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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W30 |
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管理番号 | 1420575 |
総通号数 | 39 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2025-03-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-07-10 |
確定日 | 2024-12-27 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6694913号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6694913号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6694913号商標(以下「本件商標」という。)は、「POCKET MONSTERS」の文字を標準文字で表してなり、令和4年9月1日に登録出願、第30類「茶,茶飲料,コーヒー,コーヒー飲料,ココア,ココア飲料,菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。),コンフェクショナリー,ペストリー,キャンディー,アイスクリーム,クッキー,チョコレート,ポップコーン,チューインガム,パン,サンドイッチ,ピザ,パイ,洋菓子,フローズンヨーグルト,クラッカー,息をさわやかにするミント(菓子),調味料及び香辛料,ケチャップソース,サラダ用ドレッシング,穀物調製品,朝食用穀物食品(シリアル),めん類,パスタ,パスタソース,米」並びに第3類、第9類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類、第25類、第28類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同5年3月23日に登録査定され、同年5月1日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 商標登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由として、引用する商標は次のとおりであり、引用商標1ないし引用商標4の商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。 1 申立人が引用商標として明示した商標 (1)登録第5379390号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:MONSTER(標準文字) 指定商品:第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日:平成22年7月8日 設定登録日:平成22年12月24日 (2)登録第5057229号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:別掲1のとおり 指定商品:第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日:平成18年6月9日 設定登録日:平成19年6月22日 (3)登録第5393681号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:MONSTER ENERGY(標準文字) 指定商品:第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日:平成22年7月8日 設定登録日:平成23年2月25日 (4)登録第6612467号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の構成:REHAB MONSTER(標準文字) 指定商品:第30類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日:令和4年4月25日 設定登録日:令和4年9月8日 2 申立人主張より合議体が認めた引用商標 (1)「MONSTER」の欧文字からなる商標(以下「引用商標5」という。) (2)「モンスター」の片仮名からなる商標(以下「引用商標6」という。) なお、以下、引用商標1ないし引用商標6をまとめて「引用商標」という場合がある。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標はその指定商品及び指定役務中、第30類の全指定商品(以下「申立てに係る商品」という。)について、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号の規定に違反してなされたものであるから取り消すべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第512号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 申立人のMONSTERブランドの周知著名性について (1)MONSTERブランドの創設及び「MONSTER」の使用 申立人は、2002年に「MONSTER」なるエナジードリンクのブランド(以下「MONSTERブランド」という。)