ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W41 |
---|---|
管理番号 | 1420597 |
総通号数 | 39 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2025-03-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2024-05-29 |
確定日 | 2024-12-19 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6789799号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6789799号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6789799号商標(以下「本件商標」という。)は、「勇進舘」の文字を標準文字により表してなり、令和6年1月22日に登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,教育の分野における情報の提供,セミナーの企画・運営又は開催,研修会の手配及び管理,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給,インターネットを利用して行う音楽の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,スポーツの興行の企画・運営又は開催,運動競技会の企画・運営,運動施設の提供,競技場の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,運動用具の貸与,スポーツイベントの企画・運営,レクリエーション施設の提供」を指定役務として、同年3月12日に登録査定され、同月22日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、以下の2件の商標(これらをまとめて「引用商標」という場合がある。)である。 1 商願2024−51073号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の態様:勇進館(標準文字) 登録出願日:令和6年5月15日 指定役務:別掲のとおりの役務 2 株式会社勇進堂の代表取締役であって、勇進流刀技術勇進館本部宗家A氏(以下、「宗家」という場合がある。)が、宗家の流派の道場名として使用する「勇進舘」の文字からなる商標(以下「引用商標2」という場合がある。)。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、異議申立理由の全趣旨によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に該当するから、同法第43条の2第1号によって取り消されるべきであると申立てをしていると理解できるところ、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第22号証を提出した。 1 具体的理由 (1)本件商標について 本件商標は、標準文字「勇進舘」からなり、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,教育の分野における情報の提供,セミナーの企画・運営又は開催,研修会の手配及び管理,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作」等を指定役務とするものである。 (2)商標法第4条第1項第7号違反について ア 事実経緯 本件商標「勇進舘」は、株式会社勇進堂の代表取締役であって、勇進流刀技術勇進館本部宗家A氏が1979年に創設した居合道(居合術)の「勇進流刀技術」の名称として、剣術業界において広く知られている。 宗家は、大阪府にある本部道場のほかに、大阪支部と東京支部等を開設し、関西地方のみならず、関東地方にも数多くの門下生が所属している(甲2〜甲4)。 本件商標の商標権者である株式会社勇進舘の代表取締役社長B氏は、勇進流刀技術勇進館の京都支部を運営していたところ、令和5年11月23日に独立し、宗家の許可を得ることなく、本件商標を令和6年1月22日に出願をした。また、同氏は、宗家に出願申請中であることが知られないようにするために、早期審査申請を行い、本件商標を早急に商標登録したものである。 その後、B氏は、本件商標に基づいて、宗家に対して「勇進館」の使用の中止を求めた。 それにより、宗家は、B氏が本件商標を宗家に無断で出願登録した事実を知り、直ちに、標章「勇進館」について商標出願を行った(甲5)。 また、かかるB氏の背信行為に対して、宗家は、京都支部の運営権を剥奪するとともに、勇進流刀技術勇進館からの破門を決定し、関係各所に周知した(甲6)。 イ 宗家による「勇進館」の周知性について 標章「勇進館」は、宗家の流派の道場名として長年使用されており、宗家は、当該標章の下、平安神宮や4条畷神社等で奉納演武を開催している。また、NPO法人全日本戸山流居合道連盟主催の全国大会に定期的に出場し、さらに、全国試斬武道大会を主催している(甲7〜甲12)。 このような長年の功績が認められて、宗家は、京都新聞社、複数の剣術団体からの感謝状を授与されている(甲13〜甲17)。 その結果、「勇進館」は、宗家の運営する居合道場名として広く知られるようになり、テレビ、雑誌、新聞等の各メディアに取り上げられている(甲19〜甲21)。 ウ こうした事実経緯等に鑑みれば、本件商標の商標出願は、B氏が宗家から独立をしてから僅か2か月後に行ったものであり、これまでと同様の名称を使用することにより宗家の顧客吸引力を利用し続けようとしたものといえ、宗家から運営を託された京都支部の運営者として順守すべき信義誠実の原則に大きく反するものであるのみならず、「勇進館」の名称で長年に渡り居合道場を営んでいる宗家がその名称に係る商標登録を経ていないことを奇貨として、宗家による居合道に関する営みを妨害する加害目的で行われたものというべきである。 