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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W0914
管理番号 1421605 
総通号数 40 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2025-04-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2024-08-08 
確定日 2025-03-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第6810516号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6810516号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6810516号商標(以下「本件商標」という。)は、「FINE TUNING」の欧文字を標準文字で表してなり、「携帯情報端末」を含む第9類及び「時計」を含む第14類のほか、第3類、第5類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、令和6年3月27日に登録出願、同年5月21日に登録査定、同年6月3日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録第6233353号商標(以下「引用商標」という。)は、「ファインチューニングサービス」の片仮名を標準文字で表してなり、平成31年1月31日に登録出願、「時計」を含む第14類のほか、第35類、第40類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定商品及び指定役務として、令和2年3月6日に設定登録され、現に有効に存続している。


3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定商品中、第9類「携帯情報端末」及び第14類「時計」(以下「申立てに係る商品」という。)について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 引用商標について
引用商標は、「ファインチューニングサービス」の片仮名を標準文字により表したものであり、「時計」を含む第14類の指定商品、第35類、第40類及び第42類の指定役務について登録されているものである。「サービス」の語は、「他人のために行う奉仕的な活動」の意味において広く一般的に使用されており、商取引においては「役務」そのものを表す語であるから、商標の構成中において、「〇〇サービス」のように「サービス」と他の語が結合されている場合、単に役務の提供を指称するにすぎない「サービス」の語は、自他商品役務の識別機能を備えておらず、「〇〇」に相当する部分が出所識別機能を果たすものである。このことは、過去の審決においても示されている。
したがって、引用商標「ファインチューニングサービス」の文字について、「サービス」の語には自他商品役務の識別機能がないものであって、「ファインチューニング」に係る役務(サービス)であることを単に指称しているにすぎないから、引用商標の構成中、前半の「ファインチューニング」の文字部分が独立して自他役務を識別する標識としての機能を果たしているものであり、引用商標の要部であるといえる。
以上より、引用商標からは「ファインチューニングサービス」という一連の称呼の他に、「ファインチューニング」の称呼も生ずるというのが相当である。
イ 本件商標と引用商標の類否
(ア)称呼について
本件商標は「FINE TUNING」の欧文字を標準文字によって表してなるところ、「FINE」及び「TUNING」の両語は我が国の需要者によく親しまれている英単語であり、それぞれ「ファイン」、「チューニング」と称呼されるものである。両語のうちどちらかが、出所識別機能を果たし得ないような事情はなく、本件商標からは「ファインチューニング」の称呼が生ずる。そうすると、本件商標と引用商標は、「ファインチューニング」の同一の称呼を生ずるものである。
(イ)外観について
本件商標は、「FINE TUNING」の欧文字から構成されており、片仮名によって表された引用商標とは文字種が異なるが、引用商標の要部である「ファインチューニング」の片仮名と、本件商標の「FINE TUNING」の欧文字は、文字種を相互に変換して表したものにすぎないものである。一般に、商標の構成文字を同一の称呼が生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記することは、取引上広く一般的に行われているものである。また、「FINE」と「TUNING」の両語が我が国の需要者にもよく知られた平易な英単語でもあるため、取引者及び需要者は、これらが単に文字を置き換えたものと容易に認識し得るものであり、これらの文字種の相違が、出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとはいえない。単に文字種を置き換えた両商標が外観において顕著な差異を有していないことは、審決等においても認められている。
(ウ)観念について
「ファインチューニング」(fine tuning)は、英語では「微調整」という意味を有しており、機械学習の分野において、「既存の学習済みのモデルに対して、追加のデータを与えて再学習させるという手法」として広く一般的に使用されている(甲6)。「tune」の語には、「<楽器を>調律する、<楽器の>調子を合わせる」、「<機械などを>調整する」、「<エンジンを>チューンアップする」、「<波長・周波数に>同調させる」等の意味があり(甲7)、楽器等の調律や、エンジン、モーター、受信電波等の周波数を調整について用いられるものであって、「時計」等の精密機械の「調整」には馴染まない語であるから、一般的な「時計」等の需要者が「ファインチューニング」を「微調整」の意味で理解することはないと考えられる。
一方、「ファイン」と「チューニング」の英単語は我が国の需要者にも馴染みのあるものであって、その意味が理解可能であるから、「よく合わせる」といったような抽象的な意味合いが漠然と想起されるにすぎない。よって、引用商標は、申立人の時計のカスタマイズサービスについて、商品の品質やサービス内容を暗示させる商標として機能しているといえる。以上から、本件商標と、引用商標の要部はともに、機械学習の分野において使用されている「ファインチューニング」の意味や、「(音の調子などを)よく合わせる」というような漠然とした意味合いを連想させるものであり、同一又は類似の観念が生ずるものである。
(エ)小括
両商標は、称呼及び観念において同一又は類似する。すなわち、両商標の要部は、「ファインチューニング」の称呼及び観念を共通にし、文字種を異にする社会通念上同一の標章といえる。両商標の文字種の差異は、称呼及び観念における差異を凌ぐものではなく、外観において顕著な差異は有していないといえ、総じて両商標は、類似するものである。
