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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W35
管理番号 1420600 
総通号数 39 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2025-03-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2024-07-23 
確定日 2025-02-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第6805268号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6805268号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6805268号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和5年10月18日に登録出願、第35類「半導体・光半導体・半導体チップ・半導体ドライブ・半導体メモリー・半導体メモリー装置・半導体光増幅器・半導体用ウェハー及び電子半導体の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同6年5月1日に登録査定され、同月16日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立てにおいて、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとして引用する登録商標は、以下のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第2719908号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:「AMD」の欧文字及び「エイ エム デイ」の片仮名を二段に横書きしてなる商標
登録出願日:平成元年9月11日
設定登録日:平成9年2月24日
指定商品:第9類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品(平成19年6月27日書換登録)
(2)登録第4077796号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
登録出願日:平成7年12月14日
設定登録日:平成9年10月31日
指定商品:第9類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(3)登録第4135123号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様:AMD
登録出願日:平成7年12月14日
設定登録日:平成10年4月10日
指定商品:第9類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品(平成10年5月20日に、錯誤発見により第9類の商品が更正された。)
なお、以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめていう場合は、「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第44号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
(1)本件商標の内容
本件商標は、「ATMD」の欧文字を太文字で横書きに表し、その上部に円弧の図形を配してなる。
本件商標からは、「エイティーエムディ」との称呼が生ずる。また、「ATMD」の文字は、辞書に掲載されておらず(甲5、甲6)、特定の観念を生じさせない。
(2)引用商標の内容及びその周知著名性
引用商標のいずれの構成にも、「AMD」の欧文字を太文字で横書きに表されている。詳細には、引用商標1においては、前記欧文字の下部に「エイエムデイ」の片仮名がルビの如く振られており、引用商標2においては、前記欧文字の右端に幾何図形が配されてなる。
上記態様からなる引用商標からは、「エイエムディ」の称呼が生ずる。
「AMD」の語は、申立人であるアドバンスト マイクロ デバイシズ インコーポレーテッド(Advanced Micro Devices Inc.)のアクロニムを表したものであり、かかる意味合い(観念)は、辞書にも掲載され(甲7、甲8)、需要者間で広く知られるに至っている。
申立人は、1969年に設立された、米国カリフォルニア州サンタクララに本社を有する世界的な半導体メーカーであり(甲9)、主としてマイクロプロセッサ、APU(Accelerated Processing Units)、GPU(Graphics Processing Units)やフラッシュメモリ等の製造を行う。設立当初、申立人はI社のセカンドソースでプロセッサやペリフェラルチップを製造するメーカーのひとつであったが、黎明期から独自設計のFPUであり8ビットCPU時代における事実上の標準となったプロセッサを開発製造し、その技術力を示した。I社が1985年以降セカンドソースを認めず製造に必要な重要資料を公開しない方針をとったため、多くのセカンドソースメーカーは撤退したものの、申立人は独自の開発を行い同一ではないものの互換性のあるプロセッサの製造を開始する方針をとった。多くのメーカーが互換プロセッサ市場から撤退していくなかで、申立人はプロセッサ「ATHLON」を開発し、これによりI社から5%ものシェアを奪い取ることに成功した。この5%は、一つの企業が9割以上のシェアを占める市場においては驚異的な数字といわれている。I社は、2000年代後半から2010年代前半にかけて、PC用CPU市場を独占してきたものの、2011年に参入したスマートフォン市場のプロセッサ事業で決定的な失敗を犯し、2016年に事業を縮小した。この影響がI社の主力事業であるデスクトップPC市場にも波及し、2016年以降I社の市場シェアは右肩下がりとなり、他方で、申立人が開発し2017年3月に発売したマイクロアーキテクチャ「ZEN」を直接の契機とし、2021年1月から3月には、遂に申立人がI社のシェアを抜くこととなった(甲10)。
