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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W05 |
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管理番号 | 1420390 |
総通号数 | 39 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2025-03-28 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2022-10-25 |
確定日 | 2025-01-20 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5787986号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5787986号商標(以下「本件商標」という。)は、「ちょっと」の文字を標準文字で表してなり、平成27年3月23日に登録出願され、第5類「サプリメント,薬草」を指定商品として、同年8月28日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判の請求の登録日は、令和4(2022)年11月8日であり、その請求の登録前3年以内の同元(2019)年11月8日から同4(2022)年11月7日までの期間を以下「要証期間」という。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の指定商品中、第5類「サプリメント」(以下「請求に係る指定商品」という。)」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を請求書、令和5年1月25日付け及び同6年9月2日付け弁駁書において、要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出している(以下、証拠については「甲第〇号証」又は「乙第〇号証」を「甲〇」、「乙〇」のように省略して記載する。)。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品中、請求に係る指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁書及び回答書に対する弁駁 (1)答弁書に対する弁駁 ア 「ちょっと苦いが体が喜ぶ」の使用が本件商標の使用に当たらないこと 乙2として、本件商標を用いた商品ラベルが提出されている。この商品ラベルには、「ちょっと」の右下にやや小さく斜めに「苦いが」が表示され、「ちょっと」の左下にやや小さく斜めに「体が喜ぶ」と表示されている。このように表示方法に若干の特徴があるものの、同じ書体および同じ色で一体的に表されており、全体から生じる「ちょっと苦いけれども、飲めば体が喜ぶよ(良薬口に苦し)」という意味合いを記述した一体不可分の構成からなるものである。そのため、「ちょっと」の部分のみで自他商品の識別標識としての機能を果たすものとは認められない。 したがって、「ちょっと苦いが体が喜ぶ」の文字が商標として認識されることを前提としても、本件商標と社会通念上同一のものということはできない。 イ 「ちょっと苦いが体が喜ぶ」がキャッチフレーズとしての使用であること 乙2の商品ラベルには、「当帰茶(日本山人参茶)」が表示され、「ちょっと苦いが体が喜ぶ」よりも目立つ構成で表示されている。つまり、社会常識的にみて、本商品の商品名は、「当帰茶(日本山人参茶)」である。これは、乙7から乙10として提出された注文書等の中の商品名の欄に「当帰茶」「当帰」と記載されていることからも明らかである。 「ちょっと苦いが体が喜ぶ」(以下「被請求人商標」という場合がある。)は、一般顧客からすれば、商品特性をキャッチーに表現したキャッチフレーズとして認識されるにとどまるから、商標的使用ではない。 ウ 以上のように被請求人商標の使用が、本件商標の使用に当たらず、かつ商標的使用でもないから、被請求人が過去3年間において「サプリメント」に本件商標を使用していた事実はない。 (2)回答書に対する弁駁 ア 被請求人は、乙2の商品ラベルが付された商品(以下「使用商品」という場合がある。)への本件商標の使用が商標的使用であるか否かについては、回答書において「論点が違う」との主張に留まっている。 商標法第50条の不使用取消審判において登録商標の使用が商標的な使用、つまり、自他商品・役務を識別するものと認識され得る態様での使用であるか否かは極めて重要な要素であり、被請求人の前記「論点が違う」との主張には納得することができない。 