よって、本件商標の出願登録は、商標制度における先願主義を悪用するものであり、社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠く事情があるというべきであって、こうした商標の登録出願及び設定登録を許せば、商標を保護することにより商標の使用する者の業務上の信用を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする商標法の目的に反することになりかねないから、本件商標は、公の秩序に反するものであるというべきであって、商標法第4条第1項第7号に該当するといえる。 (3)商標法第4条第1項第15号違反について ア 出願商標とその他人の標章との類似性の程度について 本件商標と宗家の使用する標章「勇進館(舘と表示することもある)」とは、同一である。 イ その他人の標章の周知度について 上記(2)イのとおり、宗家の使用する標章「勇進館」は、居合道を含む剣術業界において、国内周知である。 ウ その他人の標章が造語よりなるものであるのかについて 宗家の使用する標章「勇進館」は、宗家が創作した造語である。 エ その他人の標章がハウスマークであるのかについて 宗家の使用する標章「勇進館」は、宗家が長年運営する居合道場の名称(ハウスマーク)である。 オ 企業における多角経営の可能性について 宗家は、居合道場を運営するほかに、日本刀、刀剣の販売も行っている(甲2)。 カ 役務の需要者の共通性その他取引の実情について 上記(2)イのとおり、宗家が業として営む居合道場に係る役務は、本件商標の指定する第41類の指定役務の範囲内である。 以上のことから、上記アないしカの該当性を考慮すれば、商標権者が本件商標を使用した場合には、宗家の業務に係る役務であると誤認し、その役務の需要者が役務の出所について混同するおそれがあるのみならず、宗家の標章「勇進舘」の使用による周知性に鑑みれば、経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、その役務の需要者が役務の出所について混同を生じるおそれがあるといえる。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するといえる。 (4)商標法第4条第1項第19号違反について 上記(2)イのとおり、本件商標は、他人である宗家の業務に係る役務を表示するものとして国内における需要者の間に広く認識されている商標と同一であって、本件商標の出願登録は、商標制度における先願主義を悪用するものであり、社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠く事情があるというべきであって、不正の目的があることは、明らかである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するといえる。 2 むすび 叙上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に該当するにもかかわらず登録されたものであるから、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知・著名性について ア 申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。 (ア)「勇進舘」又は「勇進館」は、宗家の業務に係る居合道の教授などの役務を表示するものとして、大阪総本部道場、大阪支部及び東京支部において居合道の道場名に使用されている(甲2〜甲4)。 (イ)「勇進舘」又は「勇進館」の名称の下に、宗家が平安神宮崇敬会の会員である(甲7)ことや、同名称が、全日本戸山流居合道連盟全国大会のパンフレットに掲載され、道場関係者が同大会に参加している(甲8、甲9、甲11及び甲12)。また、「勇進舘」の名称において武道大会を主催している(甲10)。 (ウ)「勇進館」の名称の下、その活動により宗家は感謝状を授与されている(甲13、甲14、甲16及び甲17) イ 上記アによれば、「勇進舘」又は「勇進館」は、宗家の業務に係る居合道の教授などの役務を表示するものとして、居合道の道場名に使用され、同名の下、平安神宮崇敬会の会員であることや武道大会の参加及び主催を行い、また、その活動により感謝状を授与されていることはうかがえる。 しかしながら、「勇進舘」又は「勇進館」を使用した、宗家による居合道の教授等の役務について、宗家が開設している道場における門下生数を示す客観的な証拠を見いだせない。 また、二度の武道大会への参加及び一度の武道大会の主催以外の武道大会に関する活動及び平安神宮崇敬会の会員としての活動、「勇進舘」又は「勇進館」の名の下で、宗家が継続的に行っている上記以外の宗家の業務に係る活動報告などの活動規模や広告宣伝の方法、地域、規模及び広告宣伝費等に係る主張はなく、その活動規模や広告宣伝実績を客観的に把握、評価することができる証拠の提出も見いだせない。 そうすると、申立人提出の証拠からは、「勇進舘」又は「勇進館」に通じる引用商標が、我が国の需要者の間にどの程度認識されているかは明らかでない。 したがって、提出された証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、宗家の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 (2)本件商標と引用商標の類似性について ア 本件商標について 本件商標は、上記第1のとおり、「勇進舘」の文字を標準文字により表してなり、その構成中、「舘」の文字は、「館」の文字の異字体として広く知られているものであるから、「ユーシンカン」の称呼を生じ、一般的な辞書に載録されている成語ではなく、直ちに何らかの意味合いを理解させるものではない一種の造語として認識されるものである。 