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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W2528
管理番号 1417892 
総通号数 36 
発行国 JP 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2024-12-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2023-05-12 
確定日 2024-11-22 
異議申立件数
事件の表示 登録第6677196号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6677196号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6677196号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和4年5月2日に登録出願、第25類「被服,ティーシャツ,ワイシャツ類及びシャツ,タンクトップ,ジャケット,コート,スカーフ,ズボン及びパンツ,ショートパンツ及びショーツ,スカート,スコート,ズボン,セーター,下着,ベルト,スウェットシャツ,帽子,バイザー(帽子),バンダナ,履物及び運動用特殊靴,ソックス」及び第28類「運動用具,ゴルフ用具,ゴルフクラブ,ゴルフ用ボール,ゴルフ用キャディーバッグ,ゴルフ用グリーンマーカー,ゴルフ用ティー,ゴルフ用ディボット修復具,ゴルフ練習用ボール,ゴルフクラブカバー,ゴルフ用具専用小物入れ,ゴルフバッグ用タグ,ゴルフ用旗,ゴルフ用手袋」を指定商品として、同5年2月21日に登録査定され、同年3月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、以下の3件の商標であり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
1 登録第5804112号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
指定商品:第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成26年6月4日
設定登録日:平成27年11月6日
2 登録第5311789号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品:第12類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成21年6月10日
設定登録日:平成22年3月26日
3 登録第5749743号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様:別掲4のとおり
指定商品:第12類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成26年6月6日
設定登録日:平成27年3月13日
上記の引用商標1ないし引用商標3をまとめて、以下、「引用商標」という場合がある。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項15号に違反して登録されたものであり、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである旨申立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第161号証を提出した。
1 商標第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標における「GOLF」部分は、球技の「ゴルフ」を意味し、本件商標の指定商品である「被服、履物、運動用具、ゴルフ用具」等について使用される場合、ゴルフ用であることを理解させるにすぎないから、本件商標中「GOLF」部分の識別力は極めて弱い。
一方で本件商標の構成中「LIV」の部分は、米国などでは女性の名前として使用されている場合が認められるものの、我が国において一般になじみがある語とはいい難いことから、特定の意味を有しない一種の造語と看取されるものである。
そうすると、本件商標を構成する「LIV」と「GOLF」の各文字の間には識別力の点において大きな差異があり、本件商標においては「LIV」の文字部分が、取引者、需要者に対し、商品の出所を識別する標識として強く支配的な印象を与えるものである。
上記に加えて、「LIV」と「GOLF」の文字部分は文字体やデザインが異なり、視覚上分離して看取されるものであるから、本件商標を一体のものとしてのみ把握しなければならない特段の事情はない。
さらに、本件商標においては「GOLF」の文字が黒色の丸みを帯びた太い線で書され、比較的に平易な文字体で書されているのに対し、「LIV」部分は白色と黒色の縦線で構成される縞模様の太い線で書される態様であり、「LIV」部分が「GOLF」部分と比較して、より特徴のあるデザインであることに鑑みても、本件商標から「LIV」の文字を要部として抽出し、他の商標と比較することは許される。
以上より本件商標からは、構成全体より生ずる「リブゴルフ」の称呼のほか、要部である「LIV」の文字部分から「リブ」の称呼が生じ、また、特定の観念は生じない。
