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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 121
管理番号 1106742 
審判番号 審判1997-19488 
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-12-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1997-11-20 
確定日 2004-11-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第1606003号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1606003号商標の指定商品「第21類 かばん類、袋物」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第1606003号商標(以下「本件商標」という。)は、「PRINCIPE」の欧文字を書してなり、昭和55年9月9日登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同58年7月28日に設定登録され、その後、平成5年12月22日付け及び同15年8月5日付けで商標権存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品中「かばん類、袋物」について、継続して3年以上、我が国において、商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれによっても使用されていないから、上記指定商品に係る登録は、取り消されるべきである。
(2)答弁等に対する弁駁
被請求人提出の乙第2号証及び乙第3号証は、本件審判請求の登録前3年以内に、使用権者である株式会社ホワイ(以下「ホワイ社」という。)が、本件商標をバッグについて使用したことを証するものではない。
被請求人は、ホワイ社が本件商標につき使用権を正当に有すると主張するが、これを証する証拠は一切提出されていない。したがって、「使用権者による」使用は証明されていない。
(ア)乙第2号証について
乙第2号証は、単なる納品書であり、商標を商品に使用したことを示す類のものではない。
加えて、「品番・品名」の欄には、「PRINC」又は「プリンス(チ?)」の文字が読みとれるが、「品番・品名」の欄に記入されているものは、商品について使用されている商標を示すものではないから、そもそも商標を商品に使用したことを示すものではないし、「PRINC」、「プリンス(チ?)」の文字も、本件商標と社会通念上同一の範囲内にないから、仮に「品番・品名」の欄に記載されている文字(「PRINC」)が商品に付されているとしても、乙第2号証は、本件商標の使用を示すものでない。
また、乙第2号証は、如何なる商品についての納品書か不明である。
したがって、本件商標をその指定商品について使用したことを示すものでもない。
(イ)乙第3号証について
乙第3号証の右下には、「RICEVUTO」及び「11 MAG.1999」の文字が記載されているが、「RICEVUTO」はイタリー語で「受領した」という意味であり(甲第2号証)、「11 MAG.1999」は「1999年5月11日」の意味である。(「MAG.」は「MAGGIO」の略であり、「MAGGIO」は5月の意味である(甲第2号証)。)
したがって、乙第3号証は、ホワイ社が1999年5月初めに作り、イタリー語を母国語とする者に対して1999年5月初めに送付したものである。
仮に、ホワイ社が、本件商標の商標権者から使用権を許諾されていたとしても、それは、1999年5月初めのことであり、本件審判請求の登録後のことである。
また、乙第3号証は、デザイン画のようなものであるから、商品への商標の使用を示すものではなく、それに記載された袋物の絵を見ても、本件商標の使用を示していない。また、ホワイ社が商標権者の使用権者であることも示していない。
(ウ)乙第4号証について
(a)英文の契約書においては、各頁に調印者のイニシャルを付すのが通例であるが、乙第4号証には、各頁に契約当事者(調印者)のイニシャルが付されていない。
