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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない W0321
管理番号 1420398 
総通号数 39 
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2025-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2022-10-28 
確定日 2024-12-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第6521579号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6521579号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和3年7月30日に登録出願、第3類「化粧品」及び第21類「美容用皮膚冷却用化粧用具その他の化粧用具」を指定商品として、同4年2月9日に登録査定、同年3月2日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件審判の請求において引用する商標は、別掲2のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標1」という。)及び別掲3のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標2」という。)(以下これらの商標まとめて「引用商標」という。)であり、請求人が商品「口紅,アイシャドウ,リップグロス,頬紅,コンシーラー,パウダーファンデーション,メイクアップ用セッティングスプレー,アイブローペンシル,アイブローカラー,リキッドアイライナー」(以下「引用商品」という。)に使用して中国において周知な商標と主張するものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標はその登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第101号証を提出した。
1 請求の理由(要点)
本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当し、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効にすべきものである。
2 利害関係
請求人は、本件商標と同一又は類似の引用商標1及び引用商標2を使用している中国法人であり、また、引用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして中国の需要者の間で広く認識されている商標である。
したがって、請求人は利害関係人に該当する。
3 請求人について
請求人は、2016年に設立された中国法人で、主に化粧品の製造・販売を行う企業である(甲3)。請求人は、引用商標の他、「PerfectDiary完美日記」等の様々なブランドを展開しており、請求人による販売及び広告宣伝活動を通じて、中国の多数の需要者・取引者に知られるブランドとなった。
また、請求人は、自社ECサイト等を通じて需要者に直接商品を販売する体制を構築しており、その需要者の規模は約3,230万人に達する。さらに、請求人は中国に限らず、他の外国に向けて商品を販売しており(甲4)、請求人の各種商品はその高い品質から各国で好評を博している。
請求人の事業は、並外れた企業努力を通じて順調に成長を続けた結果、2020年11月には米国のニューヨーク証券取引所に上場するに至った。
請求人は、化粧品関連事業を行う中国法人の中で、米国の証券取引所に上場した初めての企業であり、中国における化粧品関連事業のリーディングカンパニーとして確固たる地位を築いている。
4 引用商標について
(1)歴史
請求人は、自社商品の化粧品「口紅,アイシャドウ,リップグロス」等に使用するブランドとして、2021年2月頃に「Pink Bear」の使用を開始した。一方、請求人が当該商標を中国にて出願したのは2017年1月11日であり、実際に使用を開始する4年以上前から当該文字について商標権を確保すべく準備をしていた。
引用商標は、「Pink」と「Bear」の英単語を結合してなるところ、「Pink」は「桃色,ピンク」を意味し(甲5)、「Bear」は「熊」を意味する英語(甲6)として広く一般に親しまれていることから、各語の意味に相応して、全体より「ピンク色の熊」の観念が容易に看取される。
「Pink Bear」は辞書等に掲載されておらず、請求人が独自に創作した造語である。一般常識に照らしていえば、動物の熊の体毛は褐色、黒色、白色等と思われることから(甲7)、「ピンク色の熊」という概念は通常では想起し得ない独自性の強いものといえる。
そうとすれば、当該意味を表す「Pink Bear」という文字構成には、高い創作性、独創性が認められる。
請求人は、2021年2月の使用開始以来、現在に至るまで、引用商標1と同一態様のロゴを継続して使用している。
(2)売上
ア 販売額
