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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 042
管理番号 1076771 
審判番号 取消2002-30665 
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-06-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2002-06-10 
確定日 2003-04-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第4166370号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4166370号商標(以下「本件商標」という。)は、「HASEJIN」の文字を書してなり、平成8年10月14日に登録出願、第42類「飲食物の提供」を指定役務として、同10年7月10日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
(1)請求人の調査によれば、本件商標は、その指定役務「飲食物の提供」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用していないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
請求人は、平仮名文字及び漢字から構成される商標「はせ甚」を登録出願し、本件商標の存在を知った。本件商標からは「ハセジン」という称呼を生じ、請求人の出願商標「はせ甚」と同一又は類似するので、請求人は、本件審判を請求することについて利害関係を有する。
(2)被請求人の答弁に対する請求人の弁駁
(ア)請求人提出の甲第3号証(営業譲渡等に関する覚書)は、売主A:久保田食品科学株式会社、売主B:株式会社はせ甚、売主C:久保田勝俊、売主D:久保田江美子、売主E:久保田康大郎と、買主:株式会社勿来・大玉ロイヤルカントリークラブとが平成6年12月8日に取り交わした覚書であり、該書面によれば、「はせ甚」なる商号で営業している営業上の財産一切及び準備中の財産一切、そして、売主C、D、Eの所有する不動産を譲渡するとなっている。
したがって、被請求人は、上記営業譲渡に伴い、本件商標を使用する権利も譲渡したものと認識すべきであり、請求人は、被請求人が本件商標を使用する権利を有しないものと思料する。
(イ)被請求人提出の乙第1号証ないし乙第4号証によれば、被請求人は、通常使用権者とされる「ケイアンドアイインターナショナル株式会社」(以下「ケイアンドアイ社」という。)が生肉の味噌漬けと佃煮の製造、販売を行う際、本件商標を使用することについて許諾しており、その有効期間が平成16年7月31日までであり、また、ケイアンドアイ社は、マザーズ木津川台店及び原山台店(以下「両店舗」という。)を運営する株式会社ミキシング(以下「ミキシング社」という。)と有限会社エムジーサービス(以下「エムジーサービス社」という。)が得ている契約者の地位を承継し(乙第2号証:覚書)、さらに、ミキシング社は、両店舗の運営をケイアンドアイ社に委任し、その契約期間が平成13年12月1日から平成14年1月末日までとされており(乙第3号証:顧問契約書)、当該覚書及び顧問契約書は、平成14年7月27日付けで本合意されている(乙第4号証)。
しかしながら、ケイアンドアイ社が両店舗の運営につきミキシング社と交わした顧問契約期間は、平成14年1月末日までであるので、当該契約は既に終了しており、平成14年7月27日付けの本合意の実質的な中身は、覚書のみである。
よって、ケイアンドアイ社は、(顧問契約終了後の)平成14年2月1日から本合意前(平成14年7月26日)までの期間、両店舗の運営に関する顧問契約を交わしていないから、この期間中にケイアンドアイ社は、本件商標を使用していないこと明らかである。
(ウ)乙第4号証(ケイアンドアイ社とミキシング社及びエムジーサービス社間の合意書)の合意日(平成14年7月27日)は、本件審判請求の登録(平成14年7月3日)後であることや、乙第5号証の写真の撮影年月日(平成14年8月9日)が本合意(平成14年7月27日)後であることからみても、ケイアンドアイ社が本件商標を本件審判請求の登録日前に使用していたか否かには疑念を抱かざるを得ない。
(注:請求人は、本件審判請求の予告登録日を平成14年6月28日と記載しているが、予告登録日は、平成14年7月3日であるので、訂正した。)
(エ)被請求人は、使用商標1ないし3(「はせ甚」)が本件商標「HASEJIN」と構成を異にしているものの、「ハセジン」の称呼を生ずる点で共通し、観念も共通しているから、社会通念上同一の商標であると主張している。
