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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W35 |
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管理番号 | 1417900 |
総通号数 | 36 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-12-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2024-03-08 |
確定日 | 2024-11-14 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6766577号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6766577号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6766577号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和5年10月31日に登録出願、第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食肉の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,食用水産物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,米穀類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,牛乳の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,茶・コーヒー及びココアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同年12月21日に登録査定され、同月27日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下のとおりであり、いずれの商標権も、現に有効に存続しているものである。 (1)登録第5143423号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:COSTCO(標準文字) 指定役務:第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 登録出願日:平成19年4月13日 設定登録日:平成20年6月20日 (2)登録第5143421号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 指定役務:第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 登録出願日:平成19年4月13日 設定登録日:平成20年6月20日 (3)登録第5143422号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 指定役務:第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 登録出願日:平成19年4月13日 設定登録日:平成20年6月20日 以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは、「引用商標」という。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。 以下、証拠については、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。 (1)引用商標の周知著名性 引用商標1ないし引用商標3は、米国に本社を置く会員制の倉庫型小売・卸売チェーンである「コストコ・ホールセール・コーポレーション(Costco Wholesale Corporation)」(以下「コストコ」という。)の業務を表示する商標として、世界的に需要者・取引者の間に広く認識されている商標である。 コストコは、1983年に米国ワシントン州シアトルに最初の倉庫型小売店をオープンし、1993年には同様の倉庫店を運営していたプライス・クラブと合併してプライスコストコになり、1997年には社名をコストコ・カンパニーと変更、さらに1999年にはコストコ・ホールセール・コーポレーションに社名変更した(甲5、甲10)。 そして、コストコの会員制倉庫型小売・卸売の事業を表示する商標としては、引用商標1ないし引用商標3が使用されている。特に、引用商標3は、コストコの事業を表示する代表的なハウスマークロゴとして使用され、需要者・取引者に広く知られている(甲5、甲6)。 コストコの倉庫型小売・卸売店においては、例えば、ケータリング用品、菓子類、電化製品、テレビ、メディア関連商品、自動車関連品、タイヤ、工具、スポーツ用品、宝飾品、時計、カメラ、本、キッチン用品、衣類、化粧品、健康食品、家具、オフィス用品・機器などの幅広い商品が取り扱われている(甲5)。そして特に、一般食品、冷凍・冷蔵食品、スナック・菓子類、飲料、アルコール類、精肉、鮮魚、フレッシュベーカリー、デリカテッセン(惣菜類)、野菜・フルーツといった飲食料品は、コストコの主要な取扱商品を構成している(甲7、甲8)。 コストコの会員制倉庫型小売・卸売店舗は、世界中で展開されており、2023年11月30日現在において、世界の店舗数は871倉庫店あり、店舗を有する国は、米国、プエルトリコ、カナダ、メキシコ、日本、イギリス、韓国、オーストラリア、台湾、中国、スペイン、フランス、アイスランド、ニュージーランド、スウェーデンに及んでいる(甲5)。