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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W28
管理番号 1417897 
総通号数 36 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2024-12-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-12-08 
確定日 2024-11-22 
異議申立件数
事件の表示 登録第6746724号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6746724号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6746724号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和5年4月17日に登録出願、第28類「ペット用おもちゃ,運動用具」を指定商品として、同年10月3日に登録査定され、同月19日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立てにおいて、引用する登録商標は、以下の1ないし3であり、いずれの商標権も、現に有効に存続しているものである。
1 登録第5548834号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成 別掲2のとおり
指定商品 第28類「愛玩動物用おもちゃ,運動用具」を含む、第3類、第16類、第20類、第21類、第26類、第27類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
登録出願日 平成24年7月31日
設定登録日 平成25年1月11日
2 登録第5283441号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成 UNIQLO(標準文字)
指定商品 第28類「運動用具,愛玩動物用おもちゃ」を含む、第3類、第21類、第27類及び第28類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
登録出願日 平成21年2月13日
設定登録日 平成21年11月27日
3 登録第4433062号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成 UNIQLO(標準文字)
指定商品 第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を含む、第24類及び第25類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
登録出願日 平成12年1月24日
設定登録日 平成12年11月17日
なお、以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめていう場合は、「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号の規定により、取り消されるべきものである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第68号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標1の周知・著名性
(1)ユニクロの出店数
申立人は、株式会社ユニクロ(以下「ユニクロ社」という。)などの衣料品会社を子会社とする持株会社である(甲5)。
申立人は1949年3月に山口県宇部市でメンズショップ小郡商事として設立され、1984年6月にユニクロ第1号店を広島市に出店し、その後1985年6月にユニクロ初のロードサイド店を山口県下関市に出店した(甲6)。
1991年9月に申立人が商号を現在のファーストリテイリングに変更してからも、ユニクロは日本国内、国外を問わずその店舗数を増やしてきた(甲6〜甲25)。
申立人は、ユニクロの店舗を国内外問わず多く出店してきており、2023年2月末時点では国内だけで807店舗、海外の店舗数1,622店舗を含めると全世界では2,429店舗である(甲26)。
(2)ユニクロ事業の売上高
2013年8月期から2022年8月期までのユニクロ事業の国内での売上高は、2013年8月期の6,833億円(最低額)から2019年8月期の8,729億円(最高額)の範囲で推移し、コロナ禍においても国内だけで、8,000億円超という非常に高額の売上高を有した(甲27〜甲36)。
2022年度の世界のアパレル専門店の売上高ランキング(甲37)によれば、申立人の売上高が2兆3,011億円で世界3位にランクインしており、日本のユニクロ事業の2022年8月期の売上高(8,102億円)だけでも世界9位にランクインできるだけの規模を有している。
店舗の外観やユニクロの店舗で販売される製品のタグには引用商標1が用いられてきた(甲38〜甲42)。また、申立人の代表的な商品は被服が挙げられるが(甲43)、それ以外にも運動用特殊衣服(甲44)、ぬいぐるみ(甲45)を販売してきた。
引用商標1が申立人のハウスマークであること、ユニクロの店舗数の多さや高額な売上高を踏まえれば、引用商標1は被服、運動用特殊衣服、ぬいぐるみに関して高い知名度を有するといえる。