過去の裁判例において、商標法第50条の「登録商標の使用」について、商標的使用を要するとするものと、不要とするものに分かれているが、その中で、直近の事件である知財高判令和4年2月9日 令和3(行ケ)10076において、ついに、「不使用取消について自他商品・役務の識別するものと認識され得る態様で使用することを要する」ことが明言された。つまり、登録商標を指定商品・指定役務に使用していても、その使用が商標的使用に該当しなければ、商標法第50条の「登録商標の使用」には該当しないことが明言された(甲3)。 本件においては、証拠(乙20、乙22、乙24、乙29、乙31、乙52、乙72ほか)として、本件商標「ちょっと」が使用された使用商品(被請求人の主張では「サプリメント」とされている。)の写真が提出されている。しかし、本件商標「ちょっと」の文字は、その後の文字と組み合わせた被請求人商標一体の文字として使用されていることが明らかである。 事実、被請求人からは、「ちょっと」の文字部分が使用商品について出所を表示し、自他商品識別のための機能を果たすものと認識できる証拠が一切提出されておらず、また、提出された証拠からは、日常的に取引者および需要者や被請求人が使用商品について「当帰(錠剤)」、「当帰(粉末)」、「当帰サプリ」等の名称で取引していることが明らかである。このような使用実態からすれば、益々、「ちょっと」の文字部分が使用商品について出所を表示し、自他商品識別のための機能を果たすものと認識するとは考えられない。 また、被請求人商標と「ちょっと」の文字からなる本件商標とは、その構成文字が明らかに異なるから、被請求人商標は本件商標と社会通念上同一の商標と認められるものとは考えられない。 イ 以上のように、使用商品に対する被請求人商標の使用は、商標法第50条の「登録商標の使用」に該当しないことが明らかである。 第3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求め、令和4年12月12日付け答弁書及び同6年6月4日付け審尋に対する同年7月9日付け回答書で、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第72号証(審決注:当合議体において、回答書と同時に提出された乙第1号証ないし乙第62号証は、答弁書で提出した証拠の続き番号(乙第11号証ないし乙第72号証)に置き換えた。)を提出した。 1 答弁書 (1)本件商標は、令和3年9月27日に本件商標の設定登録時の商標権者(以下「前商標権者」という。)であるA氏から本件商標権者に商標権の譲渡がされており、移転登録をしている(甲1、甲2)。 (2)被請求人である本件商標権者は、商標権の移転登録後、取消審判請求登録前である令和3年9月27日から現在に至るまで、日本国内において、請求に係る指定商品「サプリメント」に大文字でわかりやすいように縦書きで登録商標「ちょっと」、その下左右に縦書きで小さく「苦いが体が喜ぶ」とラベルに記載した商品を販売している。販売方法は、販売協力者による委託販売および個人への直接販売である。 ア 乙1は、厚生労働省によるサプリメントの名称と本件商標を使用し販売しているサプリメントの種類(粉末、錠剤、丸剤)である。 イ 乙2は、本件商標を使用しているサプリメントのラベルである。 ウ 乙3は、本商標権を使用しているサプリメントを掲載したチラシである。 エ 乙4、乙5、乙6は、販売協力者が配信しているフェイスブックにおいて、開設日の2018年5月11日から現在の期間、本件商標を使用しているサプリメントの商品、本件商標を使用しているサプリントの商品画像を掲載しているチラシおよび文章により紹介している。 オ 乙7、乙8は、販売協力者との注文メール、納品書、請求書および入金の記録である。 カ 乙9、乙10は、個人との注文FAX、納品書および入金の記録である。 (3)さらに、現在も継続して販売をしているので、審判請求前の駆け込み使用には、該当しない。 2 審尋及び弁駁に対する回答 (1)チラシA及びB(乙3)について 「SRS研究会」とA氏が本件商標の前商標権者かつ使用権者であった(乙13〜乙18)。A氏が本件商標の前商標権者で、2021年9月27日から本件商標権者が本件商標の商標権者となる。 (2)本件商標を用いた事業を譲渡した証拠等について A氏から本件商標権者に事業を譲渡した証拠(乙27、乙28)、チラシの裏面の「販売者およびお問い合わせ先」がA氏から本件商標権者に変更した証拠(乙29、乙30)、事業承継後の要証期間に本件商標を用いた商品(粉末、錠剤)を販売している証拠(乙31)を提出する。 