2023年2月12日現在における世界における会員数は、約1億2790万人となっており、2023年会計年度における年間収益は、2377億ドルとなっている(甲5)。そして、日本においては、1999年に福岡県糟屋郡久山町に第1号店が開店され(甲10)、2023年8月24日現在で33倉庫店が存在している(甲5)。日本はアジア地域の中では最もコストコの店舗数が多いとされる(甲10)。 このように、コストコは、会員制倉庫型小売・卸売店舗を40年以上にわたり運営しており、世界中で小売・卸売事業を大規模に展開してきた。そして、特に飲食料品の小売・卸売業はコストコの事業において主要なものとなっている。 それゆえ、コストコの事業を表示するのに使用される引用商標1ないし引用商標3は、総合小売・卸売業(衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務)のみならず、飲食料品の小売・卸売業について、世界及び日本の需要者・取引者の間で広く認識された、周知・著名な商標となっている。 (2)本件商標を使用した権利者の事業 本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、本件商標を使用して、飲食料品に関する小売実店舗及びオンラインショップを運営しており、具体的にはコストコ取扱商品の再販事業を行っている。 当該権利者が運営するウェブページには、「会員証不要[コストコ再販専門店]」「コストコ人気商品が奈良で買えちゃう。」「奈良県初のコストコ再販専門店」といった記載がある(甲11)。facebooK、Instagram、TikTokといったソーシャルメディアにおける当該権利者が運営するアカウントページにおいても、「【奈良県初】コストコ商品の再販専門店」「見ればあなたもコストコ通になれる!?」「奈良県初!コストコ再販店」といった記載がされている(甲12〜甲14)。また、当該権利者が運営する実店舗のオープンを知らせるプレスリリースや地元情報発信記事においても、「奈良県初!今話題の「コストコ再販専門店」MINICOS(ミニコス)が北葛城郡上牧町に10月中旬グランドオープン」「年会費無料のコストコ再販店をオープン」「コストコ人気商品が「奈良」で買える!?」「奈良初!コストコ再販専門店「MINICOS(ミニコス)」が上牧町に10月オープン」「年会費無料のコストコ再販店をオープン!」「コストコ人気商品を取り扱う」といった記載がされている(甲15、甲16)。 つまり、本件商標は、実際の取引の実情としては、「コストコで取り扱われている各種の飲食料品の小売業務において行われる顧客に対する便益の提供」の出所を表示する商標として使用されているのである。 そして、当該権利者の実店舗のオープン当時のfacebookに投稿された広告記事には、本件商標権者の使用に係る商標(以下「本件使用商標」という。)が使用されている(甲12、甲17)。また、当該実店舗のオープンを報じるプレスリリース等に掲載された実店舗の写真においても、店舗看板において、本件使用商標が使用されている(甲15〜甲17)。本件使用商標は、上段に赤色の文字で「MINICOS」を表示し、下段左側に青色の三本の水平の直線を表示し、当該三本直線の右側に同じ青色の色彩にて「RETAIL SHOP」の文字を表示してなる。これを、コストコの業務を表示するのに代表的に使用されているハウスマークロゴである引用商標3と比較すると、上段に赤色の欧文字で店舗名称を表示し、下段左側に青色の三本の水平の直線を表示し、その三本直線の右側に同じ青色の色彩でその業態(小売や卸売といった事業内容)を表す文字を表示するという基本的な構成において共通している。 このようなロゴデザインにおける基本的な構成が共通するのは全くの偶然とはいい難く、本件商標権者がコストコ取扱商品の再販事業を専門的に行っており、本件使用商標が当該事業を表すためのものであることに鑑みても、本件使用商標は引用商標3に依拠してデザインされたものであるというのが相当である。 このように、本件商標権者が、コストコの周知・著名なロゴマークのデザインに何らかの形で依拠して本件使用商標をデザインしたというべきである点に鑑みても、そもそも本件商標権者が採択した「MINICOS」という文字自体が、コストコ取扱商品の再販事業を行う店舗であることを示すべく、「小さなコストコ」という意味合いを一般消費者に認識させるための商標として採択されたというべきである。つまり、「MINICOS」の文字は、(ア)取引の実情としてコストコ取扱商品の再販事業を専門としていることをうたっていること、(イ)本件使用商標がコストコの周知・著名なロゴデザインヘの依拠をうかがわせることからすれば、小さいものを意味する英単語「MINI」に、コストコを表示する「COSTCO」の欧文字6文字の前半3文字「COS」を結合することにより、「小さなコストコ」(つまり、「コストコ商品が買える小さな店」)を需要者・取引者に認識させるものとして採択されたというのが相当である。 実際、本件商標のロゴ態様においては、下段の小さな星図形はさして高い識別力を発揮せず、また、小売店舗という業態を示すにすぎない「RETAIL SHOP」の文字は指定役務との関係で識別力を欠いている一方で、上段に比較的大きく表示された「MINICOS」の文字が本件商標の要部として認識されると考えられるが、当該要部である「MINICOS」の文字は、「MINI」部分が赤色で表示され、「COS」部分が青色で表示されるという形で、明確に色彩が使い分けられている。それゆえ、これに接する一般消費者は、本件商標中の「MINICOS」の文字列は「MINI」と「COS」との異なる二語が結合したものであることをはっきりと認識することになり、本件商標権者が実際に行っているコストコ商品の再販事業に鑑みて、上述のとおり、小さいものを意味する「MINI」と、コストコを表示する「COSTCO」の文字の前半部「COS」とを結合して成るものであることを認識するというのが相当である。