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審決分類 |
審判 査定不服 外観類似 登録しない W44 |
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管理番号 | 1420420 |
総通号数 | 39 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2025-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-12-19 |
確定日 | 2025-02-20 |
事件の表示 | 商願2023− 71224拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和5年6月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和5年8月22日付け :拒絶理由通知書 令和5年9月28日 :意見書の提出 令和5年10月17日付け:拒絶査定 令和5年12月19日 :審判請求書の提出 第2 本願商標 本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第44類「介護,医療用機械器具の貸与」を指定役務として登録出願されたものである。 第3 原査定の拒絶の理由の要点 原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録第4681021号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおり、「Up―Care」の欧文字及び「アップケア」の片仮名を二段に横書きしてなり、平成13年4月27日に登録出願、第35類、第36類、第39類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同15年6月13日に設定登録、令和5年6月7日に最新の商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 なお、引用商標の指定役務については、平成20年6月25日に指定役務の一部放棄により、一部抹消の登録がされ、また、令和6年10月21日に指定役務の一部について商標登録を取り消すべき旨の審決が確定し、その確定審決の登録が同年11月15日にされているものであり、最終的に、別掲3のとおりの指定役務となったものであって、その商標権は現に有効に存続しているものである。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)結合商標の類否判断について 複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、その構成部分全体によって他人の商標と識別されるから、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは原則として許されないが、取引の実際においては、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、必ずしも常に構成部分全体によって称呼、観念されるとは限らず、その構成部分の一部だけによって称呼、観念されることがあることに鑑みると、商標の構成部分の一部が需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、商標の構成部分の一部を要部として取り出し、これと他人の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも、許されると解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。 (2)本願商標について 本願商標は、別掲1のとおり、両目及び口と思しき図形をそれぞれ内包した青色の楕円形図形、橙色の三角形図形、及び黄色の四角形図形(以下「図形部分」という。)を横並びに重なり合いながら配し、その右側に、橙色で「あっぷけあ」の平仮名を横書き(以下「文字部分」という。)してなるものである。そして、図形部分と文字部分は、色彩が異なり、重なることなく配置されていることからすると、それぞれが視覚上、分離して看取、把握され得るものであり、かつ、図形部分から出所識別標識としての具体的な称呼及び観念は生じないものであって、図形部分と文字部分との間に、観念的にも密接な関連性を見いだすことはできないから、これらは、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえない。 そうすると、上記(1)の結合商標の類否判断の趣旨に照らせば、本願商標については、「あっぷけあ」の平仮名部分を要部(以下「本願商標の要部」という。)として取り出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきである。 そして、本願商標の要部である「あっぷけあ」の文字は、我が国の一般的な国語辞典等に載録された既成語ではなく、我が国において何らかの意味を有する語として親しまれているという事情も見いだせないことから、特定の意味合いが生じない造語と認められるものである。 したがって、本願商標は、その構成文字に相応して「アップケア」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 (3)引用商標について 引用商標は、別掲2のとおり、「Up−Care」の欧文字と「アップケア」の片仮名を上下二段に横書きしてなるところ、下段の「アップケア」の片仮名は、上段の「Up−Care」の欧文字の読みを特定したものと認識されるものである。そして、「Up−Care」の文字は、我が国の一般的な辞書等に載録された既成語ではなく、また、「Up」及び「Care」は、前者は「〜の上へ、〜の上流へ」等の意味を、後者は「世話、介護、手入れ」等の意味合いを有する平易な英語(「ベーシックジーニアス英和辞典 第2版」大修館書店)であるものの、いずれも複数の意味合いを有する多義語であることから、これらの文字を「−」(ハイフン)を介して一連に書した「Up−Care」の文字からは、特定の意味合いを暗示又は想起させるとはいい難いものである。 したがって、引用商標からは「アップケア」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 (4)本願商標と引用商標の類否について 本願商標と引用商標の類否について検討するに、両商標の構成は、それぞれ上記(2)及び(3)のとおりであるところ、外観については、全体の構成の比較においては相違するものの、本願商標の要部と引用商標は平仮名と欧文字及び片仮名であって文字種を異にするとしても、商標の使用においては、商標の構成文字を同一の称呼が生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記したり、デザイン化したりすることが一般的に行われている取引の実情がある。そして、引用商標の構成中の「−」は、殊更目立つ態様で表したものではなく、上記の取引の実情を鑑みれば、両者における文字種及び書体の相違が、看者に対し、出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえないものである。 次に、称呼については、本願商標の要部と引用商標は、「アップケア」の称呼を共通にするものである。 さらに、観念については、本願商標の要部と引用商標は、特定の観念が生じないものである。 