さらに、その第6条のロイヤルティー(「6.Royalties」)の(a)項には初年度から10年度迄ロイヤルティーを支払うべき旨の規定があるが、乙第4号証の契約の期間は5年であり(第5条(a)項)、第6条(a)項の規定は、第5条(a)項の規定と矛盾する。その上、第6条(a)項には各年のロイヤルティーの金額を米ドル表示で規定することとされているが、ロイヤルティーの金額の規定が無く、空白のままである。また、第6条(b)項には、第1回のロイヤルティーの支払期日を規定することとされているが、その記載はなく、空白のままである。
すなわち、乙第4号証の契約は、内容において矛盾する上、欠けているところがあるから、かかる契約は、あり得ない。
加えて、乙第4号証の契約の署名欄のみが一つの頁になっている。
英文の契約においては、署名欄のみを一つの頁にすることはなく、契約本文の規定の文章の途中から署名欄のある頁に移す。これは、署名欄のみを付けて、契約書を偽造することを防ぐためである(各頁に調印者のイニシャルを付すのも、同じく、契約書の偽造を防ぐためである。)。しかるに、乙第4号証の契約書では、署名欄のみが一つの頁にされており、かつ、「WITNESS」の欄のうちの一つには署名が無い。
以上のように、署名欄のみ独立の頁としていること、各頁にイニシャルがないこと、「WITNESS」の署名が1つ欠けていること、規定の内容が矛盾していること、規定自体に抜けがあることからすると、乙第4号証の契約は偽造と解さざるを得ない。よって、その成立を否認するものであり、その契約内容に信用性は無い。
(b)被請求人は、乙第4号証は、本件商標に係る商標権の1992年から1997年までの名義人であるプリンチペ ソシエタ ペル アツチオーニ(以下「プリンチペ社」という。)と株式会社パートナー(以下「パートナー社」という。)との間の本件商標の使用権に関する契約であると主張する。
しかしながら、仮に乙第4号証の契約が真正に成立したとしても、この契約は、本件商標の使用権に関する契約ではない。
すなわち、乙第4号証の前文の(1)ないし(3)、本文第2条ないし第4条の規定によれば、その契約は、パートナー社が、イタリーでプリンチペ社の製造販売している製品と同種の製品を、プリンチペ社の提供するデザインに倣って製造販売し、同社の名称を使用して販促を行い、同社がイタリーで使用している「プリンチペ」商標を製品に使用すること、それ以外の商標の使用をしてはならないとの契約であることは明らかである。つまり、この契約は、本件商標はもとより、プリンチペ社名義のその他の日本国の商標(もしあるとしても)について一切言及していないし、明文で、プリンチペ社がイタリーで使用している「プリンチペ」商標と類似する商標の使用を禁じている。
したがって、乙第4号証の契約において、本件商標が使用許諾の対象となっていないことは明らかである。
そして、被請求人の主張によれば、乙第5号証及び乙第6号証の契約も、乙第4号証の契約に基づいてなされたものであり、その対象となる商標は、プリンチペ社がイタリーで使用する商標であることとなる。
このほかにも、ホワイ社が本件商標の使用権者でないことは、乙第7号証における「同店(エトアールマルゼン)のショップ名『プリンチペ』ブランド」との記載からも明らかである。仮に、ホワイ社が本件商標の使用権者であれば、「同店のショップ名『プリンチペ』ブランド」などとは記載しない筈である。
したがって、乙第7号証からしても、乙第4号証ないし乙第6号証の契約は、本件商標を対象とするものではない。
乙第4号証の契約(それによる乙第5号証及び乙第6号証の契約)が、本件商標の使用権を許諾するものでないことは、本件商標が、乙第4号証の契約期間(1993年12月1日から1998年12月1日迄)の途中である1997年7月2日にプリンチペ社から被請求人に譲渡されたことからも明らかである。
仮に、乙第4号証の契約が、本件商標の使用権を許諾する契約であったとしたならば、かかる契約期間中の本件商標の譲渡は行ない得ないものである。かかる契約期間中に本件商標がプリンチペ社から被請求人へ譲渡されたということは、とりもなおさず、乙第4号証の契約(それによる乙第5号証及び乙第6号証の契約)の対象が、プリンチペ社によってイタリーで使用されている商標であって、本件商標を含む日本国における商標(仮にあるとしても)ではないということを意味する。
よって、この点からも、乙第4号証ないし乙第6号証の契約が本件商標に関するものでなく、ホワイ社が本件商標の使用権者ではないことは明らかである。
(エ)乙第5号証について
乙第5号証には、割印が無い。
その上、乙第5号証の契約は、「甲(エトアールマルゼン社)の専用使用ブランドのサブライセンシーの開拓及び企画コーディネート及び管理業務」に関する甲(エトアールマルゼン社)と乙(パートナー社)との間の契約であり(前文及び第1条)、被請求人の主張と異なり、パートナー社がエトアールマルゼン社にサブライセンスする契約ではない。
