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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200135265 審決 商標
無効200135424 審決 商標
無効200589032 審決 商標
無効200335425 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z09
管理番号 1121582 
審判番号 無効2004-89069 
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-09-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-09-03 
確定日 2005-08-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4633957号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4633957号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4633957号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成13年10月6日に登録出願、第9類「電子計算機及び周辺機器,ネットワークを監視するためのコンピュータソフトウェア及び記憶させた電子回路,磁気ディスク,光ディスク,CD-ROM,CD-R,その他の電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、同15年1月10日に設定登録、現に有効に存続しているものである。

第2 引用商標
1 請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標は、以下(1)ないし(4)のとおりである。
(1)登録第655209号商標(以下、「引用A商標」という。)は、「VOGUE」の欧文字を横書きしてなり、昭和36年10月23日に登録出願、第26類「印刷物、ただし、この商標が特定の著作物の表題(題号)として使用される場合を除く」を指定商品として、同39年10月9日に設定登録、その後、指定商品については平成17年4月6日付けで商品の区分第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品に書換登録され、現に有効に存続しているものである。
(2)登録第967284号商標(以下、「引用B商標」という。)は、「ヴォーグ」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和43年12月20日に登録出願、第26類「雑誌、その他本類に属する商品」を指定商品として、同47年6月7日に設定登録、その後、指定商品については平成14年11月27日付けで商品の区分第6類、第9類、第16類、第19類及び第20類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品に書換登録され、現に有効に存続しているものである。
(3)登録第4547685号商標(以下、「引用C商標」という。)は、「ボーグ」の片仮名文字を標準文字で書してなり、平成11年1月8日に登録出願、第16類「紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,型紙,紙製テーブルナプキン,紙製タオル,紙製手ふき,紙製のぼり,紙製旗,紙製ハンカチ,紙製幼児用おしめ,裁縫用チャコ,荷札,印刷物,書画,写真,写真立て,文房具類,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,青写真複写機,あて名印刷機,印刷用インテル,印字用インクリボン,活字,こんにゃく版複写機,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,装飾塗工用ブラシ,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,封ろう,マーキング用孔開型板,郵便料金計器,輪転謄写機,観賞魚用水槽及びその附属品」を指定商品として同14年3月1日に設定登録、現に有効に存続しているものである。
