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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1420586 
総通号数 39 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2025-03-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2024-03-22 
確定日 2025-01-18 
異議申立件数
事件の表示 登録第6770787号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6770787号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6770787号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和4年6月17日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,帽子」を指定商品として、同5年12月13日に登録査定され、同6年1月17日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第4975154号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成18年1月23日に登録出願、第25類「被服」を指定商品として、同年8月4日に設定登録され、その商標権は現に有効に存続しているものである。
(2)申立人が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は、別掲3のとおりの構成からなる商標(以下「使用商標」という。)であり、同人が被服及び帽子等について使用して我が国の需要者の間に広く認識されていると主張するものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により、取り消されるべきである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証を提出した。
(1)本件商標について
本件商標は、横書きで記載したアルファベット「SHIBA」と、その右下に小さく付された肉球(犬の手足の裏)を模した図形(以下「肉球図形」という。)から成り、「SHIBA」の部分は、肉球図形に比べて極めて大きく記載されており、かつ、当該図形は称呼を生じさせないため、本件商標の要部は「SHIBA」の部分となることは明らかであり、これより、「シバ」の称呼を生じる。
(2)申立人が創作したロゴについて
申立人のデザイナーは、adobeイラストレータのソフトを使用して図形とカーブを組み合わせることで、「SHIBA」のロゴ(使用商標中の「SHIBA」の文字部分。以下「使用商標文字部分」という。)及びジャンプしている柴犬の絵のロゴを創作し(甲2〜甲5)、使用商標の右上に柴犬の絵のロゴを組み合わせることで、被服及び帽子等(以下「SHIBAグッズ」という。)に付すデザイン(使用商標文字部分と柴犬の絵のロゴを組み合わせたもの。以下「SHIBAグッズのデザイン」という。)を創作した。
SHIBAグッズのデザインを創作した際のadobeイラストレータファイルの最終更新日時は、本件商標の出願日よりも前の平成26年(2014年)7月27日である。
(3)使用商標の周知性について
申立人は、平成27年(2015年)6月5日から、楽天・Amazon・ヤフーショッピング・自社サイト等のECサイトを利用して、使用商標及び柴犬の絵のロゴを使用したSHIBAグッズ(ティーシャツ、ポロシャツ、及び帽子等)の販売を開始した。
申立人によるSHIBAグッズの販売実績は好調で、特にドッグラン愛好家等から人気があり、平成30年(2018年)5月5日から令和5年(2023年)12月31日までの、SHIBAグッズの販売実績の集計結果(甲6)には、本件商標の出願日前日までに約5,986点のSHIBAグッズが販売されたことが示されており、令和5年12月31日までの販売点数は10,865点にも上る。
さらに、申立人は、楽天ショップにおける「月間優良ショップ」及び「楽天ショップ・オブ・ザ・マンス」に7年間で8度も選出された実績もある(甲7、甲8)。
以上のように、使用商標及び柴犬の絵のロゴは、遅くとも本件商標の出願日までには、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていた商標である。
(4)本件の商標権者が販売している商品について
本件の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、自らが運営統括責任者となっている有限会社ピーアンドエスの自社ECサイトにおいて、申立人が創作し、使用しているSHIBAグッズのデザインと同一の商標を付したティーシャツ(以下「SHIBAティーシャツ」という。)を販売し、また、BASE株式会社の提供サービスによって構築されたECサイトにおいても、SHIBAティーシャツを販売している。