仮に、被請求人が主張するように、乙第5号証の契約が、乙第4号証の契約を受けたサブライセンス契約であったとしたならば、乙第5号証の契約は、必然的に、パートナー社を甲として、甲が、エトアールマルゼン社(乙)に対してサブライセンスするという内容の契約となっていた筈である。
したがって、乙第5号証の契約は、成立の真正も否定せざるを得ない上、内容の信用性も否定せざるを得ない。
少なくとも、極めて明瞭であることは、乙第5号証の契約は、乙第4号証の契約に基づくパートナー社とエトアールマルゼン社との間のサブライセンス契約ではなく、それは乙第4号証の契約とは無関係である上、本件商標に関する契約でもなく、乙第4号証でいうプリンチペ社がイタリーで使用する「プリンチペ」商標に関する契約でもないということである。
(オ)乙第6号証について
乙第6号証の契約も、エトアールマルゼン社(甲)が甲の専用使用ブランドをホワイ社(乙)にサブライセンスするという内容の契約であり、パートナー社(丙)は、企画コーディネート及び管理業務のサポートをすることとされている(前文)。
乙第6号証の契約は、被請求人主張のように、パートナー社がサブライセンスしたエトアールマルゼン社によるホワイ社への「プリンチペ」商標のサブライセンス(サブサブライセンス)する契約でないことは明白である。
特に、乙第6号証の契約の第1条(丸付数字の4)には「許諾商標」として、「ライセンサーと別契約により甲(エトアールマルゼン社)がライセンス実施権を得た下記商標『PRINCIPE』」と規定している。ここにおける「ライセンサー」が何人かは不明であるが、少なくともプリンチペ社でないことは明白であり(乙第4号証の契約の当事者はパートナー社とプリンチペ社であり、エトアールマルゼン社とプリンチペ社ではない)、「ライセンサーとの別契約」が乙第4号証の契約でないことも明白である。
加えて、エトアールマルゼン社がライセンサーとの別契約によりライセンス実施権を得た「PRINCIPE」なる商標が如何なる商標かも全く不明である。
すなわち、乙第6号証も、被請求人の主張と異なり、乙第4号証の契約によりパートナー社が締結したサブライセンス契約(乙第5号証)に基づき、エトアールマルゼン社がホワイ社と締結したサブ(サブ)ライセンス契約ではない。
(カ)乙第7号証について
被請求人は、ホワイ社による本件商標及びそれと社会通念上同一の範囲内の「プリンチペ」の使用を主張し、その証拠として、乙第7号証を挙げる。
しかしながら、乙第7号証は、被請求人が主張する使用を証するものではない。
第一に、乙第7号証は、「ホワイは・・・今春物(95年)から発売する」と述べているように、ホワイ社の将来の予定を述べているにすぎず、現にホワイ社が製造販売していたことを示すものではない。
第二に、乙第7号証は、バッグに本件商標が使用されていることを示さない。また、それは、本件商標と社会通念上同一の範囲に属すると被請求人が主張する「プリンチペ」商標の使用をも示すものでなく、単に「エトアールマルゼンのショップ名『プリンチペ』ブランドの婦人ライセンスバッグ」と述べているにすぎない。また、「プリンチペ」ブランドが如何なるものか一切明らかにしていない。
(3)よって、本件商標が、商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれかによって、我が国において、「かばん類、袋物」について、本件審判請求の登録前3年以内に使用された事実の証明は無いから、本件商標の登録は、その指定商品中「かばん類、袋物」の登録について取り消されるべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証を提出している。
(1)第1回答弁書及び口頭審理における陳述
(ア)第1回答弁書
本件商標は、乙第2号証及び乙第3号証から明らかなように、本件審判請求の登録前3年以内に、我が国において、ホワイ社により、「かばん類、袋物」について使用されている。なお、ホワイ社は、本件商標の使用権を正当に有する。
乙第2号証は、ホワイ社が、その顧客であるマツナミビバ店に対して発行した納品書の控えの写しである。品番・品名の欄に381300、381301、381302、380001とあるが、ホワイ社が作成した商品リストである乙第3号証に照らせば、それぞれが「PRINCIPE」のバッグを指していることは明白である。すなわち、この納品書は、ホワイ社が、商標「PRINCIPE」を付したバッグをマツナミビバ店に実際に販売した事実を示すものであり、これは、商標法第2条第3項第2号に規定する「商品に標章を付したものを譲渡する行為」に該当する。同時に、納品書の備考欄には、商標「PRINCIPE」が記載されており、これは商標法第2条第3項第7号に規定する「商品又は役務に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当する。
