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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1417895 |
総通号数 | 36 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-12-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-10-06 |
確定日 | 2024-11-29 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6722386号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6722386号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6722386号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、令和5年1月6日に登録出願、第25類「ジャケット,スーツ,コート,ブラウス,帽子,その他の被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同年6月27日に登録査定、同年8月1日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する標章 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する標章(以下「引用標章」という。)は、別掲2に示すとおりの構成からなり、申立人が「紳士服、婦人服、子供服、帽子、靴下、ペット用被服、履物等」について使用し、我が国及び外国における取引者、需要者の間で周知・著名であると主張するものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第15号に該当することについて ア 申立人及び「drew house」ブランドについて 申立人は、世界的なミュージシャンであるジャスティン・ビーバー(ジャステイン・ドリュー・ビーバー)のプロデュースによるアパレルブランド「drew house」(以下「本件ブランド」という。)を展開する企業である。申立人は、本件ブランドを象徴するロゴとして、笑顔をモチーフとしたロゴマークを採択し、パーカーやTシャツ、帽子などに使用しており、ジャスティン・ビーバー自身が着用していることも相まって、公式の発売前から世界中で話題となり、発売後世界中で爆発的な人気と支持を得た。以後、申立人は、当該ロゴマークを全面に出した宣伝広告、販促活動を積極的に行っており、今日では、パーカー等の被服に使用されている他、サンダル、ペット用の被服やベッド、ぬいぐるみなどにも使用され、店舗を始め、セレクトショップやオンラインストア、各小売店におけるオンラインショップを通して、北米だけでなく、日本、中国を始めとするアジア諸国、フランス、スペインなどヨーロッパ、中東、南米、アフリカ等、世界中で購入されている(甲2〜甲5)。 日本においても、2018年から事業を展開している(甲2)。 申立人のロゴマークを使用した商品の世界総売上高は、2018年から2023年8月において、約103.4億円となっており、日本での売上高についても、2018年から2023年8月において、約6.6億円となっている。また、商品の販売数量としては、2018年から2023年8月において、全世界で約77万着の商品が販売された。 このように、申立人の商品は、日本を含む世界中で、莫大な売上高、販売数を誇っているものであり、その結果、引用標章は周知・著名となっている。 具体的な売上高の一覧に関連する資料は、営業秘密に関わるため証拠資料に含めていないが、いつでも開示することができる。 申立人の日本における宣伝広告活動は、ポップアップストアの展開や、雑誌等の電子化に合わせて、インターネット広告や、インスタグラムを活用した広告を行っている。例えば、2022年11月には、東京渋谷において、ポップアップストアをオープンした。2022年11月19日には、当該ロゴマークを使用したTシャツを着た「drew house」のキャラクターの着ぐるみを着てジャスティン・ビーバーが登場したこともあり、テレビニュースやネットニュース等で報道された(甲6、甲7)。 宣伝広告活動による世界での宣伝広告費は約6.5億円に上り、日本市場及び世界市場における申立人のロゴマークの露出は拡大している。 このような売上高、販売数、宣伝広告費などを考慮すると、引用標章は、遅くとも、本件商標の出願時において、申立人の取扱いに係る商品を表示する標章として、日本を含む全世界で周知著名となっており、その著名性は現在に至るまで継続している。 イ 引用標章と本件商標の類似性 本件商標は、笑顔をモチーフとした点において引用標章と基本的特徴を同じくするのみならず、細微な点まで一致する点を含み、引用標章に酷似するものであることから、両商標の類似性の程度は極めて高い。 (ア)引用標章の構成態様 引用標章は、黄色の円図形の中に、2つの黒色の円図形を横に並べ、その下に弧を描くように、欧文字で「drew」と書してなるものであり、上記のとおりの著名性に相応して「drew houseのロゴマーク」の観念が生じるものである。 (イ)本件商標の構成態様 本件商標は、黄色の円図形の中に、2つの黒色の×図形を横に並べ、その下に円を描くように、欧文字で「Let’senjoysundayparty」と書してなるものである。 (ウ)引用標章と本件商標の類似性の程度 引用標章と本件商標を比較すると、黄色の円図形の中に、黒色の2つの図形を横に並べ、その下に弧を描くように欧文字を表している点において、構成の軌を一にする。