さらには、コストコの業務を表示するのに代表的に使用されているハウスマークロゴである引用商標3と本件商標は、主として赤色と青色を基調とした色の組合せから成るという点で共通しており、似たような外観上の印象を与えるところ、コストコ商品の再販事業を表示するのに使用される本件商標は、全体として、看者にコストコとの業務上の関連性を想起させ得るものというべきである。 (3)商標法第4条第1項第15号について 上記(1)に述べたとおり、引用商標1ないし引用商標3はコストコが行っている主要な事業である「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を表示するものとして、世界及び日本の需要者・取引者の間で広く認識された周知・著名な商標となっている。 一方で、上記(2)で述べたとおり、本件商標権者は、取引の実情として小規模な店舗においてコストコ取扱商品の再販事業をうたい、専門的に行っているところ、本件商標の要部「MINICOS」は、小さいものを表す「MINI」の語に、コストコを表示する「COSTCO」の文字の前半部「COS」を結合することで、「小さなコストコ」(つまり、「コストコ商品が買える小規模な店」)の意味合いを需要者・取引者に認識させるものとして採択された商標というのが相当である。 さらには、基調となる色彩の基本的な構成において、コストコのハウスマークロゴ(引用商標3)と一定の共通性を有していることも相まって、本件商標は、その全体の印象として、一般消費者にコストコとの業務上の関連性を想起させるものというべきである。 ここで、コストコのウェブサイトには「商標利用に関する注意喚起」と題して、「コストコは基本的に再販事業の業務提携を行っておらず、「コストコ公認」や「コストコ再販店」をうたう事業者様とは一切の関係がございません。」との説明がされている(甲9)。そうすると、本件商標権者は、コストコ取扱商品の再販事業をうたい、専門的に行っているものの、コストコとは業務上の関係は一切ないということになる。 このようにコストコとは業務上関係のない者が、コストコの周知・著名商標である引用商標1ないし引用商標3との関係において、「小さなコストコ」(つまり、「コストコ商品が買える小規模な店」)の意味合いを一般消費者に認識させ、全体としてコストコとの業務上の関連性を想起させる本件商標を、「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等の第35類における全指定役務について使用することは、需要者の認識において、本件商標に係る役務を、コストコと経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る小売・卸売役務であると誤認し、当該小売・卸売役務の出所について混同するおそれがあるというべきである。 それゆえ、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第7号について 上記(2)で述べたとおり、本件商標権者は、取引の実情として小規模な店舗においてコストコ取扱商品の再販事業をうたい、専門的に行っているところ、本件商標の要部「MINICOS」は、小さいものを表す「MINI」の語に、コストコを表示する「COSTCO」の文字の前半部「COS」を結合することで、「小さなコストコ」(つまり、「コストコ商品が買える小規模な店」)の意味合いを需要者・取引者に認識させるものとして採択された商標というのが相当である。 さらには、基調となる色彩の基本的な構成において、コストコのハウスマークロゴ(引用商標3)と一定の共通性を有していることも相まって、本件商標は、その全体の印象として、一般消費者にコストコとの業務上の関連性を想起させるものというべきである。 一方で、上記(1)に述べたとおり、引用商標1ないし引用商標3はコストコが行っている主要な事業である「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を表示するものとして、世界及び日本の需要者・取引者の間で広く認識された周知・著名な商標となっている。 そうすると本件商標は、コストコの周知・著名商標の信用や名声にただ乗り(フリーライド)する意図をもって採択されたものであるというのが相当である。そして、そのような本件商標をコストコが行っている主要な事業である飲食料品の小売・卸売役務と同一又は類似の役務について使用することは、コストコの周知・著名商標の希釈化に繋がるというべきである。 コストコが米国において創業された世界的に有名なグローバルな小売・卸売事業者であることに鑑みれば、そのようなフリーライドにより採択されたというべき本件商標の出願は、その経緯に社会的相当性を欠くものがあり、その登録を認めることは国際信義に反するというべきであり、本件商標は公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある。 それゆえ、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知著名性について ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (ア)「コストコ・ホールセール・コーポレーション(Costco Wholesale Corporation)」(コストコ)は、1983年に設立された、米国に本社を置く会員制の倉庫型小売・卸売チェーンである(甲5、甲10)。 (イ)コストコは、店舗やウェブサイト等において引用商標3を使用している(甲5、甲6)。 (ウ)コストコの倉庫型小売・卸売店舗においては、飲食料品をはじめ、ケータリング用品、菓子類、電化製品、テレビ、メディア関連商品、自動車関連品、タイヤ、工具、スポーツ用品、宝飾品、時計などの幅広い商品が取り扱われている(甲5、甲7、甲8)。 (エ)コストコの2023年11月30日現在における世界の会員制倉庫型小売・卸売店舗数は871店舗であり、店舗を有する国は、米国、プエルトリコ、カナダ、メキシコ、日本、イギリス、韓国、オーストラリア、台湾、中国、スペイン、フランス、アイスランド、ニュージーランド、スウェーデンに及んでいる(甲5)。 そして、2023年2月12日現在における世界における会員数は約1億2790万人となっており、2023年会計年度における年間収益は2377億ドルである(甲5)。 また、日本はアジア地域の中では最もコストコの店舗数が多く、1999年に福岡県糟屋郡久山町に第1号店が開店され(甲10)、2023年8月24日現在で33店舗が存在している(甲5)。 (オ)引用商標1及び引用商標2の使用に係る証拠は確認できない。 イ 上記アからすれば、コストコは、総合小売をはじめとする、特に飲食料品等の商品を主要に取り扱う事業者であり、店舗やウェブサイトにおいて引用商標3を使用していることがうかがえる。そして、コストコの会員制倉庫型小売・卸売店舗は、2023年11月30日現在において、世界に871店舗あり、そのうち日本においては33店舗となっているものの、その多寡については確認できず、また、全世界で約1億2790万人の会員数がいたとしても、我が国のコストコの会員数については不明である。 さらに、2023年度のコストコの年間収益が2377億ドルであったとしても、日本における売上高や市場シェア、広告宣伝の回数や費用等、その周知性を客観的に把握することができる具体的な証拠は提出されていない。 また、引用商標1及び引用商標2の使用に係る証拠の提出は確認できない。 以上を踏まえると、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、コストコの業務に係る役務を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標の周知性について 上記(1)のとおり、引用商標は、他人(コストコ)の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとはいえない。 イ 本件商標と引用商標の類似性の程度について (ア)本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり「MINICOS」の欧文字を上段に配し、構成中の「MINI」の文字部分を赤色で、「COS」の文字部分を青色で表してなり、該文字の下段には、黄色の小さな星図形を5つ横並びにし、その右横に小さく青色で「RETAIL SHOP」の欧文字を横書きに表した構成からなる。そして、構成中の「MINICOS」の文字は、特定の意味合いを有しない造語と理解されるものであるが、他方、構成中の「RETAIL SHOP」の文字は、「小売店」ほどの意味合いを理解させ、また、構成中の星図形は、文字部分を装飾する部分と理解させるものであることから、これら「RETAIL SHOP」の文字と図形は、指定役務との関係において識別力がないか弱いといえる。そうすると、本件商標は、引用商標との類否を判断するに当たって、本件商標の構成中、「MINICOS」の文字を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。 したがって、本件商標は、構成中の「MINICOS」の文字に相応して、「ミニコス」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 (イ)引用商標について 引用商標1は、上記2(1)のとおり、「COSTCO」の欧文字を標準文字で表してなり、当該文字に相応して「コストコ」の称呼を生じ、当該文字は、特定の意味合いを有しない造語と理解されるものとみるのが相当であるから、特定の観念は生じない。 引用商標2は、別掲2のとおり、赤色で「COSTCO」の欧文字からなり、語頭の「C」の文字をやや大きく表してなるところ、当該文字からは、「コストコ」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。 引用商標3は、別掲3のとおり、赤色で「COSTCO」の欧文字を上段に配し、語頭の「C」の文字をやや大きく表してなり、また、その下段には青色の3本の横線を上段の「CO」の文字部分の下辺りまで配し、その右横に小さく青色で「WHOLESALE」の欧文字を横書きに表した構成からなる。そして、構成中の「WHOLESALE」の文字は、「卸売り」の意味合いを理解させ、また、構成中の3本の横線は、文字部分を装飾する部分と理解させるものであることから、これらは、指定役務との関係において識別力がないか弱いといえる。そうすると、引用商標3は、本件商標との類否を判断するに当たって、その構成中、「COSTCO」の文字を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。 したがって、引用商標3は、構成中の「COSTCO」の文字に相応して、「コストコ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 (ウ)本件商標と引用商標の類否について 本件商標の「MINICOS」の文字と引用商標の「COSTCO」の文字とを比較すると、両者はその構成文字において明らかに相違するものであって、視覚上、異なる印象を与えるものであるから、外観上、相紛れるおそれはない。 次に、本件商標から生じる「ミニコス」の称呼と引用商標から生じる「コストコ」の称呼を比較すると、それぞれを一連に称呼した場合は、その語調語感が相違し、称呼上、明瞭に聴別されるから、相紛れるおそれはない。 また、本件商標及び引用商標は、上記(ア)及び(イ)のとおり、いずれも、特定の観念を生じないから、観念上、比較することができない。 (エ)小括 以上のとおり、本件商標と引用商標は、観念においては比較できないものであるとしても、外観及び称呼において、互いに紛れるおそれはなく、その他、本件商標と引用商標が類似するというべき特段の事情は見いだせない。 