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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1421600 |
総通号数 | 40 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2025-04-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2024-05-17 |
確定日 | 2025-03-05 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6787017号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6787017号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6787017号商標(以下「本件商標」という。)は、「CLARKS WALLY」の欧文字を横書きしてなり、令和5年3月27日に登録出願、第25類「履物及び運動用特殊靴,靴,ブーツ及び運動用特殊ブーツ,スリッパ,被服,帽子,履物の底及び運動用特殊靴の底,靴の中敷き,靴底,履物用甲革,かかと,靴の引き手,メリヤス下着,メリヤス靴下,ソックス,インナーソックス,履物並びにその部品及び附属品,運動用特殊靴並びにその部品及び附属品,靴並びにその部品及び附属品,ブーツ並びにその部品及び附属品,スリッパ並びにその部品及び附属品,被服並びにその部品及び附属品,帽子並びにその部品及び附属品」を指定商品として、令和6年2月21日に登録査定され、同年3月13日に設定登録されたものである。 第2 申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するとして引用する商標は、「Wally」の欧文字よりなり、申立人が販売する「カジュアルシューズ」(以下「申立人商品」という。)について、継続的に使用し、需要者の間で周知に至っていると主張するもの(以下「引用商標」という。)である。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきものであると申立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証を提出した。 なお、以下、証拠の表記にあたっては、「甲第○号証(○は数字)」を「甲○」と表記する。 1 具体的理由 (1)本件商標と引用商標の類否について 本件商標は、「CLARKS」の語と「WALLY」の語の間にスペースを空けてつないだ構成(甲23)よりなり、商標全体から生じる称呼「クラークスウォーリー」が9音のやや冗長な称呼であることを考慮すると、本件商標から「ウォーリー」の略称も生じる。 また、引用商標を用いた申立人商品(以下「引用申立人商品」という。)は2014年から10年近く日本で継続的に販売され、引用商標は申立人商品との関連において需要者の間で周知であり、本件商標がその構成中に引用商標を大文字で表した「WALLY」の文字を包含する構成であること等もあわせて考慮すれば、需要者は本件商標の「WALLY」の文字部分に注目して「ウォーリー」と略称する可能性は高い。 これに対し、引用商標は「Wally」からなり、「ウォーリー」の称呼を生じる。 引用商標は日本でよく知られた絵本からの想像で、男性の名称を想起させる語であり、本件商標の文字要素「WALLY」についても同様である。 そのことから、本件商標と引用商標とは「ウォーリー」の称呼及び男性の名称という観念において共通し、称呼及び観念において類似する商標である。 (2)引用商標が申立人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であること 申立人は、米国企業クロクス,インコーポレイテッド(米国所在)(以下「クロクス社」という。)の企業グループに属するシンガポール法人である。 クロクス社は、申立人の前身企業の一つ及びその関連会社かつ履物ブランド「HEYDUDE」(以下「HEYDUDEブランド」という。)の所有者である企業の買収を2021年12月23日に公表している(甲1)。 そのなかでHEYDUDEブランドの創設者であり最高経営責任者であるA氏は、「私たちは2008年にイタリアでHEYDUDEを設立した」と述べていることから、HEYDUDEブランドは2008年にイタリアで設立されたことは明らかであり、HEYDUDEブランドの商品群のなかでも高い知名度を誇るのがカジュアルシューズの商品名「Wally」(引用商標)である。 クロクス社の買収前より、申立人の別の前身企業(以下「FFブランド社」という。)の主導により、引用申立人商品を含むHEYDUDEブランドの履物が2014年以降日本で販売されていた。 それに先立ち、2012年5月12日及び13日に、名古屋の三越百貨店で行われた催事「HEY DUDE ポップアップストア イン ジャパン」の告知の写しを提出する(甲2)。 2014年から2019年にかけてFFブランド社から日本向けに引用申立人商品を出荷した記録として、船荷証券及びインボイスの写しを提出する(甲3〜甲8)。 2019年末より、申立人にとって3社目となる前身企業(以下「FFワールドワイド社」という。)の主導で、ダイヤモンド株式会社(大阪所在)(以下「ダイヤモンド社」という。)を代理店として引用申立人商品の日本での販売を行っていた。 2020年から2021年にかけてFFワールドワイド社から日本向けに引用申立人商品を出荷した記録として、インボイスの写しを提出する(甲9〜甲12)。 その後、2021年12月23日に公表されたクロクス社のHEYDUDEブランドの買収を経て、2022年11月にダイヤモンド社は代理店業務から撤退し、その後現在に至るまで申立人の4社目となる前身企業(以下「FFオンライン社」という。)の主導により、アマゾンジャパンのオンライン店舗及びShopify Japan(以下「ショッピファイ日本」)の主に2か所のルートを通じて引用申立人商品のオンラインでの販売を継続している。 