乙第4号証、乙第6号証ないし乙第8号証及び乙第10号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証ー1は、使用商品(使用商品が「紳士用礼服」であることについては、請求人は争うことを明らかにしていない。)の上着の全体写真であり、左前身頃の内側を見せるように左前身頃を開けた状態のものである。
(2)乙第1号証ー2は、上記(1)の左前身頃の内ポケット部分の拡大写真であるところ、内ポケットには、「LOT LW3-08 28」、「NO 2100」、胸囲等のサイズ、「94AB4」、「モデル Z188」、「工場 66」、「MADE IN CHINA」が記載された商品タグが付されている。また、該内ポケットの下部には、「JUST DO IT」(「J」、「D」、「I」の各文字は黄色で表され、他の文字は白色で表されている。)が表示されている。
(3)乙第1号証ー4は、使用商品の袖のボタンに付けられた商品タグの写真であるところ、該商品タグには、「NO 2100」、「COL A」、「モデル Z188」、「RF レイフク CP DB4X1 2タッ」、胸囲等のサイズ、「94 AB4」などが記載されている。
(4)乙第1号証ー6は、使用商品のズボンの後ポケットの拡大写真であるところ、後ポケットには、「LOT LW3-08 28」、「NO 2100」、胸囲等のサイズ、「94AB4」、「モデル Z188」、「工場 66」、「MADE IN CHINA」が記載された商品タグが付されている。
(5)乙第2号証ないし乙第4号証は、被請求人が発行した納品書(控)であるところ、乙第2号証及び乙第3号証は、2003年(平成15年)4月28日付けで株式会社森長御所野店及び同社大曲バイパス店に宛てたものであり、乙第4号証は、2004年(平成16年)5月17日付けで株式会社住吉屋三篠店に宛てたものである(これらの日付については争いがない。)。
そして、乙第2号証及び乙第3号証の項目2には、「品名」欄に「RF レイフク CP DB4X1」と、「品番」欄に「2210000/Z188」と、「色」欄に「A」と、「型」欄に「AB」と、「号数/3、4、5」欄にそれぞれ「1」と、「数量」欄に「3」と記載されている。
また、乙第4号証の項目2には、「品名」欄に「礼服 2100A AB」と、「入数/ケース/サイズ/色」欄に記載された「4、6、7」の数字のそれぞれの下に「1」が記載され、「数量」欄に「3」と記載されている。
(6)乙第6号証は、2001年(平成13年)3月1日付け「商品コード体系」であるところ、被請求人の取扱いに係る商品に付される商品コードは、1桁の大分類、4桁の品番コード、西暦年の下1桁及び1桁の中分類よりなり、末尾の色番は、「A〜H」で表されることが認められる。
(7)乙第7号証及び乙第8号証は、協同組合日本洋服トップチェーンの「Member’s List」及びホームページであるところ、これらには、その会員として、株式会社森長及び株式会社住吉屋の名称が記載されている。
(8)乙第10号証は、被請求人が作成した2003年(平成15年)6月6日付け「海外加工指図書(生産管理)」である(日付については争いがない。)ところ、「管理No. LW3-08」、「コード 工場名/60266 (有)グレック」、「品番/2210000」、「色/A」、「モデルコード モデル名/Z188 RF レイフク CP DB4X1 2タック」などが記載され、納品日として「03年8月1日」が記載されている。
2 前記1で認定した事実を総合すると、被請求人は、中国で製造した、ロットナンバー「LW3-08」、品番「2100」、モデルコード「Z188」とする紳士用礼服(使用商品)に「JUST DO IT」(「J」、「D」、「I」の各文字は黄色で表され、他の文字は白色で表されている。)を表示し、本件審判の請求の登録(平成16年11月16日)前3年以内の少なくとも2003年4月28日に株式会社森長(支店2店)に、及び2004年5月17日に株式会社住吉屋に使用商品を納品したと推認することができる。そして、上記使用に係る商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、乙第1号証は、撮影日付、撮影者、撮影場所が不明であり、乙第2号証及び乙第3号証との関係が立証されていないから、本件審判の請求の登録前3年間に使用商品が存在したという証明にはならない旨主張し、さらに、仮に使用商品が本件審判の請求の登録前3年間に存在したとしても、通常商標が表示される襟ネームには何らの表示もなく、内ポケットに付された商品タグや袖に付けられた商品タグ等にも本件商標は表示されていないから、本件商標の使用は立証されていない旨主張する。
しかし、乙第1号証は、撮影日付、撮影者、撮影場所が不明であるとしても、これにより、使用商品の状態、使用商品に使用された商標の態様、取引上使用商品に使用される品番等が把握できるのであり、前記認定のとおり、これらの証拠と乙第2号証ないし乙第4号証、乙第6号証ないし乙第8号証及び乙第10号証とを総合勘案すれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたと認めることができるのである。また、使用に係る商標が必ず襟ネームや商品タグ等に表示されていなければならないとする事情は見出せない。
(2)請求人は、乙第2号証及び乙第3号証には、本件商標及びこれと関連付けられる表示がなく、また、これらに記載された商品コード「2210000」が乙第1号証に示されている「NO 2100」と一致するということは立証されていない旨主張し、さらに、乙第1号証-4には、納品書の品名と同じ表示がされているとしても、乙第1号証の撮影時に使用された商品タグが、乙第2号証及び乙第3号証における納品時点で使用されたものか不明であり、乙第2号証及び乙第3号証に示される売上げ数量は、極めて少量であり、名目的な使用といえるから、乙第2号証及び乙第3号証によっては、本件商標の使用は何ら立証されていない旨主張する。
