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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W35 |
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管理番号 | 1416824 |
総通号数 | 35 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-11-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2024-05-24 |
確定日 | 2024-11-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6794698号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6794698号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6794698号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和5年6月20日に登録出願、「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類並びに第3類、第14類、第18類、第25類及び第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同6年3月18日に登録査定、同年4月10日に設定登録されたものである。 第2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、第29類「豆菓子」、第30類「菓子」及び第35類「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「申立人商品及び役務」という。)に使用して周知になっていると主張するものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標はその指定商品及び指定役務中、第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「申立てに係る役務」という。)について商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第63号証(枝番号を含む。)を提出した。 なお、証拠の記載にあたっては、以下「甲1号証」を「甲1」のように記載し、枝番号を全て記載する場合は、枝番号を省略する。 1 商標法第4条第1項第10号について (1)引用商標の周知・著名性について ア 申立人の引用商標の使用状況について 引用商標は、我が国及び世界で著名なパティシエである辻口博啓氏(以下「辻口氏」という。)がプロデュースしている店舗及び商品に付される商標であって、豆を用いたスイーツブランドとして、需要者の間で広く知られた商標であり(甲2〜甲63)、辻口氏は申立人の代表者である。 引用商標は、店舗名であり、店舗の内装(甲2)や外装(甲3)等に記載されるとともに、店内で取り扱う商品のパッケージや紙袋、ポップ等に記載され(甲4の1〜3)、申立人のオンラインショップ(甲4の4)、公式SNS等に記載されている(甲5、甲6の1、2)。申立人は豆菓子のみならず、サブレなどの焼き菓子を販売している(甲4〜甲6の2)。引用商標が付された商品は直営店のみならず、多くの観光地や百貨店及びオンラインショップで販売されており、日本全国において販売されている。申立人は申立人商品及び役務に引用商標を使用しており、第29類及び第30類の商品区分においても、第35類「菓子の小売等役務」に係る役務区分においても、周知・著名性についての差はない。 引用商標が付された「Feve」(2文字目の「e」の上にはアクサン・グラーブが付されている。)が最初に販売されたのは2011年であり(甲7)、オーナーシェフの辻口氏は我が国及び世界で数々の賞を受賞した著名なパティシエである(甲4の5)。現在では、スイーツを通した地域振興、企業とのコラボレーションやプロデュース、講演や著書出版など積極的に活動するほか、低糖質スイーツの第一人者として数々のロカボスイーツの開発・監修に取り組んでおり、スイーツの業界における話題のインフルエンサーであるといえる。辻口氏のSNSとしては、ブログ(甲6の5)、Facebook(フォロワー2.8万人)(甲6の6)、X(フォロワー7,569人)(甲6の7)、Instagram(フォロワー3.7万人)(甲6の8)があり、これらにおいて、引用商標が宣伝広告されることにより、多くの需要者に引用商標が知られている。 辻口氏は自由が丘で引用商標の他にもコンセプトの異なる菓子店を経営しており、引用商標が付された店舗は3店舗目として開店当初から大いに注目され(甲8)、開店についてテレビ番組でも取り上げられた(甲9)。著名な辻口氏が広告塔となり、引用商標について積極的に広告宣伝するとともに(甲6の3、4等)、申立人のホームページや公式SNSをはじめ、引用商標が付された店舗及び商品が辻口氏によるものであることを消費者が認識できるよう、常に引用商標と辻口氏の名前がセットで使用されている。これにより、辻口氏の著名性が強い誘因力となって、引用商標の周知・著名性の獲得に大きな影響を与えている。 引用商標が付された店舗は、2011年以降、隣接都道府県に拡大し、これまで12年の間、東京都だけでなく、神奈川県・千葉県等の隣接都道府県に継続して出店を続けているとともに、日本全国の観光スポットにおいて、引用商標が付された商品が販売されている。 自由が丘では2011年7月から、玉川高島屋には2011年10月から、渋谷ヒカリエには2012年4月から、スカイツリーには2012年5月から継続して10年以上出店を続けている。また、東京駅に所在する東京ギフトパレットには2020年3月から出店している(甲10)。本店は自由が丘に所在(現在は、九品仏川緑道に移転)し(甲11)、観光客へのお土産として利用しやすい観光商業施設や百貨店等に出店している。 また、これまで12年間、北千住ルミネ、アトレ品川、ルミネ立川などの東京の各地で出店を続けるとともに、横浜駅内ジョイナスやラゾーナ川崎などの神奈川県、船橋の東武百貨店などの千葉県の隣接都道府県でも出店を長期間続けてきた(甲10)。 