また、両商標の第14類の指定商品「時計」は同一のものであって、本件商標の第9類の指定商品「携帯情報端末」は、「腕時計型携帯情報端末」を含むものであり、「腕時計型携帯情報端末」は、第14類「腕時計」と備考類似の関係であることが特許庁が発行する類似商品・役務審査基準に記載されており、申立てに係る商品と引用商標の指定商品は同一又は類似のものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性
申立人による引用商標の使用実績を示す(甲5〜甲9)。腕時計の各種パーツ(文字盤、ケース、リング、バンド、時針、分針、秒針、りゅうずの貴石、裏蓋の刻印文字)を需要者の要望に合わせて自由に組み合わせることのできるサービスを「ファインチューニングサービス」として提供しており、「4万通り」に及ぶ組み合わせが実現可能であることが確認できる。また、対象となる製品は、申立人の代表的な腕時計のモデルである「ATTESA(アテッサ)」であり、当該モデルは、2022年国内中価格帯市場において、最も売上のある男性用チタニウム製腕時計である(甲8)。当該人気の腕時計モデルを自らの好みに合わせて自由にカスタマイズすることのできる「ファインチューニングサービス」は、既製品として店頭に並ぶ腕時計にはない希少価値を持つ特別な腕時計を作ることのできる申立人の商品・サービスとして、「ファインチューニングサービス」の頭文字を取って表した略語「FTS」とともに、需要者の間で相当程度周知なものとなっているということができる(甲9)。引用商標の構成中の「サービス」の語が自他商品役務識別機能を有していないことはすでに述べたとおりであるが、引用商標の要部「ファインチューニング」と社会通念上同一の本件商標「FINE TUNING」が、申立てに係る商品に使用された場合、需要者は申立人の業務に係る商品であるか、又は経済的・組織的に関係がある者や公式の許諾を受けた者による商品であるかのような誤認混同を生ずるおそれがあるというべきである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は、上記1のとおり、「FINE TUNING」の欧文字を標準文字で表してなるところ、これは「FINE」及び「TUNING」の欧文字を結合したものと容易に理解されるものであり、また、これらの各文字は、我が国においてそれぞれ「良い」及び「調整」等の意味を有する英語として親しまれているといえる。
そうすると、本件商標よりは、その構成文字に相応して、「ファインチューニング」の称呼を生じ、また、「良い調整」程の観念を生じるといえる。
イ 引用商標について
引用商標は、上記2のとおり、「ファインチューニングサービス」の片仮名を標準文字で表してなり、その構成は、隙間なく横一列に同書、同大で表されているものである。
そして、その構成中の「サービス」の語は、「他人のために行う奉仕的な活動」の意味を有し、商取引においては「役務」を表す場合があるとしても、引用商標のまとまりよく表された構成及び申立てに係る商品(「携帯情報端末」及び「時計」)との関係において、「サービス」の語を捨象して取引される事情を見いだすことはできない。
そうすると、引用商標はその構成文字に相応して、「ファインチューニングサービス」の称呼を生じ、その称呼は、無理なく一連に称呼し得るものであり、その構成文字である「ファイン」、「チューニング」及び「サービス」の各語は、我が国で親しまれている語であることから、「良い調整の役務」程の観念を生じるといえる。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標は、上記ア及びイのとおり、欧文字又は片仮名で表されており、文字種が相違するのに加え、「サービス」の文字の有無が両者の外観に与える影響は大きいというべきであり、外観上相紛れるおそれがあるとはいえない。
また、本件商標から生じる「ファインチューニング」の称呼と引用商標から生じる「ファインチューニングサービス」の称呼とは、語尾における「サービス」の音に差異を有し、該差異音が両称呼に及ぼす影響は大きく、それぞれを一連に称呼するときは、語感、語調が相違し、称呼上、十分に聴別し得るものというべきである。
さらに、本件商標から生じる「良い調整」程の観念と引用商標から生じる「良い調整の役務」程の観念とは、観念において区別できるものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても区別できることから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 小括
したがって、本件商標の申立てに係る商品と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知性
申立人は、引用商標の使用実績(甲5〜甲9)を示し、申立人の商品・サービスとして「ファインチューニングサービス」の頭文字を取って表した略語「FTS」とともに、需要者の間で相当程度周知である旨主張している。
しかしながら、申立人の提出に係る証拠によれば、申立人は、腕時計カスタマイズサービスについて「FTS(ファイン・チューニング・サービス)」と銘打ち、2019年にスタートしたものであること、男性向け腕時計「シチズン アテッサ」の人気モデルをベースに、針、文字盤、ケース、バンド等を選び、4万通りという組み合わせがあることが紹介されているものの(甲9)、引用商標が付された商品の販売数量・売上高・市場シェア、広告の方法・範囲等の具体的な証拠がないことから、申立人の提出に係る証拠によっては、引用商標が申立人の業務に係る商品について使用する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。
イ 本件商標と引用商標とは、上記(1)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきであるから、その類似性の程度は低いものである。
ウ 小括
上記ア及びイからすると、本件商標は、本件商標権者がこれを申立てに係る商品について使用しても、我が国の需要者等をして引用商標を連想又は想起させることはなく、取引者、需要者が、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
その他、本件商標について、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、申立てに係る商品について商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。


別掲
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異議決定日 2025-02-25 
出願番号 2024032086 
審決分類 T 1 652・ 261- Y (W0914)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 豊瀬 京太郎
特許庁審判官 清川 恵子
白鳥 幹周
登録日 2024-06-03 
登録番号 6810516 
権利者 FINE TUNING株式会社
商標の称呼 ファインチューニング、チューニング 
代理人 弁理士法人大島・西村・宮永商標特許事務所 

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