さらに、申立人は、AmazonのECサイト(取り扱い開始日:令和5年(2023年)8月8日)、及びCreemaのECサイトにおいても、「PARODYS BY CRUSH」のブランド名でSHIBAティーシャツが販売され(甲12〜甲14)、大阪市の店舗「CRUSH」でも販売されていることを確認している。
なお、申立人は、使用商標文字部分及び柴犬の絵のロゴを含む自社のデザインを使用することを、本件商標権者及びその運営会社等に許諾していない。
(5)使用商標文字部分の同一性について
上記(2)のとおり、使用商標文字部分は、申立人のデザイナーによって独自に創作されたものであるにもかかわらず、本件商標及び本件商標権者が販売しているティーシャツに付されている「SHIBA」の文字は、使用商標文字部分に酷似しているように見えることから、申立人は、使用商標文字部分と本件商標の「SHIBA」の文字部分(以下「本件商標文字部分」という。)の同一性を確認した。
本件商標を灰色に、使用商標文字部分をオレンジ色に着色し、大きさを一致させて重複させた結果、「SHIBA」の文字部分全体が、灰色とオレンジ色を混ぜた茶色に近い色で表示される結果となった(甲15)。本件商標文字部分が、使用商標文字部分をそっくりそのままトレースしたものでなければ、上記に示す結果とはならないことは明らかである。
(6)柴犬の絵のロゴの同一性について
また、本件商標権者は、本件商標と同一の商品を指定商品とし同日に出願された、ジャンプしている柴犬の図形からなる登録第6681313号商標(以下「関連登録商標」という。)も取得している。
関連登録商標及び本件商標権者が販売しているティーシャツに付されている柴犬の絵のロゴ(甲9、甲11〜甲14)は、申立人のデザイナーが創作した柴犬の絵のロゴに酷似しているように見えることから、申立人が創作した柴犬の絵のロゴと関連登録商標の同一性を確認した。
関連登録商標を灰色に、申立人の柴犬の絵のロゴをオレンジに着色し、大きさを一致させて重複させた結果、重複させた図形全体が、灰色とオレンジ色を混ぜた茶色に近い色で表示される結果となった(甲18)。関連登録商標が、申立人の柴犬の絵のロゴをそっくりそのままトレースしたものでなければ、上記に示す結果とはならないことは明らかである。
(7)商標権者の行為について
上記(5)及び(6)で述べたように、本件商標権者は、申立人のデザイナーが独自に創作した使用商標文字部分及び柴犬の絵のロゴをそのままトレースして商標登録出願を行い、本件商標及び関連登録商標を取得した。
さらに、本件商標権者は、申立人がAmazonに出品していたSHIBAグッズが本件商標に係る商標権を侵害している旨をAmazonに通報した。
その結果、申立人は、商品の出品情報及び商品詳細ページを訂正しなければ在庫が破棄される可能性があり、場合によってはアカウントを閉鎖する可能性がある旨の連絡が、Amazonからメールで通知された。これにより、申立人は、自社の人気商品であったSHIBAグッズのAmazonでの販売を中断せざるを得ない事態に追い込まれており、多大なる損害を被っている。
(8)商標法第4条第1項第7号について
ア 商標の同一性
上記(3)で述べたように、申立人は、平成27年(2015年)6月5日から、ECサイトを利用して、使用商標及び柴犬の絵のロゴを使用したSHIBAグッズの販売をしていた。
一方、本件商標権者は、上記(4)で述べたように、令和5年(2023年)8月8日からAmazonのECサイトで、申立人が使用しているものと全く同一の商標を付したSHIBAティーシャツの販売を開始した。
上記(5)及び(6)で述べたように、本件商標出願日以前から申立人が使用している使用商標と、商標権者が使用している本件商標とは、小さく表示された肉球図形以外は、図形の構成並びに文字及び書体が完全に同一の構成よりなっており、偶然に採択されたものではないことが明らかである。
申立人は、楽天ショップにおける「月間優良ショップ」及び「楽天ショップ・オブ・ザ・マンス」に7年間で8度選出され、需要者の間に広く認識されていたものであり、本件商標権者は、申立人と同じく、AmazonのECサイトにおいて、同じデザインのティーシャツを販売しているのであるから、申立人の使用していた商標をそのままトレースして流用したことは疑う余地がない。
イ 創作者について
上記(2)で述べたように、使用商標及び柴犬の絵のロゴは、申立人が創作したものである。
使用商標が著作物に該当する場合は、商標法第4条第1項第7号の運用指針の1つである「他の法律によって、その使用等が禁止されている商標」に該当することにより、そのこと自体で同号に該当する。
また、仮に使用商標が著作物に該当しない場合でも、使用商標及び柴犬の絵のロゴは、申立人のデザイナーがadobeイラストレータを使用して独自に創作したものであるから、何の苦労もせずに、使用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りフリーライド)する本件商標権者を保護する必要性は乏しく、商標法第4条第1項第7号該当性を否定する事情は見当たらない。
ウ 申立人が失う利益と本件商標権者が得る利益について
