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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1419516 |
総通号数 | 38 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2025-02-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-07-31 |
確定日 | 2024-12-09 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 国際登録第1647337号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 国際登録第1647337号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件国際登録第1647337号商標(以下「本件商標」という。)は、「Cloudmonster」の欧文字を横書きしてなり、2021年(令和3年)4月6日にSwitzerlandにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、同年10月5日に国際商標登録出願、第25類「Clothing; footwear; headwear; outdoor shoes; casual shoes; running shoes; sports shoes; athletic footwear; trekking shoes; trail shoes; trail running shoes; hiking boots; climbing boots [mountaineering boots]; mountaineering boots; climbing shoes; baseball shoes; football boots; tennis shoes; snowboard boots; ski boots; basketball sneakers; bath slippers; sports clothing; leisure wear; moisture−wicking tops and pants; moisture−wicking underwear; breathable tops and pants; breathable underwear; sports bras; T−shirts; sports T−shirts; running shirts; tops; jerseys; tank tops; long−sleeved jerseys; sweatshirts; vests; trousers; sports trousers; running trousers; shorts; sports shorts; running shorts; ski pants; jackets; outdoor jackets; sports jackets; sports coats; rain slickers; pelerines; ski jackets; bathing suits; bathing trunks; bikinis; baseball caps; stocking caps; caps; bathing caps; leg warmers; boxer shorts; socks; sports socks; footies; sports singlets; underwear; thermal protection clothing; thermal underwear; thermal socks; headwear of thermal textile materials; headbands; neck scarves; gloves; sweat bands; head sweatbands; waist belts; bathrobes.」を指定商品として、令和5年3月29日に登録査定、同年7月14日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も有効に存続しているものである。 1 登録第5379390号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成 MONSTER(標準文字) 指定商品 第32類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 平成22年7月8日 設定登録日 平成22年12月24日 2 登録第5057229号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成 別掲1のとおり 指定商品 第32類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 平成18年6月9日 設定登録日 平成19年6月22日 3 登録第5393681号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成 MONSTER ENERGY(標準文字) 指定商品 第32類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 平成22年7月8日 設定登録日 平成23年2月25日 4 