【重要】サービス終了について

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W10
管理番号 1420596 
総通号数 39 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2025-03-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2024-05-20 
確定日 2025-02-18 
異議申立件数
事件の表示 登録第6785955号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6785955号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6785955号商標(以下「本件商標」という。)は、「クリスタルプロ」の文字を標準文字により表してなり、令和5年7月14日に登録出願、第10類「医療用脱毛機械器具」を指定商品として、令和6年2月27日に登録査定され、同年3月8日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下の4件である(甲2)。
1 国際登録第1405613号(以下「引用商標1の1」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなるものであり、オーストラリア、ロシア、シンガポール、米国、アルジェリアの指定国において、商標登録されていると主張するものである。
2 欧州連合商標登録第14040885号(以下「引用商標1の2」という。)は、別掲2に示すとおりの構成からなるものであり、EUIPO(欧州連合知的財産庁)において、商標登録されていると主張するものである。
3 欧州連合商標登録第18092720号(以下「引用商標2の1」という。)は、別掲3に示すとおりの構成からなるものであり、EUIPO(欧州連合知的財産庁)において、商標登録されていると主張するものである。
4 欧州連合商標登録第18803865号(以下「引用商標2の2」という。)は、別掲4に示すとおりの構成からなるものであり、EUIPO(欧州連合知的財産庁)において、商標登録されていると主張するものである。
以下、上記の4件の引用商標をいうときは便宜上、引用商標1の1及び2をまとめて「引用商標1」といい、引用商標2の1及び2をまとめて「引用商標2」といい、さらに、引用商標1及び引用商標2をまとめて「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第27号証(枝番号を含む。)を提出した(以下、甲各号証の証拠の表記に当たっては、甲1、甲2のように省略して記載し、枝番号の全てを示すときは、枝番号の記載を省略して記載する。)。
1 商標法第4条第1項第10号について
(1)引用商標の周知性
ア 国際的博覧会出品
(ア)申立人は、2010年に設立されたフランス初の美容医療機器製造業者であり、現在、その機器は、世界35か国以上に輸出され、本国のフランスを始め、世界中2,000以上の施設に導入されて、100万人以上の患者に提供されている(甲21の1〜3)。
(イ)申立人は、その製造販売する「Cryolipolysis apparatus」(医療用低温脂肪分解機械器具)(以下「申立人商品」という。)について、引用商標1を使用して、例えば、2015年頃より毎年、フランス、イギリス、モロッコ、ベルギー、スイス、インドネシア、スペイン、アルジェリア、ハンガリー、タイ、コロンビアの各国で開催された美容医療学会及び国際的商品展示会において、販売目的の展示、商品紹介を行ってきている(甲6、甲8、甲9、甲10、甲11の1〜7)。
また、引用商標2が使用された同製品は、2019年頃より毎年、同様のフランス、モロッコ、イギリス、タイ、ウクライナ、サウジアラビアの各国で開催された美容医療学会及び国際的商品展示会において、販売目的の展示、商品紹介が行われてきている(甲6、甲7、甲11の8、9、甲12〜甲14)。同学会、国際博覧会には、我が国を含め(甲22、甲23)世界中の美容医療業界の関係者が参加しており、このような、2015年から2023年までの8年以上の継続的出品によって、引用商標及び申立人商品は、当業界において、世界的に周知となっている。
イ 出版物
(ア)引用商標2が使用された申立人商品は、遅くとも、2019年から、本件商標の出願日前の2023年にその範囲を限っても、フランスの美容医療等に関する「ANTI AGE MAGAZINE」を始め、「ESTETIC Magazine」、「ELLE」、「Gala」の各誌、イギリスの「TATLTER MAGAZINE」等に取り上げられて、その内容が紹介、説明等されている(甲15の1、2、甲15の5〜12、甲15の15〜19、甲16の1)。
(イ)また、引用商標1が使用された申立人商品については、2014年から、これらの雑誌に継続的に取り上げられ、また、その商品広告が掲載されている(甲15の3、4、甲15の14、甲15の20、21、甲16の2〜15)。
ウ 申立人の商品の他国への輸出
引用商標2が使用された申立人商品は、本件商標の出願日前から、少なくとも、イギリス、ドイツ、アラブ首長国連邦、インドネシアヘ輸出販売されている(甲26の2〜4、甲26の7)。また、引用商標1が使用された商品についても、少なくとも、マレーシア、オーストラリア、インドネシア、コロンビア、イギリスに、本件商標の出願日前から輸出販売されている(甲26の1、甲26の5、6、甲26の8〜10)。
