• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない Z42
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z42
管理番号 1095142 
審判番号 不服2001-5593 
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-11 
確定日 2004-03-15 
事件の表示 平成11年商標登録願第117585号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「活性化自己リンパ球療法」の文字(標準文字)を書してなり、第42類「医業,健康診断,歯科医業,調剤,医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究,治療法の研究又は試験,細胞の増殖および活性化,細胞の増殖および活性化の受託,リンパ球培養,リンパ球培養の受託,細胞およびリンパ球の加工,細胞およびリンパ球の加工の受託,癌およびウイルス感染症その他難治性免疫疾患の治療,癌およびウイルス感染症その他難治性免疫疾患の治療用薬品類の研究・開発およびそれらの受託,細胞保存液および細胞培養用研究試薬の研究・開発およびその受託,治療に必要な情報又は資料の提供,医療コンサルタント,特定契約者に対する治療法の指示又は助言」を指定役務として、平成11年12月20日に登録出願されたものである。

2 原査定における拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『活性化自己リンパ球療法』の文字を普通に書してなるものであるが、『リンパ球』の文字部分は、『白血球の一種であり、免疫機能に重要な働きをするもので、B細胞、T細胞などに分けられ、骨髄で作られ胸腺・リンパ節・脾臓で分化・増殖する。さらに、近年、大型リンパ球の一部が非特異的に腫瘍細胞や微生物に感染した細胞を破壊する性質を持つことが知られてきて、ナチュラルキラー細胞とよばれている』の意であることから、全体として『活性化させた自己のリンパ球による療法』であることを認識させるにすぎないものであるから、これを本願指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に役務の質(内容)等を表示したものと把握するに止まり、自他役務識別標識としての機能を有するものとは認識しないとみるのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
本願商標は、上記のとおり「活性化自己リンパ球療法」の文字よりなるところ、その構成文字である「活性化」、「自己」、「リンパ球」及び「療法」は、それぞれ「沈滞していた機能が活発に働くようになること。」、「自分、その人自身」、「白血球の一種。骨髄で作られ、胸腺・リンパ節・脾臓で分化・増殖する。運動性や食作用は弱いが、大食細胞と協同して抗体を産生し(Bリンパ球)、また細胞性免疫および免疫機能調節にあたる(Тリンパ球)。大きさは5から15ミクロンで円形の核を持つ。」及び「治療の方法」(広辞苑第5版)を意味する語としていずれも良く知られているものといえる。
さらに、「免疫学事典(第2版)」(株式会社東京化学同人 2001年12月3日発行)には、「活性化リンパ球」(activated lymphocyte)が「抗原やマイトジェンなどの刺激により増殖分化へと導かれる状態になったリンパ球をいう。(後略)」を意味する語として収録されていることよりすれば、本願商標全体からは「活性化させた自分のリンパ球を利用して行われる治療の方法」の意味合いを容易に理解させるものというのが相当である。
また、最近のがん治療及びがん治療に関する研究分野においては、従来の治療法(手術療法、化学療法、放射線療法)に加えて、活性化リンパ球療法が注目されており、免疫療法の一つとして治療及び研究が行われていることが、一般にも認識されているものと認められる。これについては、例えば、以下の新聞、雑誌、医療関係のインターネットホームページ情報からも確認することができる。

(1)2002年8月26日 毎日新聞 11頁「進むがんの免疫細胞療法研究 副作用なく、QOL維持に期待」と題する記事中に「(前略)ここでの中心は『活性化自己リンパ球療法』だ。がん患者の血液からT細胞などのリンパ球を取り出して培養する。T細胞を活性化させるインターロイキン2などを加えて培養すると、T細胞は2週間で500万個から1000倍の50億個に増える。それを患者に点滴する。1回で、健康な成人が体内に持つT細胞の3倍の量を取り込む計算だ。微熱が出ることがあるが、副作用の報告はない。(中略)広島大学原爆放射線医学研究所は、87〜99年に活性化自己リンパ球療法を受けた102人を評価。有効率は9%だったが、自覚症状では53%が『改善した』と答えた。山口佳之・腫瘍外科講師は『がんは縮小しないが4年間健在という人もいる。がんの大小だけでなく、がんと共存している状態を評価する物差しも必要だ』と言う。(後略)」との記載がある。