(2)引用商標1について
引用商標1は、黒い丸みを帯びた線で書された欧文字「Liv」よりなる。
引用商標1はその構成文字に相応して「リブ」の称呼が生じ、特定の観念は生じない。
(3)本件商標と引用商標1との対比
本件商標と引用商標1は「リブ」の称呼を共通にする。外観については、本件商標の「LIV」と引用商標1の「Liv」は2文字目及び3文字目において大文字と小文字の差異があり、文字体に多少の差異が見られるものの、太い線で書される点が共通し、さらに、「L」においては縦線と横線が直角に交わる点において、角部分の外側の輪郭が切り取られたようなデザインである点が共通する。構成文字が同一であることに鑑みても、本件商標の要部と引用商標1の外観は近似した印象があり、一定の類似性が認められる。「LIV/Liv」の文字からは特定の観念は生じないため、本件商標と引用商標1とは観念において比較することはできないが、外観・称呼が類似するため、類似の商標といえる。
(4)取引の実情
多くのアパレルやスポーツウェアメーカーが、ゴルフ用のラインを、「ブランド名+GOLF」のブランド名で展開している実情がある。「DAKS GOLF」、「MIZUNO GOLF」、「23区GOLF」、「EDWIN GOLF」、「PERSON’S GOLF」、「BEAMS GOLF」、「UNITED ARROWS Golf」、「EDIFICE GOLF」、「DoCLASSE GOLF」などは一例である(甲5〜甲13)。
したがって、取引者、需要者が本件商標を目にした場合、申立人の「Liv」ブランドからゴルフ用のラインが出されたとの誤認を招くおそれは非常に高い。このような取引の実情を併せ考慮しても、本件商標と引用商標1は、商品の出所について誤認混同を生じるおそれのある類似の商標である。
(5)本件商標と引用商標1の指定商品の対比
本件商標の指定商品は、引用商標1の指定商品と同一又は類似である。
(6)過去の審決・異議決定
指定商品・役務との関係において識別力の強弱に差がある2つの語句が結合してなる商標が、識別力が強い語句のみからなる商標と類似とされた決定・審決がある(甲14〜甲19)。
これらの異議決定に鑑みれば、本件商標と他の商標との比較において、視覚上分離して看取される本件商標においてはなおさら「LIV」と「GOLF」を分離し、「LIV」の文字を要部として抽出することは当然許されるべきである。
(7)まとめ
本件商標は、引用商標1と称呼及び外観上類似するものであり、本件商標の指定商品と、引用商標1の指定商品とは同一又は類似のものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知著名性
申立人は、台湾に所在の自転車メーカーであり、1972年に創業され、1980年代には年間生産台数35万台に達し、欧米及び我が国でも大々的に商品を展開している。申立人は自転車メーカーとしては世界で初めてカーボンバイクの量産に成功し、以来、その生産・販売台数は世界中で伸び続け、現在では世界最大の自転車メーカーとなった(甲20)。我が国でも2007年からスポーツ自転車専門店「ジャイアントストア」を展開し、現在では全国39店舗の「ジャイアントストア」を運営している。
申立人は2007年より、女性専用の自転車ブランド「Liv」を展開している。
「ジャイアントストア」は2007年から続々と日本各地でオープンしているが、新店舗開店の記事は、様々なサイクリング専門雑誌やウェブサイトでも紹介されている(甲21〜甲39)。
2010年以降は、「ジャイアントストア」にLiv製品も置かれることが、店内に展示されたLiv製品の写真と共に紹介されており(甲21)、2012年には、店舗名を「Liv/Giant」とした「リブ/ジャイアント大阪」が開店した(甲22)。
2016年以降は、ジャイアントストアの店舗看板において、「Giant」のロゴの横に「Liv」のロゴも冠する店舗が増加し、2016年にジャイアントストアびわ湖守山店がオープニングした際には、観光需要拡大を目指す当時の守山市の市長も駆け付けた(甲23)。
現在ではLivの直営旗艦店は、東京2店舗、仙台、名古屋、大阪、福岡各1店舗の合計6店舗であり、その他Liv製品を一定数以上置く店舗である「Livパートナーストア」は30店舗以上ある(甲40)。これら店舗の多くにおいて、「Liv」のロゴが店舗外観の目立つ位置に表示され、店舗内には「Liv」のロゴが付された自転車やサイクリングウェアが展示されている。
「Liv」ブランド製品(以下「Liv製品」という。)では自転車のみならず、サイクリングウェア、シューズ、ソックスなどのアパレル製品も非常に重視され、2007年に「LIV/giant」を、完全に女性向けのブランドとして発足させている。最初のLiv製品はサイクリング用のジャージである(甲41)。
自転車、部品、ウェア等を含めたLiv製品の販売数量は、2010年から2014年の間は、平均して年間3,500を超えており、2015年から2022年においては平均して年間15,000を超える。自転車、部品、ウェア等を含めたLiv製品の売上高は、2010年から2014年の間は、平均して年間1億円を超え、2015年から2022年においては平均して年間3億円を超える。
申立人は我が国での宣伝広告活動を精力的に行っており、サイクリング専門雑誌に限らず、観光雑誌や大衆紙にもLiv製品の宣伝広告を掲載してきた(甲42〜甲71)。