引用商品は、後述するとおり、請求人が積極的かつ大規模な広告宣伝を行った結果、2021年の販売開始直後から驚異的なペースで売上を伸ばした。その結果、2021年の引用商品の販売額は約2億2,363万人民元(約45億5,000万円)にのぼる。
イ Tmallでの販売
引用商品の販売額に関して、中国最大のオンラインショッピングモールの「Tma11(天猫)」が作成した資料を提出する(甲8)。これはTmallの有する引用商品の販売データに基づき作成されたものである。当該資料は「広州逸迅化粧品有限公司」(以下「K社」という。審決注:「粧」は中国語表記。)宛に作成されているが、K社は請求人が100%の発行済株式を有する子会社である(甲9)。
上記資料によれば、請求人は2021年2月23日からTmallにて引用商標の使用を開始した。請求人はTmall内にオンラインショップ「Pink Bear旗艦店」を開設し、「Pink Bear」ブランドの化粧品の販売を開始した。
上記オンラインショップにおける引用商品の販売個数及び売上高は、2021年3月1日ないし同年6月30日において販売個数約151万個、売上高約10億3,000万円、同年7月1日ないし同年12月31日において販売個数約437万8,000個、売上高約29億7,000万円、2022年1月1日ないし同年2月28日において販売個数約61万個、売上高約4億9,000万円である。
個別の商品については、「リップグロス」の2021年3月5日から2022年2月28日までの総売上は、7,946万7,095人民元(約16億2,000万円)、販売個数は262万4,580個、商品URLの開かれた回数は6,810万5,202回であり、Tmall内の「リップグロス/リップバーム/グロス部門」の販売ランキングで第5位になるなどした。
「口紅」の2021年3月4日から2022年2月28日までの総売上は3,355万6,517人民元(約6億8,000万円)の売上であり、販売個数は117万3,177個、商品URLの開かれた回数は2,959万6,396回であった。
「アイシャドウ」の2021年5月19日から2022年2月28日までの総売上は1,785万5,994人民元(約3億6,000万円)、販売個数は32万9,898個、商品URLの開かれた回数は1,568万1,512回であり、Tmall内の「アイシャドウ部門」の販売ランキングで7位となった。
また、Tmallでは商品の売上を促進する為のイベントを定期的に行った。2021年6月1日から6月20日まで行われた商品販売イベントでは、引用商品の売上は1,661万6,868人民元(約3億4,000万円)、販売個数は53万6,084個、購入した需要者数は27万1,640人であった(甲10)。
中国の公証人が作成した公証書によれば、K社における引用商品についての2021年3月ないし同年7月の売上高は、780万1,813人民元(約1億6,000万円)ないし1,803万4,801人民元(約3億6,000万円)であった。
ウ 広告宣伝
請求人は「Pink Bear」ブランドの商品を対象に、極めて多額の広告宣伝費用を投資している。2021年に投じた広告宣伝費用の総額は1億810万3,700人民元(約21億9,700万円)であった。
主な広告宣伝の手法としては、引用商品の主たる需要者である若年層をターゲットに、係る若年層が頻繁に使用するSNSサービスやアプリケーション(TikTok(甲12、甲13)、Wechat(甲14〜甲21)、Weibo(甲22〜甲34)、小紅書(甲35)、快手(甲36))にて、動画広告を中心とした宣伝を行っており、また、著名なインフルエンサーを積極的に起用している(甲37〜甲50)。
エ 商標出願・登録
請求人は、中国を含む世界各国で商標「Pink Bear」を登録している。
中国にて、請求人が商標「Pink Bear」(第3類)を初めて出願したのは、実際に使用を開始する約4年前の2017年1月11日である(甲51)。中国では第3類以外にも幅広い区分で「Pink Bear」関連商標について出願しており、2022年7月29日までに99件、本件商標の出願日以前では84件の商標を出願している(甲52〜甲90)。また、中国以外でも商標「Pink Bear」について、出願、登録を行っている(甲91〜甲98)。
オ 小括
以上によれば、引用商標は、中国において2021年3月頃から引用商品について使用が開始され、その優れた品質と多額の費用を集中的に投資して行われた広告宣伝活動を通じて、瞬く間に請求人商品の出所表示として中国の需要者に受け入れられた。
これらの点を踏まえれば、引用商標は、本件商標の登録出願日時点において、引用商品を表示するものとして、中国の需要者・取引者の間で広く認識されていたと判断するのが相当であり、当該認識は本件商標の登録査定時においても継続していたものと考えられる。
5 被請求人について
被請求人のウェブサイトによれば、自動車用品の製造・販売が同社事業の中心であり、また、「2021年6月 コスメ用品事業を開始し、オリジナルブランド「DOUM」を企画」等の記載から、被請求人は、2021年6月に化粧品事業を開始したことがわかる(甲99、甲100)。
