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審決分類 審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 登録しない 042
管理番号 1118356 
審判番号 審判1998-2504 
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-02-13 
確定日 2005-05-27 
事件の表示 平成 4年商標登録願第242391号拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「GALLUP」の文字を横書きしてなり、第42類「文書の編集,電子計算機のプログラムの設計,経済・社会動向に関する研究」を指定役務として、平成4年9月30日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
原審において登録異議の申立てがあった結果、原査定は、「本願商標は、米国の世論調査会社である登録異議申立人(Gallup,Inc.)(以下、「申立人」という。)が役務『世論調査』について使用し取引者、需要者の間に広く知られ周知・著名となっている『GALLUP』(以下「引用商標」という。)と同一綴字の『GALLUP』の文字よりなることから、本願商標をその指定役務に使用するときは、該役務が申立人あるいは申立人と何らかの関係を有する者の業務にかかる役務であるかの如く、その出所について混同を生じさせるおそれがあるものと判断するのが相当であるので、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定して、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)引用商標「GALLUP」について
原審における登録異議申立人の提出に係る甲第6号証(以下、原審における異議申立てに係る証拠を「異議甲第○号証」又は「異議乙第○号証」という。)の「万有百科事典 11(政治経済)」(昭和48年12月30日株式会社小学館発行)の「世論調査」の項中の「歴史」によると、世論調査の方法及び技術は、主にアメリカ合衆国で発達したが、その端緒は大統領選挙の結果を事前に予測する目的でおこなわれた模擬投票であること、模擬投票の歴史は、1920年代までさのぼるといわれ、20世紀初頭にはこれが一種の流行となり、多くの新聞社、雑誌社が争って成功を競うようになり、その中でも著名なのは「リヒラリー・ダイジェスト」誌のそれであった。1935年の選挙の際には、「フォーチュン」「ギャラップ」「クロスリー」などの新興調査機関が、比例割当法による少数標本の調査という近代的方式を用いて、「リヒラリー・ダイジェスト」に挑戦し、その結果は、これらの機関がいずれもかなりの精度でルーズベルトの勝利を予測したのに対し、「リヒラリー・ダイジェスト」は20パーセントの誤差でランドンの勝利を予測し、惨憺たる敗北を喫することとなったこと、等の歴史が記載されている。
そして、異議甲第7号証「ギャラップの世論調査入門」(著者ジョージ・ギャラップ、訳者二木宏二、昭和51年8月10日株式会社みき書房発行)269頁の「過去におけるギャラップ世論調査の精度」の表には、1936年-1970年通算20回の全国選挙について行われた、ギャラップ調査最終結果(候補者と政党)とその選挙結果、調査の誤差(数パーセント以内)が記載されている。
異議甲第4号証の「コンサイス外来語辞典」(1987年4月1日株式会社三省堂発行)、同第5号証の「コンサイス外国人外来語辞典」(1993年10月20日株式会社三省堂発行)及び「広辞苑(第5版)」(1998年11月11日株式会社岩波新書発行)によると、「ギャラップ」(Gallup)は[ジョージ〜,George Horrace Gallup 1901-1984]米国の心理学者、統計学者で、世論調査の権威。世論の統計的調査法を創始。1935年、米国世論調査所[American Instiute of Public Opinion]を設立。その統計的世論調査方法はギャラップ調査として広く知られていること、とくにアメリカ大統領選の得票予想調査の的中により世界的に有名であること、が記載され、同「広辞苑」には、「1935年に創設した世論研究所の行う世論調査は『ギャラップ世論調査』として著名。」と記載されている。
さらに、「コンサイス外来語辞典」(異議甲第4号証)における「ギャラップ」の次の項に「〜調査」の項が設けられていて、その項には、「ギャラップの世論調査所が行う世論調査。多くの調査員が活躍。米国の多数の新聞社にたえず資料を送っている。米国で最も権威ある世論調査。」と記載されている。
そして、異議甲第17号証の日本経済、日経産業、日刊工業等の新聞記事で、米国「ギャラップ社」を米国大手調査会社又は世界有数の調査会社であると記載している。そして異議甲第7号証、同第9号証の1の1987年7月28日付「ニューヨークタイムズ」並びに同第10号証の1及び2のGallup博士の次男Alec M. Gallup氏の1995年8月17日付「宣誓供述書」を合わせみると、申立人である米国の世論調査会社「Gallup,inc.」は、自己の提供に係る役務「世論調査」について「GALLUP」の文字からなる商標(引用商標)を使用し、米国等において、取引者、需要者の間に広く知られているものと推認される。
