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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200225215 審決 商標
審判199817893 審決 商標
不服20035262 審決 商標
不服20029882 審決 商標
不服20011877 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z08
管理番号 1121308 
審判番号 不服2002-25216 
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-27 
確定日 2005-07-15 
事件の表示 商願2001- 30092拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第8類「包丁,洋食ナイフ」を指定装品として、平成13年4月2日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係よりすれば、指定商品に採用し得る一形状を表したものと認識させる立体的形状よりなるものといわざるを得ないから、これをその指定商品について使用しても、単に商品の形状そのものを普通に用いられる方法をもって表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下、「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来、それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品又は役務の出所を表示し、自他商品又は役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは、前記したように商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品又は役務を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有しているときは、これに接する取引者、需要者は、当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、いまだ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには、原則的に、同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上、何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲のとおり、刀身と柄の部分が一体となり、かつ、該柄の部分に小さな多数の黒丸が地模様的に表された構成からなるものであるところ、その構成全体から明らかなように、商品「包丁」又は「ナイフ」を立体的形状で表したものであって、その商品の一形態を表したにすぎないものと容易に理解されるものであるから、これを本願の指定商品「包丁,洋食ナイフ」に使用しても、取引者、需要者は、単に該指定商品自体、すなわち、「包丁」又は「洋食ナイフ」の形状を表示するにすぎないものとして認識するに止まり、いまだ指定商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないというのが相当である。
してみれば、本願商標は、その指定商品に使用するときは、単に商品の形状を表してなるにすぎず、自他商品の識別標識として機能し得ないものといわざるを得ない。
(3)請求人は、本願商標について、商品の識別機能との関連では、刀身と柄が一体的に構成されたシンプルなフォルムと柄に付された水玉模様(ドット・パターン)が大きな役割を占めており、さらに、主として識別標識としての機能を発揮しているのは、その全体としての外形ではなく、柄の部分に付された水玉模様(ドット・パターン)であって、世界的に同種の商品を比較しても、包丁又はナイフの柄に水玉模様(ドット・パターン)を付した商品は、請求人の商品以前には存在しなかったことから、普通に使用される識別標識にはあたらず、よって商標法第3条第1項第3号には該当しない旨主張し、第6号証ないし第11号証を提出している。
しかしながら、刀身と柄の一体構造及びその柄の部分に付された水玉模様(ドット・パターン)は、その商品の機能又は美感をより発揮させるために施されたものというべきものであり、このことは、例えば、「GLOBAL包丁のパンフレット」(第7号証)の「Design concept」の欄の「デザイン」の項目に「現代にマッチした刀身とハンドルを一体化した斬新でシンプルなデザイン。食卓に出しても美しい。」との記載があること、同じく「安全衛生面」の項目に「持ちやすさと滑り止めを考えたデザインにより、手に良くフィットします。また、洗いやすく非常に衛生的です。」との記載があること及び、同じく「耐久性」の項目に「刀身とハンドルを一体化した事により、ハンドルが腐ったり、抜ける心配がありません。従来の包丁より丈夫で長持ちします。」との記載があること並びに、「GLOBAL包丁のリーフレット」(第8号証)の「グローバルの特徴」の欄の「特徴」の項目に「刀身と柄を一体化したデザインは食卓に出しても美しく、スウェーデン、ドイツ、イタリア、オランダ、フランス、イギリス、アメリカなど世界各国で高い評価を頂いております。」との記載があること、同じく「安全性」の項目に「持ち易さを考慮した柄の形状と滑り止めの為のドットにより、フィット感が抜群です。刀身と柄の一体構造で雑菌がつきにくく、衛生的です。」との記載があること及び、同じく「耐久性」の項目に「刀身と柄を一つにした一体化構造は水による浸食がないので柄が腐り、抜け落ちる心配がありません。従来の包丁より丈夫で長持ちします。」との記載があることによっても裏付けられるものである。