上記(3)で述べたように、申立人のSHIBAグッズの平成30年(2018年)5月5日から令和5年(2023年)12月31日までの販売点数は10,865点あり、申立人は、楽天ショップにおける「月間優良ショップ」及び「楽天ショップ・オブ・ザ・マンス」に7年間で8度選出された実績がある。
しかしながら、本件商標権者からのAmazonへの報告により、申立人はAmazonのECサイトでの出品ができなくなっていることから、申立人が失う利益は甚大である。
他方、申立人がAmazonのECサイトでの出品ができなくなると、これまで申立人からSHIBAグッズを購入していた消費者は、同一の商標での同一の商品をAmazonのECサイトで販売している本件商標権者の商品を購入することになり、同人が得る利益は莫大なものとなる。
すなわち、本件商標権者は、自らは何も苦労せずに、ただ申立人の商標をトレースした商標を出願しただけで、莫大な利益を得ることになるのである。
エ 商標権者の悪意について
本件商標の登録日は、令和6年1月17日であり、Amazonから申立人に対して商標権侵害の連絡が届いたのは、上記登録日から1か月も経たない同年2月14日であるから、本件商標権者は、本件商標の登録を受けるや否や、Amazonに商標権侵害の報告をしている。
このような態度からは、本件商標権者が本件商標の登録を受けようとした目的は、申立人をECサイトから排除して重大な不利益を被らせ、他方で自己が当該商標(申立人が創作し、申立人が長年使用し、ブランドを築いてきた周知の商標)により得られる利益を独占する意図から出たものと解する他はない。
さらに、本件商標権者は、本件商標だけでなく、申立人が使用する多数の商標について、同一の商標を使用した同一の商品を無数に販売しており(甲20〜甲22)、申立人の商標・デザインを盗用して自らの商品に使用することで、申立人の商標に化体した顧客吸引力にただ乗りする不正の目的があることを裏付ける証拠となる。
このような商標権者の意図(悪意)は、適正な商慣習に反することが明らかである。
オ 小括
上記のとおり、本件商標の要部は使用商標と完全に同一であって、当該商標は申立人が創作したものであり(著作権侵害である)、本件商標権者はこれを十分に認識していた。
さらに、本件商標権者は、申立人をECサイトから排除して、自己が当該商標により得られる利益を独占するために、本件商標が商標登録されるや否やAmazonに商標権侵害の報告をしている。
このような本件商標は、公正な競争秩序を害するものであり、公序良俗に反するものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(9)商標法第4条第1項第10号について
本件商標には「SHIBA」の文字部分の右下に、肉球図形が小さく付され、また、使用商標には、「犬」の文字を丸で囲んだ図形が小さく付されており、いずれも、「SHIBA」の文字部分に比べて極めて小さく記載されていることから、両商標の要部は「SHIBA」の文字部分である。
そして、両商標の要部である「SHIBA」の文字部分を重複させると、完全に一致するから、両商標が類似することは明らかである。
また、申立人が販売したSHIBAグッズには、被服及び帽子が大量に含まれており、本件商標の指定商品中の「被服」及び「帽子」と同一である。
そして、使用商標は、遅くとも本件商標の出願日までには、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていた商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(10)商標法第4条第1項第11号について
ア 引用商標
引用商標は、左側を向いている黒色の柴犬の図形の中央部に、横書きで記載した欧文字「SHIBA′S」を白色で重ねた構成からなるものである。
イ 商標の同一・類似性
本件商標と引用商標を対比すると、引用商標の「SHIBA′S」の全体からは「シバズ」の称呼を生じるが、「′S」の部分が「〜の」という意味を成すのみであることを理解させるため、引用商標は「シバ」の称呼も生じる。
そして、本件商標は「シバ」の称呼を生じるから、両商標の称呼は同一又は類似である。
また、引用商標の中央部には「SHIBA′S」の文字が大きく記載されており、この6文字中の5文字「SHIBA」が、本件商標の「SHIBA」と一致するから、両商標は、外観も類似する。
さらに、引用商標は、柴犬の絵と「SHIBA′S」の文字が共に大きく記載されているため、引用商標は柴犬の観念を生じ、本件商標権者も意見書において「本願商標「SHIBA」は「柴犬」の観念が生ずる。」と主張しているように、本件商標も柴犬の観念を生じさせるから、両商標は、観念も同一又は類似である。
以上のように、本件商標と引用商標は、外観、称呼、及び観念のいずれも同一又は類似であるから、両商標が類似することは明らかである。
ウ 本件商標の指定商品中、「被服」及び「帽子」は、引用商標の指定商品「被服」と同一又は類似である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(11)商標法第4条第1項第19号について
使用商標は、本件商標の出願日までには、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていた商標である。