(4)登録第4274296号商標(以下、「引用D商標」という。)は、「VOGUE」の欧文字を横書きしてなり、平成9年10月6日に登録出願、第9類「コンピュータ用プログラムを記憶させたCD-ROMディスク及びコンパクトディスク,その他の電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。),録画済みビデオディスク及びビデオテープ」を指定商品として同11年5月21日に設定登録、現に有効に存続しているものである(以下、一括していうときは「引用各商標」という。)。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第142号証(枝番含む)を提出した。
1 理由
(1)商標法第4条第1項第15号について
引用A商標は、請求人の所有に係るファッション雑誌の題号として、日本を含め世界的に著名となっている商標である。
また、引用B商標は、引用A商標のカタカナ表記の「ヴォーグ」であって、我が国においては第二次大戦以前より現在に至る迄、引用A商標のカタカナ表記として日本国内において使用され、日本国内で周知著名となっている。
さらに、引用C商標は、引用A商標のカタカナ表記として、我が国の新聞社をはじめ、辞典,雑誌等の出版業界で「ボーグ」として使用され、本件商標の出願日以前から周知著名性を獲得し、現在に至っているものである。
引用A商標の称呼に関し、「日本語の感覚からすれば『ボーグ』と『ヴォーグ』の称呼の区別はつけにくいところである」点は、東京高裁によるVOGUE関連判決における認定でも明らかである。現に、我が国における「VOGUE」誌の説明においても「ボーグ」と表記している例も多くみられている。
しかも、「登録商標の著名度が高い場合には、その著名度の高い部分に世人の注意が集中し当該著名商標の称呼、観念が生じる」ことも裁判所においても明確に認定されているところである。
我が国では、引用A商標及び引用B商標の専用使用権者である(有)コンデナストにより、「VOGUE」誌の日本語版は、「VOGUE NIPPON」誌として平成11年以降発行されている。しかも、「NIPPON」の文字は、「VOGUE」の「O」の中に小さく表示されているに留まり、「VOGUE」の日本語版であることを示す附記的部分にすぎないから、引用A商標「VOGUE」と、「VOGUE NIPPON」とは、実質的には同一の標章である。
これに対し、本件商標は、商標権者の商号「ネットヴォーグ株式会社」の要部「ネットヴォーグ」を英文字化し、かつ、その英文字を少しデザイン化して「netvogue」としたものであるから、「ネットヴォーグ」の称呼が生じる。
さらに、本件商標の指定商品は、第9類のいわゆる「ネット関連商品」に属するものであるから、商標構成中の前半部の「net」の部分には要部がなく、後半部の「vogue」の部分に要部があるものとみるのが自然である。
したがって、本件商標は、その商標中の「vogue」の文字部分より「ヴォーグ」又は「ボーグ」の称呼と観念が生じ、引用A商標とは称呼及び観念が同一であり、かつ、外観も類似する。
また、本件商標と引用B商標及び引用C商標とは、称呼及び観念が類似する。
加えて、本件商標の指定商品は、いわゆる「ネット関連商品」であるから、「VOGUE」誌の各広告頁に掲載されているドメインネーム、ウェブサイト等と業務上の関連性があるから、本件商標は引用A商標、引用B商標及び引用C商標とその商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は無効とされるべきである。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用D商標「VOGUE」とは、前記と同様に、称呼と観念において類似し、かつ、指定商品が抵触する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号にも違反して登録されたものであるから、その登録は無効とされるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)請求人は、1892年よりアメリカ合衆国で発行され、現在はアメリカ合衆国、フランス等を含む世界15ヶ国で発行されている世界的に著名なファッション雑誌「VOGUE(ヴォーグ)」の日本における商標権者である。
そして「VOGUE」は、カタカナで「ヴォーグ」あるいは「ボーグ」と表記され、いずれのカタカナ文字も「VOGUE」を表記するものとして、本件商標の登録出願日前より我が国内で取引者、需要者によって認識されて周知・著名となって現在に至っている。
これに対し、本件商標は、前記したとおり、その要部が「vogue」となるため、「ヴォーグ」又は「ボーグ」の称呼及び「人気、流行」の観念が生じる。また、本件商標と引用A商標は外観も類似するから、本件商標と引用A商標は外観、称呼及び観念、本件商標と引用B商標ないし引用C商標は称呼及び観念において類似する。