申立人の過去5年(2019年〜2023年)の業績は、以下のとおりであり(甲9)、同期間の日本での売上高は、850百万米ドル(2019年;約1282億円)、1400百万米ドル(2020年;約2112億円)、2059百万米ドル(2021年;約3105億円)、3029百万米ドル(2022年;4568億円)及び4095百万米ドル(2023年;約6175億円)である。
イギリス市場調査会社Omdiaの調査によると、2022年の日本の半導体市場の規模は371億2100万ドルとなり、世界の半導体市場(5957憶2400万ドル)に占める割合は6.2%であった。2022年日本半導体市場における売上高上位10位ランキングにおいて、申立人はトップでランクインしている(甲11)。同市場調査結果によると、申立人は、x86アーキテクチャのCPUに加え、グラフィックス用のGPUも手掛けているため、ゲーム用PCのキモを押さえており、ゲーム用のデスクトップPCで伸びたとされている。
2024年第二四半期には、申立人の純利益は前年同期比で9.8倍の2億6500万ドルに拡大するなど、AIチップ需要の急増を背景に過去最高の業績を記録した。売上高は前年同期比9%増の58億ドルに達し、純利益は9.8倍の2億6500万ドルへと大幅に拡大した。なかでもデータセンター部門の売上高が前年同期比2.2倍の28億ドルに急増しており、生成AI向けの画像処理半導体(GPU)需要の拡大が主な要因とされている(甲12)。このように、申立人は、AI半導体市場においても、主要競合のNVIDIAに対抗する製品を投入し、市場シェアを拡大しつつある。
他にも、申立人の名声は、インターネット記事(情報)をはじめ数多く認められ(甲10、甲14〜甲27)、本件商標の出願時(令和5(2023)年10月18日)及び査定時(令和6(2024)年5月1日(起案日))はもとより、それ以前から現在に至るまで、我が国や海外において、申立人及びそのアクロニムである「AMD」が極めて広く知られていることを理解することができる。
さらに、申立人の「AMD」については、フランス、台湾及び中国において、その周知著名性を認める決定(判決)がなされている(甲28〜甲30)。
このように、「AMD」の語は、我が国のみならず世界中で、本件商標が出願される前から継続的かつ広範囲、高頻度に使用されており、その結果、本件商標の出願時には、すでに申立人を表示するブランドとして国内外で広く知られていた。申立人がその後も事業を継続していることは上記のとおりであり、昨今のAIブームにより、申立人の名声はより一層高まっている。
申立人は、このように国内外で極めて広く知られている「AMD」に関して、世界各国で商標登録を行っている(甲31)。また、日本において、有効かつ十分な保護を図るため、引用商標に加え、甲第32号証の商標について登録を得ている。
しからば、少なくとも半導体業界において、引用商標の要部を成す「AMD」の語は、申立人を表すアクロニムとして広く知られており、また、「A」「M」「D」の文字配列に接する同業界の需要者は、難なく申立人を想起することができるといって過言ではない。
(3)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「ATMD」の欧文字を太文字で横書きに表し、その上部に円弧の図形を配してなる。
引用商標は、いずれも「AMD」の欧文字を要部として構成に有するものである。
本件商標と引用商標を対比すると、前者が欧文字四文字、後者が欧文字三文字からなり、語頭の「A」に続く「T」の有無の点で相違する。換言すれば、本件商標は、それを構成する欧文字四文字のうち三文字を引用商標と共通にしている。しかも、上記のとおり、共通する「AMD」の三文字は、申立人を表すアクロニムとして国内外で周知著名である。
人には、数多ある情報の中から既知の情報を検出し抽出する習性があり、また、周知著名商標は、人の注意を惹き記憶に止まる出所識別標識としての機能を他の商標よりも強く発揮する。よって、簡易迅速を尊ぶ取引において、本件商標に接する需要者等は、本件商標中、引用商標の要部に相応する「A MD」の部分に注視し、当該部分を強く記憶に止めると考えられる。よって、多くの需要者等は、欧文字「A」「M」及び「D」を同配列で有する本件商標と引用商標から、外観上同種の印象を受けると考えられる。そのうえ、両者に共通する欧文字「A」「M」及び「D」の欧文字三文字は、国内外で申立人のアクロニムとして広く知られている「AMD」に相応する。よって、本件商標に接する需要者等は、申立人を想起、イメージするということができ、本件商標は、引用商標と外観及び称呼において類似するというのが相当である。
仮に、本件商標から生ずる称呼「エイティーエムディ」と引用商標から生ずる称呼「エイエムディ」との間に、それ自体が近似しないといえる程の差異があったとしても、当該差異は、需要者等がその目を通じて認識し、理解する外観及び観念上の近似性を凌駕するとは決していえない。
よって、本件商標と引用商標とは、外観及び観念において相紛らわしい商標というべきものであるから、両商標の外観、称呼、観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本件商標は、商品又は役務の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似の商標であると考えるのが相当である。
