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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W09 |
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管理番号 | 1420584 |
総通号数 | 39 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2025-03-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2024-03-19 |
確定日 | 2025-01-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6768748号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6768748号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6768748号商標(以下「本件商標」という。)は、「yoga journey」の欧文字を標準文字で表してなり、令和5年4月13日に登録出願、第9類「電子出版物,電気通信機械器具,携帯情報端末,電子計算機用プログラム,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」並びに第35類、第41類及び第44類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年11月21日に登録査定され、同6年1月11日に設定登録されたものである。 第2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立てにおいて、引用する登録第5664756号商標(以下「引用商標」という。)は、「YOGA」の欧文字を横書きしてなり、2012年3月30日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、平成24年10月1日に登録出願、第9類「コンピュータ,ポータブルコンピュータ,タブレット型コンピュータ,コンピュータソフトウエア,コンピュータ周辺機器」を指定商品として、同26年4月18日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第9類「電子出版物,電気通信機械器具,携帯情報端末,電子計算機用プログラム,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」(以下、「申立てに係る商品」という。)について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第21号証を提出した。 1 申立人及びそのグループ会社、並びに申立人に係る「YOGA」シリーズのコンピュータについて (1)申立人及びそのグループ会社について 申立人は、アメリカに本店を置き、シンガポール等にオペレーションセンターを置く中国のパーソナルコンピュータ(PC)メーカーであるレノボ・コーポレイション(英語:Lenovo Corporation、以下「レノボ」という。)として知られる、世界的企業体「レノボグループ」の北京の本社である(甲3)。 レノボは、1984年に設立され、その後、2004年にIBM社のPC部門を買収し、日本企業では、2011年に日本電気(NEC)のPC部門を買収し、「合弁会社Lenovo NEC Holdings B.V.(レノボNECホールディングス)」と「NECレノボ・ジャパングループ」を設立している。その他ドイツの大手PCメーカー、メディオンを買収し、アジア太平洋市場ではシェア1位を取り続け、中東アフリカ・ヨーロッパ・世界市場でもシェア2位となり、2013年からは世界シェア1位のPCベンダーとなった(甲3、甲4)。その後レノボは、2017年には、富士通のPC部門を買収し、日本市場では1995年の日本電気(NEC)以来となる4割超の圧倒的なシェアを得た(甲3、甲5)。また、2018年には、世界のコンピュータの性能ランキングを競い合うTOP500(甲6)で、スーパーコンピュータのシェア世界1位のベンダーとなった(甲3)。近年では2020年に、レノボは日本国内のパソコン市場において16.5%のシェアを獲得し、前年の5位から一気に首位に踊り出ている(甲7)。また、2023年第3四半期には、レノボは世界のPC出荷台数の25.1%の市場シェアを獲得し、HP社とDell社と併せて、世界のPC販売の約3分の2を占めている(甲8)。さらにIT分野の米国大手調査会社によると、2022年第4四半期は、そのPC出荷台数から、市場において最大の24.9%のシェアを占め、2023年第4四半期は、同じくそのPC出荷台数から、市場において最大の25.6%のシェアを占めると予測されている(甲9)。 このように、レノボグループは設立後、その企業努力によって、世界のPC市場における著名性を獲得している。 (2)申立人に係る「YOGA」シリーズのコンピュータについて レノボは2012年11月に発売した「IdeaPad Yoga 13」を皮切りに、「YOGA」シリーズのコンピュータの製造・発売を開始し(甲10)、現在では、「Yoga Slim 7X Gen 9」や「Yoga Pro 7i Gen 9」など数多くの「YOGA」シリーズのコンピュータを世界中で販売している(甲11)。甲第12号証は、2019年11月から2023年12月までに、製作・配布したレノボの「YOGA」シリーズのコンピュータ製品カタログ及びリーフレットの一部である。 レノボの「YOGA」シリーズは、本件商標の出願日である2023年4月13日以前から、コンピュータ関連の分野で周知となっている。例えば、2023年4月2日付けの資料(甲13)では、「Lenovo Yoga Smart Tab レビュー評価をまとめて大人気の理由を探る」との題目のもと、当該コンピュータの説明が詳細に掲載されていることから、レノボ「YOGA」シリーズのコンピュータが人気を博していることが分かる。