加えて、本件商標の指定商品は、いわゆる「ネット関連商品」である以上、「VOGUE」誌の各広告頁に掲載されているドメインネーム,ウェブサイト等と業務上の関連性があり、かつ、「電子出版物」、「電子出版物の提供」とも直接関連性があるから、本件商標を指定商品に使用した場合、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は無効とされるべきである。
(2)被請求人は、答弁書において自社の理念を主張するが、「net」自体は本来「網」の意味合いを有する語であり、そこから「インターネット(internet)」、「ネットワーク(network)」と拡大し、少なくとも我が国においてはその短縮語の「ネット(net)」として略称され使用されているものである。
被請求人は、本件商標は造語商標であると主張するが、「流行」は、英語では「fashion」とか「popular」が使用されており、「vogue」はほとんど使用されないのが現実である。
さらに、被請求人の主張する「工学系を専攻した男性の従業者が、高級ファッション雑誌等に接する機会はほとんど無く」の主張は適切でない。
そして、現在の出版事業は、雑誌のみならず、インターネットを通じて、「電子出版物」、「電子出版物の提供」が誰にでも開放されている時代である。
(3)「VOGUE」については、すでに24件もの防護標章登録が登録されており、また、カタカナ「ヴォーグ」についても、14件の防護標章登録が登録されている事実を客観的に見れば、被請求人の前提とする周知・著名性の否定には根拠がない。
さらに、本件商標に接する取引者・需要者は、その構成中の「vogue」の文字部分に着目して、ファッション雑誌である「VOGUE」誌を連想し、上記のネット関連商品が、請求人らと経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかと、その出所について誤認混同するおそれがある。
(4)被請求人は、引用A商標ないし引用C商標に対し、「創造商標」でない点を指摘しているが、重要なことは、商標の「自他商品識別機能」、これから派生する「出所表示機能」、「品質保証機能」、「宣伝広告機能」、「財産的機能」、「顧客吸引力」等であるから、この点に関する被請求人の主張は認め難い。
上記の諸事実に照らしてみれば、「VOGUE」がディクショナリーワードであっても、そのこと自体、周知性や著名性を否定される根拠とはならないと考える。重視されるべきは、前記のような「使用の実体」と「第三者の認識」の点である。
「VOGUE」(「ヴォーグ」、「ボーグ」)は、「ファッション」、「ポピュラー」などのように、日本国内において日本語ないし外国語として通常使用されているような言葉ではない。
なお、出版社による多角経営化についての被請求人の主張は、事実無根の主張としか考えられない。
(5)引用D商標は大文字の「VOGUE」であるのに対し、本件商標「netvogue」は、本件商標の指定商品の品質表示である「net」の文字にファッション雑誌の観念を生じる「vogue」とを結合させたものであり、必ずしも「netvogue」と不可分一体にみなければならない理由はない。
したがって、本件商標中の「net」とその要部「vogue」とを分離観察したときは、引用D商標との関係で、外観、称呼及び観念が同一であり、指定商品との関係でも両者は同一又は類似する商標である。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を次のとおり述べた。
1 本件商標とその選択の経緯
本件商標は、独特にデザインされた欧文字の同一書体で「netvogue」と不可分一連一体に書されたものであり、その指定商品は前記したとおりである。
被請求人である、ネットヴォーグ株式会社の理念は、「技術革新の流れが速いインターネット(IT)の分野で、流れをつかみ、使いやすい形で顧客に提供すること」である。この会社の理念を表すために、英語の自然語である「net」と「流行」を意味する英語の自然語である「vogue」とを組み合わせて、造語として「netvogue」を創作したものである。被請求人の会社においては、工学系を専攻した男性の従業者が多く、これらの者においては、高級なファッション雑誌等に接する機会はほとんど無く、請求人の発行する雑誌「VOGUE」を知らない者も多い。したがって、本件商標は、引用A商標ないし引用C商標を何ら意識せずに、被請求人によって、英語の自然語を組み合わせて創造された造語からなる商標である。よって、本件商標は不正の目的をもって選択したものではない。
2 商標法第4条第1項第15号違反について
(1)本件商標と引用A商標ないし引用C商標との対比