しかしながら、商標法第50条第1項にいう登録商標とは、第1に、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、第2に、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって、同一の称呼及び観念を生ずる商標、第3に、外観において同視される図形からなる商標、第4に、その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を指すものである。
しかるに、通常使用権者とされるケイアンドアイ社が使用している商標の態様は、「はせ甚」であるのに対して、本件商標は、欧文字の「HASEJIN」である。
したがって、当該使用態様は、本件商標に対して書体のみに変更を加えた同一の文字ではないし、また、欧文字(ローマ文字)を平仮名文字あるいは片仮名文字という表示に変更した文字でもないし、さらに、図形商標でもないし、また、縦書きを横書きにしたような文字でもないから、社会通念上同一の商標であるとの被請求人の主張は、正当とは認められない。
よって、当該使用態様は、称呼において類似する本件商標の類似商標の使用であるから、法第50条にいう登録商標の使用をしていないことが明白である。
(オ)なお、被請求人は、創業以来、「はせ甚」の商標により、牛肉及び牛肉製品の製造販売並びに飲食物の提供を行っており、老舗として業界では広く知られるに至っていると主張している。
しかしながら、請求人提出の甲第3号証及び甲第4号証に示すとおり、平成6年12月8日付けで他社に営業譲渡されている。
(3)以上のとおり、被請求人提出の乙各号証によれば、通常使用権者とされるケイアンドアイ社の本件商標の使用は、本件審判請求の登録後であるとともに、本件商標に類似する商標の使用であること明白である。
したがって、通常使用権者とされるケイアンドアイ社が被請求人から本件商標について使用許諾を与えられている者であるとしても、本件商標について継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが指定商品について登録商標の使用をしていないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。
(1)本件商標に係る通常使用権者が本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、指定役務に含まれる「牛肉料理等の提供」について本件商標と社会通念上同一の商標を使用している。
(ア)被請求人は、文久2年(1862年)に、日本橋で創業以来、「はせ甚」の商標により牛肉及び牛肉製品の製造販売並びに牛肉料理の提供を行っており、「はせ甚」の商標は老舗としての被請求人が製造販売する牛肉製品等に係る商標として業界では広く知られるに至っている。
被請求人は、平成13年8月1日に、ケイアンドアイ社との間で「マネジメントプロデュースに関する覚書」を取り交わしている(乙第1号証)。
その内容は、被請求人がケイアンドアイ社に対し、マネージメントプロデュース及び必要に応じ人員の派遣を行い、また、ケイアンドアイ社は、被請求人の指導により生肉の味噌漬けと佃煮に関しての製造及び販売を行い、その際、被請求人は、ケイアンドアイ社に対し、商標権者の所有する商標及び商品名の使用を許諾するというものである(乙第1号証)。
そして、上記覚書は、総合的なマネジメントプロデュースに関するものであって、「味噌漬けと佃煮に関しての製造及び販売」には、味噌漬け等自体の製造及び販売のほか、その味噌漬け等を店舗内で調理した牛肉料理の提供をも含むものであると解釈される。
したがって、ケイアンドアイ社は、本件商標に係る商標権について通常使用権を有する。
ケイアンドアイ社は、平成13年11月28日に、両店舗[スパゲティレストラン マザーズ木津川台店(所在地:京都府相楽郡木津町木津川台6-1-1)及び同原山台店(所在地:大阪府堺市原山台5-9-5 クロスモール内)]を運営しているミキシング社及びエムジーサービス社が得ている契約者としての地位を平成13年12月1日付で承継する旨の覚書を締結するとともに、同日付で、ミキシング社との間で、上記店舗の運営に関する一切についてケイアンドアイ社に委任する旨の顧問契約を締結している(乙第2号証及び乙第3号証)。
したがって、上記店舗は、平成13年12月1日以降、ケイアンドアイ社が実質的に運営管理している。
なお、両契約は、平成14年7月27日付で本合意に移行している(乙第4号証)。
(イ)そして、ケイアンドアイ社は、上記店舗内で牛肉を京都の最上白味噌に漬け込んで「牛肉味噌漬」を製造し、調理のうえ「味増漬ステーキ」として150g、1800円で提供している(乙第5号証及び乙第6号証)。
なお、「牛肉味噌漬け」は好評であるため、持帰用に杉折に詰めて販売している(乙第6号証)。
(a)乙第5号証は、スパゲティレストラン「マザーズ木津川台店」の外観を撮影した写真である。
(b)乙第7号証は、座席ごとにテーブルの上に敷いて用いる紙製テーブルマットであるが、「はせ甚」の文字を横書きしてなる商標(使用商標1)が表されている。この紙製テーブルマットは、10,000部を印刷会社に発注し、2002年3月13日に納品され、その後、継続して使用されている(乙第8号証)。