本件商標は、全体より「ピンク色の熊」の観念が容易に看取されるところ、一般に、「桃色、ピンク色」の体毛を有する熊は現実には存在しないため、「Pink Bear」は、通常の発想では容易に想起することのできない高度な創作性を有する造語といえる。そのような語を、偶然に被請求人が自己の商品の出所識別標識として採択する可能性は、極めて低いと考えるのが合理的である。
まして、引用商品と同一事業分野でこのような偶然が生じることは考え難い。
そうすると、引用商標が本件商標の登録出願日以前に中国の需要者間において広く知られていた点に鑑みれば、被請求人が化粧品事業を開始した前後に引用商標の存在を知り、日本でいまだ出願されていないことを奇貨として、不正の目的をもって先取的に出願したと考えるのが自然といえる。
また、被請求人のウェブサイトの記載から、被請求人は、中国語圏にて自社工場を有しており、かつ、中国語のできる人材を募集していたと解される。かかる事情を考慮すれば、本件商標の登録出願前から中国において事業を行っていた可能性が高く、中国のビジネスに関する情報についても収集しやすい環境であったことが容易に推測されることから、本件商標の登録出願前に、すでに中国において広く知られていた引用商標の存在を認識・把握していたとしても何ら不思議はない(甲101)。
請求人は、本件商標について、譲渡の可能性を検討すべく被請求人とコンタクトをとったが、譲渡対価として5,000万円という法外な金額が提示されたため、交渉を断念した経緯がある。このように極めて高額な譲渡対価が提示された点は、あわよくば請求人に本件商標を売却することを意図して、引用商標と同一の商標を採用したことを裏付けるものである。
したがって、被請求人による本件商標の登録出願は、請求人が、やがては日本でも引用商標の使用を開始することを予想した上で、高額で買い取らせたり、あるいは請求人の国内参入を阻止したりする等の不正の目的をもって行われたと判断するのが相当といえる。
6 商標法第4条第1項第19号について
前述のとおり、引用商標は本件商標の登録出願前に、引用商品の商品表示として、中国における需要者・取引者の間に広く知られていた。
また、請求人は、中国において、商標「Pink Bear」を2017年1月11日に出願し、その後も多数の「Pink Bear」よりなるか、当該文字を構成中に含む商標を出願、登録している。
中国語圏に自社工場を有し、事業を行っていたと解される被請求人は、少なくとも、本件商標の登録出願時において、請求人及び引用商標の存在を認識していたと考えられる。
本件商標からは、「ピンクベア」の称呼が生じ、「ピンク色の熊」の観念が生じる。対して、引用商標は、本件商標と共通の欧文字「Pink Bear」よりなる。本件商標と引用商標とを比較すると、書体は異なるものの、同一の欧文字「Pink Bear」よりなることから、外観において類似するといえ、また、称呼と観念は共通することから、外観・称呼・観念において相紛らわしい類似の商標である。
さらに、本件商標の指定商品「化粧品」は、引用商品と同一又は類似するものである。
また、本件商標の指定商品「美容用皮膚冷却用化粧用具その他の化粧用具」は、引用商品と需要者、販売部門、用途等が相当程度共通することが想定される。
本件商標及び引用商標を構成する欧文字「Pink Bear」は、「ピンクの熊」を意味するところ、通常、熊の体毛は褐色、黒色、白色等であると理解されることから、「体毛がピンクの熊」は一般的な社会通念を超越する概念であって、極めて独創的な造語といえる。かかる独自性の強い造語よりなる本件商標を、請求人が商品展開する同一の化粧品事業において、被請求人が偶然に採択する可能性は極めて低いといわざるを得ず、請求人が外国で使用する商標を剰窃する不正な目的のもとで登録出願された蓋然性が極めて高いと考えられる。
そうすると、被請求人は、引用商標の存在を認識したうえで、引用商標が我が国において商標登録されていないことを奇貨として、それに化体した業務上の信用と顧客吸引力にただ乗りし、その著名性を利用して不正の利益を得る目的のもとで本件商標を登録出願し、設定登録を受けたものと推認せざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
7 商標法第4条第1項第7号について
前述のとおり、本件商標は、「ピンクの熊」を意味する欧文字「Pink Bear」よりなり、通常は想起し得ない強い独自性・創作性を有する造語といえる。また、引用商標は、本件商標の登録出願前から、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、中国の需要者・取引者の間で広く認識されていた。
そうすると、独創的な造語よりなり、かつ、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、中国の需要者・取引者の間で広く認識されていた商標「Pink Bear」を、請求人の商品と同一事業分野の商品分野において、被請求人が偶然に採択することは考え難いことから、他人が外国で使用する商標を剽窃するという不正な目的のもとで登録出願を行った可能性が極めて高い。
そうすると、本件商標の出願は、請求人の引用商標の存在を認識し、引用商標が日本において登録されていないことを把握した上で、不正の目的のもとに剽窃して出願したものと推認できる。
