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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 006
管理番号 1114804 
審判番号 取消2001-30441 
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-05-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2001-04-13 
確定日 2005-03-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第4103465号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4103465号商標の第6類「鉄及び鋼」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4103465号商標(以下「本件商標」という。)は、平成8年6月24日に登録出願され、「MAT」の欧文字を横書きしてなり、第6類「鉄及び鋼,非鉄金属及びその合金」を指定商品として、平成10年1月16日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第10号証を提出している。
1 請求の理由
(1)本件商標は、甲第1号証及び同第2号証によれば、ローマ字3文字で「MAT」と横書きしてなり、第6類「鉄及び鋼、非鉄金属及びその合金」を指定商品として、平成10年1月16日に登録されたものである。しかしながら、本件商標は継続して3年以上、指定商品中の「鉄及び鋼」に使用された事実がないので、該指定商品中の「鉄及び鋼」についてその登録が取消されて然るべきである。
(2)甲第3号証、同第4号証、同第5号証はそれぞれ平成10年版、同11年版、同12年版の「東商信用録」の写しであり、甲第6号証は平成13年3月30日の被請求人会社の「ホームページの検索の一部」の写しである。甲第3号証、同第4号証及び同第5号証によれば、被請求人会社は営業種目「加工製品、金・銀、セメント・建材・銅、アルミ製品、先端製品等」と記載されており、甲第6号証によれば、事業内容を「非鉄金属精錬、セメント、金属加工、非鉄材料、アルミニウム」と記載されている。
すなわち、被請求人会社は第6類の「鉄及び鋼、非鉄金属及びその合金」のなかでも「非鉄金属(地金等)、非鉄材料・製品、アルミ製品」を取り扱う会社であっても、これと商品を非類似とする「鉄及び鋼」を扱ったことのない会社であると解される。
さらに、請求人は被請求人会社の過去3年間にわたり取り扱い商品、使用商標について調査を行ったが、「鉄及び鋼」において、上記登録商標の使用の事実を発見することができなかった。
してみれば、被請求人会社はその扱い商品上、過去3年の間本件商標を「鉄及び鋼」に使用しているとはいえない。
2 答弁に対する弁駁の理由
(1)被請求人は被請求人が販売している「NiーCrーMoーTa合金」が『「ステンレス鋼便覧」(乙第3号証)がアーバン、パーマロイ等ステンレス鋼とはいえない機能材料は除外して編集されていることに加えて、709頁以降では広義の「NiーCrーMo合金」について解説されていることを考え併せると、前記「NiーCrーMo合金」は特性や用途で分類した場合の「ステンレス鋼」の一種であって、「鋼」の枠内に含まれる。』と主張するが、「ステンレス鋼便覧」(乙第3号証)ではあくまで、「ステンレス鋼」との機能の比較として「NiーCrーMo合金」が掲載されているだけであり、「ステンレス鋼」として比較している説明ではない。
被請求人は、この記載を基にして「NiーCrーMo合金」は特性や用途で分類した場合の「ステンレス鋼」の一種であると主張する。
しかし、商標の商品分類(第6類)(甲第8号証)は、「鉄及び鋼」、「非鉄金属及びその合金」のように材質別に分類されているのであり、被請求人の上記主張は誤りである。
(2)すなわち、工業標準化法によって制定された金属工業品の規格である「JIS」には、ステンレス鋼は、「JIS G 4303」(甲第9号証)に規格されており、ステンレス鋼便覧記載の「ニッケル合金」(表11.
