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審決分類 審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 009
審判 一部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 009
管理番号 1041962 
審判番号 審判1999-35636 
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-11-02 
確定日 2001-06-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第3367151号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 商標登録第3367151号の指定商品中「電気通信機械器具、電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ・CD-ROMその他の電子応用機械器具及びその部品、業務用ビデオゲーム機・業務用ビデオゲームのプログラムを記憶させた電子回路その他の遊園地用機械器具、映写フィルム、スライドフィルム、スライドフィルム用マウント、録画済みビデオディスク及びビデオテープ、家庭用テレビゲームのプログラムを記憶させた磁気ディスク、同CD-ROMその他の家庭用テレビゲームおもちゃ」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3367151商標(以下、「本件商標」という。)は、平成6年12月21日登録出願、後掲(1)に示すとおり「TECMO WORLD SOCCER」の欧文字及び「テクモワールドサッカー」片仮名文字を上下二段に表してなり、第9類「測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,録音済み磁気カードその他のレコード,メトロノーム,電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ・CD―ROMその他の電子応用機械器具及びその部品,業務用ビデオゲーム機・業務用ビデオゲームのプログラムを記憶させた電子回路その他の遊園地用機械器具,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気式ワックス磨き機,電気掃除機,電気ブザー,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,家庭用テレビゲームのプログラムを記憶させた磁気ディスク,同CD―ROMその他の家庭用テレビゲームおもちゃ」を指定商品として、同9年12月19日に設定の登録がされたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録の無効(一部無効)を述べる理由に引用する登録第3334632号商標(以下、「引用A商標」という。)は、平成6年8月24日登録出願、後掲(2)に示す構成よりなり、第9類「サッカーゲームを内容とする遊園地用機械器具,サッカーゲームを内容とする家庭用テレビゲームおもちゃ,サッカーゲームを内容とする録画済ビデオディスク及びビデオテープ,サッカーゲームを内容とする映写フィルム,サッカーゲームを内容とするスライドフィルム,サッカーゲームを内容とする電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・CD-ROM・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器 」を指定商品として、同9年7月25日に設定の登録がされたものである。
同じく、引用登録第3259658号商標(以下、「引用B商標」という。)は、平成6年8月24日登録出願、後掲(2)に示す構成よりなり、第28類「遊技用器具、ビリヤード用具、おもちゃ、人形」を指定商品として、同9年2月24日に設定の登録がされたものである。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至甲第24号証(枝番とも)を提出した。
(1)請求の理由(要旨)
本件商標は、引用A商標及び引用B商標と商標において類似し、かつ、その指定商品も引用各商標に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。よって、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきものである。
(2)利害関係
本件商標は、元来引用A商標及び引用B商標(以下、「引用各商標」)という。)に類似する商標であり、その指定商品も引用各商標の指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるにも拘らず登録されたものである。