引用A商標ないし引用C商標は、「VOGUE」、「ヴォーグ」及び「ボーグ」の欧文字及び片仮名文字よりなるものであるから、前記の構成態様からなる本件商標とは外観上明らかに区別できるものである。
また、本件商標は、その音数も短いことから、特に切断される必要性もなく「ネットヴォーグ」との称呼のみが生じるのに対して、引用A商標ないし引用C商標からは、「ヴォーグ」又は「ボーグ」のみの称呼が生じる。
そうとすれば、両者は、語頭音における「ネット」の音の有無に明瞭な差違を有し称呼非類似である。
さらに、本件商標「netvogue」は造語であり、特に意味は有さないのに対し、「vogue」は「流行」の意味を有するから、本件商標と引用A商標ないし引用C商標とは、観念非類似である。
よって、本件商標と引用A商標ないし引用C商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても非類似である。
(2)他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるか否かについて
混同の有無についての判断にあたって、以下検討する。
(ア)標章の周知度について
引用C商標は、片仮名で「ボーグ」と標記するものであるが、この引用C商標についても、請求人は、周知著名性を有すると主張している。しかしながら、引用C商標に関しては、防護標章登録もなく、「ボーグ」から必ずしも「VOGUE」を想起できるとも思えないから、引用C商標は周知著名性を有しない。
(イ)創造標章であるか否かについて
引用A商標は、「VOGUE」であり、英語で「流行」を意味する自然語の英単語であり、創造商標でない。引用B商標及び引用C商標は、「ヴォーグ」及び「ボーグ」であり、英語で「流行」を意味する単語「VOGUE」のカタカナ表記であって、創造商標でない。
(ウ)ハウスマークであるか否かについて
引用A商標「VOGUE」は、請求人が米国で発行する雑誌の名称であり、請求人の会社名は「コンド・ナスト・アジア・パシフィック・インコーポレイテッド」であるから、引用A商標は、ハウスマークではない。
また、引用B商標及び引用C商標についても、同様にハウスマークではない
(エ)多角経営の可能性について
請求人は、出版社の多角経営化の例を挙げている。しかしながら、請求人の挙げる出版社の多角経営化の例は、ほとんどが、出版社の関連業務に限られており、出版社における多角経営化の可能性を考慮しても、請求人のようなファッション雑誌の出版社が電子計算機やソフトウエア等の製造・販売まで行うことは希であり、このような分野に多角経営化されることがあるとは通常考えられない。
(オ)商品間、役務間又は商品と役務間の関連性について
「ネット関連商品」とは、商標法上何を意味するのか不明である。本件商標の指定商品は、前記したとおりの商品であり、類似群コード11B01,11C01に属する商品である。
また、請求人のいう「『VOGUE』誌の各広告頁に記載されているドメインネーム、ウェブサイト等」は、雑誌の掲載内容であり、請求人が著名であると主張する「VOGUE」誌は、商標法上は、第16類の「雑誌」(類似群コード26A01)に属する商品であり、両者の指定商品は業務上関連性はない。
また、請求人の論理に立脚すれば、雑誌に掲載される全ての商品が、雑誌と業務上関連性を有するということになる。しかし、「商品間、役務間又は商品と役務間の関連」は、あくまでも、本件商標の指定商品と引用A商標ないし引用C商標の指定商品との間の関連で考えるものであって、請求人の主張するような雑誌の掲載内容まで関連するという主張が認められないことは自明である。
したがって、「VOGUE」誌と、本件商標の指定商品とは、業務上関連性がない。
(3)本件商標を付した商品の需要者と「VOGUE」誌の需要者について
本件商標を付した商品の需要者は、工学系を専攻した男性の技術者が主である。これらの人は、秋葉原、日本橋、大須等の電気街に主に出かける人たちで、ファッション等には全くといって良いほど興味がない。
これに対して、「VOGUE」誌は、女性向けの高級ファッション雑誌であることから、その需要者は、20代〜30代のファッションに興味を有する女性である。これらの女性は、電子計算機び周辺機器、コンピュータソフトウェアや電子回路等には疎い。
また、本件商標を付した商品の取引の実情は、需要者への直接販売又は専門のコンピュータ機器の設置会社等を通じての販売である。これに対して、「VOGUE」誌は、書店での販売であり、商品の取引の形態は全く異なる。
したがって、本件商標を付した商品の需要者と「VOGUE」誌の需要者とは、全く異なり、また、商品の取引の形態も全く異なり、本件商標を付した本件指定商品の需要者が、その指定商品が「VOGUE」誌を出版する会社の商品だと混同するおそれも、また、「VOGUE」誌を出版する会社と何らかの関係を有する会社の業務に係る商品だと混同するおそれもない。