(3)広告・宣伝等
申立人はソーシャルネットワークサービス(SNS)を利用した宣伝活動を行っており、各SNSにおける申立人の公式アカウントの登録者、フォロワー数はいずれも令和5年12月8日時点で、Instagramでは「UNIQLO Global」のアカウントについて247.3万人(甲46−1)、「ユニクロ公式」のアカウントについて90.2万人(甲46−2)、Xでは167.3万人(甲47)、LINEについて4,400万人超(甲48)、FACEBOOKでは115万人(甲49)である。
これらのSNSで申立人により発信された情報は、当該サービス内の共有機能等により容易に拡散できるものであり、必ずしも同社のアカウントに登録やフォローをしていない利用者にも拡散されること、このようなSNSのアイコンなどに申立人が引用商標1を用いていることからすると、引用商標1は多くの需要者及び一般消費者の目に触れる機会が多いことは明らかである。
以上のようなSNS以外にも申立人は動画配信サイトYoutubeにおける動画配信による広告や、テレビコマーシャルも活発に行っており、申立人のYoutubeのUNIQLO公式チャンネルの登録者数は9.83万人で、人気の動画は2,968万回再生され(甲50)、このような動画配信における広告やテレビコマーシャルにおいても申立人は引用商標1を用いており、これも引用商標1の知名度の高さを示すものである。
(4)外部ランキングの評価
世界的なブランドコンサルティング会社が日本のブランドをブランド価値に基づいて評価したランキングにおいても、ユニクロは2018年、2019年では8位、2020年には7位、2021年及び2022年には6位にランクインしており(甲51)、日本の数あるブランドのなかでも有数のブランド価値を認められている。
(5)小括
以上の事実関係に加えて、引用商標1と同一の商標である登録第5308263号商標は防護標章としても登録され、J−PlatPatの日本国周知・著名商標としても認定されている(甲52)。
したがって、引用商標1は、日本国内において高い知名度を誇っており、申立人の事業、商品及び役務を示す商標として周知・著名であることは明らかである。
2 商標法第4条第1項第11号該当性
(1)本件商標と引用商標とが類似すること
本件商標は黒色の四角形に「UNI」と「PRO」の欧文字を上下二段に白抜きで表してなるところ、これらの文字は同書・同大・等間隔で配置され外観上まとまりよく表されている。
したがって、本件商標は、よどみなく「ユニプロ」と称呼されることから、一連一体の商標であり、本件商標の文字部分「UNIPRO」は、特段の意味を有する語ではないので特定の観念を生じない。
一方、引用商標1は、赤色の四角形に「UNI」と「QLO」の欧文字を上下二段に白抜きで表してなるところ、これらの文字は同書・同大・等間隔で配置され、外観上まとまりよく表されているものであり、「ユニクロ」とよどみなく称呼できることから、一連一体の商標であるといえ、「UNIQLO」は造語であるため、特定の観念を生じない。
また、引用商標2及び引用商標3は「UNIQLO」の欧文字を標準文字で表してなり、同書・同大・等間隔で各文字の間にスペースなどの区切りがなく、外観上まとまりよく表されているものであり、また、「ユニクロ」とよどみなく称呼できることから、一連一体の商標であるといえ、「UNIQLO」は造語であるため、特定の観念を生じない。
本件商標から生じる「ユニプロ」の称呼と引用商標1から生じる「ユニクロ」の称呼についてみると、両者は、「プ」と「ク」が相違するものの、その母音を共通にし、調音方法を同じくする無声破裂音という近似音であって、聴別し難い中間に位置し、これに続く「ロ」の音が強く発音されることから称呼が類似するといえる。
また、外観についてみると、本件商標と引用商標1は四角形に文字を白抜きで表す点で共通しており、その白抜きの文字についても上段に「UNI」の字が配置されていることが共通していること、下段右側に「O」が配置されていることが共通していることから、本件商標と引用商標1は外観が類似するといえる。
そして、本件商標と引用商標1からは特定の観念は生じないので観念を比較することはできない。
したがって、本件商標は、その称呼及び外観において引用商標1と類似し、観念においても区別できないものであるから、本件商標と引用商標1は相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
また、引用商標2及び引用商標3から生じる「ユニクロ」の称呼は、本件商標から生じる称呼「ユニプロ」と類似し、本件商標と引用商標2及び引用商標3からは、特定の観念は生じないため観念を比較することはできない。
したがって、本件商標は称呼において、引用商標2及び引用商標3と類似し、観念においても区別できないものであるから、本件商標と引用商標2及び引用商標3は相紛れるおそれのある類似の商標である。
(2)本件商標と引用商標の指定商品が類似すること
本件商標は第28類「ペット用おもちゃ,運動用具」を指定しているところ、引用商標1及び引用商標2は、その指定商品中に第28類「運動用具,愛玩動物用おもちゃ」などを指定しており、これらは類似である。
また、本件商標は第28類「運動用具」を指定しているところ、引用商標3は、その指定商品中に第25類「運動用特殊衣服」などを指定しており、これらは類似である。