一方、請求人に係る商標登録出願である商願平1O-52682商標「ワールドサッカーGB」「WORLD SOCCER GB」(甲第4号証の2)(以下、「出願商標」という。)は、過誤登録された本件商標の存在を理由に拒絶理由通知書(甲第4号証の1)が発せられたものであるから、請求人は本件商標の登録無効審判を請求するについて重大な利害関係を有する。
(3)本件商標と引用各商標との類否判断
(ア)被請求人(テクモ株式会社)は、「会社四季報」(甲第5号証)に掲載の通り、資本金3,450百万円とし、業務用ゲーム機器、家庭用テレビゲームソフトを業務とする上場企業であり、また、「よくわかる/ゲーム業界」(甲第6号証)に掲載の通り、雨後の竹の子のように乱立するゲーム業界にあっても、主要なゲーム会社ならびに業界団体の構成員として認識されている会社である。
(イ)前項記載の事実に立脚して、本件商標を考察するに、本件商標は欧文字「TECMO WORLD SOCCER」と片仮名文字「テクモワールドサッカー」を上下二段に左横書きしてなるところ、語頭部の「TECMO」「テクモ」の文字部分は、被請求人(テクモ株式会社)の商号の主要部より採択されたものと認識されるものであると同時に、これら商号の主要部は被請求人会社を代表する営業標(基本商標)として全商品に使用される性質の商品出所標識である。
これに対して、「ワールドサッカー」の文字部分は「世界の各国サッカー」を意味するものであり、「現代用語の基礎知識」(甲第24号証)に記載の通り、「四年に一度、オリンピックの中間年に行われる各国代表チームによるサッカー最高レベル大会」を意味する「ワールドカップ」を意味するものではない。
してみると、本件商標構成の「WORLD SOCCER」「ワールドサッカー」の文字部分は指定商品の商品固有の商標(商品商標)として認識されるものであるから、11音構成といった冗長に過ぎる音構成と相俟って、商品固有の商標を捉えて「ワールドサッカー」の称呼・観念によって取引に資される場合も決して少なくないものといわねばならない。
したがって、本件商標よりは、「テクモワールドサッカー」の称呼・観念の他に、単に「ワールドサッカー」の称呼・観念をも生ずるものとするのが商標類否についての経験則として妥当なものといわねばならない。
(ウ)商号の主要部(営業標)と商品固有の商標(商品商標)の複合語からなる商標が分離考察されて、商品固有の商標の称呼をも生ずるものと説示する審決事案は下記の通りである(甲第7号証乃至甲第14号証)。これらの見解は例外を除いて今や通説ともいうべきものであって、これら審決事案に徴しても本件商標より「ワールドサッカー」の称呼・観念をも生ずるものとするのが相当である。
(エ)一方、引用各商標は、いずれも、漢字「実況」の文字を下段「ワールドサッカー」の接頭語「ワ」の上に小さく表わし、下段「ワールドサッカー」の片仮名文字を圧倒的顕著に表わした構成からなるものであって、これら漢字「実況」と片仮名文字「ワールドサッカー」の文字は面積にして約1対8の比率からなるものであり、他方、テレビゲームは、サッカーの実況をそっくり模倣しただけではテレビゲームとはなり得ないことは多言を要しないところであって、「実況」とは実際のサッカー試合のようにテレビゲームの映像がリアルである程度の意味合を認識せしめるにすぎないものであるから、「実況」の漢字と「ワールドサッカー」の片仮名とは観念のうえで、必ずしも一体不可分のものとしてみなければならない格別の理由も存在しない。
このようにみてくると、引用各商標に接する取引者・需要者は「ジッキョウワールドサッカー」といった12音構成からなる読み方は冗長にすぎるものであると共に、漢字「実況」と片仮名「ワールドサッカー」といった文字の種類を上下段において異にすることもさることながら、約1対8の比率からなる漢字と片仮名において、余りにも「ワールドサッカー」の表示が圧倒的顕著であり、漢字「実況」は附記的表示とみられても止むを得ない構成にあるから、引用各商標に接する取引者・需要者は好むと好まざるとに拘らず、簡潔で直線的に表され最も親しみやすい「ワールドサッカー」の片仮名文字を捉えて取引に当たる場合の方がむしろ多とするものとするのが相当である。
してみれば、引用各商標よりは「ジッキョウワールドサッカー」の称呼を生ずることは否定するものではないにしても、単に「ワールドサッカー」の称呼・観念をも生ずるものといわねばならない。
(オ)ひるがえって、引用各商標の構成の如く、文字の種類を異にする複合語からなる商標、あるいは冗長に過ぎる商標はたまた修飾語との複合語からなる商標が分離考察されて略称されるものであることは、請求人提出の過去の審決例(甲第15号証乃至甲第23号証)によるもこれを説示するところであるから、叙上の請求人の論旨には決して無理はない。
(カ)以上の通りであるから、「ワールドサッカー」の称呼・観念をも生ずる本件商標は、「ワールドサッカー」の称呼・観念をも生ずる引用各商標に称呼・観念において同一又は類似の商標であることに疑いを容れる余地はなく、また、本件商標の指定商品は、引用各商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
(1)請求人の主張および証拠の認否
(イ)請求の理由(要旨)(3(1))についてはその結論について争う。(ロ)本件商標の構成と経緯については認める。