エ フランス以外の申立人の海外販売代理店
また、申立人は、引用商標が使用された申立人商品を自らのウェブページ(甲21の1〜3)において、本件商標の出願日前より、宣伝広告及び販売している事実に加えて、申立人のドイツにおける独占販売代理店(甲17の1〜4)及びシンガポールの医療機器販売代理店(甲19の1〜3)を通じても、宣伝広告及び販売している。
オ フランス以外の外国美容医療機関での申立人の商品の使用の事実
さらに、例えば、フランス以外においても、イギリス及びインドの美容医療クリニックにおいて、本件商標の出願日前より、引用商標2が使用された申立人商品を使用して美容医療が提供されていることが宣伝されている。これは、引用商標が使用された申立人の商品の宣伝広告としても評価しうるものである(甲18の1〜3,甲20の1〜3)。
カ 我が国美容医療業界での引用商標の周知性
上述の学会、国際的博覧会には、我が国の美容医療関係者も多数参加しており、上述の博覧会中の「AMWC」について、我が国のウェブサイトにおいても、「世界トップクラスの美容医療及びアンチエイジング専門医が一堂に会し、専門知識を共有することができる唯一無二の国際医学会シリーズ」、「毎年3月〜4月にモナコで開催するAMWCは、21年にわたる世界的なパイオニアとしての経験をもとに、美容・アンチエイジング医療を専門とする世界有数の学会として開催しています。15,000人以上の参加者、300人の著名な講演者、業界で最も信頼できる300社を迎え、最高レベルの科学プログラムと活気ある展示会に参加することができます。」と紹介説明している事実がある(甲22)。
また、「IMCAS」及び「IMCAS Asia」については、インターネット記事(甲23)が説明するように、同学会、展示会において、我が国美容医療の医師、関係者が参加している事実も確認できる。
キ 我が国美容医療業界
以上のとおり、これらの雑誌掲載、国際的博覧会出品の事実、また、通信技術等のグローバル化が著しく進んだ現代において、インターネットを介して、引用商標及びこれを使用した申立人商品に関する情報は、その商品の使用に係る我が国の美容医療業界等においても、リアルタイムで共有されているというべきであり、申立人商品及び引用商標は、我が国においても周知商標となっているというべきである。
(2)本件商標と引用商標の類似性
ア 本件商標は、「クリスタルプロ」(標準文字)からなる商標であり、第10類の「医療用脱毛機械器具」を指定商品として、出願され、商標登録されたものである。ここで、「クリスタル」とは、「水晶、結晶」等を意味する「Crystal」の片仮名語であること、また、「プロ」は、「専門的、職業的」等を意味する「Professional(プロフェッショナル)」の略語の「Pro」の片仮名語であることは周知の事実である(甲24)。加えて、「プロ(pro)」の語については、商品に使用される場合には、「専門家向け商品」や、「優秀な機能の商品」を意味するものとして使用されていることから、商標として識別力が弱い、ないし、識別力がないと、特許庁の多数の審決においても判断されている(甲25)。
よって、本件商標は、「クリスタルプロ」の一連の称呼とともに、「クリスタル」の略称をも生じさせるものというべきである。
イ 他方、引用商標1は、英語の「Crystal」に対応する、フランス語の「Cristal」の文字からなり、同様の「クリスタル」の称呼を生じさせるものである。また、引用商標2は、「Cristal Pro」の文字からなり、「クリスタルプロ」の一連の称呼も生じさせるものである。
また、その使用に係る申立人商品と、本件商標の指定商品「医療用脱毛機械器具」とは、共に美容医療において使用される医療用機械器具として類似する商品と解される。
(3)結語
以上のとおり、本件商標は、その出願前の「他人の周知商標たる引用商標と同一又は類似する商標」であり、商標法第4条第1項第10号に違背して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
上記1(1)のとおり、引用商標は、本件商標の出願日前から、申立人によって、申立人商品(医療用低温脂肪分解機械器具)に世界的に使用され、我が国においても、美容医療の業界において周知となっている。
これに対して、本件商標は、引用商標と同一又は類似する商標であり、かつ、その指定商品は、引用商標の使用に係る商品と需要者層を同じくする美容医療業界において使用される「医療用脱毛機械器具」であり、商品においても類似する。
よって、本件商標の使用は、申立人による使用又はその使用許諾を受けた者ないしその関連会社、その他、経済的又は組織的に何らかの関係がある者の使用と、その商品の取引者、需要者に対して、商品の出所の誤認混同を生じさせるおそれがあるものである。
したがって、本件商標は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」であり、商標法第4条第1項第15号に違背して登録されたものである。
3 商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、上記1(1)のとおり、本件商標の出願日前から、申立人によって、申立人商品(医療用低温脂肪分解機械器具)に世界的に使用され、国内外において周知となっている。これに対して、本件商標は、引用商標と同一又は類似する商標であり、また、その指定商品は、引用商標の使用商品と需要者層(美容医療業界)を共通する「医療用脱毛機械器具」であり、商品においても類似する。