申立人は、アマゾンジャパン、Value Partners Management Consulting(香港所在)(以下「VP社」という。)を含む宣伝会社に支払う費用を負担して、引用申立人商品の日本向け広告・マーケティングを行っている。 VP社がFFオンライン社に対して発行したHEYDUDEブランドに関する日本向けマーケティング費用の請求書の写しを添付する(甲13、甲14)。 アマゾンジャパンがFFオンライン社に対して発行したHEYDUDEブランドに関する売上が収入に含まれ、広告費用が支出に含まれるアカウント履歴の写し(甲15〜甲17)及びアマゾンジャパンのHEYDUDEブランド店舗の画面写し(甲18)を添付する。 ショッピファイ日本の店舗画面写しも添付する(甲19)。 2020年8月から2023年3月までの3年近くの期間における日本国内売上高の累計額は米国ドル建てで数十万ドルであり、1ドル150円で換算すると数千万円となる。これらの売上高はFFワールドワイド社の主導の下のダイヤモンド社の売上高、FFオンライン社の主導の下のアマゾンジャパン及びショッピファイ日本の売上高を合算したものである。 また、同期間内に日本のマーケティング活動に関する宣伝広告費の累計額は米国ドル建てで数万ドルであり、1ドル150円で換算すると数百万円となる。 マーケティング活動を示す資料として、引用申立人商品が表示された2022年1月7日付けのインフルエンサーを通じたインスタグラム投稿の写しを提出する(甲20)。 一部、オンラインショッピングモールの「楽天」内の店舗「ミッキー靴店」でも引用申立人商品が販売されている証拠を提出する(甲21)。 (3)商標法第4条第1項第10号について 引用申立人商品は2014年から10年近く日本で継続的に販売され、需要者の間で周知であること、本件商標は周知な引用商標を大文字で表した「WALLY」の文字を包含する構成であること、本件商標の商標全体から生じる称呼「クラークスウォーリー」は9音のやや冗長な称呼であること等から、需要者は本件商標の「WALLY」の文字部分に注目して「ウォーリー」と略称する可能性は高いこと、等を総合的に考慮すれば、引用商標は本件商標と「ウォーリー」の称呼及び男性の名称という観念において共通し、称呼及び観念において類似する商標である。 さらに、本件商標の指定商品「履物及び運動用特殊靴,靴,ブーツ及び運動用特殊ブーツ,スリッパ,履物の底,靴の中敷き,靴底,履物用甲革,かかと,靴の引き手,履物並びにその部品及び附属品,靴並びにその部品及び附属品,ブーツ並びにその部品及び附属品,スリッパ並びにその部品及び附属品」(以下「指定商品群1」という。)は引用商標が周知となった申立人商品「カジュアルシューズ」に類似すると認められる。 これらの点を考慮すれば、指定商品群1との関連において本件商標は商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものに該当する。 (4)商標法第4条第1項第15号について 引用申立人商品は2014年から10年近く日本で継続的に販売され、需要者の間で周知であること、本件商標は周知な引用商標を大文字で表した「WALLY」の文字を包含する構成であること、本件商標の商標全体から生じる称呼「クラークスウォーリー」は9音のやや冗長な称呼であること等から、需要者は本件商標の「WALLY」の文字部分に注目して「ウォーリー」と略称する可能性は高いこと、等を総合的に考慮すれば、引用商標は本件商標と「ウォーリー」の称呼及び男性の名称という観念において共通し、称呼及び観念において類似する関係にあり、本件商標は引用商標との類似度が高く、誤認混同のおそれがある。 さらに、指定商品「被服,帽子,メリヤス下着,メリヤス靴下,ソックス,インナーソックス,被服並びにその部品及び附属品,帽子並びにその部品及び附属品」(以下「指定商品群2」という。)は引用商標が周知となった商品「カジュアルシューズ」と直接的に類似する商品ではないが、一般的に服飾品のトータルコーディネートの観点から靴類と被服が同一事業者により製造販売が行われることも多く、ターゲットとなる需要者も共通するものであり、靴類と被服が同一店舗内で販売されることも珍しくないことを考慮すれば、指定商品群2について本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといえる。 また、カジュアルシューズの属する「履物」と「運動用特殊靴,運動用特殊ブーツ,運動用特殊靴の底,運動用特殊靴並びにその部品及び附属品」(以下「指定商品群3」という。)とは直接的に類似する商品ではないが、バスケットシューズやランニングシューズのように運動用の靴がカジュアルシューズとして利用されることも多く、靴類と運動用特殊靴が同一事業者により製造販売が行われることも多く、ターゲットとなる需要者も共通するものであり、靴類と運動用特殊靴が同一店舗内で販売されることも珍しくないこと等の一般的な取引の実情を考慮すれば、引用商標の周知性と相まって本件商標を上記の指定商品について使用した場合には出所の混同のおそれがあるから、指定商品群3について本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 2 まとめ 本件商標は、申立人の業務に係る商品であるカジュアルシューズを表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標と、「ウォーリー」の称呼及び男性の名称という観念において共通し、本件商標は引用商標と類似する商標であり、申立人の業務に係る商品と類似する指定商品について使用をするものに該当する(商標法第4条第1項第10号)。 また、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標に該当する(商標法第4条第1項第15号)。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知性について (1)申立人提出の証拠及び同人の主張によれば、以下の事実がうかがえる。 