したがって、本件商標は、「ユーシンカン」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 イ 引用商標1について 引用商標1は、上記第2の1のとおり、「勇進館」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して「ユーシンカン」の称呼を生じ、一般的な辞書に載録されている成語ではなく、直ちに何らかの意味合いを理解させるものではない一種の造語として認識されるものである。 ウ 本件商標と引用商標1の類似性について 本件商標と引用商標1を比較すると、外観においては、両者の構成中「勇進」の文字を共通にし、上記アのとおり、「舘」は「館」の文字の異字体であることから、両者は類似する。 また、称呼においては、両者は「ユーシンカン」の称呼を共通にする。 さらに、本件商標と引用商標1は、いずれも特定の観念を生じないから、両者は観念において比較できない。 そうすると、本件商標と引用商標1は、観念において比較できないとしても、外観において類似し、称呼において共通するから、類似の商標であり、類似性の程度は高い。 エ 引用商標2について 引用商標2は、上記第2の2のとおり、「勇進舘」の文字からなるところ、その構成文字に相応して「ユーシンカン」の称呼を生じ、一般的な辞書に載録されている成語ではなく、直ちに何らかの意味合いを理解させるものではない一種の造語として認識されるものである。 オ 本件商標と引用商標2の類似性について 本件商標は上記(2)アのとおり、「勇進舘」の文字を標準文字で表してなり、引用商標2は「勇進舘」の文字からなるから、観念において比較できないとしても、外観において同一又は類似し、称呼において共通するから、同一又は類似の商標であり、類似性の程度は高い。 (3)出所の混同のおそれについて 本件商標と引用商標とは、上記(2)のとおり、同一又は類似する商標といえるから、本件商標と引用商標の類似性の程度は高いとしても、引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものではないから、本件商標に接する需要者が申立人の業務に係る引用商標を連想、想起するものということはできない。 以上からすると、本件商標と引用商標とが、類似性の程度が高いものであるとしても、引用商標が宗家の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものではないから、本件商標権者が本件商標をその指定役務について使用をした場合、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想、想起し、宗家又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係る役務であると誤認し、その役務の出所について混同を生じさせるおそれはない。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第19号該当性について 上記1(2)のとおり、本件商標と引用商標は類似するものの、同(1)のとおり、引用商標は本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、申立人の提出した証拠から、引用商標が外国で使用されている証拠は見いだせないから、外国における需要者の間に広く認識されているものとも認められない。 さらに、申立人が提出した証拠からは、本件商標が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的証拠も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第7号該当性について 上記第3の1(2)のとおり、申立人は、「B氏は、本件商標に基づいて、宗家に対して「勇進館」の使用の中止を求めた。」と主張するが、このことを認めるに足りる具体的な証拠は見いだせない。また、上記1(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、宗家の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものではない。 そして、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないことは明らかであり、さらに、上記のほかに本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を著しく欠く、又は本件商標をその指定役務について使用することが、社会の一般的道徳観念に反するなど、公序良俗に反するものというべき証拠も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 4 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 商願2024−51073号商標の指定役務 第41類「居合術の教授,武道学校における武道の教授,武道場の提供,武道の興行の企画・運営又は開催,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,美術品の展示,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給,インターネットを利用して行う音楽の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,興行場の座席の手配,写真の撮影,通訳,翻訳」 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2024-12-09 |
出願番号 | 2024005338 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W41)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
大島 康浩 |
特許庁審判官 |
真鍋 伸行 大島 勉 |
登録日 | 2024-03-22 |
登録番号 | 6789799 |
権利者 | 株式会社勇進舘 |
商標の称呼 | ユーシンカン |
代理人 | 弁理士法人白浜国際特許商標事務所 |