を創設し、これ以降、現在に至るまで、「MONSTER」をMONSTERブランドのエナジードリンク(以下「申立人商品」という。)の出所識別標識として使用している。 申立人商品は、2002年に米国でMONSTERブランドの第1号の個別製品「MONSTER ENERGY」を発売後、世界各国における販売も開始し、現在は日本を含む世界130以上の国及び地域で販売中である。 申立人商品には、2002年以降現在まで一貫して、「MONSTER」の文字を基調とする個別商品名(例えば、「MONSTER ENERGY」「MONSTER ASSAULT」「MONSTER KHAOS」「MONSTER M−80」など)が採用されている。 また、これらの個別製品の包装容器は同じデザインで統一されており、特徴的な書体で大きく表示した「MONSTER」の文字(甲416)を独立して見る者の目をひきつける態様で顕著に表示している(別紙1、2)。 このように、規則的なネーミング法(すなわち「MONSTER」に他の語を結合する方法)で命名された個別製品名と特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字を顕著に表示した統一的デザインの包装容器を特徴とする申立人商品は、需要者の間でたちまち人気となり、申立人のMONSTERブランドのエナジードリンク事業を拡大し、その成功は経済界で高い評価を受けている(甲2〜甲33、甲51〜甲58、甲391〜甲393)。 国内では、2012年5月の「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジー 缶 355ml)及び「MONSTER KHAOS」(モンスター カオス 缶 355ml)発売以降、現在まで29種類(リニューアル商品を含む。)の申立人商品を販売している(別紙1)。 (2)広告宣伝活動について 申立人商品に関する広告宣伝活動は、幅広く継続的なものであり、国際的に活躍する多数の有名アスリート・チーム及びイベントに対するスポンサー活動を中核として、ウェブサイト及びプレスリリースによる広告、申立人商品サンプルの配布、大手コンビニエンスストアやイベント主催者と提携した大規模な販売キャンペーン(景品・賞品のプレゼントを含む。)、スポーツイベント等の開催、契約アスリート等の動画・画像の公開、MONSTERブランドのライセンス商品の開発及び販売、ビデオゲーム会社と提携したMONSTERブランドを使用したビデオゲームの開発及び共同販売促進活動の実施など極めて多彩な内容である。こうした広告宣伝活動は、「MONSTER」の文字(特徴的な書体で表示したものを含む。)、爪の図柄と特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字と活字体で表示した「ENERGY」の文字からなるロゴマーク、「MONSTER ENERGY」の文字(以下、これらを併せて「MONSTERブランドマーク」という。)を使用して、本件商標の登録出願日前から継続的かつ頻繁に全国規模で実施されている(別紙3〜別紙7)。 また、申立人は、申立人商品の中心的需要者層である10〜30代の若い世代(特に男性)に人気が高いモータースポーツ、エクストリームスポーツの分野を中心にスポンサー活動を行うとともに、全16の異なるウェブサイト及びソーシャルメディアのアカウント(別紙9)を開設して、こうした若い世代が多く利用するインターネットメディアによる大規模な情報発信を通じてMONSTERブランドを需要者に強くアピールするための効果的な広告を実施している。 (3)ライセンス商品の輸入差止について 需要者におけるMONSTERブランドのライセンス商品の人気の高さに便乗して、海外で製造された申立人の商標権侵害物品が日本の税関で輸入差止される事案が遅くとも平成25年7月から度々発生している(別紙8)。 (4)国内外における商標登録について MONSTERブランドマークについて、申立人は、引用商標をはじめとして、国内外において多数の商標登録を取得している(甲486〜甲503)。 (5)ブランド認知度及び市場占有率について 複数の第三者が実施したエナジードリンクに関する市場調査及び消費者アンケート調査によれば、既に2013年時点で申立人商品の国内市場占有率は25%を超えており、一般消費者におけるブランド認知度も第2位であったことが明らかである。 2013年以降も、申立人商品は着実に売上を伸ばしており、若い世代の男性を中心とした従来の主要需要者層に止まらず、美しいカラフルな色使いのボトル缶に大きく目立つ態様で表示された爪の図柄(以下「爪図柄」という。)が人目をひきつけ、男性のみでなく女性の間でもMONSTERブランドの認知度を高めてきた。 2018年には、申立人商品の販売実績は1千万ケースに近づき、それまで首位の「レッドブル」を超えて市場占有率トップに立った(甲311〜甲322、甲383〜甲385、甲433)。 申立人商品は、2018年に国内エナジードリンク市場でトップシェアを獲得後は、首位を独走状態であり(甲448、甲476、甲479)、第三者の市場調査では2022年時点における申立人商品の市場占有率は約40%であった(甲450)。 (6)「MONSTER」「モンスター」の表示で認識されていたこと 上記のような販売実績を通じて、申立人商品は、飲料業界で「モンスター」と称され、「MONSTER」「モンスター」と表示され、「MONSTER(モンスター)」のブランドとして認識されている(甲10、甲16、甲17、甲34、甲42ほか)。 この点に関しては、特許庁の審査においても、「モンスター」は、申立人が飲料等について使用する商標「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」の略称として需要者の間で広く認識されていると認定されている(甲433、甲447)。 (7)小括 以上の事柄に照らせば、申立人の使用に係る「MONSTER」及びその音訳「モンスター」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の製造販売に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について 本件商標の構成文字「POCKET MONSTERS」は、辞書等に掲載されている成語ではないところ、「POCKET」の文字はその音訳が外来語の「ポケット」(甲506、甲507)として、「MONSTERS」の文字はその音訳が外来語の「モンスター」(甲504、甲505)としてそれぞれ親しまれていることから、「POCKET」と「MONSTER」の複数形「MONSTERS」の2語を結合したものとして容易に認識、理解されるものである。 申立人は、本件商標の出願日前までに16種類の異なる個別製品名を用いて15種類の異なるフレーバー(リニューアル製品を含む。)の申立人商品を販売し、本件商標の査定日までに17種類の個別製品を用いて16種類の異なるフレーバー(リニューアル製品を含む。)の申立人商品を販売した(別紙1)。 さらに、上記の個別製品のうち、少なくとも13種(12種類の異なるフレーバー)の申立人商品が本件商標の登録出願時に販売を継続中であり、少なくとも14種(13種類の異なるフレーバー)の申立人商品が本件商標の査定時に販売を継続中であった(甲474)。そして、これらの全個別製品名に「MONSTER(モンスター)」の文字が使用されていた(別紙1)。 本件商標の登録出願時における申立人商品の市場占有率は約40%であったから、本件商標の登録出願時及び登録査定時に市場で取引されていた全エナジードリンクの約40%の製品名に申立人商品であることを表示する「MONSTER(モンスター)」の文字が使用されていたことが明らかである。 よって、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、エナジードリンクの分野において「MONSTER(モンスター)」の文字を包含する製品名は申立人商品を直ちに想起、連想させるものであり、申立人商品のブランドとして認識されるものであったということができる。 本件商標の構成文字は、その登録出願時及び登録査定時に申立人商品のブランドを表示するものとして広く認識されていた「MONSTER」を包含するものであると極めて明瞭に認識、理解できるものであり、その登録出願時に既に申立人商品に使用されていた少なくとも13種(12種類の異なるフレーバー)の個別製品名と同一のネーミング規則、すなわち、「MONSTER(モンスター)」に他の語(文字)を結合する方法で構成されている。 本件商標が使用される指定商品中、第30類「茶,茶飲料,コーヒー,コーヒー飲料,ココア,ココア飲料」は、その原材料、用途、効能、販売場所、需要者層を申立人商品と共通にするものである。その他の指定商品も菓子、パン類などの日常で消費される加工食品を多く含み、申立人商品との関連性が密接である。 したがって、本件商標が本件商標の権利者(以下「商標権者」という。)により使用された場合には、申立人のMONSTERエナジードリンクの個別製品のひとつであると誤信され、あるいは、当該商品が申立人との共同開発商品ないしライセンス商品であると誤信されて、出所混同を生じるおそれがある。 加えて、商標権者による本件商標の使用は、申立人商品の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER(モンスター)」の出所表示力を希釈化するものであり、また、その名声、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標が商標権者により使用された場合、申立人商品の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER(モンスター)」の出所表示力が希釈化することが明らかである。 また、商標権者による本件商標の使用は、申立人のMONSTERブランドについて獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず、申立人に経済的及び精神的損害を与える。 したがって、本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあるものといわざるを得ない。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知性について (1)申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など。)によれば、次のとおりである。 ア 申立人は、米国の飲料メーカーであって、我が国においてはアサヒ飲料株式会社を通じて2012年5月にエナジードリンク「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」及び「MONSTER KHAOS(モンスター カオス)」の販売を開始し、その後、2022年まで毎年、新製品やリニューアル商品を販売した(甲7、甲8、甲10〜甲13、甲59、甲101、甲127、甲130、甲253、甲256、甲257、甲291、甲354〜甲358、甲434、甲446、甲460ほか)。 イ 申立人商品の多くの種類の商品の容器には、爪痕のような図形と、別掲2のとおり、デザイン化された「MONSTER」の文字(以下「MONSTERロゴ」という。)