よって、本件商標の使用は、引用商標の自他商品識別力を希釈させ、また、その業務上の信用を毀損させるものであり、かつ、引用商標の世界的な信用を不当に利用するものである。引用商標の世界的使用の事実に照らせば、本件商標の商標権者は、引用商標の存在を知って、この信用の不当な利用を図り、本件商標を採択したものと推認できる。
したがって、本件商標は、他人の国内又は外国における周知商標と同一又は類似するものであって、不正の目的をもって使用をする商標であり、商標法第4条第1項第19号に違背して登録されたものである。
4 商標法第4条第1項第7号について
引用商標は、上記1(1)のとおり、本件商標の出願日前から、申立人によって、申立人商品(医療用低温脂肪分解機械器具)に世界的に使用され、国内外において周知となっている。これに対して、本件商標は、引用商標と同一又は類似ないし近似する商標であり、また、その指定商品は、引用商標の使用商品と需要者層(美容医療業界)を共通する「医療用脱毛機械器具」であり、商品においても類似する。
よって、このような本件商標の登録は、引用商標の世界的な信用を不当に利用し、かつ、その使用を妨害するものであり、国際商品取引秩序を害し、国際信義に反する商標というべきである。
よって、本件商標は、商標法4条第1項第7号に違背して登録されたものである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(1)申立人は、2010年に設立されたフランス初の美容医療機器製造業者であり、現在、同人に係る機器は、世界35か国以上に輸出され、本国のフランスを始め、世界中2,000以上の施設に導入されて、100万人以上の患者に提供されている(甲21及び申立人の主張)。
(2)引用商標1が使用された申立人商品は、2015年頃より、毎年、フランス、イギリス、モロッコ、ベルギー、スイス、インドネシア、スペイン、アルジェリア、ハンガリー、タイ及びコロンビアの各国で開催された美容医療学会及び国際的商品展示会において、販売目的の展示又は商品紹介がされており、引用商標2が使用された申立人商品は、2019年頃より毎年、フランス、モロッコ、イギリス、タイ、ウクライナ及びサウジアラビアの各国で開催された美容医療学会及び国際的商品展示会において、販売目的の展示又は商品紹介が行われてきている(甲6〜甲14及び申立人の主張)。
(3)引用商標2が使用された申立人商品は、2019年からフランスの美容医療等に関する「ANTI AGE MAGAZINE」を始め、「ESTETIC Magazine」、「ELLE」、「Gala」の各誌、イギリスの「TATLTER MAGAZINE」等に取り上げられて、その内容が紹介、説明等されており(甲15の1、2、甲15の5〜12、甲15の15〜19、甲16の1及び申立人の主張)、引用商標1が使用された申立人商品については、2014年から、これらの雑誌に取り上げられ、また、当該雑誌に申立人商品の広告が掲載されている(甲15の3、4、甲15の14、甲15の20、21、甲16の2〜15及び申立人の主張)。
(4)引用商標2が使用された申立人商品は、本件商標の出願日前から、イギリス、ドイツ、アラブ首長国連邦、インドネシアヘ輸出販売されており(甲26の2〜4、甲26の7及び申立人の主張)、引用商標1が使用された商品についても、マレーシア、オーストラリア、インドネシア、コロンビア、イギリスに、本件商標の出願日前から輸出販売されている(甲26の1、甲26の5、6、甲26の8〜10及び申立人の主張)。
(5)フランス以外の申立人の海外販売代理店
申立人は、引用商標が使用された申立人商品を自らのウェブページ(甲21の1〜3)において、本件商標の出願日前より、宣伝広告及び販売しており、また、申立人のドイツにおける独占販売代理店(甲17の1〜4)及びシンガポールの医療機器販売代理店(甲19の1〜3)を通じても、宣伝広告及び販売している(申立人の主張)。
(6)フランス以外においても、イギリス及びインドの美容医療クリニックにおいて、本件商標の出願日前より、引用商標2が使用された申立人商品を使用して美容医療が提供され、宣伝されている(甲18の1〜3、甲20の1〜3及び申立人の主張)。
(7)上記(2)の学会、国際的博覧会には、我が国の美容医療関係者も参加しており、また、「IMCAS」及び「IMCAS Asia」については、インターネット記事(甲23)から、同学会、展示会において、我が国美容医療の医師、関係者が参加している。
(8)上記(1)ないし(7)からすれば、申立人は、引用商標を申立人商品に使用していることが認められるとしても、引用商標を使用した申立人商品の我が国及び外国における売上高などの販売実績、広告宣伝の方法、規模、広告宣伝費など、その事実を具体的、かつ、客観的に把握することができる証拠の提出はなく、また、申立人提出の証拠のほとんどは外国語で記載されたものであり、我が国の取引者、需要者向けの記事とはいい難いものである。
よって、申立人提出の証拠からは、引用商標が、我が国及び外国の取引者、需要者にどの程度認識されているのかについて、把握、評価することができない。