2010年にLiv製品を扱う店舗が東京都にオープンすると、これを報じる記事や、Liv自転車を紹介する記事が、サイクリング専門雑誌に限らず女性誌、地域雑誌などにも掲載され(甲72〜甲83)、とりわけ、女性にとって、Liv製品が身近に感じられるような宣伝広告を重視してきた(甲80〜甲82)。
Livのアパレル製品には「Liv」のロゴが付されており、これらアパレル製品は自転車と共に、2010年以降我が国でも、様々な雑誌・サイクリング専門紙・ウェブサイト等で紹介されてきた(甲84〜甲119)。
また申立人は、ファッションモデルや現役プロサイクリストを招いた、ウェア紹介イベントなども多数開催している(甲120)。Liv店舗でのLiv自転車の試乗会(甲121〜甲123)や、申立人主催のサイクリングツアーも行っている(甲124〜甲127)。
2019年には、蔵王にてe−BIKEツアーを主催した(甲128)。これらのイベントには、LivのTシャツやサイクリング・ウェアを着たLiv店員が参加し、その様子はサイクリング雑誌やウェブサイト、LivのSNSなどで画像付きで紹介されている。
さらに申立人は毎年、数多くのサイクリングイベントに参加し、LivのTシャツやサイクリング・ウェアを着用したアンバサダーや店員などがブースで来場者と触れ合う様子や、サイクリング講習を行う様子などが、Livのウェブサイトやインスタグラム、サイクリスト向け雑誌やウェブサイトなどで紹介されている(甲129〜甲147)。2017年9月に開催された「ツール・ド・東北」には、女性ファッション誌「MORE」の企画で選ばれた3名の20代女性が、Livのサポートを受けて大会に参加した。「MORE」紙上でLivのロゴが付されたジャージを着用し大会準備をする女性たちの様子が紹介された(甲147)。
申立人は欧州などで「Liv」の名前を冠したレーシングチームを運営しているが(甲148)、我が国でも女性競技者をLivアンバサダーに任命し、選手活動をサポートしている。レーシングチームの運営、アンバサダーの競技サポートは、申立人の活動の柱である。Livアンバサダーの任命や、アンバサダーのレース成績などは、LivウェブサイトやSNSだけでなく、サイクリング専門雑誌やウェブサイトなどで紹介されている。これらの記事では、表彰台に上がった選手のウェアに大きく「Liv」と表示された様子などが見られる(甲149〜甲159)。
申立人によるLiv製品の宣伝広告活動やプロ・サイクリング競技のサポート活動などにより、我が国でLiv製品はサイクリング用自転車・ウェアについて広く知られるに至った。
また、Liv製品は、大衆紙や女性誌などでも多数紹介された結果、サイクリングに関心がある者だけでなく、スポーツ全般に関心がある者、ファッションに関心がある者の間でも、「Liv」ブランドの認知度は高いといえる。
本件商標の登録出願時及び登録査定時において「サイクリング用被服,ソックス,履物」等を指定商品とする引用商標1、「自転車」等を指定商品とする引用商標2及び3は取引者、需要者の間で周知著名となっていることは明らかである。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
上記1のとおり、本件商標においては「LIV」部分が強い出所識別機能を有する部分であるため、「Liv」の文字から構成される引用商標は、外観・称呼が類似する。
(3)引用商標の独創性
引用商標を構成する「Liv」の文字は、米国などでは女性の名前として使用されている場合が認められるものの、我が国において一般になじみがある語とはいい難いことから、特定の意味を有しない造語といえ、その独創性は高いといえる。
(4)商品間の関連性と商品の需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、申立人の業務に係る商品と同一・類似であり、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品とは極めて関連性が高いといえる。また、両商標の指定商品の需要者は、自転車愛好家や同競技者、ゴルフ愛好家を含むスポーツ愛好家、アスリート、さらには一般消費者であり、ほぼ同一である。そうとすると、本件商標の指定商品の需要者と申立人の業務に係る商品の需要者は共通する。
(5)出所の混同を生ずるおそれについて
本件商標においては「LIV」の文字が独立して出所標識として機能し、強く支配的な印象を与える部分であり、要部であるため、引用商標とは称呼・外観が類似する。上述のとおり、申立人の幅広い人口層への宣伝広告活動の結果、「Liv」の名称はスポーツバイク及びサイクリングウェア分野のみならず、スポーツやファッションに関心がある者の間で周知著名となっている。また、本件商標の商品の取引者及び需要者はゴルフなどのスポーツに関心がある者である一方で、引用商標にかかる商品の取引者及び需要者はサイクリングなどのスポーツに関心がある者であるため、スポーツに関心がある点で共通し、関連性の程度は高い。
さらに、上記1(4)で述べたとおり多くのアパレルやスポーツウェアメーカーが、ゴルフ用のラインについて、「ブランド名+GOLF」のブランド名で展開している実情がある(甲5〜甲13)。「Liv」はサイクリング用自転車・ウェアのブランド名として2010年から我が国で展開され、現在では高い知名度を獲得している。
