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審決分類 審判 一部無効 商4条1項16号品質の誤認 審決却下 Z41
管理番号 1078187 
審判番号 無効2002-35315 
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-07-26 
確定日 2003-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第4520539号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4520539号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第41類「動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,相撲の興行の企画・運営又は開催,ボクシングの興行の企画・運営又は開催,野球の興行の企画・運営又は開催,サッカーの興行の企画・運営又は開催,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,当せん金付証票の発売,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,興行場の座席の手配,映写機及びその附属品の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,スキー用具の貸与,スキンダイビング用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与」を指定役務として、平成12年4月18日登録出願、同13年11月9日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標は、その指定商品中、『娯楽施設の提供』についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。(なお、請求人は、別紙1ないし別紙4を審判請求書の添付書類として提出したが、審判の請求の理由及び提出の趣旨から判断して、証拠方法と認められるので、これを「甲第1号証ないし甲第4号証」と置き換えた。)
1.利害関係の存在について
請求人は、商標「BEGIN」について、第41類「娯楽施設の提供」を指定役務として商標出願することを希望している。そこで請求人は、先登録商標調査を行なったところ、本件商標が既に存在していることを確認した。本件商標は、その構成中に「begin」を含むと共に、第41類「娯楽施設の提供」を指定役務としているから、現状に鑑みる限り請求人の企図する商標の出願は、本件商標により拒絶される可能性が極めて高いといわざるを得ない。
したがって、請求人には、本件商標をこの無効審判請求により無効とすることに関し、重大な利害関係を有しているものである。
2.商標法第4条第1項第16号について
(1)本件商標は、前記構成文字よりなり、前記役務を指定役務とするものであるところ、その構成中に「FITNESS CLUB」の語を包含している。この「FITNESS CLUB」の語からは、「健康増進のために各種の身体運動を行なうサービスを提供する会員制等のクラブ」を容易に想起するものである。
すなわち、「フィットネス」(fitness)の語は、「健康増進のため各種の身体運動を行うこと。フィジカルーフィットネス」(甲第1号証;広辞苑)、あるいは「精神と肉体がぴったり調和した健康状態。また、エアロビクスなどの運動をして健康状態をよくすること。」(甲第2号証;三省堂国語辞典)である。
さらに、「クラブ」(club)の語は、「政治・社交・娯楽、あるいは学校の課外活動で、共通の目的によって集まった人々の団体。また、その集合所。」(甲第3号証;広辞苑)、「趣味(シュミ)・娯楽(ゴラク)のための、小さな団体」(甲第4号証;三省堂国語辞典)である。
しかも、前記フイットネス(fitness)の語やクラブ(club)語は、一般に広く普及した用語として日常的に使われている用語である。加えて、本件商標における前記「FITNESS CLUB」の語は、本件商標の他の構成と一体不可分・密接不離に結合しているのではなく、他の構成たる「ROX」及び「begin」と容易に分別して視認し得る状態になっている。
したがって、本件商標に含まれる「FITNESS CLUB」の語からは、前記のように、「健康増進のために各種の身体運動を行なうサービスを提供する会員制等のクラブ、エアロビクスなどの運動をして健康状態をよくするサービスを提供するクラブ」を容易に想起するといわざるを得ない。