また、2023年4月6日付けの資料(甲14)では、「YOGA」シリーズの「Yoga 6 GEN 8 13.3型(AMD)」について、その特徴や情報が多く掲載され、本件商標の出願日と同日付けのレノボのウェブサイトにおいても、「YOGA」シリーズのノートパソコンについて、細かく説明している(甲15)。さらに、2023年8月6日付けの資料(甲16)では、「【Yoga Tab13 レビュー】生活を劇的にかえるタブレットの決定版」と題して「YOGA」シリーズのタブレットパソコンについて特集が組まれている。2023年10月9日付けの資料(甲17)においても、「日本におけるレノボのタブレットの人気と特徴」と題し、「Lenovo Yoga タブレット」について紹介されている。その後、2023年12月1日付けの資料(甲18)は、「Windowsタブレットおすすめ27選」と題しており、その中で「YOGA」シリーズの2in1タブレットが紹介されている。 これら資料は、引用商標に係るレノボの「YOGA」シリーズのコンピュータが、日本において周知著名性を獲得していることの証左である。 レノボは、積極的に「YOGA」シリーズのコンピュータの広告宣伝にも力を入れており、2022年11月から2023年6月にかけて、日本の広告代理店と契約し、インターネット等でバナーも含め、「YOGA」シリーズコンピュータについて行ったWeb広告を行い(甲19)、広告宣伝活動に関する企業努力の結果もあり、申立人及びそのグループ会社の「YOGA」シリーズコンピュータは、日本において周知性を獲得したといえる。 2 商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、欧文字「yoga journey」を標準文字で表した商標であり、「精神と肉体を制御してリラックスするための健康法」の意味を有する「yoga」(甲20)と、「旅、旅行」の意味を有する「journey」(甲21)の結合商標であり、本件商標は、両語の間に、1文字程度のスペースが設けられている点、これら両語には観念上のつながりがない点を考慮すると、「yoga」と「journey」とをそれぞれ分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど強く結合していない。 そのため本件商標中「yoga」の部分から称呼、観念が生じ、他の商標との類否判断の対象となり得るものであり、当該「yoga」の文字は、引用商標「YOGA」と綴りが同じであることから、外観が類似し、また、両商標の称呼「ヨガ」も共通し、観念についても、「精神と肉体を制御してリラックスするための健康法」という意味を共通にする。 よって本件商標と引用商標は、類似する。 また、本件商標の指定商品の一部である第9類「携帯情報端末,電子計算機用プログラム」は、引用商標の第9類の指定商品「コンピュータ,ポータブルコンピュータ,タブレット型コンピュータ,コンピュータソフトウエア,コンピュータ周辺機器」と類似群「11C01」において共通するため、これら指定商品は互いに類似するものである。 以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 3 商標法第4条第1項第15号について 引用商標「YOGA」は、申立人及びそのグループ会社が全世界で販売するコンピュータについて永年使用してきた結果、本件商標の出願日及び登録査定時において、周知著名となっているため、本件商標はレノボの「YOGA」シリーズのコンピュータに関連する商品と混同を生じるおそれがある商標に当たる。 (1)本件商標と引用商標の類似性 本件商標と引用商標は類似する。 (2)引用商標の周知性 引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、レノボのコンピュータ及びその関連商品を示す商標として、高い知名度を獲得していた。 (3)他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあるか否か 引用商標「YOGA」に係るレノボのコンピュータは、例えば「Yoga Slim 7X Gen 9」や「Yoga Pro 7i Gen 9」のように「Yoga」を冠した名称を有するため、本件商標「yoga journey」を第9類の商品に使用した場合、これに接した取引者及び需要者が、あたかも申立人又はそのグループ会社の業務に係る商品であるかのごとく、誤って認識する可能性が極めて高い。 したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であり、商標法第4条第1項第15号に該当する。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知・著名性について (1)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 ア 申立人は、アメリカに本店を置く、中国のパーソナルコンピュータメーカーであるレノボ・コーポレイション(レノボ)のグループ(レノボグループ)の北京の本社である(甲3)。 イ レノボは、1984年に設立され、その後、2004年にIBM社のPC部門を買収し、日本企業では、2011年に日本電気(NEC)のPC部門を買収し、「合弁会社Lenovo NEC Holdings B.V.(レノボNECホールディングス)」及び「NECレノボ・ジャパングループ」を設立した。2013年からは世界シェア1位のPCベンダーとなった(甲3、甲4)。 ウ レノボは、2017年に富士通のPC部門を買収し、日本市場では、4割超のシェアを得た(甲3、甲5)。また、2020年度は、日本国内のパソコン市場において16.5%のシェアを獲得し、前年の5位から1位となった(甲7)。 エ レノボは、2023年第3四半期には、世界のPC出荷台数の25.1%の市場シェアを獲得している(甲8)。 オ レノボは、2012年11月に「IdeaPad yoga 13」を発売し(甲10)、その後「YOGA Slim 7x Gen 9」、「YOGA Pro 7i Gen 9」など「YOGA」シリーズのコンピュータを製造販売し、当該商品のカタログ等を製作・配布している(甲11、甲12)。 カ 2023年4月2日ないし同年10月9日付けのウェブサイトでは、「Lenovo Yoga Smart Tab」、「Yoga 6 Gen 8 13.3型(AMD)」及び「Lenovo Yoga タブレット」など「YOGA」シリーズのコンピュータの紹介記事等が掲載された(甲13〜甲17)。 