加えて、引用標章及び本件商標は、円図形の中に描かれた図形と欧文字は、それらの配置によって、微笑んでいるような人の顔をイメージする点においても、両者は共通の印象を与えるものである。 そうとすると、本件商標は、引用標章と共通した構成から生じる共通の印象から、全体として隔離的に観察した場合には、取引者や需要者に外観上酷似した印象を与えるものというべきである。 ウ 需要者の共通性 本件商標の指定商品と引用標章の指定商品は被服等であることから、その需要者も共通する。 そして、被服等の需要者は一般消費者であり、商標やブランドについて詳細な知識を持たないまま、雑誌記事等による情報と記憶を頼りに商品を選択・購入する傾向がある。このような需要者が時と所を異にして、類似性の程度が極めて高い両商標(標章)に接する場合、相紛れるおそれがあることは明らかである。 エ 被服、履物等の分野における取引実情 本件商標の指定商品、及び引用標章を使用している被服や履物等の分野においては、アパレルブランドのロゴマークなどが、胸元などにワンポイント等として、小さく表示される場合も少なくなく、その場合、商標の微細な点まで表されず、需要者が商標の全体的な印象に圧倒され、些細な相違点に気づかないことが多いものである。 そうとすると、上述したように類似性の高い本件商標と引用標章は、取引実情において、さらに出所の混同を生じさせるおそれのある類似性の高い商標である。 オ 裁判例 申立人の主張は、過去の裁判例によっても裏付けられる。例えば、平成24年(行ケ)第10454号では、需要者は顕著に表された著名商標の特徴を想起させる部分に着目し、著名商標を連想、想起するから、出所混同が生じるとして、商標法第4条第1項第15号違反と認定している(甲8)。 カ 小括 以上のとおり、引用標章は、本件商標の出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る被服等を表示するものとして、我が国及び外国における取引者、需要者の間に広く認識されていた。そして、本件商標と引用標章とは、類似性の程度が極めて高いものである。 そうとすると、本件商標に接した取引者や需要者は、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の需要者が商品の出所について誤認混同するおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第19号に該当することについて ア 引用標章の周知・著名性 上記(1)アで述べたとおり、引用標章は、本件商標の出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る被服を表示するものとして我が国及び外国における取引者、需要者の間で広く認識されていたものである。 イ 引用標章と本件商標の類似性 上記(1)イで述べたとおり、本件商標と引用標章とは、基本的構成をーにするだけでなく、与える印象も共通しており、本件商標に接した取引者、需要者は、本件商標から申立人の本件ブランドの周知・著名なロゴを容易に想起する。よって、両商標は類似する。 ウ 不正の目的について 本件商標は、申立人の業務に係る被服等を表示するものとして我が国及び外国における取引者や需要者の間に広く認識されている引用標章と酷似するものであり、被申立人が引用標章の存在を知らなかったものとは考え難い。また、本件商標は、2つの図形と弧を描くように表した欧文字によって、微笑んでいる人を想起させてなる引用標章の独創性、創作性の高い点を共通にしており、この共通性は全くの偶然というのは不自然である。 そうとすると、本件商標は著名な引用標章に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願され、登録を受けたものである。 以上より、本件商標は需要者に著名な引用標章に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りする不正な目的で採択・出願したものであるといわざるを得ない。 エ 裁判例 過去の裁判例によって上述の主張を裏付ける。例えば、上述した平成24年(行ケ)第10454号では、著名な「プーマ」商標を連想、想起させるとして、不正の目的を認定している(甲8)。 オ 小括 本件商標は、我が国及び外国における取引者、需要者の間で周知・著名な引用標章と酷似し、両商標の類似性の程度は極めて高いため、本件商標が引用標章の顧客吸引力にただ乗りする不正な目的でされるものであることは明らかである。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。 4 当審の判断 (1)引用標章の周知・著名性について 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 ア 本件ブランドから、2018年に引用標章を使用したスリッパの販売が開始され(甲2)、その他、開始時期は不明であるが、引用標章を使用したトートバッグ、パーカー等(以下「申立人商品」という。)がオンラインショップを通じて販売されていたことがうかがえる(甲3、甲4)。 また、本件ブランドが2022年(令和4年)11月17日ないし同月20日の期間に渋谷でポップアップストアを出店する旨が、ウェブサイトにおいて報じられた(甲6、甲7)。 イ しかしながら、オンラインショップ及びポップアップストアにおける引用標章を使用した申立人商品の売上高、売上げ数等の詳細は明らかではなく、ほかに引用標章を使用した商品の我が国及び外国における売上高などの販売実績、広告宣伝の方法、規模、広告宣伝費など、その事実を客観的に把握することができる証拠は提出されていない。 