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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W41
管理番号 1417906 
総通号数 36 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2024-12-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2024-05-21 
確定日 2024-11-28 
異議申立件数
事件の表示 登録第6787305号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6787305号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6787305号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和5年9月29日に登録出願、「インターネットを利用して行う映像の提供,オンラインによるゲームの提供」を含む第41類及び第16類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同6年2月28日に登録査定、同年3月13日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、以下の1及び2の登録商標であり、これらの商標権は、現に有効に存続しているものである。
1 国際登録第1160618号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「STEAM」の文字を横書きしてなるもの
指定商品及び指定役務:第9類、第35類、第41類及び第45類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
国際商標登録出願日:2013年2月5日
優先権主張:2012年10月27日(United States of America)
設定登録日:平成26年6月20日
2 国際登録第1591967号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
指定商品及び指定役務:第9類、第35類、第38類、第41類、第42類及び第45類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
国際商標登録出願日:2021年2月10日
優先権主張:2020年8月14日(United States of America)
設定登録日:令和5年1月6日
以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その指定商品及び指定役務中、第41類「インターネットを利用して行う映像の提供, オンラインによるゲームの提供」(以下「申立てに係る役務」という。)は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、甲第1号証を「甲1」のように記載する。
1 「STEAM」について
「STEAM」は、申立人が開発し運営している世界的に著名な世界最大のゲームプラットフォームの名称であり、ゲームに関係する業界において広く知られている。
パソコンショップ「アドパソ」のブログ(甲4)には、「Steamとは 世界最大のゲームプラットフォーム」「Steamは、140,000以上のゲームタイトルと10億件以上の登録アカウント数を持つ世界最大のPCゲームプラットフォームです。」「プレイヤーのみならず、ゲームに関係する業界でSteamを知らない人はいません。」と記載されている。
ゲーム・フィギュア・トレカ・古着の買取店の「お宝創庫」のコラム(甲5)には、「Steamとは、アメリカのValve社が運営するPCゲームのダウンロード販売を行うプラットフォームです。今やPCゲームで遊びたいと思ったら、必ずといっていいほどこの「Steam」から好きなゲームを探すのがPCゲームユーザーの流れとなりつつあります。」と記載されている。
「@niftyIT小ネタ帳」(甲6)には、「Steamは、アメリカのValve Corporation社が運営している世界的に有名なゲーム配信プラットフォームです。」「Steamは日本で販売されているゲームだけでなく、世界中のゲームが配信されています。2023年6月現在81,528本ものゲームが配信されているため、気になるゲームを探す楽しみがあるでしょう。」と記載されている。
JETROのお知らせ・記者発表(甲7)には、「ジェトロは、日本のゲームの海外展開を支援するため、世界最大のゲーム販売プラットフォームであるSteam上に日本ゲーム特集ページ−MADE IN JAPAN GAMES MARKET−を設置するとともに、2024年3月18日〜22日に米国サンフランシスコで開催された世界最大級のゲームイベント、ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス(GDC)において、同特集ページのプロモーションを展開しました。」と記載されている。
「週プレNEWS」(甲8)には、「配信ゲーム数4000以上!世界最大の配信サイト「Steam」の人気作品をチェック」「2002年よりPCやMacで遊べるゲームの配信を行なうサイト、「Steam」。現在ではユーザー数が1億人を超え、配信ゲーム数は4000作品以上という超巨大なサイトに大成長!!」と記載されている。
「ビギナーズ」(甲9)には、「PCゲーム御用達の巨大プラットフォーム「Steam」ですが、無料ゲームが多数配信されていることをご存知でしょうか?」と記載されている。
「Falcom」(甲10)に掲載されている代表的なプラットフォームの中に、「Nintendo Switch」「PlayStation」等とともに「Steam」が含まれている。
「ファミ通.COM」(甲11)に掲載されている代表的なプラットフォームの中に、「Switch」「PS5」等とともに「Steam」が含まれている。
このように、ゲームに関係する業界において、「STEAM」は、申立人が開発し運営している世界最大のゲームプラットフォームの名称として広く知られており、この事実を無視して本件商標と引用商標(甲2、甲3)の類否判断を行うことは妥当でない。
2 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、数色に色分けされた略正方形の図形部分と文字部分からなる結合商標であって、文字部分は「STEAM」を想起させる部分と「Campus」の欧文字と「スティームキャンパス」の片仮名文字によって構成されており、その構成中の「STEAM」の部分は他の文字よりも太く大きく書されているため、看者に強い印象を与える商標構成となっている。