してみれば、本願商標に係る「包丁」又は「洋食ナイフ」の形状が、その柄に付された水玉模様(ドット・パターン)を含めて、他社の同種商品のものとは異なる新規な形状を示すものであるとしても、前記のとおり、それは専ら、商品の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであるから、これが直ちに本願商標の自他商品識別性に影響を及ぼすものとは認めがたく、また、本願商標に接する取引者、需要者も、それを「包丁」又は「洋食ナイフ」の形状の範囲のものと認識するに止まり、その形状をもって自他商品の識別標識として機能するとは認めがたいというべきである。
(4)また、請求人は、本願商標をスウェーデン、スイス、欧州共同体、米国及びカナダに出願し、いずれにおいても商標の識別機能が認められ、既に登録されていることにかんがみれば、本願商標は識別力が認められるべきである旨主張し、証拠方法として第14号証及び第15号証(枝番を含む。なお、請求人は、原審において第1号証ないし第13号証を提出しているので、当審において提出した第1号証及び第2号証を第14号証及び第15号証として取り扱った。)を提出している。
しかしながら、諸外国と我が国の商標保護に関する法制は、細部においては自ずと異なるものであり、よって、本願商標の登録の適否は、専ら我が国商標法の下において判断されるべきものであって、諸外国における登録状況等の事情をもって、上記(2)においてした本件判断が左右されるべきものではない。
(5)さらに、請求人は、本願商標が使用により自他商品識別力を獲得している旨主張し、第16号証ないし第22号証(枝番を含む。なお、請求人は、原審において第1号証ないし第13号証を提出しているので、当審において提出した第3号証ないし第9号証を第16号証ないし第22号証として取り扱った。以下、同じ。)を提出している。
ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として、使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一の場合に限られるものである。
したがって、出願に係る商標が立体的形状のみからなるものであるのに対し、使用に係る商標が立体的形状と文字、図形等の平面標章から構成されている場合には、両商標の全体的構成は同一でないことから、出願に係る商標については、原則として、使用により識別力を有するに至った商標と認めることができない。
また、使用に係る商品が出願に係る指定商品の一部である場合には、使用に係る商品に指定商品が限定されない限り、出願に係る商標については、使用により識別力を有するに至った商標と認めることはできないものである。
(6)そこで、請求人の提出に係る第16号証ないし第22号証についてみるに、以下の事実が認められる。
(ア)請求人の提出に係る第16号証の2(請求人に係るウェブサイト上の「グローバル」ブランドのキッチン・ナイフのデザインコンセプトに関する情報)をみると、「GLOBAL」のタイトルの下、「1983年の発売以来、国内外の料理家やシェフたちに支持され、愛用されてきた『グローバル』というブランドのキッチン・ナイフ。(後略)」との記載があり、また、「Debut【ヨーロッパでの高い評価】」の項目には、「1983年、グローバルの12アイテムが国内向けに製造・販売されました。そして5年間の市場動向リサーチとそれを反映させたマイナーチェンジを経て、1988年フランクフルト国際見本市へ出展、輸出の第一歩を踏み出しました。(後略)」との記載があることが認められる。
(イ)請求人の提出に係る第16号証の3(請求人に係るウェブサイト上の商品カタログ情報)をみると、その中には、商品の側面形状が本願商標のそれに類似するものが「【G-2】牛刀/刃渡り:20cm/\6,000-(税抜) 両刃(右利き/左利き兼用) 肉、野菜切り」として掲載されているが、該商品の刀身部分には「GLOBAL」の文字が付されており、かつ、該カタログ情報の見出しにも「GLOBAL」及び「世界に先駆けたオールステンレスによる一体化構造、グローバル・スタンダードシリーズ」との記載があることが認められる。
(ウ)請求人の提出に係る第16号証の4(請求人に係るウェブサイト上の商品取扱店一覧情報)及び第19号証(平成15年3月20日付け及び同16年2月21日付け請求人作成の「Gシリーズ」及び「GSシリーズ」の販売数量表)をみると、請求人の製造、販売に係る商品のうち、「グローバルシリーズ」と称されるものを取り扱う全国82か所の店名、住所及び電話番号が記載されていること並びに、同じく、「Gシリーズ」及び「GSシリーズ」と称されるものの平成4年ないし平成8年及び平成13年ないし平成15年の各販売数量が記載されていることが認められる。
(エ)請求人の提出に係る第16号証の5(平成15年1月25日付け株式会社プランタン銀座のメゾン事業部部長による証明書)及び第15号証の3(平成16年2月25日付け株式会社アクシス代表取締役による証明書)をみると、いずれも本願商標を表す7図を掲げ、該図に表された包丁が自己の経営する店舗において、長年、販売され、そのハンドルに付されたドットパターンが商品の識別の機能を果たし、それにより、取引者、需要者は請求人に係る製品であることを認識していること及び、同じようなデザインがハンドルに付されている同種の商品はなく、市場において、該図の包丁が、常に請求人に係る商品であると認識されていることから、該図の包丁は、請求人の製造、販売に係る商品として、需要者、取引者に周知、著名となっていることは明らかである旨の記載があることが認められる。
(オ)請求人の提出に係る第19号証(平成7年ないし平成9年、平成13年及び平成14年のテレビ・ショッピング番組映像)及び第22号証(平成13年及び平成14年のテレビ番組映像)をみると、そのいずれの映像においても、直ちに本願商標と同一形状からなる「包丁」又は「洋食ナイフ」を視覚、認識することはできず、また、映し出された「包丁」には「GLOBAL」の文字が付されているか又は、例えば、「グローバル包丁3点セット \10,000」のように、「グローバル」の文字を用いたテロップ、「グローバル」の音声とともに商品紹介等の放送がされていることが認められる。