さらに、この納品書の発行日は、平成7(1995)年1月26日であり、本件審判請求の登録前3年以内に該当する。
(イ)口頭陳述
乙第3号証に記載された日付(11MAG.1999)は、ホワイ社が、本件商標権者の日本代理人であるイタリアンプレスサービスへ同号証をファクシミリ送信した日であり、その内容は、小売店向けにシーズンものの商品をリストアップして配布している手作りのカタログである。
乙第3号証の日付のときは商品を製造しておらず、乙第2号証の頃のものを抜粋したものである。また、商品リスト(乙第3号証)のデザイン画については、手作りのため奇異には思えない。
(2)上申書
平成12年10月18日付けで行われた口頭審理において争われた商標権者と使用権者との間の契約書の写しを提出する。
(ア)乙第4号証ないし乙第6号証
本件商標に係る商標権の1992年から1997年までの名義人であるプリンチペ社とパートナー社との間に、1993年12月1日に本件商標の使用権に関する契約が締結されている(乙第4号証)。パートナー社は、この契約の第7条において第三者にサブライセンスを設定する権利を認められ、同条に基き、1994年1月1日に株式会社エトアールマルゼン(以下「エトアールマルゼン社」という。)との間にサブライセンスの契約(乙第5号証)を締結し、続いて、エトアールマルゼン社は、ホワイ社との間にサブライセンスの契約(乙第6号証)を締結している。これらの契約書によれば、ホワイ社は、本件商標の正当な使用権者であることは明らかである。
(イ)乙第7号証
乙第7号証によれば、ホワイ社が、本件商標及びそれと社会通念上同一と考えられる「プリンチペ」をバッグに使用していたことは明らかである。
(3)第2回答弁書
(ア)ホワイに対する本件商標の使用権の許諾について
(a)1992年から1997年までの本件商標の名義人であるプリンチペ社は、1993年12月1日に、パートナー社との間で、被服、かばん類、袋物等に関し、日本において、本件商標を独占的に使用する権利をパートナー社に許諾する内容の契約を締結している(乙第4号証)。さらに、当該契約第7条において、パートナー社は、本件商標の使用権を第三者に再許諾する権利を取得している。
(b)上記契約によりパートナー社が取得した本件商標の再許諾権に基づいて、1994年1月1日付契約(乙第5号証)にて、パートナー社から再許諾を受けたエトアールマルゼン社は、ホワイ社との間の1994年4月15日付け契約書(乙第6号証)にて1994年6月1日から1997年12月31日までの期間における、かばん類、袋物等に関する本件商標の使用権をホワイ社に許諾している。
なお、乙第5号証の頭書には、「甲の専用使用ブランド」との記載があり、また、同契約は、形式的にはエトアールマルゼン社がパートナー社に本件商標の管理業務等を委託するかの規定となっているが、同契約は実質的にはプリンチペ社から本件商標の使用権の許諾を受けたパートナー社が、本件商標のかばん類、袋物等に関する使用権をエトアールマルゼン社に許諾するものである。
(c)このように、ホワイ社は、契約上、1994年6月1日から1997年12月31日までの間、本件商標のかばん類、袋物等に関する使用権を正当に有していた。
(イ)ホワイ社による本件商標の使用について
本件商標の正当な使用権者であるホワイ社が、本件審判請求の登録前3年間の期間内において、本件商標を指定商品中「かばん類、袋物」について使用したことは以下のとおり明らかである。
(a)乙第2号証は、納品書であり、商標法第2条第3項第8号にいう「取引書類」に該当する。これによれば、その備考欄に「PRINCIPE」との記載が認められ、乙第3号証に照らせば、この納品書により納品された商品が「かばん類、袋物」に該当することは明らかである(納品書の色明細欄に記載される各数字も、乙第3号証の右上「COLOUR」欄に記載される各色を示す数字と合致するものとなっている。)。
以上のことから、ホワイ社が1995年1月26日に本件商標をその指定商品中「かばん類、袋物」に使用したことが認められる。