その他、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の取引者、需要者の間に広く知られていることを認めるに足りる証拠の提出はなく、引用商標の周知性を認め得る事情は見いだせない。
してみると、申立人提出の証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の取引者、需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上第1のとおり、「クリスタルプロ」の文字を標準文字により表してなるところ、その構成は、各文字が同書、同大、等間隔でまとまりよく表されており、構成中のいずれかの文字部分が看者に強い印象を与えるような態様ではなく、また、その構成全体から生じる「クリスタルプロ」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、当該文字は、辞書等に載録されている成語ではなく、直ちに何らかの意味合いを理解させるものではない。
そうすると、本件商標は、これに接する取引者、需要者をして、その構成中「プロ」の文字部分を商品の品質、用途等を表示したものとして認識させることなく、むしろ、「クリスタルプロ」の構成文字全体をもって、特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識、把握されるものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、その構成全体から「クリスタルプロ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標1は、両端が上がるように描かれた青色の弓状図形の上に、「CRISTAL」の欧文字を横書きしてなるところ、当該図形部分と文字部分とは、視覚上、分離して看取されるものであり、その文字部分は、構成の大部分を占めるように顕著に表されているから、印象的で記憶に残りやすく、需要者に対し商品の出所識別標識として支配的な印象を与えるものといえる。
そうすると、本件商標と引用商標1との類否判断の際には、「CRISTAL」の文字部分が本件類否判断の対象となる要部となるものである。
そして、「CRISTAL」の文字は、フランス語で「水晶、結晶体」(Weblioフランス語辞典参照)の意味を有する語であり、当該語は、本件商標の指定商品の取引者、需要者には、なじみの薄いフランス語であるとしても、これより生ずる「クリスタル」の称呼は、我が国において一般に親しまれている「水晶、結晶体」の意味を有する英語の「crystal」(クリスタル)の称呼及び意味と同じであり、そのつづりも中間部における「I」と「y」の相違のみであることから、これよりは、「水晶、結晶体」の意味合いを理解させる場合も少なからずあると判断するのが相当である。
したがって、引用商標1は、その構成文字に相応して、「クリスタル」の称呼が生じ、「水晶、結晶体」の観念を生じる余地がある。
また、引用商標2は、両端が上がるように描かれた灰色又は黒色の弓状図形の上に、「CRISTAL Pro」の欧文字を横書きしてなるか、「CRISTAL」及び「Pro」の欧文字を2段に横書きしてなるところ、当該図形部分と文字部分(決定注:いずれも「CRISTAL」の文字は黒色で、「Pro」の文字は青色で描かれている。)とは、視覚上、分離して看取されるものであり、「CRISTAL Pro」の文字部分又は「CRISTAL」の文字部分は、構成の大部分を占めるように顕著に表されているから、印象的で記憶に残りやすく、需要者に対し商品の出所識別標識として支配的な印象を与えるものといえる。
そうすると、本件商標と引用商標2との類否判断の際には、「CRISTAL Pro」の文字部分又は「CRISTAL」の文字部分が本件類否判断の対象となる要部となるものである。
したがって、引用商標2は、「CRISTAL Pro」の文字部分からは、「クリスタルプロ」の称呼を生じ、これよりは本件商標と同じく特定の観念を生じないものであり、また、「CRISTAL」の文字部分からは、「クリスタル」の称呼を生じ、これよりは引用商標1と同じく「水晶、結晶体」の観念を生じる余地がある。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標1を比較すると、外観においては、片仮名と欧文字という書体の相違、「プロ」の文字及び図形の有無の相違があり、称呼においては、両者は「クリスタル」の音を共通にするものであるが、「プロ」の音の有無において相違し、観念においては、本件商標からは、特定の観念を生じないから、両者の観念を比較することができない。
また、本件商標と引用商標2とを比較すると、外観においては、片仮名と欧文字という書体の相違及び図形の有無の相違があり、観念においては、本件商標からは、特定の観念を生じないから、両者の観念を比較することができないが、称呼においては、両者は「クリスタルプロ」の称呼を共通にする場合もある。
以上を踏まえれば、本件商標と引用商標1は、観念において比較できず、外観及び称呼において、相紛れるおそれはないから、両商標は、非類似の商標というべきである。
また、本件商標と引用商標2は、観念において比較することができないとしても、称呼を共通にすることもあり、この場合、両者の全体の外観は相違するものの、文字部分の差異は格別異なる印象を与えるものではないから、これらの外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合勘案すれば、両者は、相紛れるおそれのある類似の商標であるというのが相当である。