そして、本件指定役務「半導体・光半導体・半導体チップ・半導体ドライブ・半導体メモリー・半導体メモリー装置・半導体光増幅器・半導体用ウェハー及び電子半導体の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、まさに引用商標に係る指定商品である「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」の範疇に属する商品の小売・卸売の場において顧客のためになされる労務・便益であるから、本件指定役務は、引用商標に係る指定商品と類似する。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
上記(2)のとおり、「AMD」は、本件商標の出願日(令和5(2023)年10月18日)の前より現在に至るまで、申立人のアクロニムを表示するものとして、半導体分野における取引者、需要者の間で広く認識されている。
本件商標は、欧文字四文字で「ATMD」を太文字で横書きに表してなり、その構成文字中三文字を上記「AMD」と共通にしており、その語順も共通している。よって、本件商標において、需要者等が取引の契機として記憶に止め思い起こす部分は、その構成中の引用商標に相応する「A MD」の部分である。換言すれば、需要者等は、本件商標の構成中「A MD」の部分を強く支配的な部分として看取する。そのため、本件商標と引用商標の類似性の程度は高い。
「AMD」の語は、「絶対平均偏差(Absolute mean deviation)」「加齢黄斑変性(Aged−related macular degeneration)」等の意味も有するようであるが(甲7)、少なくとも半導体の分野において、それらの観念が我が国において親しまれているということはできない。
O社が提供するChatGPTに「AMD」の意味について尋ねると、同語は「申立人の略」であり、「ゲーミング、データセンター、AI、グラフィックデザインなど幅広い分野で使われるハイパフォーマンスのプロセッサを提供しており、PC市場やサーバー市場でも大きなシェアを持ち」、「他にも、『AMD』という略語は医学や他の分野で異なる意味を持つこともありますが、テクノロジーの文脈では上記の企業(注:申立人)が最もよく知られて」おり、「一般的な日本人にとって『AMD』という略語は、主にコンピュータ関連の企業を指すものとして認識されることが多いです。つまり、Advanced Micro Devices(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)という、主にCPUやGPUを開発・製造しているアメリカの半導体メーカーを意味するのが一般的であり」、「分野を限定せず『AMD』と聞いた場合、テクノロジーの企業を指すと理解されることが最も多い」旨の回答がされた(甲36)。
辞書等の掲載例や上記ChatGPTの回答を踏まえると、「AMD」は、本件指定役務の分野においては、申立人のアクロニムを表す申立人の商標として、一定程度の独創性を有するものいうべきである。
そして、グループや関連施設等、何らかの関係を有する複数の事業体間で、これらの事業体を表すアクロニムの一文字に変更を加えたり、既存のアクロニムに一文字ないし二文字を新たに追加したりすることは、一般的に行われている(甲37〜甲44)。
グループ内企業(団体)ないし関係者間での類似するアクロニム使用の実例、及び本件指定役務(小売等役務)の対象となる商品が引用各商標に係る指定商品の範疇に含まれており、互いに密接な関係があることを踏まえると、本件商標を、本件指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その役務が、あたかも申立人又は申立人と組織的若しくは経済的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であるかの如く、商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというのが相当である。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標等の周知性について
ア 申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、1969年に設立された米国カリフォルニア州サンタクララに所在する世界的な半導体メーカーであり(甲18、甲27)、主としてマイクロプロセッサ、APU(Accelerated Processing Units)、GPU(Graphics Processing Units)やフラッシュメモリ等の製造を行っている(甲9)。そして、「AMD」(以下「申立人商標」という。)は、申立人の略称を表したものである(甲7、甲8、甲19)。
(イ)イギリス市場調査会社のOmdiaによれば、2022年の日本半導体市場における上位10社ランキングは、第1位が申立人となり、申立人は前年の4位から大きく躍進し、前年比58.9%増の29.69億ドルの半導体販売額となった(甲11)。
(ウ)申立人は、CPU等の商品について、引用商標2を使用している(甲17、甲18、甲26)。
(エ)2019年から2023年頃にかけて、インターネット記事において、申立人や申立人に係る商品についての紹介記事が掲載されており、それらにおいては、申立人が「AMD」と表示され、また、申立人の知名度が近年大きく向上したこと等が記載されている(甲15、甲17、甲18、甲21)。
イ 上記アからすると、申立人は、「AMD」を略称とする米国所在の半導体の製造メーカーであり、自社の製品に引用商標2を使用していること、また、申立人の知名度が近年大きく向上し、2022年の日本半導体市場におけるシェアが第1位であることからすると、「AMD」の文字からなる申立人商標及び引用商標2は、半導体の分野においては、本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国の取引者、需要者の間に相当程度認識されていたといえる。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、「ATMD」の欧文字を横書きに表し(以下「本件文字部分」という。)、当該文字の上部に円弧の図形を配してなるところ(以下「本件図形部分」という。)、両構成部分は、段を異にし、間隔を空けて配置されているから、視覚上分離して認識されるものであり、それぞれが独立した自他役務の出所識別標識として機能するといえる。