(4)甲第6号証について
請求人は、甲第6号証として、ラ・ヴォーグ南青山事件を取り上げている。しかしながら、ラ・ヴォーグ南青山は、おしゃれな街として知られている南青山に建設されたマンションに付された商標であり、その需要者は、「VOGUE」誌の需要者と共通するものである。
しかしながら、本件商標の需要者と「VOGUE」誌の需要者とは、上記のように全く異なる。
また、「La Vogue Minami Aoyama/ラ・ヴォーグ南青山」は、「Vogue」及び「ヴォーグ」が切り出され易い標章である。
これに対して、本件商標は不可分一体性を有するものである。
したがって、ラ・ヴォーグ南青山事件は、本件商標の登録の無効の判断の参考にはならない。
また、請求人が引用する他の訴訟事件、審決取消事件、審判事件等は、全て個別に事情が異なるものであり、本件商標の登録の無効の判断の参考にはならないものである。
(5)まとめ
本件商標と引用A商標ないし引用C商標とは、商品が互いに類似せず、かつ、商品の出所の混同を生ずるおそれもない。また、本件商標は、不正の目的をもって採択したものでもない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
3 商標法第4条第1項第11号違反について
本件商標は、独特のデザインされた欧文字の同一書体で「netvogue」と一連一体に書されているものであり、不可分一体性を有し、外見上切断されるいわれはない。
これに対して、引用D商標は、前記した引用A商標と同一の欧文字で「VOGUE」と書されてなるものである。
そして、本件商標と引用A商標が非類似の商標であることは前記したとおりであるから、同様に、本件商標と引用D商標も外観、称呼及び観念のいずれにおいても非類似の商標と認められるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。

第5 当審の判断
1 引用各商標の著名性について
(1)甲第15号証ないし甲第65号証、甲第67号証、甲第68号証、甲第71号証ないし甲第76号証、甲第82号証ないし甲第90号証ないし甲第110号証、甲第115号証、甲第118号証ないし甲第120号証及び甲第132号証(枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略した。)を総合すると、以下の事実が認められる。
「VOGUE」誌は、1892年にフランスで創刊され、1915年にアメリカ版、1916年にイギリス版が創刊されたファッション雑誌(甲第57号証、甲第58号証、甲第60号証)で、我が国(1999年9月1日に「VOGUE NIPPON」(ヴォーグ ニッポン)甲第71号証)を含めて世界の15カ国から発刊(2001年10月1日現在;甲第67号証)されており、我が国においては、その発刊(1999年9月1日)以前にも海外版の「VOGUE」誌が輸入されていた。例えば、昭和24年10月3日付け朝日新聞(甲第72号証)によれば、「『ヴォーグ』入荷 世界的スタイル雑誌『ヴォーグ』が十年ぶりに一日入荷した。」との記載がある。
そして、我が国において、本件商標の登録出願前に発行された百科事典類には、「ヴォーグ Vogue 最も知られた流行服飾雑誌の名。」(甲第73号証、甲第78号証)、「ボーグ Vogue フランスの服飾雑誌。」(甲第74号証、甲第76号証)、「ボーグ Vogue 婦人服飾流行雑誌。・・・ファッション雑誌としては高水準のものを紹介している・・」(甲第75号証)などのように記載している。また、「アメリカ州別文化事典」(甲第82号証、甲第61号証と同じ)には「Vogue ボーグ。月刊ファッション誌。ファッションマガジンの代名詞と言われる高い評価を獲得した。」と、「アメリカを知る事典」(甲第83号証、甲第62号証と同じ)には「ボーグ|Vogue 1893年に発刊されたファッション雑誌。・・《ボーグ》は代表的なファッション誌となった。」と、「現代用の基礎知識1959年版」(甲第84号証)には「流行雑誌。外国の代表的なものとしては、『ヴォーグ』(Vogue米、仏、英版)」、「現代用語の基礎知識1980年版」(甲第85号証、甲第63号証と同じ)には「ボーグ(vogue) 流行。服飾雑誌の名。」との記載がある。
また、服飾関係の事典類等にも、「ヴォーグ Vogue」に関し、著名なファッション雑誌である旨の記載がある。