(2)本件商標の指定役務は、第41類に属する前記役務となっているから、少なくとも「娯楽施設の提供」という役務について「健康増進のために各種の身体運動を行なうサービスを提供する会員制等のクラブ、エアロビクスなどの運動をして健康状態をよくするサービスを提供するクラブ」と役務の質の誤認を生じさせるものであるといわなければならない。
すなわち、本件商標に接する一般の役務享受者は、該商標から分別的に認識される「FITNESS CLUB」の語から、前記のようなエアロビクス関連のクラブの役務提供を期待したにもかかわらず、得られた役務提供は「娯楽施設の提供」であった、という不測の事態を招くことが充分考えられる。これは取りも直さず、本件商標によって表される役務の真正に関して、世人をして錯誤に陥らしめるものであって、役務の質の誤認を生ずることにほかならない。
なお、役務の質の誤認を生ずるか否かの判断は、登録査定の時期を標準として行なうべきものである(商標法第4条第3項)。この点に関し、フイットネスの語やクラブの語が、甲第1号証ないし甲第4号証に示したような語意を有しており、したがって、「FITNESS CLUB」の語から「健康増進のために各種の身体運動を行なうサービスを提供する会員制等のクラブ、エアロビクスなどの運動をして健康状態をよくするサービスを提供するクラブ」を容易に想起するに至っている、という結論には、本件商標の登録査定の時期を基準としても全く変りはない。
(3)結論
以上に述べたように、本件商標は、その指定役務中少なくとも「娯楽施設の提供」に関して、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号によりその登録を無効とすべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、第一次的には、「本件審判の請求は、却下する。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求め、第二次的には、「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証を提出した。
1.利害関係について
(1)請求人は、「商標『BEGIN』について、商標出願することを希望している」旨述べるのみで、現実には商標登録願を提出しているわけではない。商標法第46条に基づく登録無効審判における請求人の利害関係は、具体的かつ客観的にその存在が認められるものでなければならず、抽象的かつ主観的に請求人自身が内心で「思っている」だけでは足りないものである。よって、未だ商標登録願を提出していない以上、請求人は利害関係人には該当しない。
(2)今後、請求人が商標出願を行なったとしても、以下の理由により、請求人は利害関係人ではない。
ア.請求人は、特許事務所の下請として「科学技術情報の調査および提供」や「翻訳」を行なうことをその職業としている個人であって(乙第1号証及び乙第2号証)、「娯楽施設の提供」の事業を行なおうなどとは決して本気で思っているものではないから、請求人の当該商標登録願は、商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る役務について使用する商標」の要件を欠くこととなり、本件商標の存在とは全く無関係に、「拒絶査定」を受け登録に至らないものである。
イ.仮に、請求人が「娯楽施設の提供」を行なおうと本気で考えているというのであれば、企画している「娯楽施設の提供」の場所、種類、資金の借り入れ金融機関、従業員数、見込み売上高等具体的なプランを詳細かつ明確に提示されたい。
ウ.仮に、請求人が「娯楽施設の提供」を行なおうと本気で考えており、かつ、その裏付けとして、具体的なプランが提示できたとしても、請求人の当該商標登録願は、先願である商願2001-97246「NEWBEGIN」(この出願人は、愛知県名古屋市中村区烏森町3丁目56番地の株式会社ニューギン)が第41類「娯楽施設の提供」を指定役務に含んで出願中である(乙第3号証)ために、本件審判により本件商標が一部無効とされたとしても、上記商願2001-97246が登録になるだけで、請求人の当該商標登録願は、上記「NEWBEGIN」商標に妨げられて、決して登録には至らないのである。