そして、「STEAM」が、申立人が開発し運営している世界最大のゲームプラットフォームの名称として、ゲームに関係する業界において広く知られていることを勘案すれば、本件商標が、申立てに係る役務に使用される場合は、「STEAM」の部分に看者の注意がより大きく集まることは明らかである。
そうであれば、本件商標からはその構成中の「STEAM」の部分に相応して「スチーム」の称呼を生じるとともに、申立人が運営する世界最大のゲームプラットフォームを想起させるというのが相当である。
一方、引用商標からも、その欧文字部分に相応して「スチーム」の称呼を生じるとともに、申立人が運営する世界最大のゲームプラットフォームを想起させるため、本件商標と引用商標は同一の称呼及び観念を生じる。
また、本件商標の指定商品及び指定役務中、申立てに係る役務は、引用商標の第41類の指定役務と類似する役務である。
そうすると、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念を同一にする類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品及び指定役務中、申立てに係る役務は、引用商標の第41類の指定役務と類似する役務であるから、本件商標は、申立てに係る役務について、商標法第4条第1項第11号に該当する。
この点に関しては、本件商標の審査においても、「本件商標は引用商標と類似するため商標法第4条第1項第11号に該当する」との拒絶理由通知(甲12)がなされており、この判断は、ゲームに関係する業界における「STEAM」の著名性を考慮したものと推測される。
しかしながら、この判断は、本件商標の商標権者が提出した意見書により覆ったが、少なくとも、申立てに係る役務については、上述した理由により本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、その構成中に、申立人が運営する世界最大のゲームプラットフォームの名称としてゲームに関係する業界において広く知られている「STEAM」と類似する「STEAM」の部分を含むものであるため、本件商標を、申立てに係る役務に使用するときは、その役務があたかも申立人と組織的又は経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれがある。
この点に関しては、「STEAM+M」(商願2022−24417)が、商標法第4条第1項第15号及び同項第11号に該当することを理由として拒絶査定の処分を受けている事実(甲13)に照らしても客観的妥当性を有する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
申立人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(1)「STEAM」は、申立人が運営するゲーム配信プラットフォームの名称であり、ゲーム関連のウェブサイトにおいて、当該ゲーム配信プラットフォームで2002年からゲームの配信が行われており(申立人の主張、甲4〜甲6、甲8、甲9)、例えば、2023年12月18日付けの「@niftyIT小ネタ帳」のウェブサイトには、「Steamは、アメリカのValve Corporation社が運営している世界的に有名なゲーム配信プラットフォームです。」、「Steamは日本で販売されているゲームだけでなく、世界中のゲームが配信されています。2023年6月現在81,528本ものゲームが配信されているため、気になるゲームを探す楽しみがあるでしょう。」の記載(甲6)や2017年7月10日付けの「週プレNEWS」のウェブサイトにおいて、「配信ゲーム数4000以上!世界最大の配信サイト「Steam」の人気作品をチェック」、「2002年よりPCやMacで遊べるゲームの配信を行なうサイト、「Steam」。現在ではユーザー数が1億人を超え、配信ゲーム数は4000作品以上という超巨大なサイトに大成長!!」との記載がある(甲8)。
(2)2024年4月8日付けの「JETRO」のウェブサイトにおいて、「お知らせ・記者発表」として、「ジェトロは、日本のゲームの海外展開を支援するため、世界最大のゲーム販売プラットフォームであるSteam上に日本ゲーム特集ページ−MADE IN JAPAN GAMES MARKET−を設置するとともに、2024年3月18日〜22日に米国サンフランシスコで開催された世界最大級のゲームイベント、ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス(GDC)において、同特集ページのプロモーションを展開しました。」との記載があるが、当該記事は本件商標の登録査定後のものである(甲7)。
(3)上記(1)及び(2)によれば、「STEAM」は、申立人が運営するゲーム配信プラットフォームの名称であり、複数のゲーム関連のウェブサイトにおける、「STEAM」で2002年から世界中でゲームの配信が行われており、申立人が運営するゲーム配信プラットフォームとして世界的に有名である旨の記載や当該ゲーム配信プラットフォームにおいて、2023年6月現在81,528本ものゲームが配信されている旨の記載などから、その名称がゲーム業界及びゲームに関心のある需要者の間で一定程度知られていることがうかがえるとしても、使用された商標の構成及び態様、申立てに係る役務についての具体的な使用態様、我が国における当該商標の使用状況を客観的に示す証拠はなく、また、ゲーム分野の市場占有率が確認できないことから、上記ウェブサイトに記載されたゲームの配信数についての多寡を判断できず、さらに、ウェブサイト以外の新聞、雑誌、SNSなどの広告方法、広告規模、広告宣伝費など、「STEAM」の文字をその構成中に有する引用商標が、申立てに係る役務の分野を含め、我が国の需要者の間に広く認識されていることを認めるに足りる証拠は確認できない。
したがって、申立人提出の証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「STEAM」の文字をその構成中に有する引用商標が、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認められないものである。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、左側に、右上から順にオレンジ色、ピンク色、青色、緑色及び赤色で配色された略正方形(以下「本件図形部分」という。)が配置され、その右側にやや大きく「STEAM」(4文字目の「A」は、赤色で図案化されている。以下同じ。)及び「STEAM」よりやや小さく「Campus」の各文字を配し、その下に近接して、小さく「スティームキャンパス」の片仮名を配した構成よりなるところ、本件図形部分と、「STEAM」、「Campus」及び「スティームキャンパス」の構成各文字(以下「本件文字部分」という。)とは、色彩が相違し、重なることなく間隔を空けて配置されていることから、分離して看取し得るものである。