なお、申立人は、2018年から2023年8月の世界総売上高は、約103.4億円、同期間の日本での売上高は、約6.6億円、全世界で約77万着の商品が販売された旨及び世界での広告宣伝費は約6.5億円に上る旨主張しているが、これを裏付ける証拠の提出はなく、仮に、上記売上高等が事実であるとしても、引用標章が使用された本件ブランドに係る商品の我が国及び米国など外国における市場シェアや具体的な広告内容等の詳細は明らかではない。 よって、引用標章が、我が国及び外国の需要者にどの程度認識されているのか把握、評価することができない。 その他、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用標章が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く知られていることを認めるに足りる証拠の提出はない。 したがって、提出された証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用標章が他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 (2)本件商標と引用標章の類似性について ア 本件商標 本件商標は、別掲1のとおり、黄色に塗られた円輪郭の中に、上部に「×」を二つ並べ、下部に円輪郭に沿って、「let’senjoysundayparty」の欧文字を配した構成からなるものであり、構成中の「let’senjoysundayparty」の文字部分は、親しまれている英語を組み合わせたものと看取されることから、その構成文字に相応し、「レッツエンジョイサンデーパーティー」の称呼を生じ、「日曜日のパーティーを楽しみましょう」ほどの意味合い認識させ、当該観念を生じるものである。 イ 引用標章 引用標章は、別掲2のとおり、黄色に塗られた円輪郭の中に、上部に縦長で黒色の楕円を二つ並べ、下部に円輪郭に沿って、「drew」の欧文字を配した構成からなるものであり、「drew」の文字部分に相応し、「ドリュー」の称呼を生じ、直ちに特定の意味合いを認識させるものではないから、特定の観念を生じないものである。 ウ 本件商標と引用標章との類否 本件商標と引用標章は、上記ア及びイのとおりの構成であるところ、両者の外観は、黄色に塗られた円輪郭の中の構成が、本件商標の上部は「×」を二つ並べてなるのに対し、引用標章の上部は縦長の黒い楕円を二つ並べてなるものであること、及び本件商標の下部はアポストロフィを含む21文字を細長く表示してあるのに対し、引用標章の下部は4文字を大きく表示したものであることから、上記差異により、異なった印象を与えるものであり、判然と区別できるものである。 また、称呼においては、本件商標から生じる「レッツエンジョイサンデーパーティー」の称呼と、引用標章から生じる「ドリュー」の称呼とは、その構成音数及び構成音が明らかに異なるから、両者は明瞭に聴別し得るものである。 さらに、観念においては、本件商標は「日曜日のパーティーを楽しみましょう」の観念を生じるのに対し、引用標章は特定の観念を生じないものであるから、両者は相紛れるおそれのないものである。 そうすると、本件商標と引用標章とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似というべきものであり、類似性の程度は低い。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について 上記(1)のとおり、引用標章は、申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(2)のとおり、本件商標と引用標章は非類似のものであって類似性の程度は低いものである。 そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用標章を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第19号該当性について 商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。 しかしながら、引用標章は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであり、また、本件商標は引用標章とは非類似の商標であるから、同号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。 さらに、本件商標が、本号にいう「不正の目的をもって使用をするもの」と認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (5)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するという事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標。色彩については原本参照。) 別掲2(引用標章。色彩については異議申立書参照。) (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2024-11-20 |
出願番号 | 2023000847 |
審決分類 |
T
1
651・
222-
Y
(W25)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
鈴木 雅也 |
特許庁審判官 |
馬場 秀敏 板谷 玲子 |
登録日 | 2023-08-01 |
登録番号 | 6722386 |
権利者 | 邊土名 一茶 |
商標の称呼 | レッツエンジョイサンデーパーティ |
代理人 | 魚路 将央 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 黒川 朋也 |