してみれば、本件商標の登録出願の経緯には、請求人の引用商標を剽窃するという不正な目的をもって登録出願されたものとして、社会的妥当性を欠くものであり、その登録を認めることは、健全な商取引の遂行を阻害し、公正な競業秩序を害するものであるから、公序良俗に反するものである。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認められるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第21号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第19号について
(1)引用商標の周知性について
ア 証拠能力
甲第4号証、甲第15号証ないし甲第36号証、甲第48号証ないし甲第50号証は、いずれも公開日が不明であり、本件商標の登録出願日以前に開示されていたことが証明されていない。
イ 販売状況の評価
甲第8号証からは、本件商標の登録出願日より前の2021年6月30日以前に、約224万個の販売個数があったと読み取る。
一般に需要者は、日用的な消耗品にあっては、一過性の購入体験ではなく、その商品への評価に基づいて、再購入を繰り返すことにより、その商標を強く認識する。そしてこのような経験が広い地域で繰り返されることにより、当該地域範囲で商標の周知性が確立するものと考えられる。
ところで、当該商品は、口紅であり、消耗し終わるまで、通常1個当たり半年近くを要する。また、甲第4号証で明らかなように、通常2個1組のパッケージ商品であり、これを購入することとなる。このことから、購入頻度は年1、2回程度である。したがって、例え販売初期に多大の販売数を獲得したと評価しても、わずか5か月間の販売実績であり、再購入は考えにくい。
また、この個数を、購入者数として考えれば、中国の人口は、約14億人であり、人口比で、0.16パーセントとなる。日本に換算すれば約19万人程度の購入者規模と考えて差し支えない。
したがって、当該商品にあっては、本件登録出願日前3か月の短期間で、再購入はなく、その期間の購入者数は、人口比0.16パーセント程度であることに鑑みれば、引用商標が、本件商標の登録出願日前に周知性を獲得したとは、極めて疑わしく、到底首肯できないものである。
ウ 宣伝広告の評価
甲第37号証ないし甲第45号証からは、計64日間のネットによる配信と、3回の生放送が、本件商標の登録出願日前になされたと理解することができる。
ところで、ネットによる配信は、閲覧者が積極的にホームページ画面をクリックして取得できる情報であり、このため、インフルエンサーなどを利用して、クリック導入するようにしている。したがって、配信による影響は、閲覧者のクリック数等の客親的数値がない限り、その情報伝播の程度を確認することは出来ない。一般的に、64回のネット配信では、到底、周知性を獲得したと認定することは出来ないものと考える。また、生放送3回では、化粧品類に興味のない視聴者も含まれるから、到底、周知に寄与し得る程度とはいえない。
エ 短期間の販売及び宣伝広告について
請求人は、中国で最も影響力のあるインフルエンサーを起用するなど、多額の費用をかけたために、短期間で中国国内において周知に至っていると主張している。
5か月弱の短期間で周知性を獲得することは、まれにはあるが、この場合には、以下のいずれかの条件が必要と考える。
(ア)時代に適合する特異性を有し、消費者に強い消費行動を誘引する商品である場合。
(イ)宣伝広告が、特徴的集中的で、消費者に大きな印象を与えた場合。
条件(ア)の観点で見ると、引用商標は、口紅などであり、女性にとって極めて身近な化粧品である。ところで本件の商品自体には、何ら消費行動を誘引する要素があるとは思えない。
したがって、単に宣伝広告に費用をかけたからといって、商品自体に特異性がなければ、これに付した商標が印象付けられることは容易ではなく、短期間で周知性を獲得することは困難である。通常、口紅などの消費性の高い日用品は、繰り返し、長期間宣伝され、消費者が再購入を繰り返すことにより、周知性を獲得すると考えられる。
条件(イ)の宣伝広告の観点では、請求人は、高い支持を得ているインフルエンサーの起用を主張している。インフルエンサーの推奨自体は、購入者が、使用を通じて獲得した商品への信頼感を根拠とするものではなく、インフルエンサー個人の信頼を根拠とするから一過性であり、これを購入動機とする一回の購入では引用商標が記憶に残るとは考えにくい。これらの広告が比較的長期にわたって繰り返されることにより、初めて周知性を獲得できるものと考える。
したがって、引用商品の短期間の販売及び宣伝広告がきわめて短期間であるにもかかわらず、周知性を獲得し得たという特段の背景事情はないものと考える。
オ まとめ
上述したように、引用商標を付した請求人の商品の販売個数、宣伝広告は、5か月弱という、極めて短い期間によるものであり、その期間を凌駕する特段の背景事情もないから、到底、引用商標が周知性を獲得しているとはいえないものである。
(2)請求人(審決注:「被請求人」の誤記と認める。)の不正目的について
ア 本件商標に係る商品について