及び「ENERGY」の文字からなる商標(色彩が異なるものを含む。以下「別掲2商標」という。)が表示されている(甲7、甲8、甲10〜甲13など上記アと同じ。)。 ウ 申立人は、我が国で開催される各種のスポーツ競技会、イベントにおいて、看板、ユニフォーム、車体など多種多様なものに、別掲2商標又はこれと共に爪の図柄を表示している(甲73〜甲80、甲82ほか)。 エ 我が国において、別掲2商標又はこれと共に爪の図柄が表示されたステッカー、衣類、帽子、ヘルメットなどが販売されている(甲47、甲48、甲98ほか)。 オ 有限会社飲料総研の調査によれば、我が国における2013年のエナジードリンクの出荷数は約950万ケース(1ケース30本換算)であり、首位のレッドブルが550万ケース、2位のモンスターエナジーは240万ケースであった(甲317、甲318、甲320)。 カ ジャストシステムによるエナジードリンクに関する調査(2014年4月)によれば、認知度が高い商品の1位は82.8%の「RedBull」、2位は47.6%の「MONSTERENERGY」であった(甲319)。 キ JMR生活総合研究所による消費者調査 No.196「エナジードリンク(2014年7月版)」によれば、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」で45%、2位が「モンスターエナジー」で31%であり、同消費者調査No.232「エナジードリンク(2016年8月版)」によれば、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」、2位は「モンスターエナジー」であったと推認できる(甲311、甲312)。 ク 日本経済新聞社の2019年3月29日付け「(飲料HOT&COOL)モンスターエナジー、レッドブル超え」をタイトルとするウェブページには、「日経MJ」として、「飲料総研によると2018年の販売実績は1千万ケースに近づき、それまでカテゴリーの首位を走っていた「レッドブル」を超えた。」との記載がある(職権調査)。 ケ 2022年5月7日付け「モンスターエナジー、レッドブルを駆逐しトップ独走状態の秘密・・・周到な販売戦略」をタイトルとするウェブページには、「全国のドラッグストアのPOSデータをもとにした買物指数によると、エナジードリンクの火付け役だった「レッドブル・エナジードリンク」を抑え、モンスターエナジーの売り上げが独走状態になっている。今や日本国内のトップシェアを獲得しているのだ。」との記載がある(甲448)。 コ JMR生活総合研究所による「消費者調査データ No.365「エナジードリンク(2022年5月版)」」によれば、ブランド認知率の1位は「リアルゴールド」、2位が「レッドブル」で57.6%、3位が「モンスターエナジー」で55.4%であった(甲449)。 サ 2022年10月25日付け「日経クロストレンド」と称するウェブページには、「エナジードリンク飛躍、販売額4年で3倍増 日本コカは苦戦」のタイトルのもと、「エナジードリンク、メーカー別販売金額シェアの推移」の図があり、それには2018年9月ないし2022年9月として、「モンスターエナジージャパン」がいずれも40%前後でトップシェアとされている(甲450)。 シ 申立人及びアサヒ飲料株式会社(以下、両者をあわせて「申立人等」という。)は、本件商標の登録出願の日前から、申立人商品に係るニュースリリース、ポスターなどで申立人商品を「モンスターエナジー」と表示し、また、申立人等以外のウェブページにおいても、申立人商品は「モンスターエナジー」と表されている。なお、「モンスター」及び「MONSTER」の文字は、申立人商品の写真とともに表されていることが散見される(甲58、甲63、甲69、甲71、甲101〜甲103、甲113、甲115、甲118、甲119、甲124、甲132、甲162、甲163、甲165、甲241、甲251、甲256、甲258〜甲260ほか)。 (2)上記(1)からすると、申立人等は、我が国において、2012年5月からエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の販売を開始し、その後現在まで約30種類の申立人商品を販売していること、各種のスポーツ競技会及びイベントなどを通じ、申立人商品の広告宣伝を行っていたこと、2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数約950万ケースのうち、申立人商品の出荷数は240万ケースで第2位であり、申立人商品の販売実績は2018年(平成30年)に1千万ケースに近づき、以後2022年(令和4年)まで毎年販売シェア40%前後で第1位であること、及び、申立人商品はエナジードリンクのブランド認知率の調査において、2014年は47.6%と31%と数値に差異はあるものの、いずれの調査でも第2位であり、2016年は2位であり、2022年は55.4%で第3位であったことなどが推認できるから、申立人商品は、本件商標の登録出願の日(2022年(令和4年)9月1日)ないし登録査定日(2023年(令和5年)3月23日)において、我が国のエナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。 そして、申立人商品の多くの種類の商品(の容器)にMONSTERロゴ及び「ENERGY」の文字(別掲2商標)が表示され、申立人等などが申立人商品を「モンスターエナジー」と表していることから、引用商標2及び引用商標3は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、いずれも申立人等の業務に係る商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものといえる。 