(カ)請求人の提出に係る第21号証(各種雑誌記事等)をみると、雑誌「LEE」を始めとする各雑誌の平成6年4月号から平成14年9月号において、それぞれ「包丁」の写真が掲載されていることは認められるとしても、その中には本願商標の形状と明らかに異なるもののみからなるものが含まれており、また、その他のものについても「包丁」の刀身部分に「GLOBAL」の文字が付されているか又は、「GLOBAL」若しくは「グローバル」の文字とともに掲載されていることが認められる。
(7)上記(6)の(ア)ないし(カ)に述べた事実を踏まえ、本願商標が商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるか否かについて検討する。
(ア)上記(6)の(ア)によれば、昭和58年(1983年)に、「グローバル」というブランドのキッチン・ナイフについて、12アイテムが国内向けに製造、販売された旨記載されているが、該「12アイテム」に本願商標と同一形状からなる商品「包丁」又は「洋食ナイフ」が含まれているか否かについて明らかでない。
ところで、請求人(出願人)が原審において提出した第3号証(平成2年10月1日付け通商産業大臣(当時)による平成2年度「グッド・デザイン商品選定証」)をみると、「商品名 包丁」、「型式 グローバルG-1,2,3,4,5,6,7,8,9,10」等の記載とともに、商品の側面形状が本願商標のそれに類似するものの、その刀身部分に「GLOBAL」の文字が付されたものが掲載されていること、同じく第4号証(「インターナショナル デザイン年鑑1990/1991」、1991年1月20日、株式会社美術出版社発行)をみると、商品の側面形状が本願商標のそれに類似するものの、その刀身部分に「GLOBAL」の文字が付されたものが掲載されており、これの付記として「KOMIN YAMADA」、「Kitchen Knives, Global」及び「Manufacturer: Yoshikin, Japan」等の英字の記載があることが認められる。
してみれば、商品の側面形状が本願商標のそれと類似する形状からなる商品「包丁」が、工業デザイナーの山田耕民氏によりデザインされ、その後、遅くとも平成2年(1990年)から平成15年(2003年)まで継続的に製造、販売されたことは窺い知ることはできるものの、請求人(出願人)に係る商品カタログなどを含め、テレビ放送及び雑誌における宣伝広告等に表された立体的形状は、商品「包丁」の形状そのものを表したものであって、「GLOBAL」又は「グローバル」の文字等からなる商標又は音声によって、それぞれ商品の出所が識別されているとみるのが商取引の実情に照らして自然というべきであり、また、これらの文字部分よりも立体的形状部分が需要者に強い印象、記憶を与えているとも認め得ないことから、これらによって本願商標それ自体が自他商品の識別標識として認識されたとするには十分とはいえないものである。
(イ)上記(6)の(ウ)によれば、請求人の製造、販売に係る商品のうち、「グローバルシリーズ」と称されるものが全国82か所で取り扱われていること並びに、同じく、「Gシリーズ」及び「GSシリーズ」と称されるものの平成4年ないし平成8年及び平成13年ないし平成15年の各販売数量を窺い知ることはできるものの、該商品取扱店において、本願商標と同一の形状からなる商品「包丁」及び「洋食ナイフ」が販売された数量等、具体的な実績を見出すことはできない。
してみれば、これらによって本願商標それ自体が自他商品の識別標識として認識されたとすることはできない。
(ウ)上記(6)の(エ)に述べた各証明書は、請求人が予め上記証明内容を記載した書面を用意して、これを請求人に係る商品を販売する者のうち、わずか2者が証明しているにすぎないものであり、さらに、該証明内容のうち、「そのハンドルに付されたドットパターンが商品の識別の機能を果たし、それにより、取引者、需要者は、請求人に係る製品であることを認識していること」及び「同じようなデザインがハンドルに付されている同種の商品はなく、市場において、該図の包丁が、常に請求人に係る商品であると認識されていること」に係る事実について確認するには、相当の書証等を要するものと想像されるにもかかわらず、請求人が、証明者に対し、いかなる証拠を提示した結果、証明者が該事実について相違ないと証明したものであるか、その過程が明らかにされていないことから、該証明に係る記載内容の客観性については、疑わしいものといわざるを得ず、よって、これらの証明書をもって、本願商標が使用により識別力を有するに至っているものとは認められない。
(エ)本願に係る指定商品は、上記1のとおり、「包丁,洋食ナイフ」であるところ、請求人(出願人)の提出に係るすべての書証をみるも、商品「洋食ナイフ」については、本願商標の立体的形状と同一の形状からなるものを見出し得ない。
(オ)その他、請求人(出願人)提出の各号証を総合してみても、本願商標が、その指定商品「包丁,洋食ナイフ」について、自他商品の識別標識としての機能を有するに至っていることを証明する証拠は、発見し得ない。
(カ)したがって、本願商標が、その指定商品に使用され、請求人(出願人)の業務に係るものとして、取引者、需要者間に広く認識されるに至っているとは認められないものであるから、本願商標が商標法第3条第2項に該当するものであるとする請求人の主張は、これを採用することができない。
(8)以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (別掲)
本願商標



審理終結日 2005-05-12 
結審通知日 2005-05-18 
審決日 2005-05-31 
出願番号 商願2001-30092(T2001-30092) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z08)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大島 護 
特許庁審判長 茂木 静代
特許庁審判官 田中 敬規
山本 良廣
代理人 長門 侃二 

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