しかしながら、乙第2号証及び乙第3号証に本件商標等の表示がないとしても、取引一般において使用される取引書類には、商品の品番等の表示のみをもってなされる場合も決して少ないというのが相当である。そして、乙第6号証によれば、商品コード最初の1桁である大分類の次の4桁は、品番コードであることが認められ(争いのない事実)、乙第2号証及び乙第3号証の項目2には、乙第1号証ー4の商品タグに表示されたものと同一と認められる「品名/RF レイフク CP DB4X1」が記載されているほか、「品番」欄には、「2210000 Z188」と記載され、大分類の次には品番コードである「2100」が記載されているところからすれば、乙第1号証の使用商品が取引されたと推認することができる。
また、乙第2号証及び乙第3号証に記載された使用商品(紳士用礼服)の納品数量は、「型/AB」が3であり、「型/A」が5であることが認められるところ、礼服は、「儀式に着用する衣服」(広辞苑第5版)であり、日常着用する服と異なり、さほど頻繁に使用されるものではないから、販売数においても平服に比べさほど多くはないとみるのが相当である。そうすると、乙第2号証及び乙第3号証における納品数量は、礼服という商品のもつ特質からすれば、決して少ないものではなく、名目的な使用とみることはできない。
(3)請求人は、本件商標に対し、平成15年10月30日に登録無効審判を請求した経緯を述べ、さらに、上記無効審判事件の請求の登録があった同年11月19日以降の同年11月28日に、被請求人より本件商標の譲渡の申出があったが、このことは、被請求人が無効審判事件の請求の登録があった時点で、本件商標に対し、請求人より取消審判が請求される可能性があることを知っていたことになるから、同年11月20日以降の本件商標の使用(乙第4号証)は、いわゆる駆け込み的使用に当たる旨主張する。
しかしながら、請求人が本件商標に対し登録無効の審判の請求をした理由はさておいて、商標法第50条第3項は、商標権者等が商標法第50条の規定による審判の請求がされることを知った後に登録商標の使用をした場合、いわゆる駆け込み使用をした場合は、その使用は同第1項に規定する登録商標の使用に該当しないことを定めたものであるところ、同第3項によれば、「第一項の審判の請求前三月からその審判の請求の登録の日までの間に、日本国内において商標権者等がその請求に係る指定商品等についての登録商標の使用をした場合」と規定している。
そこで、乙第4号証がいわゆる駆け込み使用であるか否かについて検討するに、本件商標の商標登録原簿によれば、本件審判の請求は、平成16年10月27日であり、その登録は、同年11月16日にされている。そうすると、本件において、駆け込み使用というためには、審判の請求日である平成16年10月27日の3ヶ月前である同年7月27日より請求の登録日である同年11月16日までの間の使用でなければならないところ、前記1(5)で認定したとおり、乙第4号証は、2004年(平成16年)5月17日に被請求人が株式会社住吉屋三篠店に使用商品を納品したことを証明する証拠であるから、その使用は、同第3項でいう駆け込み使用の期間に該当しないものである。そして、乙第4号証は、被請求人が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を請求に係る指定商品中の「紳士用礼服」について使用していた事実を証明する証拠となり得たことは、前記認定のとおりである。
(4)請求人は、乙第10号証について、社内文書であり、取引書類とはいえないなどと主張する。
しかし、乙第10号証に記載された「管理No. LW3-08」、「品番/2210000」、「色/A」、「モデルコード モデル名/Z188 RF レイフク CP DB4X1 2タック」などより、使用商品がこの加工指図書に基づいて製造されたことは疑いの余地はなく、使用商品に関する一連の取引とみることができるから、取引書類ということができる。
(5)したがって、上記(1)ないし(4)に関する請求人の主張は、いずれも理由がない。その他、乙各号証について、請求人は証拠力がない旨の主張を繰り返すが、被請求人とその得意先との取引は、前記認定のとおり、乙号証に示された品名、品番、色記号、型などの要素が一致しており、少なくとも前記1で摘示した各証拠については、同一の取引に関する証拠であることは明らかというべきである。他に前記認定を覆すに足る証拠の提出はない。
4 以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が本件商標と社会通念上同一と認められる商標を請求に係る指定商品中の「紳士用礼服」について使用していたことを証明したというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものではない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-06-03 
結審通知日 2005-06-09 
審決日 2005-06-21 
出願番号 商願平9-143149 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z25)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 茂木 静代
特許庁審判官 津金 純子
佐藤 達夫
登録日 1998-10-30 
登録番号 商標登録第4206837号(T4206837) 
商標の称呼 ジャストドゥーイット 
代理人 横井 俊之 
代理人 西村 雅子 

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