そして、本件商標の構成中、下段の「ATMD」の文字部分は、辞書類に記載のない語であるから、直ちに特定の意味を有しない一種の造語として看取され、各文字が同書、同大、同間隔で表されていることも相まって、文字部分全体が一連一体のものとして、取引者、需要者に理解されるというのが相当である。
また、特定の意味を有しない造語にあっては、我が国において広く親しまれている英語読み又はローマ字読みに倣って発音されるのが自然であり、全体としても格別冗長ではなく、よどみなく一連に称呼し得るから、当該文字より「エーティーエムディー」の称呼を生ずるというのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「エーティーエムディー」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
イ 引用商標
(ア)引用商標1は、上記2(1)のとおり、上段に「AMD」の欧文字及びその下段に欧文字の表音を片仮名で表した「エイ エム デイ」の文字からなるところ、その構成文字に相応して、「エーエムディー」の称呼を生じ、また、観念については、上記(1)によれば、上段の「AMD」の文字は、申立人の略称を表すものとして、我が国の半導体市場における取引者、需要者の間において相当程度認識されている申立人商標と構成文字を同じくすることから、申立人の略称との観念を生じ得る。
(イ)引用商標2は、別掲2のとおり、「AMD」の欧文字の右側に何らかの幾何図形を配してなるところ、当該文字部分と図形部分とは、特別な関連性を有するものではないから、それぞれ独立して自他商品の識別標識として機能を果たす要部と認識され、当該図形部分からは、特定の称呼及び観念は生じないが、文字部分からは「エーエムディー」の称呼を生じ、申立人に係る商標との観念を生じ得る。
(ウ)引用商標3は、上記2(3)のとおり、「AMD」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字に相応して、「エーエムディー」の称呼を生じ、上記(ア)と同様に、申立人の略称との観念を生じ得る。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、図形部分及び片仮名の有無等の差異を有するから、外観上判然と区別し得る。また、本件商標の文字部分と引用商標1及び引用商標2の欧文字部分並びに引用商標3を比較しても、その構成文字数が4文字と3文字で相違し、「T」の文字の有無を有することにより、互いに別異の語を表してなると容易に認識できるから、外観は、明確に区別できる。
また、称呼においては、本件商標から生じる「エーティーエムディー」の称呼と、引用商標から生じる「エーエムディー」の称呼とは、前半部の「ティー」の音の差異が両称呼全体に及ぼす影響は小さくなく、それぞれを一連に称呼しても、両称呼は聞き誤るおそれはなく、明瞭に聴別し得る。
さらに、観念においては、本件商標からは特定の観念を生じないものであるが、引用商標からは申立人の略称又は申立人の商標との観念を生じ得ることから、両者は相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれはないから、両者の外観、称呼、観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は類似する商標とは認められない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標の指定役務が、引用商標の指定商品と同一又は類似であるとしても、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人商標は、上記(1)イのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る半導体関連の商品を表示するものとして、我が国における取引者、需要者の間に相当程度認識されていたといえる。
しかしながら、上記(2)からすれば、本件商標と「AMD」の文字からなる申立人商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、類似性の程度は低い。
そうすると、本件商標の指定役務と申立人の業務に係る商品との関連性の程度、需要者の共通性の程度などを合わせ考慮しても、本件商標は、商標権者がこれを申立てに係る商品について使用した場合、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標ではないから、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同項に違反してされたものとはいえない。
他に本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。


別掲

別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標2)




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異議決定日 2025-01-27 
出願番号 2023115775 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W35)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 旦 克昌
特許庁審判官 大島 康浩
小林 裕子
登録日 2024-05-16 
登録番号 6805268 
権利者 株式会社トーメンデバイス
商標の称呼 エイテイエムデイ 
代理人 北口 貴大 
代理人 篠森 重樹 
代理人 弁理士法人きさらぎ国際特許事務所 

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