(3)小括
以上より、本件商標は引用商標と類似し、その指定商品も互いに類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)本件商標と引用商標1の類似性
上記2(1)のとおり、本件商標は引用商標1と類似する。
(2)引用商標1の周知度
上記1のとおり、引用商標1は本件商標の出願時点において周知・著名な商標であり、申立人の商品である被服、運動用特殊衣服、ぬいぐるみ等を示すものとして需要者に広く認識されている。
(3)引用商標1が造語であること及び申立人のハウスマークであること
引用商標1は造語である「UNIQLO」の文字を四角形の中に配置してなる商標であって、申立人のハウスマークであるため、需要者及び消貴者は、引用商標1と類似する本件商標は、申立人が関連する事業を示すものであると誤認するおそれが高い。
(4)企業における多角経営の可能性
上記1(2)のとおり、ユニクロ社は、日本企業のなかでも有数の非常に高額な売上高を有する巨大な会社であり、その事業領域は、被服、運動用特殊衣服、ぬいぐるみなどの販売に限定されるものではない。
例えば、ユニクロ社は、サステナビリティ活動である「THE POWER OF CLOTHING」という活動を行って自社が販売した製品のリサイクルを推奨し(甲53)、「スポGOMI」という活動では一般人の参加を募ってごみ拾いを行い(甲54)、環境保全を推進している。
他にも、ユニクロ社は「UNIQLO DREAM PROJECT」(甲55)、「LifeWear Day 2021−テニスとサステナビリティ− with 錦織圭」(甲56)、「JFAユニクロサッカーキッズ」(甲57)といった活動を通じて、子供たちのスポーツに関する教育を積極的に支援し、さらに、ユニクロ社は、花の小売、カフェ、書籍販売、マスクの販売といった、被服、運動用特殊衣服、ぬいぐるみ等とは関係のない事業も行っており(甲58〜甲60)、ユニクロ社の事業領域は非常に多岐にわたっており、ユニクロのハウスマークである引用商標1と類似する本件商標は、申立人が関連する事業を示すものであると誤認される可能性が高い。
(5)商品間の関連性、需要者の共通性及び取引の実情
本件商標の指定商品「ペット用おもちゃ」とぬいぐるみや被服の関連性についてみると、ぬいぐるみがペット用のおもちゃとして一般に販売されている実情があり(甲61〜甲65)、また、犬や猫などのペットに被服を着せることも一般的であることから(甲66〜甲68)、同じペット用の商品であるペット用おもちゃと被服の間にもある程度の関連性が認められる。
したがって、引用商標1の指定商品「ペット用おもちゃ」は、被服及びぬいぐるみと関連性を有する商品である。
さらに引用商標1の指定商品「運動用具」と運動用特殊衣服の関連性についてみると、いずれも運動、スポーツを行うための商品であり、類似する商品であって関連性が高い商品である。
また、本件商標の指定商品は、一般的な消費者を需要者とする商品であるところ、引用商標1は申立人の被服、運動用特殊衣服、ぬいぐるみを示すものとして広く認識されており、これらの商品の需要者も一般的な消費者であるから、本件商標と引用商標1は、需要者を共通にする。
そして、一般消費者には商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない者が多数含まれており、商品の購入に際しメーカー名やハウスマークになどについて常に注意深く確認するとは限らない。
本件商標の指定商品である「ペット用おもちゃ,運動用具」と引用商標1が周知・著名である商品「被服、運動用特殊衣服、ぬいぐるみ」の間に関連性があることを考慮すると、本件商標が指定商品に使用された場合、需要者である一般消費者は引用商標1を想起し、本件商標と引用商標1の差異に気づかないおそれが高い。
(6)その他
前述のとおり、引用商標1は、申立人による多年にわたる努力の結果、需要者及び一般消費者の間で広く知られ、高い信用・名声・顧客吸引力を獲得し、本件商標の出願時では、申立人がユニクロ事業を開始して35年以上が経過しており、引用商標1はすでに日本全国で広く知られていた。
このような状況に鑑みれば、本件商標の権利者は、その出願時には引用商標1の存在を認識していたと強く推認され、偶然にも著名で独創的な引用商標1と類似する本件商標を出願したとは考え難く、むしろ、引用商標1に化体した高い信用・名声・顧客吸引力にフリーライドする目的で本件商標を出願したと考えられ、このような不正の目的がある以上、本件商標は申立人の業務に係る商品等と誤認混同を生じさせるような態様で使用されるおそれがある。
(7)小括
上記の事情を考え併せると、本件商標をその指定商品に使用した場合、引用商標1の周知性に鑑みれば、これに接する需要者は本件商標から引用商標1を連想し、商品の出所について需要者が混同するおそれがあり、又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者による商品であると誤認混同するおそれがある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号該当性
(1)引用商標1は、日本国内において高い知名度を誇っており、申立人の事業、商品及び役務を示す商標として周知・著名性を獲得するに至っているため、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」の要件を充足する。