なお、チラシは家庭用プリンタで印刷し、自ら配布しているため、チラシ配布の委託記録や印刷記録、納品書などはない。 (3)販売協力者との商品の注文書等(乙7、乙8)について 本件商標権者と販売協力者は、取引が完了するまでの間、内容の確認をすることもなく、双方が認識する商品は一致し、支払いは滞りなく行われ、複数回の取引が成立していることから、これらは錠剤や粉末の商品に係る取引書類である。 (4)個人との商品の注文書等(乙9、乙10)について 本件商標権者が作成し配布した注文書(乙53)を用いての「個人」からのFAXによる注文であり、届いた注文書に取引金額を記載し返信することで注文請書としての役割を果たし、「個人」は返信を受け、翌日には支払いを行っている。そのため、各種書類における粉末、錠剤、丸剤のパッケージに記載の商品名又は名称と相違があっても双方が認識している商品は一致し、代金の前納は速やかに行われ複数回の取引が成立していることから、これらは丸剤等の商品に係る取引書類である。 (5)取引者・需要者から使用商品が「サプリメント」であると認識されていることについて 前商標権者A氏及び本件商標権者の連名において、事業譲渡時に取引先に発送した書類は、事業譲受の案内文(乙49)、チラシ(乙50、乙51)、注文書(乙53)の3種類である。事業譲渡案内文には、チラシ裏面に掲載した商品をさして粉末、錠剤及び丸剤を「サプリメント」、苗を「苗」、茶葉及びティーバッグを「茶」として案内している。また、取引者であるT氏は、事業承継案内直後の2020年12月7日に錠剤の商品を「当帰サプリ(錠剤)」と記載して注文しており(乙54)、錠剤の商品を「サプリメント」であると認識していることが分かる。 次に、本件商標を用いた商品ラベルの中に入っているサプリメント商品の丸剤、錠剤及び粉末の実物の写真(乙69)、サプリンメントの形状についての説明(乙70、乙71)を提出する。 これらの書証より、消費者庁では、「サプリメント形状の加工食品は、本制度の運用上、天然由来の抽出物であって分画、精製、化学的反応等により本来天然に存在するものと成分割合が異なっているもの又は化学的合成品を原材料とする錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等の形状である食品を指す。」としている。このことから、丸剤及び錠剤の商品は「サプリメント」形状の加工食品であるといえる。 (6)本件商標の使用について 本件商標を使用した事実は、事業承継時に取引先に送付したチラシ(乙51、乙52)である。 (7)弁駁書等に対して ア 本件商標の「ちょっと」ではなく、議論の対象ではない「ちょっと苦いが体が喜ぶ」について主張を展開しているのでそもそもの論点が相違する。 イ 商品の表ラベル「当帰茶(日本山人参茶)」は食品表示法にのっとった一般名称で、植物名「当帰」の「お茶」を意味し、「日本山人参」は「当帰」の別称である。商品の表、裏ラベルの表示内容は、食品表示法上問題がない。 以上より、商品名は本件商標「ちょっと」であり、使用商品は「サプリメント」である。 3 上申書 被請求人は、本件の審理終結後である令和6年11月27日付けで上申書及び乙第73号証ないし乙第76号証(審決注:当合議体において、上申書と同時に提出された乙第1号証ないし乙第4号証は、上記2の回答書で提出した証拠の続き番号(乙第73号証ないし乙第76号証)に置き換えた。)を提出した。 第4 当審の判断 1 両当事者が提出した証拠及び被請求人の主張、並びに職権調査によれば、次のとおりである。 (1)本件商標権者について 本件商標権者に係る団体である愛媛当帰普及会は前商標権者に係る団体であるSRS研究会から2020年12月1日付けで「薬用植物当帰の苗、茶およびサプリメントの製造・販売における事業を譲り受け」(乙49)、本件商標の商標権も令和3年(2021年)9月27日受付で前商標権者から本件商標権者に移転されている(甲1)。 (2)商品ラベル及び裏ラベル(乙2、乙12、乙72)について 当該書証に表示されている商品(丸剤)の表ラベルには、右側に白色の縦長長方形に黒文字で「当帰茶(日本山人参茶)」の記載、「ちょっと」の文字(以下「使用商標」という場合がある。)をラベルの中央にその右斜め下に小さく「苦いが」、左斜め下に「体が喜ぶ」の文字を黄色で表してなり、ラベルの下部分には「丸剤 30g入」(茶色地に白抜き)の記載がある。裏ラベルには、「名称 当帰(日本山人参茶)」、「製造販売者」として本件商標権者の名称及び住所の記載があり、丸剤の「原材料名」として「当帰粉末(茎・葉)95.9%」(乙12)の記載がある。 (3)商品の注文(乙46〜乙48)について 個人からの商品の注文は、本件商標権者が作成し、配布した注文書を用いたFAXによるものであり、その注文書に取引金額を記載して返信することで注文請書とし、個人は返信を受けて、支払いをおこなうものである(被請求人主張)。 2022年(令和4年)4月4日付け「注文書」(乙46)は、愛媛当帰普及会宛てのものであり、「ご依頼主様 お名前 U」、「ご注文商品」の商品名「当帰(丸剤)」、内容量「30g」、ご注文数「3」袋の記載があり、弊社使用欄に、「受付日 22/4/4」「送料込金額 ¥9,720」、本件商標権者の氏で、「入金確認後、発送させていただきます。・・・」との記載がある。そして、振込記録(乙47)には、「4―04−05」「9,720」「U」の記載がある。さらに2022年4月6日発行の「納品書」(乙48)には、「U」宛、「ご注文年月日」「2022年4月4日」、納品予定日「2022年4月8日」の記載、愛媛当帰普及会並びに担当として本件商標権者の名称及び住所の記載、商品名「当帰(丸剤):30g入」「数量 3袋」の記載がある。 2 上記1からすれば、以下のとおり判断できる。 (1)使用商品について 被請求人が使用商品と主張する上記1(2)のラベルの商品は、原材料を当帰粉末(茎・葉)とするところ、職権調査によれば、「当帰」は 「1 セリ科の多年草。・・・乾した根は漢方生薬の当帰(和当帰)として鎮静・通経薬。」(出典:広辞苑 第七版)の意味を有する植物であり、漢方薬にも使用されるものであるほか、例えば、「和漢凜々(大和当帰葉配合サプリ)」(https://www3.pref.nara.jp/sangyo/yamatotouki/item/1481.htm)「宮崎・すどう農園の日本山人参サプリ 100%純粋粉末カプセル」(商品説明には、「日本山人参とは・・・学術名をヒュウガトウキというセリ科の植物・・・「茎・葉」に・・・有効成分が含まれていることが確認され、現在サプリメントや健康茶として注目されています。」との記載がある。)https://item.rakuten.co.jp/sudoufarm/c/0000000117/?s-id=item_SP_BigBannerS_3 等、当帰を原料とするサプリメントが販売されている実情があり、2016年11月20日 東京読売新聞(朝刊第2部 2ページ)の新聞記事には、宮崎県の高千穂の紹介の中で、「ヒュウガトウキ 別名日本山人参(やまにんじん)。健康によいとされ近年注目を集めている。茎葉の部分を使ったサプリメントやお茶などの商品がある。成分を配合した酵素酢「高千穂夢酵素」も近く発売される。」との記載も見つけられる。 上記実情等を勘案すれば、使用商品は、当帰粉末を原材料とし、丸剤に加工した加工食品であるから、サプリメントの一種と推認し得るものというのが相当である。 したがって、使用商品は、請求に係る指定商品「サプリメント」の範ちゅうに含まれる商品であるといい得るものである。 (2)本件商標と使用商標の社会通念上の同一性について 本件商標は、「ちょっと」の文字を標準文字で表してなるものであるのに対し、使用商標は、使用商品のパッケージの中央に、縦書きで黄色い文字で大きく表されている「ちょっと」の文字である。そして、本件商標と使用商標とは、書体、横書きと縦書き、及び色彩において相違するものの、その構成文字を同じくするものといえ、同一の称呼を生じ、観念において異なるものということはできない。 そうすると、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができる。 (3)商標の使用、使用時期及び使用者について ア 上記1(3)に係る注文書には、商品名「当帰(丸剤)」、内容量「30g」と記載され、納品書には、商品名「当帰(丸剤):30g入」と記載されており、上記1(2)に係る商品の表ラベルには、「当帰茶(日本山人参茶)」「丸剤 30g入」と表示されており、商品の表ラベルと注文書及び納品書の商品名の表示が若干異なるものの、「当帰」「丸剤」の記載及び内容量が同一であるから、上記1(2)のラベルの商品と注文書及び納品書の商品は同じ商品(使用商品)を示しているものと推認できる。 イ 上記1(3)によれば、愛媛当帰普及会は、令和4年(2022年)4月4日に個人の顧客から使用商品の注文を受け、同月5日に顧客から商品の代金が入金されており、その後同月8日に使用商品を納品したことが推認される。当該取引に不自然なところはなく、当該日付はいずれも要証期間内である。 また、愛媛当帰普及会は本件商標権者に係る団体であって、担当者も本件商標権者であるから、当該取引も実質的には本件商標権者が行ったものとみて差し支えない。 ウ 上記ア及びイの取引については、書類は日本語で記載されているから、日本国内で取引されたものといえる。 