しかしながら、申立人商品の広告宣伝は、各種のスポーツ競技会及びイベントなどを通じて行われているものの、老若男女を問わず幅広い需要者層が目にする機会の多い一般的なメディアを通じたものとはいえないばかりか、我が国における清涼飲料に対する申立人商品の市場占有率等も確認することができないこと等を総合的に判断すると、申立人商品並びに引用商標2及び引用商標3は、幅広い需要者層を有する一般的な清涼飲料の分野においてまで、取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは、認めることができない。 また、申立人商品は、その容器に「MONSTER」及び「ENERGY」の各文字が比較的近接して表示されているもの(別掲2を含む。)がほとんどであり、MONSTERのロゴのみが表示されている商品についての出荷数、シェア等の販売実績は確認できない。 さらに、「MONSTER」の文字のみからなる引用商標1及び引用商標5並びに「モンスター」の文字のみからなる引用商標6は、ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等において、申立人又は申立人商品の略称として表示又は掲載が見受けられるとしても、常に申立人商品又は「モンスターエナジー」若しくは別掲2商標の文字と共に表示又は掲載されていることからすれば、これに接する需要者は、そこに表示又は掲載された「MONSTER」の文字のみ(引用商標1及び引用商標5)及び「モンスター」の文字のみ(引用商標6)からなる商標は、申立人商品(「モンスターエナジー」)の一連の名称として使用されていることを前提に、申立人商品(「モンスターエナジー」)を指称する文字として理解するというべきである。 そうすると、別掲2商標と関連なく表示されている「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字までもが、需要者において申立人商品を表示するものと理解されるとはいい難い。 したがって、「MONSTER」又は「モンスター」の文字からなる引用商標1、引用商標5及び引用商標6は、申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 さらに、引用商標4は、「REHAB MONSTER」の文字からなるところ、当該商標が使用された指定商品についての販売実績や取引実績が確認できないものであるから、申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 2 本件商標と引用商標の類似性とその程度について (1)本件商標について 本件商標は、上記第1のとおり「POCKET MONSTERS」の文字を標準文字で表してなり、該文字に相応し「ポケットモンスターズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 (2)引用商標について ア 引用商標1、引用商標5及び引用商標6について 引用商標1は、「MONSTER」の文字を標準文字で表してなり、引用商標5は、「MONSTER」の欧文字よりなり、引用商標6は、「モンスター」の片仮名よりなるものであるから、これらは、いずれも当該文字に相応し「モンスター」の称呼を生じ、「モンスター(怪物)」の観念を生じるものである。 イ 引用商標2及び引用商標3について 引用商標2は、別掲1のとおり爪図柄の下に、ややデザイン化された「MONSTER」の欧文字とやや小さく「ENERGY」の欧文字を二段に書してなるところ、爪図柄と「MONSTER ENERGY」の欧文字は、重なることなく配されており、爪図柄と欧文字とが、視覚上、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとはいえないものである。 そして、「MONSTER ENERGY」の欧文字部分からは、当該欧文字に相応して「モンスターエナジー」の称呼及び「怪物の力、化け物の力」の観念を生じる。 引用商標3は、「MONSTER ENERGY」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成文字に相応して「モンスターエナジー」の称呼及び「怪物の力、化け物の力」の観念を生じる。 ウ 引用商標4について 引用商標4は、「REHAB MONSTER」の文字を標準文字で表してなるものであるから、当該文字に相応して「リハブモンスター」の称呼が生じ、これは、一般の辞書等に掲載された成語とは認められないため、特定の観念は生じないものである。 (3)本件商標と引用商標の類似性及びその程度について ア 本件商標と引用商標1、引用商標5及び引用商標6の類似性及びその程度について (ア)本件商標と引用商標1及び引用商標5の類似性及びその程度について 本件商標と引用商標1及び引用商標5の類否を検討すると、本件商標「POCKET MONSTERS」と引用商標1及び引用商標5の「MONSTER」は、「POCKET」の文字の有無などの差異を有し、この差異が両者の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく、両者を離隔的に観察しても、外観上相紛れるおそれのないものである。 次に、本件商標から生じる「ポケットモンスターズ」の称呼と引用商標1及び引用商標5から生じる「モンスター」の称呼を比較すると、両者は語頭部における「ポケット」の音の有無などの差異を有し、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、これらは聞き誤るおそれのないものである。 さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標1及び引用商標5は「モンスター(怪物)」の観念を生じるものであるから、これらは、観念において、相紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標1及び引用商標5は、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれはないものであるから、これらの外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 その他、本件商標と引用商標1及び引用商標5が類似するというべき事情は見いだせない。 (イ)本件商標と引用商標6の類似性及びその程度について 本件商標と引用商標6の類否を検討すると、本件商標「POCKET MONSTERS」と引用商標6の「モンスター」の片仮名は、構成文字に明らかな差異を有し、両者を離隔的に観察しても、外観上、相紛れるおそれのないものである。 次に、本件商標から生じる「ポケットモンスターズ」の称呼と引用商標6から生じる「モンスター」の称呼を比較すると、両者は語頭部における「ポケット」の音の有無などの差異を有し、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、これらは聞き誤るおそれのないものである。 さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標6は「モンスター(怪物)」の観念を生じるものであるから、これらは、観念において、相紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標6は、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれはないものであるから、これらの外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 その他、本件商標と引用商標6が類似するというべき事情は見いだせない。 イ 本件商標と引用商標2及び引用商標3の類似性及びその程度について (ア)本件商標と引用商標2の類似性及びその程度について 本件商標と引用商標2の類否を検討すると、本件商標「POCKET MONSTERS」と別掲1のとおりの構成よりなる引用商標2は、爪図柄の有無や構成文字に明らかな差異を有し、両者を離隔的に観察しても、外観上、相紛れるおそれのないものである。 次に、本件商標から生じる「ポケットモンスターズ」の称呼と引用商標2から生じる「モンスターエナジー」の称呼を比較すると、両者は「ポケット」と「エナジー」の音の有無などの差異を有し、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、これらは聞き誤るおそれのないものである。 さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標2は「怪物の力、化け物の力」の観念を生じるものであるから、これらは、観念において、相紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標2は、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれはないものであるから、これらの外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 その他、本件商標と引用商標2が類似するというべき事情は見いだせない。 (イ)本件商標と引用商標3の類似性及びその程度について 本件商標と引用商標3の類否を検討すると、本件商標「POCKET MONSTERS」と引用商標3の「MONSTER ENERGY」の文字は、「POCKET」の文字と「ENERGY」の文字の有無などに明らかな差異を有し、両者を離隔的に観察しても、外観上、相紛れるおそれのないものである。 次に、本件商標から生じる「ポケットモンスターズ」の称呼と引用商標3から生じる「モンスターエナジー」の称呼を比較すると、両者は「ポケット」と「エナジー」の音の有無などの差異を有し、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、これらは聞き誤るおそれのないものである。 さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標3は「怪物の力、化け物の力」の観念を生じるものであるから、これらは、観念において、相紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標3は、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれはないものであるから、これらの外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 その他、本件商標と引用商標3が類似するというべき事情は見いだせない。 ウ 本件商標と引用商標4の類似性及びその程度について 本件商標と引用商標4の類否を検討すると、本件商標「POCKET MONSTERS」と引用商標4の「REHAB MONSTER」の文字は、「POCKET」の文字と「REHAB」の文字の有無などに明らかな差異を有し、両者を離隔的に観察しても、外観上、相紛れるおそれのないものである。 