(2)2003年7月26日 朝日新聞 63頁「強力リンパ球でがん攻撃(最新治療あの手この手)」と題する記事中に「外科手術、放射線、抗がん剤。ポピュラーな3種類の治療法とは少し違った角度からがんを攻めるのが、第4の免疫療法だ。瀬田クリニック(東京都世田谷区、江川滉二代表)のグループは、その一つ、『活性化自己リンパ球療法』と呼ばれる免疫細胞療法を大がかりに実施している。患者の血液約20ミリリットルからリンパ球を分離する。がんを攻撃するTリンパ球などを増やして活性化させる物質(インターロイキン2など)を加えて培養し、2週間おきに点滴で患者の体に戻す。(後略)」との記載がある。

(3)週刊朝日 2001年11月30日号 株式会社朝日新聞社発行 161頁「自己リンパ球療法の実力 外科手術、抗がん薬、放射線に次ぐ第4の選択肢 オーダーメードがん治療」と題する記事中に、「がんといえば、外科手術、抗がん薬、放射線が3大治療法。だが、ここに第4の治療法がある。自然治癒力を活用したオーダーメードの活性化自己リンパ球療法である。普及には高度の施設と複雑な技術が壁になっていたが、基礎医学の研究者が東京大学退官後にこの治療を専門に行うために開設したクリニックが盛況だ。」との記載がある。

(4)週刊ポスト 2002年1月25日号 株式会社小学館発行 199頁「(前略)これが注目の最新『がん6大療法』だ」と題する記事中に、「専門は活性化自己リンパ球療法と呼ばれるもの。リンパ球を体外に取り出し培養して血液の免疫力を高め、再び体内に返す方法だ。(後略)」との記載がある。

(5)日本免疫治療学研究会のホームページにおいて、「免疫細胞治療とは」の頁に「免疫細胞療法の種類」として「6.活性化自己リンパ球療法 LAK,CTL, TIL、Dendritic Cell(DC)-CTL療法等 がんを抑える免疫反応の中心となるTリンパ球を体外で培養しながら活性化し、数も大巾に増やし、その上で元の患者さんの体内に戻すということを主眼とした治療法です。試験管内ではTリンパ球を極めて強く活性化することが出来、かつ活性化剤の副作用を蒙ることなく行うことが出来ます。これについてもいろいろな変法が考案され、実施されています。」の記載がある。(http://www.jrai.gr.jp/immunity/immu03.html)

(6)最新医療情報 MEDICAL NEWS 共同通信社のホームページで「リンパ球でがん治療 免疫で生活の質改善 肝がんでは再発防止も がん患者のリンパ球を特殊な方法で活性化して増やし、体内に戻す『活性化自己リンパ球療法』。がん性腹膜炎の治療などで7つの大学病院が高度先進医療の承認を得ているが、ほかにもこの免疫療法に取り組む医療機関が増えている。」の記載がある。(http://kk.kyodo.co.jp./iryo/news/430rinpa.html)

そうとすると、本願商標は、これをその指定役務中、上記「活性化自己リンパ球療法」の文字が有する意味に即した役務(例えば、「活性化させた自己のリンパ球を使用して行われる治療の方法に基づいた医業・リンパ球培養・リンパ球培養の受託・細胞およびリンパ球の加工・細胞およびリンパ球の加工の受託・癌およびウイルス感染症その他難治性免疫疾患の治療・治療に必要な情報又は資料の提供・医療コンサルタント・特定契約者に対する治療法の指示又は助言」)に使用した場合、これに接した取引者、需要者は、その役務が上記意味に即した治療方法に関わる役務であること、即ち、その役務の質、内容を表示するにすぎないものと理解するに止まり、自他役務識別標識としての機能を有するものとは認識しないというのが相当であって、かつ、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本願商標を商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとしてその出願を拒絶した原査定は、妥当なものであって取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-12-22 
結審通知日 2004-01-09 
審決日 2004-01-21 
出願番号 商願平11-117585 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z42)
T 1 8・ 272- Z (Z42)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 みよ子 
特許庁審判長 小池 隆
特許庁審判官 田中 幸一
山本 良廣
商標の称呼 カッセーカジコリンパキューリョーホー、カッセーカジコリンパキュー 
代理人 吉村 公一 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