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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Y1641
管理番号 1111788 
異議申立番号 異議2003-90522 
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2005-03-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-02 
確定日 2005-01-19 
異議申立件数
事件の表示 登録第4676114号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4676114号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第4676114号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成14年5月2日登録出願、第16類「紙類,文房具類,紙製包装容器,印刷物,写真」、第41類「セミナーの企画・運営又は開催,スポーツの興行の企画・運営又は開催,放送番組の制作における演出」を指定商品又は指定役務として、同15年5月30日に設定登録されたものである。

2 取消理由の通知(要旨)
本件商標は、彩色された図形とその下部に「Picasso World」の文字を横書きしてなるところ、「Picasso」の文字部分は、その独特な作風で世界的に知られるスペインの画家「Pablo Ruiz Picasso(1881ー1973)」の著名な略称といえる「ピカソ」を容易に認識させるものと認められ、欧文字の綴りもピカソのそれと一致するものである。
そうすると、文字部分の「Picasso World」の全体よりは「ピカソの作品の世界、ピカソの作風の世界」の意味合いを看取させるということができ、また、彩色された図形部分は、ピカソの絵をモチーフとするものであろうと容易に理解されるものであるから、本件商標は、「Picasso」の文字部分のみならず、図形と文字の構成全体からも、スペインの画家である上記「ピカソ」を認識させるものといわなければならない。
そして、ピカソの作品は世界の人々に大きな感動を与え、故人となった今もなお惜しみなく賞賛が送られ、その名声はなお衰えるところがないというべき著名な者であることは社会的な事実であり、ピカソの所産(作品、遺産、署名その他の遺物)がその遺族によって専ら運営・管理されていること等の事情は、すでに知られるところである。
そうとすれば、商標権者が本件商標を登録出願し、その登録を受けたことは、ピカソの名声に便乗し、その指定商品及び指定役務についての使用の独占を図るものであって不正の目的が認められ、かつ、世界的に著名な画家の名声を一私人たる商標権者が、その遺族の承諾もなく商取引に使用することは、故人の名声・名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、商取引の秩序を乱すものであって、我が国の国際的な信頼を損なうおそれがあるというべきであり、ひいては、国際信義に反するものといわなければならない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものであるから、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。

3 商標権者の意見(要旨)
本件商標は、商標権者の指定商品へのイメージ表現としての要素であり、「パブロ・ピカソ」を商品販売に使用するものではない。
「Picasso」の文字は、欧文字の綴りに関わらず、国内でいろいろな場面において使用されており、当社のみ特筆されるべきものではない。
「図形部分」は、ピカソの絵とは全く異なり、ピカソの絵をモチーフとしていない。この種の図形はマッキントッシュの取扱い説明書や画面にも、岡本太郎の太陽の塔にも、その他にも独創性の表現として類似の要素があるが、これらはピカソを模倣しているとは思わない。
ピカソの絵は、当時としては表面からと横からの立体的描写で斬新な表現要素であったが、当社の図形部分はこれとは異なり、独自の発想によるものである。もし、これと同じものがあり、モチーフとしているならば、列挙し比較されたい。そもそも現代の自由な作風感覚からして、美術を理解しないで独創的に描くもの全てをピカソのものとして拘束しようとすることは過剰反応である。
本件商標を採択したことは、ピカソ的な独創的発想で取り組むという商標権者の姿勢の表現である。したがって、パブロ・ピカソを冒涜するとか、悪用するとかの意で用いるものではない。
「Picasso」の文字は、日本語表記を欧米語表記にした場合に、ローマ字表記の「PICASO」ではなく「PICASSO」としなければ綴り間違いと誤解されるがゆえである。当社以外にも国内では「Picasso」は広く使用されている。
「ピカソ」の語は、テレビ東京の番組「誰でもピカソ」に例をみるように、必ずしもピカソに関して取り上げているわけではなく、あくまでもピカソ的な世界という中でのいろいろなものを独創的に表現している。本件商標は、そういう意味においての「ピカソ的な世界」=「独創的で既成概念にとらわれない発想」という表現であって、商標権者がピカソの作品や模造品を売買するとか、いかにもピカソと事実関係があるような意図や、国際的信用を害するような意図ではない。第41類「セミナーの企画・運営又は開催,スポーツの興行の企画・運営又は開催,放送番組の制作における演出」の指定役務は、既成概念にとらわれないピカソ的な独創的発想表現で取り組むことを目的としているものである。
ちなみに、本件商標の図形部分は、太陽と地球、火と水、光と影の自然の壮大さに人と人を結ぶ人間をひとつの顔の中に対比的に表現し、小さな既成概念にとらわれないスケールで取り組むことを意として作成したものである。パブロ・ピカソとは比較対象にならない独創的な発想表現である。
「PICASSO」の使用例としては、「パチンコ屋Picasso」、「サンタBOOK・アイドル雑誌Dr ピカソPicasso」、「ロックバンド ピカソ」、「LIVE & EVENT PICASSO」、「画材屋ピカソ」、「ピカソ塾」・・・等、いろいろある。
登録異議申立人は、異議申立書で「PICASSO」の先登録存在との関係についても、(1)「PICASSO」または「ピカソ」の文字からなる商標、及び、「PICASSO」または「ピカソ」の文字を有する商標が多数存在することはあえて否定するものではない。(2)他の著名な芸術家(故人)等の名称の登録例との関係について、「セザンヌ」「CEZANNE」「写楽」「BEETHOVEN/ベートーベン」「ガウディ」「GAUDI」「コロンブス」等、著名な芸術家等が(故人)の名称が多数設定登録されていることはあえて否定するものではない。と記載していることから、本件登録異議の申立ては特筆されたものである。