登録第5788676号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の構成 MONSTER ENERGY(標準文字) 指定商品 第9類、第16類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品 登録出願日 平成26年12月25日 設定登録日 平成27年8月28日 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標の登録は商標法第4条第1項第15号及び同項第7号の規定に違反してなされたものであるから取り消すべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第506号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 申立人のMONSTERブランドの周知著名性 (1)MONSTERブランドの創設及び「MONSTER」の使用 申立人は、2002年に「MONSTER」なるエナジードリンクのブランドを創設し、これ以降、現在に至るまで、「MONSTER」をMONSTERブランドのエナジードリンク(以下「申立人商品」という。)の出所識別標識として使用している。 申立人商品は、2002年に米国でMONSTERブランドの第1号の個別製品「MONSTER ENERGY」を発売後、世界各国における販売も開始し、現在は日本を含む世界130以上の国及び地域で販売中である。 申立人商品には、2002年以降現在まで一貫して、「MONSTER」の文字を基調とする個別商品名(例えば、「MONSTER ENERGY」「MONSTER ASSAULT」「MONSTER KHAOS」「MONSTER M−80」「MONSTER RIPPER」など)が採用されている。また、これらの個別製品の包装容器は同じデザインで統一されており、特徴的な書体で大きく表示した「MONSTER」の文字(甲416)を独立して見る者の目をひきつける態様で顕著に表示している(別紙1、別紙2)。 このように、規則的なネーミング法(すなわち「MONSTER」に他の語を結合する方法)で命名された個別製品名と特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字を顕著に表示した統一的デザインの包装容器を特徴とする申立人商品は、需要者の間でたちまち人気となり、申立人のMONSTERブランドのエナジードリンク事業を拡大し、その成功は経済界で高い評価を受けている(甲2〜甲33、甲51〜甲58、甲391〜甲393)。 国内では、2012年5月の「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジー 缶 355ml)及び「MONSTER KHAOS」(モンスター カオス 缶 355ml)発売以降、現在まで約30種類(リニューアル商品を含む。)の申立人商品を販売している(別紙1)。 (2)広告宣伝活動 申立人商品に関する広告宣伝活動は、幅広く継続的なものであり、国際的に活躍する多数の有名アスリート・チーム及びイベントに対するスポンサー活動を中核として、ウェブサイト及びプレスリリースによる広告、申立人商品サンプルの配布、大手コンビニエンスストアやイベント主催者と提携した大規模な販売キャンペーン(景品・賞品のプレゼントを含む。)、スポーツイベント等の開催、契約アスリート等の動画・画像の公開、MONSTERブランドのライセンス商品の開発及び販売、ビデオゲーム会社と提携したMONSTERブランドを使用したビデオゲームの開発及び共同販売促進活動の実施など極めて多彩な内容である。こうした広告宣伝活動は、「MONSTER」の文字(特徴的な書体で表示したものを含む。)、爪の図柄と特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字と活字体で表示した「ENERGY」の文字からなるロゴマーク、「MONSTER ENERGY」の文字(以下、これらを併せて「MONSTERブランドマーク」という。)を使用して、本件商標の登録出願日前から継続的かつ頻繁に全国規模で実施されている(別紙3〜別紙7)。 また、申立人は、申立人商品の中心的需要者層である10〜30代の若い世代(特に男性)に人気が高いモータースポーツ、エクストリームスポーツの分野を中心にスポンサー活動を行うとともに、全16の異なるウェブサイト及びソーシャルメディアのアカウント(別紙9)を開設して、こうした若い世代が多く利用するインターネットメディアによる大規模な情報発信を通じてMONSTERブランドを需要者に強くアピールするための効果的な広告を実施している。 (3)ライセンス商品の輸入差止め 需要者におけるMONSTERブランドのライセンス商品の人気の高さに便乗して、海外で製造された申立人の商標権侵害物品が日本の税関で輸入差止めされる事案が遅くとも平成25年7月から度々発生している(別紙8)。 (4)国内外における商標登録 MONSTERブランドマークについて、申立人は、引用商標をはじめとして、国内外において多数の商標登録を取得している(甲486〜甲502)。 (5)ブランド認知度及び市場占有率 複数の第三者が実施したエナジードリンクに関する市場調査及び消費者アンケート調査によれば、既に2013年時点で申立人商品の国内市場占有率は25%を超えており、一般消費者におけるブランド認知度も第2位であったことが明らかである。