本件商標中の「SHIBA」の文字の右下には肉球図形が小さく付されており、申立人が販売したSHIBAグッズに付されている商標は、「SHIBA」の文字の右下には、「犬」の文字を丸で囲んだ図形が小さく付されており、これらはいずれも「SHIBA」の文字に比べて極めて小さく記載されている。
したがって、両商標の要部は「SHIBA」の文字部分であり、これらを重複させると完全に一致することから、両商標が類似することは明らかである。
本件商標権者は、人気商品であった申立人のSHIBAグッズのデザインを盗用してティーシャツを販売すれば利益を上げられるとの確信を得たうえで、申立人のSHIBAグッズに使用されていた使用商標及び柴犬の絵のロゴをそのままトレースして盗用し、本件商標及び関連登録商標の出願を行った。
したがって、本件商標権者は、使用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りフリーライド)する不正の目的で本件商標を出願して登録したものと認められ、また、本件商標の取得行為、及び本件商標権者が本件商標を指定商品に使用する行為は、申立人の著作権を侵害する行為でもある。
さらに、本件商標権者は、申立人のSHIBAグッズが、本件商標に係る商標権を侵害している旨をAmazonに通報し、申立人によるAmazonでのSHIBAグッズの販売を中断させることで、自らのSHIBAティーシャツの売上げを増加させて不当な利益を得るとともに、申立人に損害を与えている。
上記の本件商標権者の行為は、適正な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠く行為というべきであり、不正な目的で本件商標が出願されたことの裏付けにもなり、本件商標を維持させることは、公正な取引秩序の維持の観点からみても不適当であって、商標法の目的にも反するものである。
以上のように、本件商標の取得経緯、本件商標権者が本件商標を指定商品に使用する行為、及び本件商標に係る商標権の侵害を通報した行為は、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反することは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)使用商標の周知性について
申立人は、自身のデザイナーがadobeのイラストレータのソフトウェアを使用して別掲3の構成からなる使用商標を創作し、2015年6月5日から使用商標と横向きの動物のシルエット図形(以下「申立人動物図形」という。)を組み合わせたものを付したティーシャツ、ポロシャツ及び帽子等(以下「申立人商品」という。)を販売し、使用商標は、遅くとも本件商標の登録出願日までには、我が国の需要者の間に広く認識されていた旨、並びに申立人は楽天ショップにおける「月間優良ショップ」及び「楽天ショップ・オブ・ザ・マンス」に7年間で8度も選出された実績がある旨主張し、証拠を提出している。
しかしながら、提出された証拠によれば、申立人商品が販売されていることはうかがえるものの、その販売開始時期を確認できる証拠の提出はなく、たとえ、2018年5月5日ないし2023年12月31日の期間の申立人商品の売上数が10,865点(甲6)であったとしても、申立人商品の需要者が一般消費者であることからすれば、さほど多いとはいえないものであり、加えて、使用商標が単独で使用されている証拠も見いだせず、その他、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、使用商標が、我が国又は外国の需要者の間で、申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されているものと認めるに足りる事実は見いだせない。
したがって、使用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性について
本件商標は、ややデザイン化された「SHIBA」の欧文字を横書きし、その右側下部に犬の肉球を模した小さな図形を配した別掲1のとおりの構成からなるものであり、他方、使用商標は、ややデザイン化された「SHIBA」の欧文字を横書きし、その右側下部に、円輪郭内に「犬」文字を表示した小さな図形を配した別掲3のとおりの構成からなるものであり、両者は大きく表された同一又は酷似する「SHIBA」の文字部分を共通にするものであるから、類似する商標と認められる。
しかしながら、使用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
したがって、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
そして、本件商標は、上記(2)のとおり、使用商標と類似する商標であるとしても、上記(1)のとおり、使用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているとは認めることはできないから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