本件商標は、主に目の下のたるみやクマを防止・軽減するためのヒアルロン酸シート(以下「本件商品」という。)に使用している。本件商品は、ヒアルロン酸を含有した目の下を始めとする顔面に貼り付けるシートであって、シートを保持するための不織布は意匠性を高めるためにピンク色とし、使用前の商品外観としてピンク色に見えるようにしている。本件商品の広告には、左中下部の「クマちゃん撃退!」の記載により、目の下に生じ易い「クマ」等の発生防止及び軽減のシートであることがわかる(乙1)。
これらのことから理解されるように、本件商標は、外観の色である「Pink」と、目の下の「クマ」を掛けた「熊」を意味する「Bear」を合成して、名付けたものである。
イ 開発経緯
本件商品は、元々株式会社キコーコーポレーションの製造に係るものであったが、売れ行きが芳しくなかったことから、同社から被請求人の社長に、被請求人の商品としての販売が打診され、これを同人が受諾したことを契機としてスタートしたものである。なお、同人が受諾した背景には、その頃、化粧用品関係で、商標「DOUM」を冠した化粧用具を開発し、販売しようとするなど、化粧品関係に事業を展開しようとしていた矢先であり、化粧用品のラインアップを増やそうとしていた同人の思惑に合致するものであったことによる(乙2)。
その後、商品の形状、色を再開発するとともに、新たな商標を採択するという販売戦略を打ち立て、2022年4月12日に販売を開始するに至ったものである(乙1、乙3〜乙17)。
ウ 請求人の不正利用の主張に対して
(ア)被請求人の引用商標の知得について
請求人は、被請求人が2021年7月30日以前において、請求人及び引用商標の存在を認識していた、と主張している。その根拠は、被請求人が中国語圏に自社工場を有し、事業を行っているとの推測に基づくものである。被請求人が自社工場を中国圏に有しているとの請求人の主張は、事実ではない。被請求人は、自動車用LEDランプを販売しているが、これを委託製造している協力工場があるだけで、当該工場は、商品の購入先にすぎない。また、中国への発注担当者は、2019年11月以降、コロナ禍による渡航制限があるため、中国には渡航したことがなく、この間の中国の状況について、情報を入手できない立場にあった。特に、化粧品の販売は、上述した開発経緯で明らかなように、2021年6月頃に被請求人の社長の判断で、急遽手掛けようとしたものであることから、その頃は担当者として中国事情の化粧品関連につき興味を抱いていなかった。
したがって、被請求人は、中国における引用商標の使用事実について、知り得なかった。
(イ)「ピンクベア」の創作性について
引用商標は社会通念を超越する独自性の強い造語であるから、被請求人が偶然採択する可能性が低いことを不正目的の根拠としている。
ところで、本件商標は、ピンクの熊を意味するものであり、わかりやすく、親しみがあるため、種々の分野で採択されている(乙19)。このように「ピンクベア」は明確な概念を有し、ほのぼのとした印象を受ける標章であって、「社会通念を超越する独自性の強い造語」は誇張にすぎるものと考える。
本件商標は、上述のとおり、目の下の「クマ」を撃退するピンク色のシートから採択したものであり、これは開発経緯からも明らかであって、引用商標の影響を受けたものではない。
また、被請求人として、出願当時日本国内において、全く知られていなかった中国製の化粧品につき、引用商標を模倣使用することは、そこにいまだ日本において信用が化体されていないのであるから、これを模倣したり、ただ乗りしたりする商取引上の利得はない。
したがって、被請求人が引用商標を参酌して使用することには、動機がない。
(ウ)請求人との譲渡交渉について
請求人との商標の譲渡についての交渉があったことは事実である。2021年11月17日付けで、請求人代理人からのFAX(乙20)にて譲渡交渉が開始されたため、開発は一旦停止した。
その後、乙第21号証のメールに対して、2021年12月8日付けで、開発を途中で断念することへの対価及び得べかりし利益を勘案して、在庫品の売上額3,500万円、将来の商品の停止による損失1,500万円を内訳とし、5,000万円の譲渡額を示した。
これに対して、2021年12月15日付けで、検討のための時間が欲しいとのメールがあった。被請求人としては、提示した条件は、当方にとって妥当なものではあるが、これに沿うことは一般的には困難であり、譲渡の再要求はないであろうと判断した。これ以後請求人からのメールはなく、被請求人としては、譲渡交渉は終了したとの判断の下に粛々と開発を進行させた。
その後、2022年4月2日付けで、再び請求人からのメールが届き、これに対して、最終的には、同月12日付けで、年500万のライセンス料を提案した。その後返信はなく、本件審判請求がなされた。
被請求人としては、譲渡の要求があった時点で、既に開発準備が整っており、本件商標を譲渡する状況ではなく、かつ同じ分野であるために、許諾することにも躊躇があった。それでも許諾するということであれば、商品の棄損、営業戦略・営業準備の再構築を考慮し、将来期待される利益を勘案して、条件提案したものである。また、交渉は4か月の間をおいて二度行われたが、常に請求人の要望に応える形で、誠意をもって対応したものであり、一方ではその交渉が頓挫しても別段構わない、という姿勢であった。