ア 申立人がHEYDUDEブランドに係る企業を買収し、このことが2021年12月23日付けのプレスリリースに掲載されたこと(甲1)。 イ HEYDUDEブランドの靴に係る催事が2012年5月12日及び同月13日に名古屋で開かれ、その告知に「WALLY」の文字の表示とともに靴の写真が掲載されたこと(甲2)。 ウ 申立人の前身会社の1つである「FFブランド社」が、2014年4月(甲3、甲4)、2015年1月(甲5、甲6)及び2019年12月(甲7、甲8)に、引用申立人商品を我が国に対して輸出したこと。 エ 上記ウとは異なる申立人の別の前身会社である「FFワールドワイド社」が、2020年8月(甲9、甲10)及び2021年2月(甲11、甲12)に、引用申立人商品を我が国に対して輸出したこと。 オ マーケティング会社を通じて我が国におけるマーケティングに一定程度の費用をかけたこと(申立人主張、甲13、甲14)。 カ 上記ウ及びエとは異なる申立人の別の前身会社である「FFオンライン社」が、2021年10月(甲15)、2022年5月(甲16)及び2023年3月(甲17)に、「amazon services Japan」とアカウント契約をし、当該オンラインサイトにて、商品取引を行ったこと。 キ 「SHOPIHY」というオンラインショップで、2021年12月に「HEYDUDEブランド」で広告宣伝を行ったこと(甲19)。 ク 2022年1月7日付けで、インフルエンサーの一人とされる人物のインスタグラムにHEYDUDEブランドの記事と靴の写真の掲載があったこと(甲20)。 ケ 申立人ではない者が、「楽天市場」のオンラインショップに展開する「ミッキー靴店」と称するオンラインショップにおいて、「HEYDUDOブランド」の靴が取り扱われ、「WALLY HAWK」の文字の記載が見受けられること(甲21)。 (2)しかしながら、引用申立人商品の売上高等の販売実績、シェア、広告宣伝の規模等の事実を裏付ける具体的な証拠の提出はない。 また、上記クの一人のインフルエンサーの投稿や、上記ケの日付不明かつ第三者の1使用例をもって、引用申立人商品の周知性について、客観的に推し量ることはできない。 さらに、申立人は、2020年8月から2023年3月までの期間における、「FFワールドワイド社」主導による日本国内代理店、「FFオンライン社」による上記(1)カ及びキにおける、我が国における取引について、1ドル150円換算で、総売上高は数千万円、宣伝広告費は数百万円であることを主張しているが、引用申立人商品の売上高、宣伝広告費を客観的に裏付ける証拠の提出はないから、当該主張を採用することはできない。 (3)上記(1)及び(2)によれば、申立人及び申立人の前身とされる複数の企業により、我が国に向けて、2012年頃以降、引用申立人商品又は「HEYDUDEブランド」の靴を取引していることがうかがえる一方、引用申立人商品の販売実績や広告宣伝の規模等は確認できない。 そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第10号該当性について 上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く知られていたと認めることはできないものであるから、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものである。 したがって本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知性について 上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者・需要者の間に広く知られていたと認めることはできないものである。 (2)本件商標と引用商標の類似性の程度について 本件商標は、「CLARKS WALLY」の欧文字を横書きしてなり、他方、引用商標は、「Wally」の欧文字を表してなるものである。 そして、両商標を比較すると、「Wally(WALLY)」のつづりについて両者で共通するものの、引用商標「Wally」の周知性が認められないことからすれば、その共通性を高く評価することはできず、また、両者は大文字及び小文字の差異を有するほか、「CLARKS」の文字の有無により明確に区別できるため、商標の類似性の程度は低いというのが相当である。 (3)混同のおそれについて 上記(1)及び(2)によれば、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者・需要者の間に広く認識されているとは認められないものであり、また、本件商標と引用商標の類似性の程度も高いとはいえないものである。 そうすると、たとえ商品が関連性を有し、需要者が一定程度共通するとしても、本件商標の商標権者が、本件商標をその指定商品について使用しても、取引者・需要者が、申立人又は引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 (4)小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2025-02-20 |
出願番号 | 2023032112 |
審決分類 |
T
1
651・
25-
Y
(W25)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
板谷 玲子 |
特許庁審判官 |
馬場 秀敏 鈴木 雅也 |
登録日 | 2024-03-13 |
登録番号 | 6787017 |
権利者 | シー アンド ジェイ クラーク インターナショナル リミテッド |
商標の称呼 | クラークスウオーリー、クラークス、ウオーリー |
代理人 | 岡田 貴子 |
代理人 | ▲吉▼田 和彦 |
代理人 | 竹下 薫 |
代理人 | 石戸 孝 |
代理人 | 藤倉 大作 |
代理人 | 相良 由里子 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 瀧澤 文 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 小林 浩 |