2013年以降も、申立人商品は着実に売上げを伸ばしており、若い世代の男性を中心とした従来の主要需要者層にとどまらず、美しいカラフルな色使いのボトル缶に大きく目立つ態様で表示された爪の図柄が人目をひきつけ、男性のみでなく女性の間でもMONSTERブランドの認知度を高めてきた。2018年には、申立人商品の販売実績は1千万ケースに近づき、それまで首位の「レッドブル」を超えて市場占有率トップに立った(甲311〜甲322、甲383〜甲385、甲433)。 申立人商品は、2018年に国内エナジードリンク市場でトップシェアを獲得後は、首位を独走状態であり(甲448、甲476、甲479)、第三者の市場調査では2022年時点における申立人商品の市場占有率は約40%であった(甲450)。 (6)「MONSTER」「モンスター」の表示で認識されていたこと 上記のような販売実績を通じて、申立人商品は、飲料業界で「モンスター」と称され、「MONSTER」「モンスター」と表示され、「MONSTER(モンスター)」のブランドとして認識されている(甲10、甲16、甲17、甲34、甲42、ほか)。 この点に関しては、特許庁の審査においても、「モンスター」は、申立人が飲料等について使用する商標「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」の略称として需要者の間で広く認識されていると認定されている(甲433、甲447)。 (7)小括 以上の事柄に照らせば、申立人の使用に係る「MONSTER」及びその音訳「モンスター」は、本件商標の登録出願時及び査定時には、申立人の製造販売に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。 2 商標法第4条第1項第15号該当性 本件商標の構成文字「Cloudmonster」は、辞書等に掲載されている成語ではないところ、「Cloud」の文字はその音訳が外来語の「クラウド(cloud)」(甲505、甲506)として、「monster」の文字はその音訳が外来語の「モンスター」(甲503、甲504)として、それぞれ親しまれていることから、「cloud」と「monster」の2語を結合し、語頭の文字のみを大文字で、その他を小文字で書したものであると容易に認識、理解されるものである。 「Cloudmonster」は、「monster」の文字、「モンスター」の音(称呼)、「モンスター」の観念を包含する点で、引用商標、並びに「MONSTER(monster)」を使用した申立人商品の個別製品名と一致し、これらの申立人の使用に係る商標と外観、称呼及び観念の印象が類似する。 また、「Cloudmonster」は、申立人商品に使用されている全ての個別製品名と同一のネーミング規則、すなわち、「MONSTER(monster)」に他の語を結合する方法によって構成されているものである。 したがって、本件商標は、申立人の使用に係る商標と類似性の程度が極めて高いことが明らかである。 本件商標が使用される指定商品(以下「本件指定商品」という。)は、引用商標4の指定商品と同一又は類似のものである。 さらに、本件指定商品は、申立人のMONSTERブランドの様々なライセンス商品、並びに申立人商品の販売促進キャンペーンの賞品・景品として需要者に提供されている非売品MONSTERグッズと同一又は類似のもの、あるいは、これらと販売場所、需要者層を共通にする関連性が強いものである。 本件指定商品の最終的な需要者は一般の消費者であるから、その通常の注意力の程度は高いものとはいえない。 先に述べたとおり、「MONSTER」及びその音訳「モンスター」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されていた。 したがって、本件商標が本件指定商品に使用された場合、これに接した需要者は、申立人の使用に係る「MONSTER」及び申立人を直観し、当該商品が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的関係を有する者の取扱いに係るものであると誤信し、その出所について混同を生じるおそれがある。 また、本件商標の使用は、申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所表示力を希釈化するものであり、さらに、その名声、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 商標法第4条第1項第7号該当性 本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 第4 当審の判断 1 「MONSTER」、「モンスター」の周知著名性について (1)申立人の提出に係る証拠及び同人の主張並びに職権による調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、次の事実が認められる。 ア 申立人は、米国の飲料メーカーであって、我が国においてはアサヒ飲料株式会社を通じて2012年5月にエナジードリンク「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」及び「MONSTER KHAOS(モンスター カオス)」の販売を開始し、その後、2022年まで毎年、新製品やリニューアル商品を合計25種類以上販売した(甲7、甲8、甲10〜甲13、甲59、甲60、甲101、甲127、甲130、甲256、甲257、甲291、甲323、甲324、甲353〜甲361、甲434〜甲442、甲445、甲446、別紙1 ほか)。 