上記のような実情が認められる中で、スポーツに関心がある者が「LIV GOLF」を目にした場合、申立人の「Liv」ブランドからゴルフ用のラインが出されたとの誤認を招くおそれは非常に高いといえる。特に、本件商標の権利者が主催するゴルフツアーが報じられる際に、「リブ」や「LIV」などと称される事例も散見される(甲160、甲161)。
このような実情に鑑みれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する需要者が、周知著名な商標である引用商標「Liv」を連想、想起して、これらの商品が申立人、あるいは申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認するおそれがあることは明らかである。
(6)まとめ
前記したとおり、本件商標は、引用商標と混同を生ずるおそれのある商標であり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、1972年に創業した台湾に所在の自転車メーカーであり、1980年代には年間生産台数35万台に達し、欧米で商品を展開している(甲20)。我が国でも2007年からスポーツ自転車専門店「ジャイアントストア」を展開し、現在では全国39店舗の「ジャイアントストア」を運営しているとされる(申立人の主張)。
イ 申立人は2007年より、女性専用の自転車ブランド「Liv」を展開しているとされ(申立人の主張)、「ジャイアントストア」の新店舗開店の記事は、サイクリング専門雑誌やウェブサイトで紹介されている(甲21〜甲39)。
ウ 現在ではLivの直営旗艦店は、東京2店舗、仙台、名古屋、大阪、福岡各1店舗の合計6店舗であり、その他Liv製品を一定数以上置く店舗である「Livパートナーストア」は30店舗以上ある(甲40)。
エ 2007年に「LIV/giant」を女性向けのブランドとして発足させており、最初のLiv製品はサイクリング用のジャージである(甲41)。
申立人は、自転車、部品、ウェア等を含めたLiv製品の販売数量は、2010年から2014年の間は、平均して年間3,500を超えており、2015年から2022年においては平均して年間15,000を超える旨、及び、自転車、部品、ウェア等を含めたLiv製品の売上高は、2010年から2014年の間は、平均して年間1億円を超え、2015年から2022年においては平均して年間3億円を超える旨主張している。
しかしながら、その数値を裏付ける具体的な証拠の提出はない。
オ 申立人は、サイクリング専門雑誌に限らず、「るるぶ鎌倉」、「るるぶ日光那須」、「るるぶ清里蓼科」、「るるぶ軽井沢」、「よくばり女子旅」、「コテージ・貸別荘」、「グルメトリップ」、「心なごむ美宿」等の観光雑誌や、「エル・ジャポン」「BE−PAL」等にLiv製品の宣伝広告を掲載している(甲42〜甲71)。
カ アパレル製品や自転車には引用商標又は「Liv」の文字が表示された商品があり、雑誌・サイクリング専門紙・ウェブサイト等で紹介され(甲84〜甲119)、また、申立人は、ウェア紹介イベント(甲120)、Liv製品を扱う店舗でのLiv製品の自転車の試乗会(甲121〜甲123)や申立人主催のサイクリングツアーを行っている(甲124〜甲127)。
(2)判断
上記(1)によれば、申立人は、2007年から申立人の業務に係る商品(自転車等)を販売していることがうかがえるとしても、申立人の提出に係る証拠からは、引用商標の周知性を判断するための、申立人の業務に係る引用商標を使用した商品の販売数、売上高、市場シェア等の販売実績並びに宣伝広告の期間、地域及び規模等の広告実績を確認できる客観的な証拠は見いだせない。
その他、申立人の提出に係る証拠をみても、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間で、広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。
そうすると、引用商標の周知性の程度を客観的に推し量ることができないから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、取引者・需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおりの構成からなるところ、該構成は、「LIV」の欧文字と「GOLF」の欧文字をデザイン化して表してなるものと看取され、それらのデザイン化の程度が異なるとしても、全ての文字の高さが揃っており、同じ大きさ、同じ色彩で、各文字間の隙間もなく横一連に表された構成からなるものである。
また、本件商標の構成全体より生じる「リブゴルフ」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標は、その構成中の「GOLF」の文字部分が、球技の一種である「ゴルフ」の意味を有する語(「ベーシックジーニアス英和辞典第2版」株式会社大修館書店)であるとしても、上記のとおりの構成からなる本件商標においては、「GOLF」の文字部分が直ちに本件商標の指定商品の品質等を直接的に表示するものとして理解、認識されるというよりは、むしろ、その構成全体をもって一連一体のものとして認識、把握されるものと判断するのが相当である。