そうすると、本願商標と引用商標とは、外観において全体の構成の比較においては異なるものの、本願商標の要部と引用商標において顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえず、観念において比較できず、称呼を同一とするものであるから、外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は、相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。 (5)本願商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否について 本願の指定役務である第44類「介護,医療用機械器具の貸与」と、引用商標の指定役務中、第42類「老人の養護,介護に関する情報の提供,超音波診断装置の貸与,介護用リフトの貸与」とは、同一の事業者が提供し、提供に関連する物品が一致することがある類似の役務である。 (6)小括 以上のとおり、本願商標は、引用商標と類似する商標であり、かつ、その指定役務も引用商標の指定役務と同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 請求人の主張について (1)請求人は、引用商標の構成文字中の「Up−」が接頭辞として用いられて「up」と同様の意味合いに使用される場合があり、「〜の上へ、〜の上流へ、〜を通って、起きて、出現して、上がって、上に、高まって、上手に」等、極めて多義的に用いられるものであり、また、「Care」も「世話、介護、保護、管理、監督、注意、心配、関心事」等、極めて多義的に用いられる語であるから、これらの文字を結合した引用商標は、直ちに特定の観念を想起するとまではいえないものの、「上流の世話、上流の介護、上流の保護、上流の管理、上流の監督、上流の注意」などといった意味合いを暗示させる場合があるから、上記意味合いを連想させる旨主張する。 しかしながら、引用商標を構成する「Up」及び「Care」の語は、請求人も主張するとおり、いずれも複数の意味合いを有する多義的に用いられる語であって、これらの語を「−」(ハイフン)を介して一連に表してなる「Up−Care」の文字からは、特定の意味合いを暗示又は想起させるとはいい難いものであり、また、引用商標全体から観念が生じないことは、上記1(3)に記載のとおりである。 (2)請求人は、文字種を相互に変換して表記することが一般的に行われている実情があるとしても必ずしも当てはまるものではなく、本願商標の態様が指定役務との関係で一般的に用いられる態様とまではいえないことから、本願商標と引用商標は、これらをあえて変換して表記するとはおよそ想定できず、本願商標と引用商標とでは、それぞれの構成態様において明らかに相違するから、視覚的な印象が相違し、外観上、両者は相紛れるおそれがない旨主張する。 しかしながら、本願商標の構成中「あっぷけあ」の文字部分は、特段デザイン化されているものではなく、普通に用いられる態様をもって表してなるものであり、その構成態様自体が強く印象に残るとはいい難いものであるから、本願商標の要部と引用商標の外観において、顕著な差異として強い印象を与えるということはできないものである。 (3)請求人は、過去の登録例を挙げ、本願商標と引用商標とは非類似である旨主張する。 しかしながら、商標の類否の判断は、出願された商標と他人の登録商標との対比において、個別具体的に判断すべきものであり、また、請求人の挙げる登録例と本件商標とは、商標の構成、指定商品又は指定役務等を異にするものであるから、当該登録例によって、直ちに本願商標に係る判断が左右されるものではない。そして、本願商標と引用商標とが類似の商標であることは、上記1のとおりである。 (4)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。 3 まとめ 以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1 本願商標(色彩については原本参照。) ![]() 別掲2 引用商標 ![]() 別掲3 引用商標の指定役務 第35類「経理・財務処理,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,書類の複製,速記,筆耕,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与」 第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,美容,理容,入浴施設の提供,写真の撮影,オフセット印刷,グラビア印刷,スクリーン印刷,石版印刷,凸版印刷,気象情報の提供,求人情報の提供,結婚又は交際を希望する者への異性の紹介,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,葬儀の執行,墓地又は納骨堂の提供,一般廃棄物の収集及び分別,産業廃棄物の収集及び分別,庭園又は花壇の手入れ,庭園樹の植樹,肥料の散布,雑草の防除,有害動物の防除(農業・園芸又は林業に関するものに限る。),建築物の設計,測量,地質の調査,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究,農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究,工業所有権に関する事務(手続の代理又は鑑定を除く。),官公庁に提出する書類の作成及びその相談,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介,通訳,翻訳,施設の警備,身辺の警備,個人の身元又は行動に関する調査,身の上相談,あん摩・マッサージ及び指圧,きゅう,柔道整復,はり,医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,家畜の診療,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,介護に関する情報の提供,家事の代行,編み機の貸与,ミシンの貸与,衣服の貸与,植木の貸与,計測器の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,会議室の貸与,展示施設の貸与,カメラの貸与,光学機械器具の貸与,漁業用機械器具の貸与,鉱山機械器具の貸与,コンバインの貸与,祭壇の貸与,自動販売機の貸与,芝刈機の貸与,火災報知機の貸与,消火器の貸与,タオルの貸与,暖冷房装置の貸与,超音波診断装置の貸与,介護用ベッドの貸与,介護用リフトの貸与,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,凸版印刷機の貸与,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与,布団の貸与,理化学機械器具の貸与,ルームクーラーの貸与,おしめの貸与,つえの貸与」 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
審理終結日 | 2024-12-06 |
結審通知日 | 2024-12-10 |
審決日 | 2024-12-25 |
出願番号 | 2023071224 |
審決分類 |
T
1
8・
261-
Z
(W44)
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最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
鈴木 雅也 |
特許庁審判官 |
滝口 裕子 小田 昌子 |
商標の称呼 | アップケア、アップ、ケア |
代理人 | 中 大介 |