このように被請求人から、譲渡を積極的に提案したり催促をしたりしたことはなく、常に請求人の提案に対する回答を示すという交渉形態であり、譲渡により利益を得るという意思は皆無であった。被請求人には、交渉を成立させるという積極的意欲はなく、提示条件は、上記した開発の準備状況を換算し、妥当な補填額としてまとめたものである。
したがって、これをもって請求人が過剰な金銭の要求をしたかのような請求人主張は、事実を曲解するものである。
このことからも、被請求人が本件商標を高額で買い取らせるために、商標登録し、使用したという請求人主張は当を得ないことは明らかである。
(エ)まとめ
これらの事実から、被請求人は、自己の商品を市場において、販売するために商標を取得し、現に使用しているものであり、請求人の中国における使用事実とは、無関係である。このため、不正の目的をもって出願したものではない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第7号について
上述のとおり、本件商標は、出願経緯から明らかなように、ヒアルロン酸シートに自他商品を識別するために用いられたものであり、目の下のクマ等を撃退する商品に適した商標として採択され、現に使用しているものである。また、中国での引用商標の使用についても、登録出願時に知り得なかったものである。
してみると、本件商標の使用は健全な商取引を前提とするものであって、その登録は公序良俗に反するものとは到底いえない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号及び同項第7号に違反してされたものではない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。
1 引用商標の周知性について
(1)請求人の主張及び同人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。
ア 請求人について
請求人は、2016年(平成28年)に設立され、主に化粧品の製造・販売を行う中国法人であり(甲3)、自社ECサイト等を通じて需要者に直接商品を販売している。そして、需要者は約3,230万人に達し、中国を含む外国に対して商品を販売している(甲4)。
イ 引用商標について
請求人は、2021年(令和3年)2月頃に、引用商品について、引用商標の使用を開始して以来現在に至るまで、引用商標1と同一態様のロゴを継続して使用しており、同年の、引用商品の販売額は、約2億2,363万人民元(約45億5,000万円)であった。
2021年(令和3年)3月ないし同年7月におけるPink Bear旗艦店における引用商品の売上高は、780万1,813人民元(約1億6,000万円)ないし1,803万4,801人民元(約3億6,000万円)であった(甲11)。
ウ 広告宣伝について
「Pink Bear」ブランドの商品(引用商品)を対象とした広告宣伝は、主たる需要者である若年層をターゲットとするSNSサービスやアプリケーション(TikTok、Wechat、Weibo、小紅書、快手)による動画広告を中心とした宣伝を行い、その広告宣伝費用は、2021年(令和3年)は1億810万3,700人民元(約21億9,700万円)であり、例えば、TikTokでは、2021年(令和3年)7月において、1日当たり約90万円ないし約1,088万円であった(甲12、甲13)。また、動画広告の中には、中国における著名なインフルエンサーを起用したものもある(甲37〜甲50)。
エ 出願・登録について
請求人は、2017年(平成29年)1月11日(甲51)に、中国において商標「Pink Bear」(第3類)を出願して以来、「Pink Bear」の文字を構成中に含む商標を含め、本件商標の登録出願日前に84件の商標登録出願を行っており(甲52〜甲90)、また、中国以外の外国に対しても同様の出願を行っている(甲91〜甲98)。
(2)判断
上記(1)からすれば、請求人は、主に化粧品の製造・販売を行う中国法人であり、自社ECサイト等を通じて中国を含む外国に向けて化粧品の販売を行っている(甲3、甲4)。
そして、請求人が、2021年(令和3年)2月頃に、化粧品について、引用商標の使用を開始したこと、同年3月ないし同年7月の売上高が、約5,629万5,000人民元(約11億4,000万円)であったこと(甲11)、同年6月1日ないし同月20日に開催された、中国のオンラインショッピングモールTmallにおける販売イベントにおいて、売上が1,661万6,868人民元(約3億4,000万円)、販売個数が53万6,084個、及び購入した需要者数は27万1,640人であったこと(甲10)、SNS(TicTok等)等による広告宣伝を行い(甲12〜甲50)、その中には、中国におけるインフルエンサーによるものも含まれていること(甲46〜甲50)、「Pink Bear」関連の商標について、中国及び中国以外の外国において出願を行っていること(甲51〜甲98)がうかがえる。
そうすると、請求人が主張する、引用商標を使用した引用商品は、2021年(令和3年)2月頃から、自社ECサイト等を通じて中国を含む外国に向けて販売されているとはいえる。