したがって、本件商標と引用商標の外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当であり、別異の商標であるから、両者の類似性の程度は低い。 ウ 引用商標の独創性の程度について 上記イのとおり、引用商標の「COSTCO」の文字は造語であるから、引用商標の独創性の程度は高い。 エ 本件商標の指定役務と引用商標の指定役務との関連性 本件商標の指定役務と引用商標の指定役務は、ともに「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む点において共通しており、両者は、役務の関連性を有し、需要者も共通するといえる。 オ 混同のおそれ 上記アないしエのとおり、引用商標の独創性の程度は高く、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務は関連性を有しているとしても、その周知性は認められず、また、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標である。 そして、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(コストコ)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはない。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 カ 申立人の主張について 申立人は、本件商標権者が、取引の実情として小規模な店舗においてコストコ取扱商品の再販事業をうたっていること、本件使用商標がコストコの周知・著名なロゴデザインへの依拠をうかがわせることから、本件商標の要部「MINICOS」は、小さいものを表す「MINI」の語に、コストコを表示する「COSTCO」の文字の前半部「COS」を結合することで、「小さなコストコ」(コストコ商品が買える小規模な店)の意味合いを認識させるものとして採択されたものであり、全体として、コストコとの業務上の関連性を想起させるものである旨を主張している。 しかしながら、上記(1)のとおり、引用商標はコストコの業務に係る役務を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されている商標ではなく、かつ、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、これをその指定役務に使用しても、取引者、需要者に引用商標を連想又は想起させることはない。 したがって、申立人の当該主張は採用できない。 キ 小括 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなるところ、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。 また、本件商標権者が、ホームページ等にコストコの取扱商品の再販事業であることを明示したうえで、本件商標の登録出願をしたという事実関係は把握できるとしても、それだけでは本件商標の登録出願の目的は明らかではなく、その出願経緯に不正があったと直ちに認めることはできない。 そして、上記のほかに、本件商標権者が、本件商標を利用して、コストコの事業活動を阻害したり、何らかの金銭的な利益を要求するなど、具体的な行為に及んだことを示す証拠もない。 そうすると、申立人が提出した全証拠を勘案しても、本件商標が、国際信義に反する又はその出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべき事実は見当たらず、本件商標をその指定役務について使用することが、社会の一般道徳観念に反し、商取引の秩序を乱すものともいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (4)申立人の主張について 本件使用商標については、引用商標3のロゴデザインをよりどころとし、取引の実情としてコストコの取扱商品の再販事業を専門としていることから、「MINICOS」の文字が「小さなコストコ」を認識させるものとして採択された旨主張しているが、本件商標と本件使用商標とは異なる商標であるから、本件商標についての出所の混同のおそれを問題とする商標法第4条第1項第15号の判断において考慮されるべき取引の実情とはいえず、また、本件商標について公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標かを問題とする商標法第4条第1項第7号において考慮する事由には該当しない。 したがって、申立人の当該主張は採用できない。 (5)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号のいずれにも該当するとはいえず、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標(色彩については原本参照。) ![]() 別掲2 引用商標2(色彩については原本参照。) ![]() 別掲3 引用商標3(色彩については原本参照。) ![]() (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2024-11-06 |
出願番号 | 2023121269 |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W35)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
旦 克昌 |
特許庁審判官 |
大島 康浩 小林 裕子 |
登録日 | 2023-12-27 |
登録番号 | 6766577 |
権利者 | 藤井 小乃佳 |
商標の称呼 | ミニコスリテールショップ、ミニコス、ミニ、コス、シイオオエス、リテールショップ、リテール |
代理人 | 弁理士法人深見特許事務所 |