(ハ)引用A商標の構成と経緯については認める。但し、商標の構成について「アウトライン体」については不知であるが、図形と組み合わされた商標見本通りの構成であれば認める。
(ニ)引用B商標の構成と経緯については認める。但し、商標の構成について「アウトライン体」については不知であるが、図形と組み合わされた商標見本通りの構成であれば認める。
(ホ)請求人の述べる利害関係(3(2))については認める。
(へ)本件商標と引用商標等の類否判断(3(3))について
出願商標(商願平1O-52682号)に対する拒絶理由通知書において、本件商標が出願商標に類似すると認定したように、本件商標から「テクモワールドサッカ一」の称呼・観念の他に、単に「ワールドサッカー」の称呼・観念をも生ずる可能性があることは認める。
(ト)引用各商標の要旨認定及び結論(3(3)エ、オ、カ)については争う。
(チ)(証拠の認否)甲第1号証の1から甲第24号証について認める。
2 請求人の主張に対する反論
(1)引用A商標及び引用B商標の構成
引用A商標及び引用B商標は、同一態様であって、商標見本の通りの構成からなっているが、単なる文字商標ではなく、図形上にロゴ化された文字を重ね合わせて表記した構成からなっている。
即ち、毛筆で左から右に肉太な「一」を書したように右方向に上がりながら、除々にかすれていく図形を商標のべース乃至背景としている。
次に、この図形上に漢字の「実況」とカタカナ文字の「ワールドサッカー」とを重ねている。
この「実況」と「ワールドサッカー」とは、それらの文字を基にしてデフォルメされたもので、文字の外周に枠が記載されると共に、文字の一部が右向きに擦れて延び、かすれていくようにロゴ化されており、小さく表示された「実況」の下部が大きく表示された「ワールドサッカー」の語頭の「ワ」の上部に重なって配置される特有の構成からなっている。
(2)引用A商標及び引用B商標の要旨認定 ・
引用A商標及び引用B商標は上記構成からなっているので、需要者間において、ベースとなる図形とロゴ化された文字とが一体に結合された構成としてのみ認識されるものである。
前述のように引用A商標及び引用B商標は、構成上、漢字とカタカナの差、大小の差、位置の上下の差などの相違が見られるが、ベースとなる図形に組み合わされており、全体として外観上において「実況」と「ワールドサッカー」とが同一のモチーフでまとまりよく一体不可分に結合された構成からなっている。
従って、引用A商標及び引用B商標を看た需要者(看者)は、外観上「実況」と「ワールドサッカー」とが一体不可分に結合された商標としてのみ認識するのが自然である。
また、「実況」には、「実際に行われている状況」という意味があり、スポーツの試合(レース)や出来事などを対象にして日常的に広く使用されている語である。
このように、「実況」とスポーツの試合の1種である「ワールドサッカー」とは意味的関連を有するところから、「実況ワールドサッカー」からは「世界各国のサッカー試合の実況(実際に行われている状況)」という一連の意味合いを需要者に感得させるものであり、「実況」と「ワールドサッカー」とをことさら分離して観察する理由はない。
そうであるなら、引用A商標及び引用B商標からは、「ジッキョウワールドサッカー」という一連の称呼のみが生じるものである。
(3)引用A商標及び引用B商標の類似商標
a.引用A商標は、その公告公報(甲第2号証の1)に「連合商標」として「商願平6‐78506号」が表示されている。この連合商標は、登録第3326550号として登録されており、乙第1号証(商公平9-674号)に示すように、その構成は同書、同大、同間隔のゴシック体で横向きに「実況ワールドサッカー」と一連に表記された文字商標からなっている。
同様に、引用B商標は、その公告公報(甲第3号証の1)に,「連合商標」として「商願平6-78507」が表示されている。この連合商標は、登録第3249189号として登録されており、乙第2号証(商公平8‐59958号)に示すように、その構成は同書、同大、同間隔のゴシック文字で横向きに「実況ワールドサッカー」と一連に表記された文字商標からなっている。
従って、引用A商標及び引用B商標は、その審査時において、換言すると連合商標制度が存続していたときに、「実況」と「ワールドサッカー」とに分離されるものではなく、一連の文字商標である「実況ワールドサッカー」と類似するものとしてその出願人、即ち、本件審判の請求人自身が審査で「連合関係」を主張(自白)して商標登録出願されたものであり、この「連合関係」が認められて商標登録となったものである。
このように、引用A商標及び引用B商標の前記審査経過からも明らかなように、「実況」と「ワールドサッカー」とに分離して観察されるものではなく、一連の「実況ワールドサッカー」としてのみ認識されるものである、という被請求人の前記主張が裏付けられるのである。
b.請求人は、甲第15号証から甲第23号証を基に、文字の種類を異にする複合語からなる商標、あるいは冗長に過ぎる商標はたまた修飾語との複合語からなる商標が分離考察されて略称されるものであると主張している。