(4)引用商標の周知性について
上記1(8)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間で広く認識されていたものと認めることができないものである。
(5)小括
そうすると、本件商標は、引用商標1とは非類似の商標であり、また、引用商標2とは類似する商標であるとしても、引用商標が、需要者の間に広く認識されたものとは認められないものであるから、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
上記1(8)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間で広く認識されていたものと認めることができないものである。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標1とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、両商標の類似性の程度は低いというべきであり、本件商標と引用商標2とは、類似する商標であるから、両商標の類似性の程度は高いといえる。
(3)本件商標の指定商品と申立人商品との関連性及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は「医療用脱毛機械器具」であり、申立人商品は「医療用低温脂肪分解機械器具」であり、いずれも医療用の機械器具であるから、両者の商品の関連性及び需要者の共通性は高いといえる。
(4)出所の混同のおそれについて
上記(2)のとおり、本件商標と引用商標2の類似性の程度は高いといえるが、本件商標と引用商標1の類似性の程度は低いものである。
また、上記(3)のとおり、本件商標の指定商品と申立人商品との関連性及び需要者の共通性は高いといえる。
しかしながら、上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものではない。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはない。
その他、本件商標について、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標2は類似する商標であるとしても、本件商標と引用商標1は非類似の商標である。
また、上記1(8)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているとは認めることができないものである。
そして、申立人提出の証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、商標権者が引用商標にフリーライドするなど不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠は見いだせない。
そうすると、申立人提出に係る証拠からは、商標権者が引用商標の名声を毀損させることを認識し、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
上記2(3)のとおり、本件商標と引用商標2は類似する商標であるとしても、本件商標と引用商標1は非類似の商標である。
また、上記1(8)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているとは認めることができないものである。
そして、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないことは明らかであり、さらに、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を著しく欠く、又は本件商標をその申立てに係る商品について使用することが、社会の一般的道徳観念に反するなど、公序良俗に反するものというべき証拠も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1
引用商標1の1(国際登録第1405613号)(色彩は原本参照。)

別掲2
引用商標1の2(欧州連合商標登録第14040885号)(色彩は原本参照。)

別掲3
引用商標2の1(欧州連合商標登録第18092720号)(色彩は原本参照。)

別掲4
引用商標2の2(欧州連合商標登録第18803865号)(色彩は原本参照。)


(この書面において著作物の複製をしている場合の御注意)
本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。
異議決定日 2025-02-04 
出願番号 2023078636 
審決分類 T 1 651・ 022- Y (W10)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 山田 啓之
特許庁審判官 杉本 克治
渡邉 あおい
登録日 2024-03-08 
登録番号 6785955 
権利者 医療法人社団エミナル
商標の称呼 クリスタルプロ 
代理人 大塚 春彦 
代理人 ▲高▼津 一也 
代理人 家入 健 
代理人 東谷 幸浩 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