エ.請求人は、「先登録商標調査を行なった」旨述べている以上、先願である商願2001-97246の存在を知らないはずはなく、仮に自己が商標登録願を提出したとしても登録に至らないことは十分に知りつつ、本件審判を請求しているのであるから、本件審判の請求は悪意による「いやがらせ」であって、審判請求の請求権を濫用したものとしか考えられない。
オ.特許事務所の下請として「科学技術情報の調査および提供」や「翻訳」を職業としている個人である請求人が、突然に、全く業種の関連性がない「娯楽施設の提供」を行なおうと思い立ち、第41類「娯楽施設の提供」を指定した商標「BEGIN」の出願をすることを希望した点、請求人が、先登録商標調査を行なった以上、請求人は本件商標以外にも出願中の商願2001-97246が存在することに気づいており、本件商標を無効にしたところで第三者の商標登録願が登録に至るだけであって自己の希望する「BEGIN」は登録できないことを十分に知っておりながら、請求人は、別の商標を採用して「娯楽施設の提供」を行なおうとは全く考えることなく執拗に「BEGIN」に固執し、決して少なくない費用をかけてまで弁理士に依頼して本件審判を請求している点、請求人が依頼した弁理士は、請求人の住所地とはかけ離れた愛知県名古屋市に所在しており、多大な時間と費用がかかるはずで、常識ではこのような依頼は行なわないはずである点からみると、請求人は、ただ名義を貸しただけの、いわゆる「ダミー」であるからという事実にほかならない。
商願2001-97246に関し、調査したところによれば、平成14年6月17日(起案日)付で本件商標を含む11件の登録商標を引用する「拒絶理由通知」が発せられたところ、当該商標の出願人(式会社ニューギン)の代理人山本喜幾弁理士は、平成14年7月26日付意見書で、「第三者たる町田市在住の及川孝氏は、前記引用商標6に係る登録商標第2329461号に対し、商標法第50条第1項の規定に基づき商標取消審判を提起した。・・・第三者たる町田市在住の及川孝氏は、前記引用商標11に係る登録商標第4520539号に対し、商標法第46条第1項の規定に基づき商標無効審判を提起した。その無効審判の対象となる商品は、引用商標11の指定商品中「娯楽施設の提供」となっている。引用商標6に対して提起された不使用に基づく商標登録取消審判及び引用商標11に対して提起された商標登録無効審判のそれぞれの審決が判明するまで、本願商標の審査を保留として戴きたくお願い申し上げます」と述べている(乙第4号証及び乙第5号証)。
上記から明らかなように、請求人の真の目的は商願2001-97246を登録しようとすることにあり、真の「利害関係人」は株式会社ニューギンであって、請求人は単なるダミーにすぎないものであるから、請求人には利害関係は全くない。
(3)以上述べたように、請求人は利害関係人には該当しないから、被請求人は、第一次的には、「本件審判の請求は、却下する。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求めるものである。
2.商標法第4条第1項第16号について
(1)本件商標の態様
本件商標の態様は、上段に欧文字の大文字で「ROX FITNESS CLUB」と小さく記載し、上段の文字の大きさと比較し約4倍位大きな文字にて下段に欧文字の小文字で「begin」と記載したものである(乙第6号証)。
そして、本件商標中の「ROX FITNESS CLUB」は、欧文字の大文字で、同じ大きさ、同じ字体の文字で、一連にまとまりよく記載されているから、全体として一体なのである(乙第6号証「商標公報」の「称呼(参考情報)」の項参照。)。そして、その冒頭の「ROX」とは、被請求人「株式会社ロックス・ヘルスプラザ」の「ロックス」を意味することから、取引者・需要者にとり、上段の部分は全体として「被請求人が主催するフィットネスの会」の意味と理解されるものであり、かかる会の固有名称なのである。
したがって、被請求人が主催するこの会に入会して会員になることで人々が享受しうる総ての役務について本件商標を使用したところで、何ら役務の誤認は生じないのである。
(2)「FITNESS CLUB」の意味
請求人は、国語辞書に掲載された「フィットネス」及び「クラブ」の各語の意味を合成し、「フィットネスクラブ」を「健康増進のために各種の身体運動を行なうサービスを提供する会員制等のクラブ」等としているが、請求人の係る「フィットネスクラブ」の業務内容の把握は、現実の「フィットネスクラブ」の業務内容を全く無視した机上の空論を展開しているにすぎないものである。