しかし、引用A商標及び引用B商標は、文字と図形の組み合わせであって、また、漢字とカタカナ文字とは共通のモチーフの下でデフォルメされており、特に文字相互が重なっていることから、前記証拠で示された基準にあてはまるものではない。
(4)本件商標と引用各商標との類否判断
以上のように、引用A商標及び引用B商標は、本指定商品の取引界において「実況」と「ワールドサッカー」とが決して分離されることがないので、「ジッキヨウワールドサッカー」の称呼のみが生じるものである。
これに対して、本件商標は、「テクモワールドサッカ一」の称呼を生ずるのが一般であるが、単に「ワールドサッカー」の称呼を生ずる場合もある。
そこで、前者の場合は、「ワールドサッカー」部分で共通するものの「テクモ」と「ジッキヨウ」との間で4音の明確な差異があり、需要者が誤認混同を生ずる虜れがない。後者の場合は、「ジッキョウ」の有無で4音の明確な差異があり、この場合も同様に需要者が誤認混同を生ずる虞れがない。また、観念、外観においても明瞭な差異があるので、需要者が両者を誤認・混同する虞れはない。
従って、本件商標と引用各商標とは、その称呼、観念、外観のいずれにおいても需要者間で誤認混同を生ずる虞れがないものであって、両商標は非類似である。
(5)以上述べた通り、本件商標は、引用各商標とは非類似であって、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。よって、本件審判請求は棄却されるべきである。

5 当審の判断
本件審判における当事者双方の主張の論点は、本件無効請求に係る指定商品の分野において、本件商標に接する取引者、需要者がその商品の出所について混同を来す程度に引用各商標と紛らわしいものかどうかの点にあり、然りとすれば、その登録は請求人主張の法条の規定(商標法第4条第1項第11号)に違反してされたものとして無効とせざるを得ない。そこで、本件商標と引用各商標との類否について、以下、検討する。
(1)本件商標は、その構成前記したとおり「TECMO WORLD SOCCER」、「テクモワールドサッカー」の各文字よりなるところ、これを全体として称呼した場合はやや冗長に亘る音構成といえるばかりでなく、構成中、前半の「TECMO」「テクモ」の各文字部分は、被請求人会社(「テクモ株式会社」)の会社名称の略称又はその基幹部分に相応するのに対し、同後半の「WORLD SOCCER」「ワールドサッカー」の各文字部分は「世界のサッカー(競技)」程度の意味合いを容易に感得し得るものであるから、意味上においてこれら両語間に主従・軽重の差はなく、また、全体として特定の意味合いをもって一般に親しまれている熟語的文字ともいい得ないものである。
そうすると、本願商標は、「TECMO」「テクモ」の各文字と「WORLD SOCCER」「ワールドサッカー」の各文字とをそれぞれ結合してなるものと容易に認識し理解されるものといえる。
ところで、「TECMO」、「テクモ」の各文字(標章)は、請求人提出の東洋経済新報社1998年10月発行「会社四季報」(甲第5号証)及びテレビゲーム関連出版物である日本実業出版社1998年3月発行「よくわかるゲーム業界」(著者:上田純美礼)(甲第6号証)によれば、業務用ゲーム機器、家庭用テレビゲームソフトを主業務としわが国ゲーム機業界において中堅の一角を占める株式上場企業である被請求人会社がその事業を表彰し或いはその取り扱いに係るゲーム機器等を表示するための商標として、すなわち、被請求人会社に係る代表的出所標識として、取引者、需要者間において広く認識せられた標章とみて差し支えなく、また、この点に関し、被請求人会社のわが国ゲーム機業界における知名度を述べる請求人の主張に対し、被請求人は敢えて反論するところはない。
しかして、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、構成中の「TECMO」「テクモ」の各文字は、当該業務主体を表彰する代表的出所表示部分と捉え、以て、全体として「テクモの取り扱い(又は販売)に係るワールドサッカー(WORLD SOCCER)印(じるし)」の如く、「ワールドサッカー(WORLD SOCCER)」の文字をその取り扱いに係る個別商標(個別商品毎に使用するいわゆるペットネーム)と認識し、把握するとみるのが相当である。そして、取引場裡にあって、この種商品の需要者が数ある同種商品中より特定の商品を選択購入するに際して、その代表的出所表示部分を除いた個別商標をもって簡便に取引に資することは屡々見受けられる取引事情よりすれば、単に「ワールドサッカー」(世界のサッカー)の称呼・観念をもって取引に当たる場合も決して少なくないといわなければならない。
したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して「テクモワールドサッカー」の一連の称呼を生ずるほか、「WORLD SOCCER」「ワールドサッカー」の各文字部分に相応して、単に「ワールドサッカー」(世界のサッカー)の称呼・観念も生ずるものといわなければならない。そして、本件商標が「ワールドサッカー」と称呼される場合のある点については、被請求人もこれを争っていない。