そうすると、本件商標は、構成全体をもって一体のものとして認識され、その構成文字に相応して「リブゴルフ」の称呼を生じ、「LIVGOLF」の文字は、辞書等に載録されている語ではなく、全体として特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないものであるから、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
(2)引用商標1について
引用商標1は、別掲2のとおり、ややデザイン化されているものの、「Liv」の欧文字を表したものと容易に看取されるものであり、これよりは「リブ」の称呼を生ずるものである。
そして、「Liv」の文字は、辞書等に載録されている語ではなく、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせない。
そうすると、引用商標1は、「リブ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標1の類否について
ア 外観について
本件商標と引用商標1の外観を比較すると、両者の構成はそれぞれ上記(1)及び(2)のとおりであるから、両者のデザイン化の手法の相違及び「GOLF」の文字の有無等により、外観の相違は顕著であり、判然と区別し得るものである。
イ 称呼について
本件商標から生じる「リブゴルフ」の称呼と引用商標1から生じる「リブ」の称呼を比較すると、「ゴルフ」の音の有無の差異から、両者は明瞭に聴別し得るものである。
ウ 観念について
本件商標及び引用商標1は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできない。
エ そうすると、本件商標と引用商標1とは、観念において比較することができないものであるとしても、外観及び称呼において区別し得るものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者・需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であるというのが相当である。
その他、本件商標と引用商標1が類似するというべき事情は見いだせない。
(4)小括
本件商標と引用商標1とは、上記(3)のとおり、非類似の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標は、申立人の取扱いに係る商品を表示するものとして、取引者・需要者の間に広く知られていたと認めることはできないものである。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
本件商標と引用商標1は、上記2(3)のとおり、非類似の商標である。
また、引用商標2は、別掲3のとおりデザイン化されているものの、その手法、程度からすれば、「L」「i」「v」より構成されていることは認識し得るといえるため、本件商標と引用商標2との類否の判断についても、上記2(3)と同様に判断できるといえるから、両商標は非類似の商標であるというのが相当である。
さらに、引用商標3は、外観上、引用商標1と同一視し得る態様であるため、その類否の判断についても、上記2(3)と同様に判断できるといえるから、非類似の商標というのが相当である。
そうすると、本件商標と引用商標は、互いに非類似の商標であるといえるから、その類似性の程度も低いものである。
(3)商品の関連性及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、申立人の業務に係る商品と同一又は類似する商品を含むものであるから、一部商品の関連性を有し、需要者を共通にする場合がある。
(4)小括
上記(1)ないし(3)を総合的に判断すれば、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品が一部関連性を有し、需要者を共通にする場合があるとしても、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者・需要者の間に広く認識されているとは認められないものであり、本件商標と引用商標の類似性の程度も低いものである。
そうすると、本件商標の商標権者が、本件商標をその指定商品について使用しても、取引者・需要者が、申立人又は引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1 本件商標


別掲2 引用商標1


別掲3 引用商標2


別掲4 引用商標3



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異議決定日 2024-11-14 
出願番号 2022050515 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W2528)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 板谷 玲子
特許庁審判官 馬場 秀敏
小田 昌子
登録日 2023-03-03 
登録番号 6677196 
権利者 リブ ゴルフ リミテッド
商標の称呼 リブゴルフ、リブ、エルアイブイ 
代理人 桶川 美和 
代理人 山田 薫 
代理人 塚田 美佳子 
代理人 弁理士法人坂本国際特許商標事務所 

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