わが国においては、異議甲第14号証ないし同第16号証の「朝日新聞」「読売新聞」、同第17号証の「ジャパンタイムズ」の記事によれば、昭和27年より、上記新聞記事で、申立人及び申立人の前身である「American Institute of Public Opinion」、「The Gallup Organization,Inc.」が行った、米国大統領選挙動向に関する調査の他、政治、社会、経済問題等の世論調査又は意識調査の結果を「ギャラップ世論調査」、「ギャラップ調査」「ギャラップ」又は「GALLUP」等の名称と共に、長年にわたり繰り返し掲載されていて、また昭和50年代ころからは、わが国の新聞社又は企業との共同による調査又は業務提携がされていることが認められる。
申立人の提出に係る異議甲号証を総合勘案すれば、申立人は、昭和27年頃より、米国の米国の大統領選挙の動向、その他、政治、社会、経済問題等の世論調査又は意識調査の役務を行い、その申立人の調査結果がわが国の新聞等で紹介されていて、その調査機関の名称として、「ギャラップ世論調査」、「ギャラップ調査」、「ギャラップ」又は「GALLUP」と紹介され、また申立人とわが国の新聞社などと共同で又は業務提携を行ってきた結果、引用商標「GALLUP」及びその称呼を表す「ギャラップ」の文字は、遅くとも本願商標の登録出願(平成4年9月30日)前には、わが国における取引者、需要者の間に周知・著名なものとなっていたものであり、また米国の政治、社会、経済問題等に関係する者を中心に一般国民の間にも広く知られるに至っていたものと認められるところである。そして、引用商標の周知・著名性は、現在も継続しているものとみてさしつかえないものといえる。
(2)商標及び指定役務について
本願商標は、前項1で述べたとおり「GALLUP」の欧文字を書してなるところ、申立人が上記役務に使用し、取引者、需要者に広く認識され周知・著名となっている引用商標と同一綴りの文字よりなるほぼ同一の商標である。
また、本願商標の指定役務は「文書の編集,電子計算機のプログラムの設計,経済・社会動向に関する研究」であるところ、引用商標に係る「世論調査」とは、電子計算機を利用して世論調査を企画、実施、集計、分析、文書作成・編集等が行われ得るところであり、また世論調査は経済・社会動向に関する研究をする上で重要な基礎資料となり得ることから、その指定役務と「世論調査」とは、密接に関連した役務と認められるものである。
(3)出所の混同のおそれについて
以上からすると、本願商標をその指定役務について使用するときは、引用商標を連想又は想起するものと認められ、該役務が申立人又は申立人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
(4)請求人の主張について
A)請求人は、平成9年7月25日付け審判請求理由補充書で証拠資料1ないし証拠資料13(以下「証拠資料○」という。)、平成16年1月30日付け審判理由補充書で資料1ないし資料28(以下「資料○」という。)、及び原審登録異議申立てにおいて乙号証を提出し、要旨以下のとおり主張している。
すなわち、本願商標「GALLUP」は、「INTERNATIONAL」の言葉と合体した、「GALLUP INTERNATIONAL」という形において、請求人もしくは請求人を構成員とする組織「Gallup International Associaition」(ギャラップ・インターナショナル協会、スイス法人、以下「GIA」という。)を指し示す表示であり、GIAを表す表示として、請求人はGIAを構成する正会員として、本願商標を使用しているものである。
「GALLUP INTERNATIONAL」の表示がGIAのものであることについては、GIAは、1947年米国世論調査所[American Instiute of Public Opinion]の創設者であるギャラップ博士の主唱によって前身の「International Association of Public Opinion Institutes」が設立され、ギャラップ博士が初代の会長である。1973年5月19日に「Memorandum of Intention and Cooperation」(意図と協力に関する覚書)と題する書面(当該団体の理事長であったギャラップ博士の署名がされている書面。異議乙第17号証)では、会員は、「GALLUP」の名称に関する権利をいかなる個人又は組織に対しても譲渡、販売、その他の処分をする権利を有しないこと、また会員は、資格が終了した後は「GALLUP」の名称を使用し続けてはならないこと、等が定められている。そして、1981年にGIAの前身であるGIRI設立(スイス法に基づく社団法人として登録されるに至り、ギャラップ博士が会長となり、1984年に亡くなるまで会長を続けた。)のトロント総会でGALLUP名称の使用について「ギャラップ・インターナショナル会員は、ギャラップ博士又はその機関、つまりギャラップインターナショナルのアメリカ加盟団体の許可なしに、既に使用されている場合を除き、新規の市場調査組織の名称として「ギャラップ」の名称を使用しないことを合意する。」との決議(資料2)がされ、当時、既に正会員(日本代表)であった請求人は、ギャラップ博士に「GALLUP」商標を使用することを認められていたものである。
GIA及びその会員が世界各国において「GALLUP」あるいは「GALLUP INTERNATIONAL」を名称、商標あるいは名称の一部として使用し続けてきたもので、「GALLUP」が申立人により独占されてきたわけではない。
また、イギリスの裁判所における和解(異議乙第15号証の1)により、ギャラップ・インターナショナル協会(GIA)の前身の団体により使用が認められ1960年代に「GALLUP INTERNATIONAL」の名称で定着している。