しかしながら、引用商標を使用した引用商品の販売期間(本件商標の登録出願日までの販売期間)は5か月弱と非常に短く、当該商品の販売額、広告宣伝費等についての主張及び証拠は提出されているものの、市場におけるシェア、売上げランキング、需要者の評価等については明らかでなく、客観的に需要者の認識を推し量ることができない。
また、SNSやアプリケーションによる動画配信において、引用商標を使用した引用商品について広告宣伝を行った旨主張し、当該動画配信が行われた旨の証拠は提出されているものの、各媒体における閲覧者数、再生回数、エンゲージメント率、チャンネル登録者数等について具体的に示す客観的な証拠は見いだせない。
その他、請求人が引用商標を使用していると主張する引用商品について、中国を含む外国において、需要者の間に広く認識されていることを客観的に判断するための証拠は見いだせない。
以上よりすると、請求人が提出した全証拠によっては、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人が引用商標を使用していると主張する商品「化粧品」を表示するものとして、中国を含む外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
そうすると、引用商標が外国の需要者の間に広く認識されていた商標であることを前提に、本件商標の登録出願は、請求人が、やがては日本でも引用商標の使用を開始することを予想した上で、高額で買い取らせたり、あるいは請求人の国内参入を阻止したりする等の不正の目的をもって行われたとする請求人の主張は、その前提を欠くものである。
また、請求人が提出した証拠からは、本件商標の商標権者が、引用商標の信用にただ乗りし、引用商標の出所表示機能を希釈化し又は名声を毀損させるものというべき事実は見いだせないし、他に、本件商標が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号該当性の判断については、以下の判示がある。
商標法第4条第1項第7号に規定する、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(ア)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(イ)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(ウ)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(エ)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(オ)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれると解される(知財高裁 平成17年(行ケ)第10349号同18年9月20日判決参照)。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性
上記(1)の判示に照らして、本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性を判断すると、以下のとおりである。
ア 本件商標は、「Pink Bear」の欧文字を筆記体で横書きしてなるものであって、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激又は他人に不快な印象を与えるような文字等からなるものではない。
イ また、本件商標は、これをその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものともいえず、さらに、他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されているものではないし、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。
ウ さらに、請求人の主張及び同人の提出に係る甲各号証を総合してみても、商標法の先願登録主義を上回るような、本件商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底認容し得ないような場合に該当すると認めるに足りる具体的事実を見いだすことができない。
エ そして、請求人は、本件商標と引用商標はその構成態様が同一であり、引用商標が中国において周知であることから、被請求人は、その指定商品について我が国において引用商標が登録されていないことを奇貨として、先取り的に登録出願し、商標権を取得したものであり、その行為は、社会的妥当性を欠き、国際信義にも反するものであり、ひいては公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある旨主張している。
しかしながら、上記1(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
また、上記2のとおり、被請求人が、引用商標の信用にただ乗りし、引用商標の出所表示機能を希釈化し又は名声を毀損させるものというべき事実は見いだせないし、他に、本件商標が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実も見いだせない。