「フィットネスクラブ」といっても、「総合的な健康・社交・娯楽のサロン」として、「運動施設の提供」のみでなく、「飲食物の提供」、「美容」、「入浴施設の提供」、「スポーツの教授」、「娯楽施設の提供」も併せて、その役務として会員に提供している高級な「フィットネスクラブ」(乙第7号証及び乙第8号証)から、「健康増進のために各種の身体運動を行なうサービスを提供する会員制等のクラブ」及びその周辺の役務まで取り込んだ「総合ヘルス・レジャーセンター」化した大衆向け「フィットネスクラブ」があり、このような大衆向けの「フィットネスクラブ」は、「エアロビクス」や「トレーニングマシーン」以外に、「栄養の指導」、「入浴施設の提供」、「医業」、「美容」、「衣服の貸与」、「スポーツの教授」、「はり、きゅう、マッサージ及び指圧」などの役務を提供し、会員にいかなる役務を提供できるのかを競い、これによって他との差別化を計って過当競争の下で生き延びているのが現状である。
(3)「役務の誤認」の可能性の不存在
請求人は、「一般の役務享受者は『FITNESS CLUB』の語からエアロビクス関連のクラブの役務提供を期待したにもかかわらず、得られた役務提供は『娯楽施設の提供』であった、という不測の事態を招くことが充分考えられる。これは取りも直さず、本件商標によって表される役務の真正に関して、世人をして錯誤に陥らしめるものであって、役務の質の誤認を生ずることにほかならない。」旨主張するが、上記(2)のように、「フィットネスクラブ」の提供する役務は、「運動施設の提供」のみではなく、「娯楽施設の提供」も併せてその役務として会員に提供している。また、「フィットネスクラブ」の業務の実態は、「会員制」であり「『会員権』の範囲で何ができるか」を知って入会した者に対して役務を提供しているという事実に照らせば、請求人の主張は、取引の実情を知らないで自己の頭の中のみで考えた理屈であって、現実には生じる余地がない「役務の誤認」を述べているにすぎないものである。
よって、被請求人は、第二次的には、「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求めるものである。

第4 当審の判断
本件審理に関し、当事者間において利害関係について争いがあるので、この点について判断する。
「商標法46条の規定に基づき商標登録を無効にすることについての審判を請求するためには、請求人に右審判を請求するについての法律上正当な利益が存することを必要と解すべきであるが、無効審判請求の利益は、審判請求を適法なものとして取り上げ、請求の当否について審決を得るために具備すべき要件であるから、審決時を基準として判断すべきであり、審決時に存在することを必要とするとともにこれをもって足りるというべきである。」(平成1年10月19日東京高等裁判所判決、昭和63年(行ケ)第65号)ところ、これを本件についてみるに、請求人は、「商標『BEGIN』について、第41類『娯楽施設の提供』を指定役務として商標出願することを希望している。」旨主張し、本件審判を請求することについて、法律上正当な利益を有するとしているが、上記主張をするのみで、審決時に至るまで、被請求人の前記第3 1.の主張に対し、何ら弁駁をすることなく、また、利害関係を有することについて立証をするところがない。さらに、当審において、職権をもって調査するも、請求人が上記文字よりなる商標を第41類「娯楽施設の提供」を指定役務として商標登録出願した事実は見当たらなかった。
してみると、請求人は、本件商標の登録無効を求めることについて審判を請求する法律上正当な利益を有する者とは認めることはできない。
したがって、本件審判の請求は、審判請求の利益を有しない者の請求に係る不適法なものであってその補正をすることができないものであるから、商標法第56条第1項の規定により準用される特許法第135条の規定によって、却下すべきものである。
別掲 本件商標


審理終結日 2003-03-05 
結審通知日 2003-03-10 
審決日 2003-03-25 
出願番号 商願2000-41208(T2000-41208) 
審決分類 T 1 12・ 272- X (Z41)
最終処分 審決却下  
前審関与審査官 青木 博文 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 茂木 静代
中嶋 容伸
登録日 2001-11-09 
登録番号 商標登録第4520539号(T4520539) 
商標の称呼 ロックスフィットネスクラブビギン、ロックスフィットネスクラブ、ビギン 
代理人 吉村 悟 
代理人 吉村 仁 
代理人 山本 喜幾 

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