(2)引用A商標及び引用B商標(以下、「引用各商標」という。)は、その構成ともに後掲(2)に示すとおり、左方からやや右上がりに刷毛で掃いた如き薄墨色地模様を背景として、左上部に籠字風の文字態様で陰影を施した「実況」の文字(漢字)を小さく、同文字下部に籠字風の文字態様でかつ右方に向かうにつれてその字形の一部を掠れさせる如く「ワールドサッカー」の片仮名文字を大きく、それぞれ表してなるものである。
しかして、これら両文字はその大小及び文字態様(書体を含む)の違いよりして、視覚上自ずと分離して看取し得るものであり、かつ、これより生ずるとみられる「ジッキョウワールドサッカー」の称呼は全12音とやや冗長に亘る音構成といえるものである。
そして、構成中の「実況」の文字部分は、家庭用、業務用を問わずこの種サッカー競技を模したテレビゲーム機又は同ゲームソフトないしは同機器関連の通信用機器及び電子機器等の分野においては、需要者に対し当該ゲームが恰も実際に中継放送される放映画面の如く臨場感を備えた映像又は同映像を可能とさせるべく企画・設計してなる各種映像関連機器の品質を一種誇称的に表示するもの、すなわち、それ自体が単独で商品識別の機能を発揮し得るものというよりは、むしろ、専ら前記「ワールドサッカー」の語に従属し又はそれを修飾するものとして認識し把握されるとみるのが相当である。
かかる場合、引用各商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、前記事情よりして、構成中の顕著に表された「ワールドサッカー」の文字部分に着目し、同部分を商品識別の機能を果たし得る部分と捉え、これより生ずる「ワールドサッカー」(世界のサッカー)の称呼・観念をもって簡便に取引に資する場合も決して少なくないとみるのが取引の経験則に照らし相当である。
したがって、引用各商標は、構成文字全体に相応して生ずる「ジッキョウワールドサッカー」の称呼のほか、「ワールドサッカー」の文字部分に相応する「ワールドサッカー」(世界のサッカー)の称呼・観念も生ずるものといわなければならない。
被請求人は、引用各商標はその外観において、全体が不可分一体に組み合わされた構成のものであり、かつ、意味上もサッカー競技の実況という一連の意味合いを看取させる故に「ジッキョウワールドサッカー」の称呼のみを生ずるものである旨述べているが、引用各商標が「ワールドサッカー」(世界のサッカー)の称呼・観念をもって取引に資される場合のあること前記認定を相当とするから、その主張は採用の限りでない。
また、被請求人は、引用各商標が平成8年法律第68号による改正前の商標法第7条に基づき、件外各登録商標(乙第1号証及び乙第2号証)とそれぞれ連合商標として出願され登録されたものとする点を根拠に引用各商標の一連一体性を述べているが、旧法適用時にあっても、連合要件と他人の商標との類似要件とはもともと別個のものであって、法目的を全く異にするものであるから、それら法律要件を同列視し法目的の違いを看過して述べる被請求人の主張は適切でなく、採用の限りでない。
(3)以上、(1)及び(2)に認定したとおり、本件商標と引用各商標は、「ワールドサッカー」(世界のサッカー)の称呼・観念を共通にするものであるから、両商標はこの点において既に紛らわしく、このほか、その外観の差異を考慮するとしても、なお、両者はその出所について混同を生ずるおそれのある類似のものと判断するのが相当である。そして、本件商標は、その指定商品中の「電気通信機械器具、電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ・CD-ROMその他の電子応用機械器具及びその部品、業務用ビデオゲーム機・業務用ビデオゲームのプログラムを記憶させた電子回路その他の遊園地用機械器具、映写フィルム、スライドフィルム、スライドフィルム用マウント、録画済みビデオディスク及びビデオテープ、家庭用テレビゲームのプログラムを記憶させた磁気ディスク、同CD-ROMその他の家庭用テレビゲームおもちゃ」において、引用各商標に係る指定商品と同一又は類似の商品を含むものである。
してみれば、本件商標の登録は、前記の商品について商標法第4条第1項第11号に違反してされたものといわざるを得ないから、結論掲記の商品についての登録は、同法第46条第1項により、これを無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (1)本件商標


(2)引用A商標,引用B商標




審理終結日 2000-09-04 
結審通知日 2000-09-19 
審決日 2000-10-11 
出願番号 商願平6-129868 
審決分類 T 1 12・ 263- Z (009)
T 1 12・ 262- Z (009)
最終処分 成立  
前審関与審査官 深沢 美沙子高野 義三 
特許庁審判長 原 隆
特許庁審判官 宮川 久成
野口 美代子
登録日 1997-12-19 
登録番号 商標登録第3367151号(T3367151) 
商標の称呼 テクモワールドサッカー、テクモ、ワールドサッカー 
代理人 宮内 清 
代理人 西 良久 

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