(b)なお、乙第3号証の右下に付された「RICEVUTO 11 MAG.1999」の文字は、イタリー語で「1999年5月11日に受領した」という意味を有するものであり、1999年5月11日に本書面がファクシミリ送信された際に、ファクシミリの受領を明らかにするために刻印されたものであって、乙第3号証自体が1999年に作成されたことを示すものではない。
(c)乙第7号証によると、1995年1月10日時点において、ホワイ社が、本件商標及びそれと社会通念上同一と考えられる「プリンチペ」をバッグに使用していたことは明らかである。特に、同書面右下に添付された写真を見ると、馬に乗った人の絵とその上部に文字が記載された下げ札が、バッグに結び付けられていることを確認できるが、この下げ札は、乙第8号証と同一のデザインのものであり、そこには「PRINCIPE」の文字が記載されている。なお、商標法第2条第3項第1号にいう「商品又は商品の包装に標章を付する行為」には、標章を表示した下げ札を商品に紐で結び付けておく場合も含まれると解されており、当該写真はホワイ社による本件商標の使用を証するものに他ならない。
(4)結語
以上のとおり、本件審判請求の登録前3年以内に、本件商標の使用権者が、本件商標を指定商品に使用していた事実は明らかである。

4 当審の判断
(1)商標法第50条によれば、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは、何人も、その指定商品等に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができ、同審判請求があった場合においては、その審判請求に係る指定商品等についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにした場合を除き、上記審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者等のいずれかがその請求に係る指定商品等のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、その指定商品等に係る商標登録の取消しを免れない。
そこで、本件についてみるに、本件の争点は、ホワイ社が、本件商標の通常使用権を有していたか否か、ホワイ社が、本件審判請求の登録(平成9年12月17日)前3年以内に本件商標をその指定商品に使用していたと認められるか否かである。
(2)ホワイ社が本件審判請求の登録(平成9年12月17日)前3年以内に本件商標の通常使用権を有していたか否か
(ア)プリンチペ社からパートナー社に対する本件商標の使用権の再許諾権付き許諾の有無について
被請求人は、プリンチペ社は1993年(平成5年)12月1日付けでパートナー社との間で、契約期間を同日から2004年(平成16年)12月1日までとする契約を締結した旨主張し、同契約に係る契約書であるとして乙第4号証を提出している。
乙第4号証の契約書の冒頭部分には、各契約条項の前提をなすと解される事項として、「本会社(審決注:プリンチペ社)は、イタリアにおける「PRINCIPE」の商標の所有者であり、かつ、イタリアにおいて当該商標の下に、日本の商標法における商品分類の第17類、20類、21類、22類、25類及び26類に属する全ての商品の製造者及び販売者としてビジネスに従事している。本会社は、独占的に、イタリアにおける本会社のデザイン及び創作に基づき製造された本製品(審決注:被服、かばん等)について「PRINCIPE」の商標をイタリアにおいて使用し、かつ他の者、企業又は会社に対して上記商標を使用する許可を付与する権限を有している。パートナー社は、本契約において定めるとおり、本会社のデザイン及び創作に基づく様々な種類の製品を本領域(審決注:日本国等)において製造及び販売することを望んでいる。」との記載があり、上記契約書第4条には、パートナー社は、被服、かばん等に関連し、日本国等において、「PRINCIPE」の商標及びプリンチペ社の名称を使用する独占的権利を有する旨の定めが、同契約書第7条には、パートナー社は、他の者、法人又は会社に対し、日本国等において、被服、かばん等を製造及び販売することを許可する権利を有する旨、但し、パートナー社は、まずプリンチペ社の書面による承認を取得しているものとする旨の定めがそれぞれ記載されていることが認められる。
しかしながら、乙第4号証の契約書には、契約条項の前提をなす事項として、プリンチぺ社がイタリアにおける「PRINCIPE」の商標の所有者である旨の記載がされているに止まり、プリンチぺ社が日本において「PRINCIPE」の商標の権利者であることの記載がないことを考慮すれば、この契約書が権原を有する者により作成されたものかどうかの点はさておき、その内容とするは、プリンチペ社がパートナー社に対し、イタリアにおける「PRINCIPE」の商標の独占的な使用権を許諾したに止まるものであると解するのが相当であり、上記契約書が、プリンチペ社がパートナー社に対し、本件商標の独占的な使用権を許諾する内容のものであると認めることはできない。