キ 2022年11月ないし2023年6月にかけて、「YOGA」シリーズ商品のウェブ広告が掲載された(甲19)。 (2)上記(1)の事実からすれば、レノボグループは、2012年頃から現在まで「IdeaPad yoga 13」及び「Lenovo Yoga タブレット」など「Yoga(YOGA)」の文字を冠したコンピュータの製造販売を行い、ウェブ広告等を行ったことなどが認められるものの、申立人等による引用商標の使用の態様、引用商標を使用したコンピュータの市場比率(販売シェア)等の使用規模、ウェブ広告の閲覧数、カタログ及びリーフレットの製作・配布部数や配布方法、地域及び広告宣伝費等に係る証拠の提出はなく、申立人提出の証拠によっては、我が国における周知性の程度を客観的に推し量ることができない。 さらに、引用商標である「YOGA」の文字が、申立人等の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めるに足る事情は見いだせない。 そうすると、「YOGA」の文字からなる引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人等の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されているとはいえない。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、「yoga journey」の文字を標準文字で表してなるところ、「yoga」の文字と「journey」の文字の間に1文字程度のスペースを有しているとしても、その構成文字は、同じ書体で外観上まとまりよく一体的に表されているものであり、これより生じる「ヨガジャーニー」の称呼もよどみなく一連に称呼し得る。 そして、本件商標の構成中「yoga」の文字は、「ヨガ(ヒンドゥー教の宗教哲学)、ヨガの行(体操)」の意味を、また、「journey」の文字は「旅行」(いずれも、株式会社大修館書店「ベーシックジーニアス英和辞典 第2版」)の意味を有するいずれも平易な英語であるとしても、上記のとおりの外観及び称呼における一体性からすれば、本件商標に接する取引者、需要者は、特定の文字部分のみに着目することなく、構成文字全体をもって、特定の意味を有しない一体不可分の造語を表したものとして認識するとみるのが相当である。 したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「ヨガジャーニー」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。 (2)引用商標について 引用商標は、「YOGA」の欧文字を横書きした構成からなるところ、該文字は、「ヨガ(ヒンドゥー教の宗教哲学)、ヨガの行(体操)」の意味を有する平易な英語である。 してみれば、引用商標は、その構成文字に相応して、「ヨガ」の称呼を生じ、「ヨガの行(体操)」の観念が生じる。 (3)本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標とを比較すると、外観においては、両商標は、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、後半部の「journey」の文字の有無により、明らかな差異を有するものであり、本件商標と引用商標は、外観上、明確に区別できる。 次に、称呼においては、本件商標から生じる「ヨガジャーニー」の称呼と引用商標から生じる「ヨガ」の称呼とは、後半部分において「ジャーニー」の音の差異を有し、明らかな音数の相違により、両者をそれぞれ一連に称呼しても語調語感が異なり、称呼上、明瞭に聴別できる。 さらに、観念においては、本件商標は、特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は、「ヨガの行(体操)」の観念を生じるものであるから、両者は、観念上も相紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれはないから、両商標は、互いに非類似の商標というのが相当である。 (4)小括 以上のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、たとえ、本件商標の申立てに係る商品が引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を含むとしても、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について 引用商標は、上記1のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることができないものである。 また、上記2のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であり、別異の商標というべきものであるから、類似性の程度は高いとはいえない。 そうすると、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性の程度、需要者の共通性の程度などを合わせ考慮しても、本件商標は、商標権者がこれを申立てに係る商品について使用した場合、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 むすび 以上のとおり、本件商標は、申立てに係る商品について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2024-12-23 |
出願番号 | 2023046824 |
審決分類 |
T
1
652・
261-
Y
(W09)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
大島 康浩 |
特許庁審判官 |
小林 裕子 大島 勉 |
登録日 | 2024-01-11 |
登録番号 | 6768748 |
権利者 | 田村 佳世 |
商標の称呼 | ヨガジャーニー、ジャーニー |
代理人 | 行田 朋弘 |
代理人 | 小暮 理恵子 |
代理人 | 上田 ゆかり |