エ 上記アないしウからすると、愛媛県在住の本件商標権者は、上記1(2)の商品ラベルを付した使用商品を、国内所在の個人の顧客に対して、要証期間である2022年4月8日に、納品(譲渡)したということができる。 (4)小括 上記(1)ないし(3)のとおり、本件商標権者は、要証期間に、請求に係る指定商品「サプリメント」の範ちゅうに含まれる商品と認められる使用商品に、本件商標と社会通念上同一の使用商標を付して譲渡したものと認められ、これは、商標法第2条第3項第2号にいう「商品の包装に標章を付したものを譲渡又は引き渡す行為」に該当する。 3 請求人の主張について 請求人は、本件商標を用いた商品ラベルには、「ちょっと」の右下にやや小さく斜めに「苦いが」が表示され、「ちょっと」の左下にやや小さく斜めに「体が喜ぶ」と表示されており、「ちょっと」の文字は、その後の文字である「苦いが体が喜ぶ」と組み合わせた「ちょっと苦いが体が喜ぶ」からなる一体の文字として使用されていることが明らかであり、また、提出された証拠からは、日常的に取引者および需要者や本件商標権者が使用商品について「当帰(錠剤)」、「当帰(粉末)」、「当帰サプリ」等の名称で取引しているから、取引者および需要者は、「ちょっと苦いが体が喜ぶ」の文字を、使用商品の品質、効能、宣伝文句、キャッチコピー(キャッチフレーズ)等の一部としてこれを認識するにとどまり、「ちょっと」の文字部分が使用商品について出所を表示し、自他商品識別のための機能を果たすものと認識するとは考えられない旨を主張し、「不使用取消について自他商品役務の識別するものと認識され得る態様で使用することを要する」とした裁判例を挙げている。 しかしながら、使用商標「ちょっと」は、中央に大きく配されているところ、その右斜め下、左斜め下にそれぞれ小さく「苦いが」「体が喜ぶ」が表され、「ちょっと」の文字に近接して配置されているとしても、上記のとおりの外観において文字の大きさが相違し、「苦いが」「体が喜ぶ」の文字は、「ちょっと」の文字を強調するかのように左右の下部に斜めに配されているともいえるばかりでなく、「苦い」、「体が喜ぶ」の文字は、商品の味覚(品質)、効能を端的に表した文字であり、識別標識としての機能が強いものとはいえない。 そうとすれば、中央に大きく目立つ態様で配された「ちょっと」の文字部分が、取引者、需要者に強い印象を与える文字部分といえるものであり、使用商標のかかる構成において、「ちょっと」「苦いが」「体が喜ぶ」の文字を常に一体に捉えるとすべき特段の事情も見いだせない。 また、「当帰(錠剤)」、「当帰(粉末)」等の表記は、原材料及び商品の加工状態を表しているにすぎないものであるから、当該名称で取引されていることをもって、使用商標が使用商品に使用されていないとはいえない。 さらに、使用商標は、自他商品を識別する機能を果たし得ないとする事情は見当たらない。 してみれば、使用商標は、独立して出所識別標識としての機能を果たすものであって、上記2(2)のとおり、本件商標と社会通念上同一の商標であるというべきである。 そして、使用商標の使用を、商標法第50条第2項に基づく登録商標(本件商標)のその指定商品についての使用と認定することに特段の問題はない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 4 その他 被請求人は、上記第3、3のとおり、本件の審理終結通知後に上申書と証拠を提出しているが、その内容によって上記判断に影響を与えるものとみることはできないから、審理再開の必要は認めない。 5 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標権者が、その請求に係る指定商品に含まれる商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることを証明したといえる。 したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
審理終結日 | 2024-11-12 |
結審通知日 | 2024-11-19 |
審決日 | 2024-12-10 |
出願番号 | 2015031618 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(W05)
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最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
大森 友子 |
特許庁審判官 |
清川 恵子 白鳥 幹周 |
登録日 | 2015-08-28 |
登録番号 | 5787986 |
商標の称呼 | チョット |
代理人 | 大坪 賢吾 |