12)は、「JIS H 4551(ニッケル及びニッケル合金)」及び「JIS H(非鉄)」に該当するものである。
更に、ステンレス鋼は、「JIS G 4303」(甲第9号証)において、オーステナイト系ステンレス鋼がFe=38.9〜70.7重量%、オーステナイ・フェライト系ステンレス鋼がFe=60.1〜62.7重量%、フェライト系ステンレス鋼がFe=64.6〜84.4重量%、マルテンサイト系ステンレス鋼がFe=78.2〜85.2重量%、となっている。又、「ニッケル及びニッケル合金」は「JIS H 4551」(甲第10号証)の解説(解4頁)の6.2.3.aの上から2行目で「Ni含有量が50%以上のものについてJIS H類で扱う」と記載されている。
(尚、「JIS H 4551」に規格されているものはNi=35.1〜99重量%である。)
(3)被請求人の商品(乙第1号証の5公称化学組成表)には、「Ni=Bal(残部)」「計算値でNi=59.1重量%以上となる」と記載されており、明らかに「JIS H類」に扱うものとなる。又、「Fe≦1重量%」と記載され、いわばFeは不可避不純物的な成分量の扱いとなっており、とても鉄鋼材料とはいえない。
(4)又、商標の商品分類(第6類)(甲第8号証)には「鉄及び鋼」と区別された「非鉄金属及びその合金」とが記載されており、この「非鉄金属及びその合金」中に「ニッケル及びニッケル合金」が含まれていて、明らかに成分によって分割され、被請求人が販売している「NiーCrーMoーTa合金」である「ニッケル及びニッケル合金」は「鉄及び鋼」に属するものではない。
(5)結び
以上の事実から、被請求人が本件商標をその指定商品中「鉄及び鋼」について、過去3年の間日本国内において使用しているとはいえず、「鉄及び鋼」ついて登録を取り消すべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第10号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 請求の理由に対する答弁
(1)請求人は、平成13年4月13日付け審判請求書の請求の理由(2)中において、『本件商標は、その指定商品中「鉄及び鋼」について、過去3年の間日本国内において使用した事実がない』旨述べているが、この請求人の主張は理由がない。
(2)すなわち、被請求人は、1995年4月から現在に至るまで、本件商標を付したパンフレット、すなわち、「三菱マテリアルの新しい耐食合金/MAT 21…」(乙第1号証1)、あるいは「特許合金NiーCrーMoーTa/MAT 21…」(乙第1号証2)を使用して営業活動を行い、本件商標を付した「耐食合金(NiーCrーMoーTa)」(乙第2号証)を日本国内の業者に販売している。
「ステンレス鋼便覧」(乙第3号証)がアンバー、パーマロイ等ステンレス鋼とはいえない機能材料は除外して編集されていることに加えて、709頁以降では、広義の「NiーCrーMo合金」について解説されていることを考え併せると、前記「NiーCrーMo合金」は、特性や用途で分類した場合の「ステンレス鋼」の一種であって、「鋼」の枠内に含まれる。
だとすると、乙第1号証、同第2号証の耐食合金「NiーCrーMoーTa合金)」は、広義の「NiーCrーMo合金」の枠内に含まれるから、指定商品中の「鋼」の枠内に含まれることは明らかである。
上記本件商標を付した「耐食合金」を日本国内の業者に販売していることは、被請求人のオンラインリアルタイムシステムから出力した1995年1月から2001年6月までの材質別明細表の内容から明らかである(乙第4号証)。
また、被請求人は、1998年7月から2001年2月にかけて雑誌(「化学装置」)、あるいは会報(「日本金属学会会報」)に本件商標を付した「耐食合金」の広告実績がある(乙第5号証1ないし6)。
(3)上記各乙号証から明らかなように、被請求人は、本件商標を指定商品中の「鋼」の枠内に含まれる商品、すなわち、「耐食合金」について継続して3年以上使用しているから、請求人の『被請求人はその扱い商品上、過去3年の間、本件商標を「鉄及び鋼」に使用しているとはいえない。』との主張は当を得ていないし、本件商標がその指定商品中「鉄及び鋼」について、その登録を取り消される理由はない。
2 弁駁に対する答弁
(1)ステンレス(鋼)の基本形は、鉄をベースとし、13%、および18%のクロムを基本成分として含有する合金、あるいは、鉄をベースとし、18%のクロムのニッケルを含有する合金鋼です。