イ それら商品(我が国で販売された申立人商品、以下単に「申立人商品」という。)のほとんどの種類の商品の容器には、3本の爪痕のような図形(以下「爪の図柄」という。)並びにデザイン化された「MONSTER」の文字(以下「MONSTERロゴ」という。)及び「ENERGY」の文字からなる別掲2のとおりの商標(色彩が異なるものを含む。以下「別掲2商標」ということがある。)が表示されている(甲7、甲8、甲10〜甲13など上記アと同じ。)。 ウ 申立人は、我が国で開催される各種のスポーツ競技会、イベントにおいて、看板、ユニフォーム、車体など多種多様なものに、別掲2商標又はこれと共に爪の図柄を表示している(甲73〜甲80、甲82 ほか)。 エ 我が国において、別掲2商標又はこれと共に爪の図柄が表示されたステッカー、衣類、帽子、ヘルメットなどが販売されている(甲47、甲48、甲98 ほか)。 オ 有限会社飲料総研の調査によれば、我が国における2013年のエナジードリンクの出荷数は約950万ケース(1ケース30本換算)であり、首位のレッドブルが550万ケース、2位のモンスターエナジーは240万ケースであった(甲317、甲318、甲320)。 カ 日本経済新聞社の2019年3月29日付け「(飲料HOT&COOL)モンスターエナジー、レッドブル超え」をタイトルとするウェブページには、「日経MJ」として、「飲料総研によると2018年の販売実績は1千万ケースに近づき、それまでカテゴリーの首位を走っていた「レッドブル」を超えた。」との記載がある(職権調査:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO43024750Y9A320C1HE4A00/)。 キ 2022年5月7日付け「モンスターエナジー、レッドブルを駆逐しトップ独走状態の秘密・・・周到な販売戦略」をタイトルとするウェブページには、「全国のドラッグストアのPOSデータをもとにした買物指数によると、エナジードリンクの火付け役だった「レッドブル・エナジードリンク」を抑え、モンスターエナジーの売り上げが独走状態となっている。今や日本国内のトップシェアを獲得しているのだ。」の記載がある(甲448)。 ク 2022年10月25日付け「日経 XTREND」と称するウェブページには、「エナジードリンク飛躍、販売額4年で3倍増 日本コカは苦戦」のタイトルの下、「エナジードリンク、メーカー別販売金額シェアの推移」の図があり、それには2018年9月ないし2022年9月として、「モンスターエナジージャパン」がいずれも40%前後でトップシェアとされている(甲450)。 ケ ジャストシステムによるエナジードリンクに関する調査(2014年4月)によれば、認知度が高い商品の1位は82.8%の「RedBull」、2位は47.6%の「MONSTERENERGY」であった(甲319)。 コ JMR生活総合研究所による消費者調査(No.196「エナジードリンク(2014年7月版)」)によれば、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」で45%、2位が「モンスターエナジー」で31%であり、同消費者調査No.232「エナジードリンク(2016年8月版)」によれば、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」、2位は「モンスターエナジー」であったと推認できる(甲311、甲312)。 サ JMR生活総合研究所による消費者調査データ No.365「エナジードリンク(2022年5月版)」には、「「レッドブル」「モンスター」認知率拡大、上位の牙城揺るがず」のタイトルの下、「認知では、首位が「リアルゴールド」、2位が「レッドブル」、3位が「モンスターエナジー」で、順位は前回と同様だが、「レッドブル」は49.8%から57.6%に、「モンスターエナジー」は49.3%から55.4%に伸ばした。」の記載がある(甲449)。 シ 申立人、モンスターエナジージャパン合同会社及びアサヒ飲料株式会社(以下、併せて「申立人等」という。)は、本件商標の登録出願の日前から、申立人商品に係るニュースリリース、ポスターなどで申立人商品を「モンスターエナジー」と表示しているものが見受けられ、また、申立人等以外のウェブページにおいても、「MONSTER」及び「モンスター」の文字が表示されているところ、当該ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等には、申立人商品の画像又は別掲2商標若しくは「モンスターエナジー」の文字又は別掲2商標と共に爪の図柄が表示又は掲載されている(甲69、甲71、甲79、甲101〜甲103、甲111、甲113、甲115、甲118、甲119、甲124 ほか)。 ス 平成25年7月以降、我が国の税関において、申立人の商標権(国際登録第1048069号など)を侵害する疑いがある貨物(帽子、ショートパンツ、Tシャツなど)が多数発見されている(甲169〜甲224、別紙8)。 (2)上記(1)アないしシによれば、申立人は、我が国において、2012年(平成24年)5月からエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の販売を開始し、その後現在まで25種類以上の申立人商品を販売していること、我が国における2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数約950万ケースのうち、申立人商品の出荷数は240万ケースで第2位であったことが認められ、その後、申立人商品の販売実績は、2018年(平成30年)に1千万ケースに近づき、以後2022年まで毎年販売シェア40%前後かつ第1位であると推認できることに加え、エナジードリンク「モンスターエナジー」のブランド認知度の調査において、2014年4月は47.6%、同年7月は31%と数値に差異はあるもののいずれの調査でも第2位であり、2016年、2018年及び2019年はいずれも3位以内であることが推認でき、2022年は55.4%で第3位であったことが認められるから、申立人商品は、本件商標の登録出願日前から登録査定日においても、我が国のエナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。 (3)そして、申立人商品は、そのほとんどの容器の中央に、「MONSTER ENERGY」の文字が別掲2のとおりの態様で表示されていること、常にこれと共に爪の図柄が表示されていること、さらに、ニュースリリース、各種記事などにおいて「MONSTER ENERGY」「モンスターエナジー」と表示され、「モンスターエナジー」と称されていることから、「MONSTER ENERGY」及び「モンスターエナジー」の文字並びに別掲2のとおりの態様に爪の図柄を加えた態様は、いずれも本件商標の登録出願の日前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人及びアサヒ飲料株式会社の業務に係る商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものといえる。 そうすると、別掲2のとおりの態様に爪の図柄を加えた態様からなる引用商標2及び「MONSTER ENERGY」の文字からなる引用商標3は、いずれもその指定商品中にエナジードリンクを含むものであるから、申立人商品(エナジードリンク)を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものというべきである。 (4)しかしながら、「MONSTER」の欧文字を標準文字で表してなる引用商標1については、申立人商品はその容器に「MONSTER」及び「ENERGY」の各文字が比較的近接して表示されているもの(別掲2を含む。)がほとんどであり、MONSTERのロゴ又は「MONSTER」の文字のみが表示されている商品についての出荷数、シェア等の販売実績は確認できない。 また、「MONSTER」及び「モンスター」の各文字が、ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等において、申立人又は申立人商品の略称として表示又は掲載が見受けられるとしても、常に「MONSTER ENERGY」及び「モンスターエナジー」の文字並びに別掲2のとおりの態様に爪の図柄を加えた態様の図形と共に表示又は掲載されていることからすれば、これに接する需要者は、そこに表示又は掲載された「MONSTER」の文字を、申立人商品(「MONSTER ENERGY」)の一連の名称として使用されていることを前提に、申立人商品を指称する文字として理解するというべきである。 そうすると、申立人商品又は上記「MONSTER ENERGY」の文字若しくは図形と関連なく表示されている「MONSTER」の文字までもが、需要者において申立人商品を表示するものと理解されるとはいい難い。 したがって、「MONSTER」の文字のみからなる引用商標1は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 (5)さらに、「MONSTER ENERGY」の文字を標準文字で表してなる引用商標4については、当該商標は上記第2の4のとおり、第9類、第16類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの各指定商品に使用されるものであるところ、申立人商品の広告宣伝は、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じて行われているものの、老若男女を問わず幅広い需要者層が目にする機会の多い一般的なメディアを通じたものとはいえないばかりか、我が国における清涼飲料に対する申立人商品の市場占有率等も確認することができないこと等を総合的に判断すると、「MONSTER ENERGY」の欧文字が、商品「エナジードリンク」の分野を超えて、一般的な清涼飲料その他の商品についてまで、取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。 したがって、引用商標4は、その指定商品について使用され、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることを認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知性及び独創性の程度について 上記1のとおり、別掲2のとおりの態様に爪の図柄を加えた態様からなる引用商標2、及び「MONSTER ENERGY」の文字からなる引用商標3は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも申立人の業務に係る商品を表示するものとして、エナジードリンクの分野の需要者の間に広く認識されているものの、引用商標1及び引用商標4については、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとはいえない。 