次に、本件商標から生じる「ポケットモンスターズ」の称呼と引用商標4から生じる「リハブモンスター」の称呼を比較すると、両者は語頭部における「ポケット」と「リハブ」の音の差異などを有し、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、これらは聞き誤るおそれのないものである。 さらに、観念においては、本件商標及び引用商標4は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、これらは、観念において、比較することはできない。 そうすると、本件商標と引用商標4は、観念において比較することができないとしても、称呼及び外観において相紛れるおそれはないものであるから、これらの外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 その他、本件商標と引用商標4が類似するというべき事情は見いだせない。 エ 小括 以上のとおり、本件商標と引用商標は、これらの外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、その類似性の程度は低いものである。 3 商標法第4条第1項第15号について (1)引用商標の周知性及び独創性の程度 上記1のとおり、引用商標中、引用商標2及び引用商標3は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも申立人商品を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものといえるが、「エナジードリンク」以外の商品の需要者の間にまで広く認識されているものとは認められないものである。 また、引用商標中、引用商標1、引用商標4ないし引用商標6は、上記1のとおり周知性は認められないものである。 そして、引用商標1、引用商標5及び引用商標6を構成する「MONSTER」の欧文字又は「モンスター」の片仮名は、いずれも我が国で親しまれた成語であるから、これらの商標の独創性の程度は極めて低いものである。 (2)本件商標と引用商標の類似性の程度 上記2のとおり、本件商標と引用商標は、これらの外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、類似性の程度は低いものである。 (3)混同のおそれ 上記(1)のとおり、引用商標2及び引用商標3は、「エナジードリンク」以外の商品については、その周知性が認められないものである。 また、引用商標1及び引用商標4ないし引用商標6の周知性は認められない上、引用商標1、引用商標5及び引用商標6の独創性の程度は極めて低いものである。 さらに、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものである。 そうすると、本件商標の指定商品中、申立てに係る商品と申立人商品との関連性の程度、需要者の共通性などを考慮しても、商標権者が本件商標を申立てに係る商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人等)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 (4)小括 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第7号について 本件商標は、上記第1のとおりの構成からなるものであって、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。 また、本件商標は、上記3のとおり、商標権者がこれを申立てに係る商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることのないものである。 その他に、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る具体的な証拠の提出はない。 そうすると、本件商標は、引用商標の出所表示力を希釈化するとか、その名声にフリーライドするなど不正の目的をもって使用するものとはいえず、また、他に商標権者が本件商標をその指定商品に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す、あるいは国際信義に反するなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 5 むすび 以上のとおり、本件商標の指定商品及び指定役務中、申立てに係る商品についての登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 (引用商標2) ![]() 別掲2(申立人商品に表示されている商標) ![]() (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2024-12-19 |
出願番号 | 2022101055 |
審決分類 |
T
1
652・
271-
Y
(W30)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
板谷 玲子 |
特許庁審判官 |
馬場 秀敏 小田 昌子 |
登録日 | 2023-05-01 |
登録番号 | 6694913 |
権利者 | 株式会社クリーチャーズ 任天堂株式会社 株式会社ゲームフリーク |
商標の称呼 | ポケットモンスターズ、モンスターズ |
代理人 | 種市 傑 |
代理人 | 柳田 征史 |
代理人 | 種市 傑 |
代理人 | 種市 傑 |