紙製テーブルマットへの使用商標1の表示及びその紙製テーブルマットの使用は、本件審判請求登録前3年以内において「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為」及び「これを用いて役務を提供する行為」に該当する。
(c)乙第9号証は、ステーキフェアの折込ちらしであるが、これにも「はせ甚」の文字を横書きしてなる商標(使用商標2)が表示されている。
この折込ちらしは、2002年2月4日に20,500部、同年3月6日に25,000部がそれぞれ納品され、その直後に配布されている(乙第10号証及び乙第11号証)。いずれも本件審判請求登録前3年以内に「役務に関する広告に標章を付して頒布する行為」に該当する。
なお、乙第10号証の請求書においては、折込ちらしの大きさが「B4」となっているが、これは「B5」2枚分をまとめて印刷したためである。
したがって、実際には、20,500部の2倍の41,000部が2月4日の直後に配布されている。
(d)乙第6号証のメニューの「味噌漬ステーキ」の項には、「日本橋・はせ甚」の商標(使用商標3)が表示されている。
(e)乙第7号証の紙製テーブルマット及び乙第9号証の折込ちらしにおいては、「Produced by」に続いて、「はせ甚」が表示されているが、この「はせ甚」は、本件商標と同一の構成からなるものであって、単にプロデューサーを表示するものではなく、自他役務の識別標識として商標的使用態様で表示されているものである。
そして、「はせ甚」は、欧文字を書してなる本件商標と構成を異にしているが、「ハセジン」の称呼が生ずる点で共通し、かつ、老舗としての被請求人を想起せしめる点で観念も共通している。
したがって、使用商標1及び使用商標2は、本件商標と同一の称呼及び観念が生ずる社会通念上同一の商標である。
他方、使用商標3においては、「日本橋」の文字は、創業地を表すものであるので、「はせ甚」の文字部分が自他役務の識別標識としての機能を発揮している。
そして、該「はせ甚」からは、本件商標と同一の称呼及び観念を生ずる。
したがって、使用商標3も本件商標と社会通念上同一の商標である。
また、「牛肉料理等の提供」は、本件商標の指定役務に含まれるものである。
(2)以上のとおり、被請求人の通常使用権者とされるケイアンドアイ社が本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件指定役務に含まれる「牛肉料理等の提供」について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していることは明らかである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものではない。

4 当審の判断
被請求人提出の乙第1号証ないし乙第4号証(平成13年8月1日付けのマネジメントプロデュースに関する覚書、同年11月28日付けの覚書、同日付けの顧問契約書及び同14年7月27日付けの合意書)及び乙第6号証(スパゲティレストラン「マザーズ」のメニューの裏面)における「味噌漬ステーキ」についての記載、乙第7号証(紙製テーブルマット)及び乙第9号証(マザーズ木津川台店におけるステーキフェア開催中との副題入りの折込ちらし)についての記載並びに答弁書における被請求人の主張を総合勘案すると、本件審判請求の登録日(平成14年7月3日)前3年以内に我が国において、ケイアンドアイ社は、本件商標の通常使用権者として、本件商標(HASEJIN)と社会通念上同一(「ハセジン」の称呼及び老舗「はせ甚」の観念が共通)と認められる「はせ甚」の文字からなる商標を取消請求に係る指定役務に含まれる役務「牛肉料理の提供」について、使用したものと認められる。
なお、請求人は、被請求人が営業譲渡(甲第3号証:覚書)に伴い、本件商標を使用する権利も譲渡したものと認識すべきであるから、被請求人は、本件商標を使用する権利を有しない旨述べているが、甲第3号証をみるに、被請求人が本件商標及び商標「はせ甚」を他人に譲渡した事実は窺えず、また、商標権は営業を伴わずに移転できることよりすれば、営業の譲渡とともに必ず商標権が移転されたものとみなければならない合理的理由は見出せない。
したがって、本件商標の登録は、取消請求に係る指定役務について、商標法第50条の規定によって取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-02-26 
結審通知日 2003-03-03 
審決日 2003-03-17 
出願番号 商願平8-114940 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (042)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 上村 勉
特許庁審判官 鈴木 新五
山田 正樹
登録日 1998-07-10 
登録番号 商標登録第4166370号(T4166370) 
商標の称呼 ハセジン 
代理人 川村 恭子 
代理人 大津 洋夫 
代理人 佐々木 功 

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