また、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、使用商標は申立人のデザイナーが創作したものであり、本件商標の登録出願前から、使用商標と申立人動物図形を組み合わせて使用した商品を販売していたこと、本件商標は使用商標と「SHIBA」の文字部分が同一であること、また、使用商標が著作物に該当する場合は、商標法第4条第1項第7号の運用指針の一つである「他の法律によって、その使用が禁止されている商標」に該当することにより、本号に該当する旨主張している。
しかしながら、使用商標は、上記(1)のとおり、需要者の間に広く知られているものでもなく、申立人が使用商標と申立人動物図形を組み合わせて付したティーシャツ等の商品を販売したことがうかがえるとしても、申立人のデザイナーが使用商標を創作したことを裏付ける証拠(甲2〜甲5)は、単に使用商標と申立人動物図形等が表示されているにすぎないものであるから、これによっては、作成者も明らかではなく、使用商標を申立人又は申立人デザイナーが作成した事実を客観的に裏付けるものとはいい難く、使用商標が著作物に当たるか否かにかかわらず、上記申立人の主張を認めることはできない。
なお、申立人は、本件商標権者は、申立人をECサイトから排除して利益を独占するために、本件商標が登録されるや否やAmazonに商標権侵害の報告をした旨及び本件商標権者は、本件商標以外にも申立人の創作した商標を使用した商品を販売している旨主張しているが、自己の商標登録に基づき警告することは不当な行為とはいえず、また、上記申立人が創作したと主張する商標についても、申立人がそれらを作成し、販売した事実を具体的に確認できる証拠は見いだせず、さらに、申立人提出の証拠によっては、本件商標の登録出願について、不正の目的があったものとまでは認めることはできない。
その他、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
以上によれば、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、上記(2)のとおりの構成からなるところ、その構成中の「SHIBA」の文字部分に相応し「シバ」の称呼を生じ、当該文字の読みである「シバ」に該当する語は「芝」、「柴」、「司馬」等複数あり、特定の意味合いを認識させるものとはいえないことから、本件商標からは、「シバ」の称呼を生じ特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標
引用商標は、左側を向いた動物のシルエット図形(以下「引用動物図形」という。)の中に白抜きで「SHIBA′S」の欧文字を配した別掲2の構成からなるものであるところ、構成中の「SHIBA′S」の文字部分に相応し、「シバズ」の称呼を生じ、引用動物図形が犬を想起させる場合があるとしても特定の動物を認識させるとまではいえず、構成中の「SHIBA′S」の文字は、特定の意味合いを直ちに認識させるとはいえないことからすれば、引用商標からは、「シバズ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の比較
本件商標及び引用商標は、それぞれ上記のとおりの構成からなるところ、両商標は、その構成全体の比較においては引用動物図形の有無において明らかに相違しており、また、本件商標の構成中の「SHIBA」の文字部分と引用商標の構成中の「SHIBA′S」の文字部分とは、後半の「′S」の有無の差異があることから、両商標は、外観において判然と区別できるものである。
また、本件商標から生じる「シバ」の称呼と引用商標から生じる「シバズ」の称呼とは、わずか2音又は3音という極めて短い音構成おいて、「ズ」の音の有無の差異は大きいものといえ、明瞭に聴別できるものである。
さらに、本件商標及び引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において明確に区別できるものであるから、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標の指定商品が引用商標の指定商品と同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではなく、その他、同法第43条の2の各号に該当するというべき事情は見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1 本件商標


別掲2 引用商標


別掲3 使用商標(甲3)



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異議決定日 2024-12-23 
出願番号 2022076159 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W25)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 鈴木 雅也
特許庁審判官 板谷 玲子
馬場 秀敏
登録日 2024-01-17 
登録番号 6770787 
権利者 黒川 暢朗
商標の称呼 シバ 
代理人 加藤 淳也 
代理人 大川 智也 

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