(2)本件商標と引用商標1は類似するため、「同一又は類似の商標」の要件を充足する。
(3)引用商標1は需要者の間に広く知られている周知著名な商標であり、また、造語である「UNIQLO」という語をロゴにしたものであって、独創的なものである。
そして、本件商標の権利者は、引用商標1に化体した高い信用・名声・顧客吸引力にフリーライドする目的で本件商標を出願したと考えられるため、本件商標は「不正の目的」のもと出願されたものといえる。
(4)小括
以上より、本件商標は周知著名な商標である引用商標1と類似する商標であって、その出願は不正な目的のもと行われたものであるため、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 当審の判断
1 申立人の使用に係る商標の周知性について
(1)申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 申立人は、ユニクロ社などの衣料品会社を子会社とする持ち株会社(以下、これらをまとめていう場合は「申立人等」という。)であり、1949年にメンズショップ小郡商事を創業、1984年6月に店舗名をユニクロとする第1号店を広島市に出店し、1991年9月に商号を現在のファーストリテイリングに変更した(甲5、甲6)。
また、申立人等は、ユニクロの店舗を我が国及びイギリス、韓国、アメリカなどの外国に出店しており、2023年2月末時点で、日本国内に807店舗、外国に1,622店舗、全世界で2,429店舗を有している(甲26)。
そして、上記店舗の外観及びユニクロの店舗で販売される衣料品等の商品の製品タグには別掲2のとおりの構成からなる引用商標1と同一の構成態様で表わされた商標(以下「使用商標」という。)が表示されている(甲38〜甲42)。
イ 「WWD」のウェブサイト記事(甲37)によれば、申立人の2022年度の売上高は2兆3,011億円であり、世界アパレル専門店の売上高ランキングで世界第3位である。また、ユニクロに係る国内事業の2013年8月期ないし2022年8月期の売上高は、6,833億円ないし8,729億円であり、2022年8月期のユニクロ事業の売上高は8,102億円であって(甲27〜甲36)、これは、上記世界アパレル売上高ランキングの第9位に相当する(甲37)。
ウ 申立人は、ソーシャルネットワークサービス(SNS)を利用した宣伝活動を行っており、SNSにおける申立人の公式アカウントの登録者、フォロワー数は、令和5年12月時点で、Instagramは「UNIQLO Global」のアカウントについて247.3万人、「ユニクロ公式」のアカウントについて90.2万人(甲46)、Xでは167.3万人(甲47)、LINEについて約4,400万人(甲48)、Facebookでは115万人(甲49)である。
また、令和5年12月8日時点で動画配信サイトYouTubeのUNIQLO公式チャンネルの登録者数は、9.83万人であって、444本の動画が投稿されており、その視聴回数は、102万回ないし2,968万回であって(甲50)、これらには、申立人等の衣料品が掲載され、使用商標が表示されている。
エ ブランドコンサルティング会社による日本のブランドのランキングであるBest Japan Brands(甲51)において、ユニクロは、2018年及び2019年は8位、2020年は7位、2021年及び2022年は6位である。
オ 申立人等は、2023年6月17日にゴミ拾いイベント「スポGOMI」を行い(甲54)、2021年12月4日にテニスイベントを開催し(甲56)、また、申立人等は、2015年5月ないし2022年に、他社とのコラボレーションやプロジェクトにおいて、ぬいぐるみ、バッグ、Tシャツなどを販売した(甲45)。
(2)上記(1)によれば、申立人等は、ユニクロの店舗を我が国及び外国において、多数展開していること、上記店舗の外観及びユニクロの店舗で販売される衣料品等の商品の製品タグに使用商標が表示されていること、ユニクロの2013年ないし2022年の売上高は高額といえること、SNSのフォロワー数及びYouTubeのチャンネル登録者数は、本件商標の設定登録後の令和5年12月時点ではあるものの、相当数に上り、本件商標の登録出願時及び登録査定時においても多数のフォロワー及びチャンネル登録者がいたものと推認できること、及び日本のブランドランキングで6位ないし8位であることからすれば、使用商標は、申立人等の衣料品について使用する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認められるものである。
2 商標法第4条第1項第11号該当性
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、黒地の四角の中に、「UNI」と「PRO」の文字を白抜きで表してなり、上段の3文字と下段の3文字は、同書、同大、等間隔で幅をそろえ、視覚上、まとまりよく一体的に表してなるものである。
そして、「UNIPRO」の文字は、辞書類に載録された既成語ではなく、特定の観念を生じない造語であり、その構成文字に相応して「ユニプロ」の称呼を生じるものである。
(2)引用商標
ア 引用商標1は、別掲2のとおり、赤地の四角の中に、「UNI」と「QLO」の文字を白抜きで表してなり、上段の3文字と下段の3文字は、同書、同大、等間隔で幅をそろえ、視覚上、まとまりよく一体的に表してなるものである。