そして、これらの合金鋼をベースとして、さらに、クロムやニッケルの含有量を増やしたり、モリブデン、銅、チタンなどを添加することにより、耐食性をはじめ機械的性質の異なるたくさんの種類のステンレン(鋼)がつくられています(乙第6号証)。
しかして、JIS鉄鋼には代表的な合金鋼としては、「機械的構造用炭素鋼・合金」、「特殊(用途)鋼」、および「グラッド鋼」が挙げられますが、これらの合金鋼のうちの「特殊(用途)鋼」としては、「ニッケルおよびニッケル合金板及び条」、「ニッケル合金継目無管」、「ニッケル及びニッケル合金棒」、「ニッケル合金線」、および「ニッケル及びニッケル合金鋳物」等が挙げられます(乙第7号証)。
(2)ところで、「JIS/ニッケル及びニッケル合金の厚板,薄板及び帯(ISO 仕 様 )/ JIS G 7605:2001/(ISO 6208:1992)」(乙第8号証1)においては、一つの用途分野である国際規格番号 ISO 9723に対応するものとして「耐食耐熱合金棒(JISG4901)」と「ニッケル及びニッケル合金棒(JISH4553)」の類似の規格が存在しており、国際規格番号 ISO 6208においても、「耐食耐熱超合金板(JISG4902)」「ニッケル及びニッケル合金板及び条 (JISH4551)」の類似の規格が並存しています。
上記したところは、「JIS/ニッケル及びニッケル合金棒(JIS仕様)/JIS G 7604:2000/(ISO 9723:1989)」(乙第8号証2)においても一つの用途分野に類似の規格が二つ存在しています(乙第8号証4及び5)。
請求人は、「ステンレス鋼便覧」の表11.12の「NiーMo合金およびNiーCrーMo合金の代表的化学成分(%)」に言及して、この表に記載されているものは「JIS H(非鉄)」に該当するものであって、「JIS G(鉄鋼)」に該当するものではない旨主張していますが、一例として「JIS/ニッケル及びニッケル合金の厚板,薄板及び帯(ISO仕様)/JIS G 7605:2001/(ISO 6208:1992)」序文によれば、1998年に改正される予定のJIS H 4551と重複する合金の種類番号 NW0001、NW0276およびNW6022等は削除されています(乙第8号証1)。
したがって、上記主張は当を得ていません。
(3)ところで、「JIS/ニッケル及びニッケル合金の厚板,薄板及び帯(ISO仕様)/JIS G 7605:2001/(ISO 6208:1992)」および「JIS/ニッケル及びニッケル合金棒(ISO仕様)/JIS G 7604:2000/(ISO 9723:1989)」の「表1 鍛圧ニッケル及びニッケル合金の成分並びに密度(ISO 9722から抜粋)」中における、たとえば、高耐食合金鋼の範疇に属する「Ni,Ni基合金(NW6625)」は、「JISハンドブック/1/鉄鋼 l 」(乙第8号証3)の「表2 化学成分」中においては、「NCF625」に相当するものでありますが、何れの表においても「Ni」の含有量は、58.0%以上となっています。
したがって、「Ni,Ni基合金」(乙第9号証)が高耐食合金鋼の範疇に属する以上、「JIS H 4551」の解説中における「…ニッケル及びニッケル合金種のうち耐食用途のものでNi含有量が50%以上のものについては、JISH類で扱うものとして取り込んだ。…」(甲第10号証)なる記載は、規格を規定する際の指針にすぎません。
(4)ゆえに、本件商標を付し、酸化性、還元性の何れの環境に対しても優れた耐食性を有し、その優れた耐食性から多目的・多反応プラントや腐食許容量の小さい医薬品製造プラントに適用可能なほか、排煙脱硫装置等で生じる硫酸霧点腐食に対しても優れた耐食性を有するNiーCrーMoーTa合金は、「鋼」の枠内の特殊鋼に含まれる「耐食合金」に属するものです(乙第10号証)。

第4 当審の判断
1 商標法第50条の商標登録の取消審判にあっては、その登録商標の使用をしていないことについて正当な理由がある場合を除いて、その審判の請求の登録(本件の場合、平成13年5月23日)前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れないとされている。
2 そこで、被請求人が本件商標の使用を立証するものとして提出した乙各号証によれば、次の事実が認められる。
(1)1999年8月発行のリーフレット「三菱マテリアルの新しい耐食合金 MAT21(UNS No.N06210)」(乙第1号証1)によれば、「公称化学組成(wt%)」として、「Ni=Bal、Cr=19、Mo=19、Ta=1.8、Fe≦1、C≦0.015、Si≦0.08」と記載されていこと。