また、引用商標1を構成する「MONSTER」の文字は、「怪物、化け物」の意味(甲503、甲504)を有する我が国で親しまれている成語であるから、独創性の程度は極めて低いものである。 (2)本件商標と引用商標の類似性の程度について ア 本件商標について 本件商標は、上記第1のとおり、「Cloudmonster」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成各文字は、同じ書体、同じ大きさで外観上まとまりよく表されているものであって、これより生じる「クラウドモンスター」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。 また、「Cloud」の文字は「雲」の意味(甲505、甲506)を、「monster」の文字は「怪物、化け物」の意味(甲503、甲504)をそれぞれ有する英語であるが、「Cloudmonster」の文字全体としては特定の意味を有しない造語と理解させるものである。 さらに、本件商標は、その構成中「monster」の文字が、上記1のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものではなく、本件商標の指定商品「Clothing; footwear; headwear; outdoor shoes; casual shoes; running shoes; sports shoes」等の分野において申立人の業務を表示する周知著名な商標とはいえないことに加え、広く親しまれた語であって独創性が高い語でもないから、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえない。 そうすると、本件商標は、「Cloudmonster」の構成文字全体で一体不可分のものとして認識、把握されるとみるのが相当である。 したがって、本件商標は、その構成文字全体が一体不可分のものであって、これより、「クラウドモンスター」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。 イ 引用商標について 引用商標1は、上記第2の1のとおり、「MONSTER」の文字を標準文字で表してなり、当該文字に相応して「モンスター」の称呼を生じ、「モンスター(怪物)」の観念を生じるものである。 引用商標2は、別掲1のとおり、爪の図柄及び「MONSTER ENERGY」の欧文字からなり、爪の図柄と文字部分を分離し看取する場合もあると考えられることから、これより文字部分を捉えて「モンスターエナジー」の称呼を生じ、「怪物の力、化け物の力」の観念を生じるといえる。 引用商標3及び引用商標4は、上記第2の3及び4のとおり、「MONSTER ENERGY」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して「モンスターエナジー」の称呼及び「怪物の力、化け物の力」の観念を生じるといえる。 ウ 本件商標と引用商標の類否について (ア)本件商標と引用商標1を比較すると、両者は、語頭における「Cloud」の文字の有無の差異を有し、この差異が両者の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく、相紛れるおそれのないものである。 また、本件商標から生じる「クラウドモンスター」の称呼と引用商標1から生じる「モンスター」の称呼を比較すると、いずれも「モンスター」の音を含むものではあるものの、両者は前半部における「クラウド」の音の有無の差異を有し、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、聞き誤るおそれのないものである。 さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標1は「モンスター(怪物)」の観念を生じるものであるから、観念において相紛れるおそれのないものである。 (イ)本件商標と引用商標2とを比較すると、両者は、爪の図柄の有無の差異、並びに「Cloud」の欧文字の有無、及び「ENERGY」の欧文字の有無の差異により、外観において相紛れるおそれはない。 また、本件商標から生じる「クラウドモンスター」の称呼と、引用商標2から生じる「モンスターエナジー」の称呼とは、語頭における「クラウド」の音の有無、及び後半部の「エナジー」の音の有無に差異を有するから、両者は明瞭に聴別できる。 さらに、本件商標は特定の観念が生じないのに対し、引用商標2は「怪物の力、化け物の力」の観念が生じるから、両者は観念において相紛れるおそれはない。 (ウ)本件商標と引用商標3及び引用商標4とを比較すると、両者は、語頭における「Cloud」の欧文字の有無、及び後半部の「ENERGY」の欧文字の有無において明らかな差異を有し、外観において相紛れるおそれはない。 また、本件商標から生じる「クラウドモンスター」の称呼と引用商標3及び引用商標4から生じる「モンスターエナジー」の称呼とは、「クラウド」の音の有無及び「エナジー」の音の有無に差異を有するから、両者は、聴別できる。 さらに、本件商標からは、特定の観念は生じないのに対し、引用商標3及び引用商標4からは、「怪物の力、化け物の力」の観念が生じるから、両者は、観念において相紛れるおそれはない。 (エ)小括 以上(ア)ないし(ウ)によれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 (3)本件商標の指定商品と申立人商品との関連性 本件商標の指定商品は、上記第1のとおり、第25類に属する「Clothing; footwear; headwear; outdoor shoes; casual shoes; running shoes; sports shoes」等であるところ、申立人の業務に係る商品「エナジードリンク」とは、商品の生産部門、販売部門、原材料、用途が相違するといえるから、これら商品の関連性が高いものとはいえない。 (4)混同のおそれ 引用商標については、上記(1)のとおり、引用商標2及び引用商標3は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものの、引用商標1及び引用商標4は、それらの周知性は認められず、また、「MONSTER」の文字の独創性の程度は極めて低いものである。 さらに、本件商標と引用商標とは、上記(2)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の別異の商標であることに加え、上記(3)のとおり、本件商標の指定商品と申立人商品との関連性が高いものとはいえないことをあわせ考慮すれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人等)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 (5)申立人の主張について 申立人は、本件商標の構成文字「Cloudmonster」は成語ではなく、いずれも親しまれている「cloud」と「monster」の2語を結合し、語頭の文字のみを大文字で、その他を小文字で書したものであると容易に認識、理解されるものであり、本件商標の構成文字は、申立人商品に使用されている個別製品名と同一のネーミング規則(「MONSTER(monster)」に他の語を結合する方法)によって構成されており、申立人の使用に係る商標と類似性の程度が極めて高いことが明らかであること、及び本件の指定商品は、申立人のMONSTERブランドの様々なライセンス商品、並びに、申立人商品の販売促進キャンペーンの賞品・景品として需要者に提供されている非売品MONSTERグッズ(以下、これらをまとめて「ライセンス商品等」という。)と同一又は類似のもの、あるいは、これらと販売場所、需要者層を共通にする関連性が強いものである旨主張している。 しかしながら、本件商標の構成文字「Cloudmonster」は、隙間なく同書同大でまとまりよく一体的に表されているものであって、これより生じる「クラウドモンスター」の称呼はよどみなく一連に称呼し得るものであり、本件商標の指定商品とライセンス商品等が販売場所、需要者層を共通にする場合があるとしても、引用商標1及び引用商標4の周知性が認められず、「MONSTER」の文字の独創性の程度は極めて低いものであること等からすれば、上記構成からなる本件商標は、看者をして「monster」の文字部分が出所識別標識として需要者に強い印象を与えることなく、「Cloudmonster」の構成文字全体をもって、一体不可分のものとして認識、把握させるものと判断するのが相当である。 したがって、申立人の当該主張は採用できない。 (6)小括 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は、上記第1のとおり「Cloudmonster」の欧文字からなるものであり、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。 また、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標であるから、そのような本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることのないものであって、かつ、引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれもないものである。 その他、本件商標の登録出願の目的や経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る具体的な証拠の提出はない。 そうすると、本件商標は、その指定商品に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す、あるいは国際信義に反するなど、公序良俗に反するものとはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 4 むすび 以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同項第7号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 引用商標2 別掲2 別掲2商標(甲7、甲8、甲10〜甲13等参照。) |
異議決定日 | 2024-12-03 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W25)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
板谷 玲子 |
特許庁審判官 |
小田 昌子 鈴木 雅也 |
登録日 | 2021-10-05 |
権利者 | On Clouds GmbH |
商標の称呼 | クラウドモンスター |
代理人 | 柳田 征史 |
代理人 | 池田 万美 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 佐藤 俊司 |
代理人 | 田中 克郎 |