そして、「UNIQLO」の文字は、辞書類に載録された既成語ではなく、特定の観念を生じない造語であり、その構成文字に相応して「ユニクロ」の称呼を生じるものである。
イ 引用商標2及び引用商標3は、上記第2の2及び3のとおり、「UNIQLO」の文字を標準文字で表してなるものであり、当該文字は、辞書類に載録された既成語ではなく、特定の観念を生じない造語であり、その構成文字に相応して「ユニクロ」の称呼を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否
上記(1)及び(2)のとおりの構成からなる本件商標と引用商標を比較してみれば、外観においては、本件商標と引用商標1とは、いずれも四角の中に白抜き文字を表してなるものであって、上段の「UNI」及び下段の「O」の文字を共通にするとしても、下段の「PR」と「QL」の文字の差異を有するところ、両商標は、いずれも6文字という比較的少ない文字構成において、上記の文字の差異により、構成全体として異なる語を表示した印象を与えるというのが相当であって、外観において区別できるものである。
また、本件商標と引用商標2及び引用商標3とは、構成文字の差異に加え、本件商標は、6文字を上下2段に表してなるのに対し、引用商標2及び引用商標3は、一連に横書きしてなるという差異を有するものであるから、外観において明確に区別できるものである。
次に、本件商標から生じる「ユニプロ」の称呼と引用商標から生じる「ユニクロ」の称呼を比較すると、両者は第3音において「プ」と「ク」の音の差異を有し、この差異が共に4音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は少なくなく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、互いに聞き誤るおそれはないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができないものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
(4)小括
したがって、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が類似するとしても、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性
上記1のとおり、使用商標は、申立人等の衣料品について使用する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていると認められるものである。
しかしながら、本件商標は引用商標1とは非類似の商標であり、引用商標1と同じ構成からなる使用商標についても、同様に、非類似の商標であって、別異の商標というのが相当であるから、本件商標と使用商標とは、類似性の程度が低いものである。
そうすると、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性の程度、需要者の共通性の程度などを併せ考慮しても、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をして使用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人等)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生じるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性
上記1のとおり、使用商標が、申立人等の衣料品について使用する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されているとしても、上記3のとおり、本件商標は、使用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標である。
また、本件商標が、申立人の業務に係る使用商標の知名度や名声にフリーライドするなど、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実があるということもできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するとはいえず、他にその登録が、同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標1。色彩については原本を参照。)



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異議決定日 2024-11-14 
出願番号 2023041531 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W28)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 板谷 玲子
特許庁審判官 小田 昌子
馬場 秀敏
登録日 2023-10-19 
登録番号 6746724 
権利者 株式会社ユニーク
商標の称呼 ユニプロ 
代理人 弁護士法人窪田法律事務所 

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