さらに、我が国の著名な週刊誌、全国紙等にも、例えば、「世界的なハイファッション誌、フランスの『ボーグ』が・・〈パリモードを魅惑の日本で・・〉という・・日本特集を企画。」(甲第90号証、甲第91号証)、「フランスのファッション誌『ボーグ』の編集長のフランソワーズ・モー夫人が来日した。」(甲第95号証)などのように、その時々の話題として記事が掲載されたほか、「ヴォーグ60年展」の関する記事も多くの新聞、雑誌で特集された(甲第98号証ないし甲第104号証)。
そして、「VOGUE」誌に関する上記事典類、新聞、雑誌等においての掲載は、「VOGUE」、「vogue」、「Vogue」の文字のほか、「ヴォーグ」又は「ボーグ」の文字が併記されていたり、あるいは「ヴォーグ」又は「ボーグ」の文字が単独で使用されていた。
(2)上記(1)の事実からすると、請求人(請求人が合併する前はザ.コンド・ナスト・バプリケーションズ・インコーポレーテッド社)の発行するファッション雑誌の題号である「VOGUE」の表示は、本件商標の登録出願時(平成13年10月6日)においてはいうまでもなく、その登録査定時(平成14年10月28日)においても、我が国の服飾関係のデザイナーをはじめとして、ファッションに関連する商品の取引者、需要者の間で広く知られていたと認められ、「vogue」の表示からは、請求人の取扱いに係るファッション雑誌の題号が容易に想起されるといえるものである、
2 本件商標について
本件商標は、別掲のとおり、ややデザイン化した「netvogue」の欧文字を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して「ネットボーグ」の称呼を生じるものであるが、その構成文字全体として、特定の語意を有するものとして一般に親しまれているものとは認め難いものである。
そして、本件商標の構成中の「net」の欧文字部分は、その指定商品中の商品「ネットワークを監視するためのコンピュータソフトウェア及び記憶させた電子回路,磁気ディスク,光ディスク,CD-ROM,CD-R,」との関係からすると、インターネット、ネットワークの語を略して指称する場合に用いられている「ネット」の欧文字表記といえるものであって、比較的自他商品識別力の薄い語であるといわざるを得ない。
そうすると、本件商標に接する取引者、需要者は、その構成中に請求人の取扱いに係るファッション誌の題号を表示するものとして、我が国において著名な「vogue」の文字部分に注意を強く惹きつけられファッション雑誌「VOGUE」誌を連想、想起するというべきである。
3 出所の混同について
前記1及び2で認定したとおり、「VOGUE」、「vogue」又は「Vogue」の表示は、請求人の取扱いに係るファッション誌の題号として本件商標の登録出願前より、わが国においてファッション関連の取引者、需要者の間で広く認識されているものであり、かつ、本件商標は、その構成中に他人の業務に係る商品を表示するものとして著名な「vogue」の文字を有してなるものである。
また、請求人の業務に係る前記ファッション誌の主たる掲載内容は「婦人服飾関係をはじめ、ファッション全般にわたる記事」であるところ、本件商標の指定商品中には「コンピュータソフトウェア、電子出版物」が包含されており、ファッション商品購買に関する情報と密接に関連する近時のパソコンを利用して商品の購買を行うサイバーショップの利用や、個人的にインターネットを利用して商品の売買を行うようなことも日常的に行われている実情、さらに、近時の経営の多角化により、企業が異業種分野に進出する例を参酌すれば、被請求人が本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者若しくは請求人の承諾を受けた者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
4 むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標

審理終結日 2005-06-01 
結審通知日 2005-06-07 
審決日 2005-06-20 
出願番号 商願2001-95005(T2001-95005) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Z09)
最終処分 成立  
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 三澤 惠美子
茂木 静代
登録日 2003-01-10 
登録番号 商標登録第4633957号(T4633957) 
商標の称呼 ネットボーグ、ボーグ 
代理人 山本 尚 
代理人 水谷 安男 
代理人 島田 義勝 
代理人 中山 千里 

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