4 当審の判断
(1)前記2のとおり、「Pablo Ruiz Picassoは、その独特な作風で世界的に知られるスペインの画家である。そして、ピカソの作品は世界の人々に大きな感動を与え、故人となった今もなお惜しみなく賞賛が送られ、その名声も衰えるところがないというべき著名な者であることも社会的な事実である。しかして、本件商標の文字部分「Picasso World」中の「Picasso」の欧文字は、上記画家を容易に認識させるものと認められ、欧文字の綴りも画家ピカソのそれと一致するものである。また、ピカソの所産(作品、遺産、署名その他の遺物)は、その遺族によって専ら運営・管理されている等の事情は、既に知られているところである。
(2)商標権者は、本件商標が指定商品への商標権者のイメージ表現としての要素であり、「パブロ・ピカソ」を商品販売に使用するものではない。商標権者がピカソの作品や模造品を売買するとか、いかにもピカソと事実関係があるような意図や、国際的信用を害するような意図ではない。第41類「セミナーの企画・運営又は開催,スポーツの興行の企画・運営又は開催,放送番組の制作における演出」の指定役務は、既成概念にとらわれないピカソ的な独創的発想表現で取り組むことを目的としている。
「Picasso」の欧文字は国内でいろいろな場面において使用されており、当社のみ特筆されるべきものではない。図形部分は、ピカソの絵とは全く異なり、ピカソの絵をモチーフとしていない。この種の図形はマッキントッシュの取扱い説明書や画面にも、岡本太郎の太陽の塔、その他にも独創性の表現として類似の要素があるが、これらはピカソを模倣していない。ピカソの絵は、当時としては表面からと横からの立体的描写で斬新な表現要素であったが、本件商標の図形部分はこれとは異なり、独自の発想によるものである。本件商標は、ピカソ的な独創的発想で取り組むという姿勢の表現であって、パブロ・ピカソを冒涜するとか、悪用するとかの意で用いるものではない旨主張している。
しかしながら、商標登録の登録要件として、商標法第3条柱書きに「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。」と規定されている。そうすると、商標権者が本件商標を登録出願したということは、その指定商品又は指定役務について、本件商標の使用を前提としているといわなければならない。
そして、「Pcasso(ピカソ)」の語(文字)は、前記のとおり、世界的に著名な画家の名称であることは、日本においても周知の事実であるといえるものである。このことよりすると、本件商標は、その構成中に、著名な画家を認識させる「Pcasso」の欧文字、及び「ピカソの作品の世界、ピカソの作風の世界」の意味合いを容易に認識させる「Pcasso World」の欧文字を有し、さらに、ピカソの絵をモチーフとするものであろうと容易に理解させる彩色された図形部分を有しているものである。
そうすると、本件商標を商標権者が採択したことは、画家ピカソの名声に便乗し、本件商標の使用の独占を図るといえるものであり、かつ、不正の目的が窺われるものである。そして、一私人である商標権者が世界的に著名な画家の名声をその遺族の承諾もなく本件商標を使用することは、故人の名声・名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、商取引の秩序を乱すものであって、我が国の国際的な信頼を損なうおそれがあり、ひいては、国際信義に反するものである。
(3)請求人は、他の著名な芸術家(故人)等の名称が商標として設定登録されている例を挙げ、本件登録異議の申立てが特筆されたものである旨主張する。
しかしながら、これについても、たとえ、過去に著名な芸術家(故人)等の名称が商標として登録されている例があるとしても、従来、公序良俗を害するおそれがなかったものがあるようになったり、又はその逆もあり得ることであり、社会通念は、時代と共に変化するものである。そして、時代と共に変化する社会通念に伴って、登録されたものが常に公序良俗を害するおそれがないとはいい得ないというべきである。
したがって、商標権者の主張はいずれも採用することができない。
(4)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、商標法第43の2第1号により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

別 掲

本件商標



(色彩については、原本参照のこと)
異議決定日 2004-12-01 
出願番号 商願2002-41144(T2002-41144) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (Y1641)
最終処分 取消  
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 茂木 静代
三澤 惠美子
登録日 2003-05-30 
登録番号 商標登録第4676114号(T4676114) 
権利者 株式会社ピカソ・ワールド
商標の称呼 ピカソワールド、ピカソ 
代理人 本多 弘徳 
代理人 小栗 昌平 
代理人 市川 利光 
代理人 高松 猛 
代理人 栗宇 百合子 

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