さらに、請求人の提出に係る全証拠を勘案しても、本件商標が先取り的に出願されたものであり、公正な商取引の秩序を乱すおそれがあるなど、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠く、又は本件商標をその指定商品について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものとすべき具体的事情等を見いだすことができない。
その他、本件商標が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標というべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、「Pink Bear」は、請求人が創作した造語であり、通常の発想では容易に想起することのできない高度な創作性を有するものといえるから、全く同じ語を、偶然に被請求人が自己の商品の出所識別標識として採択する可能性は極めて低いと考えるのが合理的であり、まして、請求人が取り扱う化粧品と同一事業分野でこのような偶然が生じることは考え難い。また、引用商標が、本件商標の出願日以前に中国の需要者間において広く知られていた点に鑑みれば、被請求人が化粧品事業を開始した前後に引用商標の存在を知り、日本でいまだ出願されていないことを奇貨として、不正の目的をもって先取的に出願したと考えるのが自然である旨主張する。
しかしながら、本件商標及び引用商標を構成する「Pink Bear」の文字は、ピンク色を意味する「Pink」の語と熊を意味する「Bear」の語を組み合わせたものと容易に看取し得るところ、当該組合せは、平易な英単語同士の結合により構成されるものであり、必ずしも高度な創作性を有するものとはいえないことから、本件商標の構成文字が引用商標の構成文字と同一であることについて、偶然の一致である可能性が低いとはいえない。また、上記1(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないから、本件商標が不正の目的をもって出願されたとはいえない。
(2)請求人は、被請求人は中国語圏に自社工場を有しており、かつ、中国語のできる人材を募集していた事情を考慮すれば、本件商標の出願前から中国において事業を行っていた可能性が高く、中国のビジネスに関する情報についても収集しやすい環境であったことが容易に推測されることから、本件商標の登録出願前に、既に中国において広く知られていた引用商標の存在を認識・把握していたとしても何ら不思議はない旨主張する。
しかしながら、請求人が主張する上記事実を客観的に裏付ける証拠は確認できず、請求人の臆測にすぎないと考えられることから、この主張をもって、被請求人が不正の目的で本件商標を登録出願したとはいえない。
(3)請求人は、本件商標の譲渡に関する可能性を検討すべく、被請求人とコンタクトをとったところ、譲渡対価として5,000万円という法外な金額が提示されたため、交渉を断念した経緯がある。これは、請求人に本件商標を売却することを意図して、引用商標と同一の商標を採用したことを裏付けるものである旨主張する。
しかしながら、請求人と被請求人が交渉を開始した2021年(令和3年)11月には、被請求人は本件商品の製造を開始しており(乙4〜乙11)、請求人代理人と被請求人代理人間でやり取りされた、本件商標についての譲渡交渉に向けたメール(乙20、乙21)の内容によれば、「1.譲渡補償額は約5,000万円と見積もっています。2.その内訳は、1)在庫品の売上額(3,500万円)2)将来の商品の停止による損失(1,500万円)」と記載されていることから、本件の商標権者からは、商品開発を途中で断念することへの対価及び得べかりし利益が勘案された適正な譲渡額が提示されているものといえ、他の記載を見ても、法外な金額での買取りを迫るような内容とはなっていないことから、これが不正の目的に当たるということはできない。
したがって、上記請求人の主張は、いずれも採用することができない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標1:甲2)



別掲3(引用商標2:甲2)




(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。

審判長 大森 友子
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2024-07-18 
結審通知日 2024-07-24 
審決日 2024-08-08 
出願番号 2021094824 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (W0321)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 大森 友子
特許庁審判官 小俣 克巳
豊瀬 京太郎
登録日 2022-03-02 
登録番号 6521579 
商標の称呼 ピンクベア、ベア 
代理人 岡村 太一 
代理人 岩田 康利 
代理人 恩田 俊郎 
代理人 松浦 喜多男 

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