(イ)パートナー社からホワイ社に対する本件商標の使用権の許諾の有無について
被請求人は、パートナー社はエトアールマルゼン社との間で、プリンチペ社との契約(乙第4号証)により取得した本件商標使用の再許諾権に基づいてエトアールマルゼン社に対し本件商標の使用権を許諾する旨の契約を締結し、また、エトアールマルゼン社はホワイ社との間で、本件商標の使用権をホワイ社に許諾する旨の契約をした旨主張する。
しかしながら、パートナー社が、プリンチペ社から本件商標の使用権の許諾を受けていないことは上記4(2)(ア)に説示したとおりであり、被請求人がパートナー社とエトアールマルゼン社間の契約に係る契約書であるとして提出した乙第5号証は、エトアールマルゼン社がパートナー社に対し、エトアールマルゼン社の専用使用ブランド「PRINCIPE」のサブライセンシーの開拓業務、企画、コーディネート及び管理業務を委託することを内容とする契約であり、被請求人が主張するような内容の契約の成立を証するものでないことはその記載内容に照らして明らかである。
また、乙第6号証の契約書により、エトアールマルゼン社からホワイ社に使用許諾された商標は、該契約書の第1条に「ライセンサーと別契約により甲(審決注:エトアールマルゼン社)がライセンス実施権を得た下記商標『PRINCIPE』」と記載されているのみであり、本件商標との関係が一切明らかにされていないばかりでなく、乙第4号証及び乙第5号証の上記内容を勘案すれば、乙第6号証に記載ある「PRINCIPE」と本件商標とは、別の商標を意味するものと解するのが相当である。
したがって、証拠(乙第4号証ないし乙第6号証)をもって、ホワイ社がエトアールマルゼン社から本件審判請求の登録(平成9年12月17日)前3年以内の期間において本件商標の使用権の許諾を受けていたと認めることはできない。
してみると、仮に、ホワイ社が本件審判請求の登録前3年以内に「PRINCIPE」の商標をその指定商品について使用した事実があるとしても、それは本件商標の使用権者としての本件商標の使用には該当しないというべきである。
(ウ)また、他の主張、立証を勘案するも、上記認定、判断を覆す特段の事由は認められない。

5 むすび
したがって、本件商標は、本件審判の請求登録前3年以内に日本国内において、被請求人、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても本件審判の請求に係る商品「かばん類、袋物」について、使用されていたものとは認められず、商標法第50条の規定より、指定商品中の「かばん類、袋物」についての登録を取り消す。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-06-01 
結審通知日 2004-06-03 
審決日 2004-06-23 
出願番号 商願昭55-73241 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (121)
最終処分 成立  
前審関与審査官 尾原 静夫 
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 山田 正樹
鈴木 新五
登録日 1983-07-28 
登録番号 商標登録第1606003号(T1606003) 
商標の称呼 プリンシプ、プリンチペ 
代理人 佐藤 雅巳 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 大賀 眞司 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 
代理人 佐藤 一雄 
代理人 田中 克郎 
代理人 佐藤 一雄 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 田中 克郎 
代理人 佐藤 一雄 
代理人 大賀 眞司 
代理人 大賀 眞司 
代理人 菊地 栄 
代理人 佐藤 睦美 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 菊地 栄 
代理人 菊地 栄 
代理人 矢崎 和彦 

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