そして、請求人は、日本で代表的な企業20社が1業種1社で集まり、共同出資して1960年に設立され、1967年にGIAの前身であるIAPOIの準会員、1968年正会員(日本代表)となり、請求人は、GIAの唯一の日本代表として、約40年に亘り活動してきた。そして、請求人は、財団法人日本世論調査協会、社団法人日本マーケッティング・リサーチ協会及び財団法人マーケティング協会の会員であり、それらの協会において、「GALLUP」あるいは「GALLUP INTERNATIONAL」といえば、請求人により提供されるサービスであると認識されている。また、請求人は、GIAの加盟国の調査機関と協力して調査を行っているところである。
他方、申立人は、1992年に日本能率協会と業務提携をおこない、1995年ギャラップ・ジェーマール株式会社を設立して、約10年しか経過していないものである。「ギャラップ」の名称がアメリカ合衆国大統領選挙関連の新聞記事などで散見され、周知になっていたとしても、長きに亘り、GIA、請求人及びその他の会員が、公然と「GALLUP」(ギュラップ)あるいは「GALLUP INTERNATIONAL」(ギュラップインターナショナル)の名称を使用し続けてきたもので、両者に誤認混同がないことを積極的に裏付けているものというべきである。
以上のとおりであるから、請求人による本願商標の使用は正当に使用できるものであり、誤認混同をひきおこすことはない旨主張している。
B)しかしながら、「GALLUP」の商標は、上記で述べたとおり、わが国においては、申立人の商標として周知・著名であり、「GALLUP」の文字からなる本願商標をその指定役務に使用するときは混同を生じさせるおそれがあるものと認められるものである。
請求人が主張するイギリスにおける裁判所による和解は、「GALLUP INTERNATIONAL」の表示で使用する場合を前提としたものであり、また、「GALLUP INTERNATIONAL」の登録は、該協会(GIA)に譲渡しなければならないこととなっていること、また19項で、本件合意はイギリスで遂行されるものについて適用がある旨規定されていることからして、この和解の規定は「GALLUP」の文字からなる商標を前提とするものではなく、かつ、わが国には適用がされると解することはできない。
そして、「Memorandum of Intention and Cooperation」(意図と協力に関する覚書)及びトロント総会の決議では、GIAが、会員に対しての「GALLUP」についての権利及び表示(name)すなわち市場調査組織の名称に関しての規律を定めたものであって、この覚書及び決議が、会員の当該国において、GIAの構成員が商標として使用し、まして、出所の混同を生じさせるおそれのある使用、また本願商標の登録についての正当性までをも認めたものと解することはできないものである。
請求人は、請求人に属する者の名刺、使用する封筒、請求人を紹介した市場調査白書(1993年版)、請求人の会社案内(証拠資料1、2、5、7、8)及びギャラップ・インターナショナル「イラク戦争に関する41カ国世論調査」結果報告、日本世論調査会報第92号(資料5,15、16)では、「ギャラップインターナショナル」又は「ギャラップインターナショナルと提携」と記載されていることは認められるとしても、いずれも国際組織「ギャラップインターナショナル」(GIA)に提携又は参加している関係にあることを表すものであって、請求人自身を表す商標として使用されている事実は認められない。
また、資料9及び10の財団法人日本世論調査協会及び社団法人日本マーケッティング・リサーチ協会の証明書では、財団法人日本世論調査協会及び社団法人日本マーケッティング・リサーチ協会において、「GALLUP」あるいは「GALLUP INTERNATIONAL」を冠した世論調査といえば、請求人により提供されるものであると認識されるに至っているとしているが、それが如何なる事実に基づいてなされたものであるか明らかでない。
しかるに、請求人提出の証拠・資料によっては、請求人が使用していると主張する「GALLUP」又は「GALLUP INTERNATIONAL」の商標は、申立人の引用商標「GALLUP」を超えて周知・著名になっているものと認めることはできない。
さらに、世論調査に関する役務の取引は、調査会社とその情報の提供を受ける企業の間の企業間取引が主体であるとしても、我が国において、申立人の商標として周知・著名となっているものを、ほぼ同じ商標を請求人が極めて関連性の強い役務について使用するものであり、しかも、本件の場合は、「GALLUP」商標が世論調査の権威であるギャラップ博士の名前に由来し、申立人の創始者であること、また請求人(出願人)がマーケティング・リサーチ、調査活動を基礎として事業展開している企業であることからして、請求人と申立人とは同業者の関係にあることを考慮すると、本件商標をその指定役務ついて使用するときは、出所の混同を生じるおそれのあるものと容易に想定できるところである。
よって、上記請求人の主張はいずれも採用することはできない。
(5)まとめ
したがって、本願商標を商標法第4条第1項第15号に該当するものとして拒絶した原査定は妥当であって、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-09-26 
結審通知日 2003-10-07 
審決日 2005-04-08 
出願番号 商願平4-242391 
審決分類 T 1 8・ 271- Z (042)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原 隆小林 薫小川 きみえ 
特許庁審判長 宮下 正之
特許庁審判官 山本 良廣
宮川 久成
商標の称呼 ギャラップ 
代理人 三村 まり子 
代理人 千石 克 
代理人 吉村 亮子 
代理人 内藤 篤 

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