そして、本件商標中、本件図形部分は、特定の事物を表すものとして認識されているものではないから、当該図形部分からは特定の称呼及び観念は生じないものである。
また、本件商標中、本件文字部分は、「STEAM」の文字が「Campus」の文字よりもやや大きく表してなるものの、「スティームキャンパス」の文字も含め、外観上まとまりよく一体的に表されたものであり、このようなまとまりのよい構成においては、本件商標に接する需要者は、「Campus」の文字を捨象して、「STEAM」の文字部分のみに着目するというよりは、むしろ「STEAMCampus」の文字全体をもって、商品の出所識別標識としての機能を果たし得るとみるのが相当であるから、本件商標から「STEAM」の文字部分のみを分離、抽出して、他人の商標と比較して商標の類否を判断することは許されないというべきである。
さらに、本件文字部分中の「STEAM」の文字は、「水蒸気、蒸気」(「ジーニアス英和辞典 第6版」大修館書店)の意味を、「Campus」の文字は、「(大学などの)キャンパス」(前掲書)の意味を有するとしても、「STEAMCampus」の文字は、一般的な辞書等に載録がなく、申立てに係る役務との関係において、特定の意味を表す語として一般に使用されているような特別な事情もないことから、特定の観念を生じない一連一体の造語を表したものとみるのが相当である。
加えて、本件文字部分中の「スティームキャンパス」の片仮名は、「STEAMCampus」の読みを特定したものと理解し得るものであり、当該文字に相応して生じる「スティームキャンパス」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。
したがって、本件商標は、本件文字部分に相応して「スティームキャンパス」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標1は、「STEAM」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字は「水蒸気、蒸気」の意味を有する英語(「ジーニアス英和辞典 第6版」大修館書店)であるから、その構成文字に相応して「スチーム」の称呼及び「水蒸気、蒸気」の観念を生じるものである。
また、引用商標2は、別掲2のとおり、左側に円内に白抜きで何らかの抽象的な図形を配し、その右側に「STEAM」の文字を配した構成よりなるところ、図形部分と文字部分とは重なることなく、間隔を空けて配置されていることから、分離して看取し得るものであり、また、図形部分は、特定の事物を表するものとして認識されているものではないから、特定の称呼及び観念は生じない。
そうすると、引用商標2は「STEAM」の文字部分に相応して「スチーム」の称呼及び「水蒸気、蒸気」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の比較
本件商標と引用商標は、上記(1)及び(2)のとおり、外観においては、色彩の有無、図形部分の有無又は相違、「Campus」及び「スティームキャンパス」の文字の有無の差異を有するものであるから、両者は明確に区別し得るものである。
また、称呼においては、本件商標から生じる「スティームキャンパス」の称呼と引用商標から生じる「スチーム」の称呼とは、「キャンパス」の音の有無に差異を有するものであるから、称呼上、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、観念においては、本件商標は特定の観念を生じないのに対し、引用商標は、いずれも「水蒸気、蒸気」の観念を生じるから、観念において相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観及び称呼において、明確に区別及び明瞭に聴別し得るものであり、観念において相紛れるおそれはないものであるから、両者の外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって、本件商標の指定商品及び指定役務中、申立てに係る役務と引用商標の指定役務が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認められないものである。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
上記2のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であり別異の商標であるから、類似性の程度は低いというべきである。
(3)出所の混同のおそれについて
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認められないものであり、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は、類似性の程度が低い別異のものであることからすれば、本件商標と引用商標とは、それらの役務及び需要者を共通にする場合があるとしても、本件商標は、本件商標権者が、申立てに係る役務について使用しても、これに接する需要者が、申立人の業務に係る役務を連想又は想起し、同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、申立てに係る役務について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものではなく、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。


別掲
別掲1 本件商標(色彩については、原本参照。)



別掲2 引用商標2




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異議決定日 2024-11-20 
出願番号 2023108676 
審決分類 T 1 652・ 261- Y (W41)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 鈴木 雅也
特許庁審判官 馬場 秀敏
小田 昌子
登録日 2024-03-13 
登録番号 6787305 
権利者 株式会社アップ
商標の称呼 スティームキャンパス、スチームキャンパス、スティーム、スチーム、キャンパス、エイ 
代理人 内山 美奈子 
代理人 河内 幸雄 

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