(2)「日本金属学会会報vol.38 1998年8月号」抜粋(乙第5号証2)及び「同2001年2月号」抜粋(乙第5号証6)によれば、「高耐食性ニッケル基合金 MAT21」の小見出しの下、「1.概要」として「三菱マテリアル(株)では、化学プラントの非常に厳しい腐食環境の中でも優れた耐食性を示す新合金「MAT21」を開発いたしました。MAT21合金はNiを主体にCr、Mo、Taを添加してさらに耐食性を向上させた新合金であり、………。MAT21合金は国産ニッケル基耐食合金として初めて米国の材料規格であるASTMやASMEに承認されました。」と記載されていること。
3 次に、請求人の提出した「JISニッケル及びニッケル合金板及び条」(甲第10号証)によれば、次の事実が認められる
(1)「3.2.2 整合化方法」として、「JISにない合金の扱いは開発された技術的背景を考慮してJIS HとJIS Gとに振り分けることとした。………具体的には、
JIS H ニッケル及びニッケル合金(耐食性主体)
JIS G ニッケル合金(耐熱性主体)及び鉄基耐食・耐熱材
とし、合金系列が同じものは同一規格に入れることとした。」と記載されていること。
(2)「6.2.3 種類及び記号」として、「ISO規格とその整合化のため、ISO 6208に規定されているニッケル及びニッケル合金種のうち、主として耐食用途のものでNi含有量が50%以上のものについて、JIS H類で扱うものとして取り込んだ。」と記載されていること。
4 以上の認定した事実から、本件商標「MAT」は、公称化学組成(wt%)中、ニッケル(Ni)の残部(Bal)が59.105wt%以上(Cr=19、Mo=19、Ta=1.8、Fe≦1、C≦0.015、Si≦0.08)の商品「耐食合金」について使用していることが認められる。
しかして、工業標準化法に基づく日本工業規格(JIS)で、主として耐食用途のものでNi含有量が50%以上のものについて、「JIS H類」で扱うものとし、「JIS H類」は、ニッケル及びニッケル合金(耐食性主体)としている。また、「類似商品・役務審査基準」(甲第8号証)に徴して、「鉄及び鋼」と「非鉄金属及びその合金」は、材料(材質)によって概念括りをし、かつ、「非鉄金属及びその合金」の下位概念の例示商品として「7 ニッケル及びニッケル合金」が記載されていることが認められる。
更に、被請求人(商標権者)は、「日本金属学会会報vol.38 1998年8月号」及び「同2001年2月号」において、「高耐食性ニッケル基合金 MAT21」と題して新合金「MAT21」についての概要を発表し、その中で、MAT21合金は国産ニッケル基耐食合金として初めて米国の材料規格に承認された、旨記載されている。
これらを総合勘案すれば、被請求人(商標権者)が本件商標について使用している商品「耐食合金」は、工業標準化法に基づく「JIS H類」に分類される合金であって、「類似商品・役務審査基準」に記載された「非鉄金属及びその合金」の下位概念である「ニッケル及びニッケル合金」に属する商品といわなければならない。
そして、上記認定を左右するに足りる証拠は見当たらない。
してみれば、被請求人の提出に係る乙各号証をもってしては、被請求人(商標権者)が本件商標を本件審判の取消請求に係る指定商品「鉄及び鋼」について、請求の登録前3年以内に日本国内で使用していたものとは認められず、かつ、使用をしていないことについて正当な理由があったものとも認められない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、指定商品中「鉄及び鋼」についての登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-01-19 
結審通知日 2005-01-21 
審決日 2005-02-01 
出願番号 商願平8-68187 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (006)
最終処分 成立  
前審関与審査官 蛭川 一治 
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 宮川 久成
山本 良廣
登録日 1998-01-16 
登録番号 商標登録第4103465号(T4103465) 
商標の称呼 マット、エムエイテイ 
代理人 蔵合 正博 
代理人 酒井 一 

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