その他にも、羽田空港のお土産ショップにおいて、申立人による羽田空港限定商品を販売しており、購入可能となっている(甲12)。なお、羽田空港のオンラインショップでも当該羽田空港限定商品が購入可能である(甲13)。ここでも引用商標が付された商品が辻口氏の商品であることが分かるように使用されていることから、辻口氏の著名性が強い誘因力となって、引用商標の周知・著名性の獲得に寄与している。 さらに、申立人の代表者がプロデュースする店舗が入っている施設においても、引用商標が付された商品が購入可能となっている。例えば、宮城県、埼玉県、三重県、大阪府に所在するアクアイグニス内の温泉の売店等においても常設で販売されており(甲14)、アクアイグニスのオンラインショップでの注文も可能である(甲14の1)。また、VISON本草湯やコンフィチュールアッシュVISON店へも商品を卸しており、施設内で販売がなされている(甲15)。これらのアクアイグニス内でも辻口氏の写真とともに、引用商標が付された商品が販売されていることから、辻口氏の著名性が強い誘因力となって、引用商標の周知・著名性の獲得に寄与している。 また、大府パーキングエリア、阿久比パーキングエリアなどの高速のパーキングエリアでも引用商標が付された商品が常設で販売されており、購入することが可能となっている(甲15)。 さらに、2019年12月から2021年11月まで、東京都東久留米市に所在するスパジアムジャポン内の「SUPER SWEETS GALLERY」においても引用商標が付された商品が常設販売されていた(甲16)。これらの証拠から明らかなように、引用商標が付された商品が辻口氏の商品であることが分かるように使用されていたことから、辻口氏の著名性が強い誘因力となって、引用商標の周知・著名性の獲得に寄与していたことが分かる。 加えて、期間限定の催事販売も継続して行われており、直近の半年間では、池袋サンシャイン、岩田屋本店、立川伊勢丹、イクスピアリ、札幌丸井三越、ラスカ茅ヶ崎、そごう大宮、伊予鉄高島屋、静岡伊勢丹での催事販売が行われた(甲17)。つまり、北海道、埼玉、東京、千葉、神奈川、静岡、愛媛県、福岡県で催事販売されている。この催事販売においても商品が陳列されるだけでなく、辻口氏の写真やパネルなどが展示されて、商品が辻口氏のプロデュースであることが識別できるような仕方で販売されている(甲17の2)。このように、辻口氏の著名性が強い誘因力となって、引用商標の周知・著名性の獲得に寄与している。 さらに、過去においては一例として、大丸札幌(甲18)、JR名古屋タカシマヤ「アムール・デュ・ショコラ」(甲19)、新宿伊勢丹(甲20の1、3)、エキュート東京(甲20の2)、銀座LOFT(甲21)、東京クリスマスマーケット(甲22)、イクスピアリ(甲23)、東急ハンズ心斎橋店(甲24)、岩田屋本店(甲25)、福岡PARCO(甲26)において催事販売を行い、その様子について、実施した店舗の公式SNS等に掲載されている。 これらの例から分かるように、北海道から九州まで、日本全国の百貨店等で開催されるスイーツイベント等の催事販売において、引用商標が付された商品が販売されているとともに広告宣伝されているため、少なくとも一地方のみならず、隣接都道府県における周知性は獲得しているといえる。また、各販売店のSNSには引用商標とともに、代表者の辻口氏が記載されており、引用商標が付された商品は、辻口氏が手掛けるブランドであることが分かるように広告されているため、辻口氏の著名性が強い誘因力となって、引用商標の周知・著名性の獲得に寄与している。 申立人のオンラインショップでも相当数を販売しており、全国から注文がなされている。例えば、平成29年においては相当数の売上げがあり(甲27)、全国から購入可能なオンラインショップにおいても相当の売上げがあることから、周知・著名性を獲得しているといえる。 申立人以外のオンラインショップでも購入が可能であり、例えば、onwardmarche(甲28)、minneのオンラインショップ(甲29の1、2)、上述した羽田空港のオンラインショップ(甲13)やアクアイグニスのオンラインショップ(甲14の1)等である。また、コラボレーション商品として、colorgenicのオンラインショップでも購入が可能である(甲29の3)。これらの例から分かるように、各オンラインショップにおいても、引用商標とともに、代表者の辻口氏が記載されており、引用商標が付された商品は、辻口氏が手掛けるブランドであることが分かるように広告されていることにより、辻口氏の著名性が強い誘因力となって、引用商標の周知・著名性の獲得に寄与している。 このように、我が国を代表するパティシエの店として、お菓子の激戦区である自由が丘をはじめ、都心の多くの商業地で長年出店を継続するとともに、日本全国の観光地においても常設販売されているとともに、複数の大手百貨店等におけるスイーツイベントにおいて催事販売され、さらには継続してオンラインショップでも販売していることは、周知性について、少なくとも一県にとどまらず隣接数県の相当範囲の地域においては周知性を獲得していることが明白であるとともに、全国的な知名度も獲得していると考えることができ、引用商標の周知・著名性を裏付けるものである。 豆を用いたスイーツは健康志向のトレンドにマッチしており、健康志向の昨今において、いち早く豆を用いたスイーツ専門店としてオープンした申立人の同店舗は、その先駆けの存在として大きな注目を集めてきた。甘いものが苦手な人にも食べられるようなおつまみ等も取り揃えており、需要者の幅を広げている。精錬されたパッケージは、ちょっとした手土産やギフトとして愛されている。商品はもちろんのこと、店舗の外装や内装にもこだわっており、季節ごとのイベントでは大行列になり、売り切れてしまうこともある人気店である(甲30)。店の前にも辻口氏の等身大のパネルがあり(甲30)、著名な辻口氏が自ら広告塔となっており、辻口氏の著名性が強い誘因力となって需要者が引用商標に接することができるため、需要者には引用商標が強く印象付けられることから、引用商標の周知・著名性に大きな影響を与えているといえる。 Tripadvisorでは自由が丘のレストランにおいて295軒中47位になっており(甲31の1)、食ベログでは2,986人がブックマークをしている(甲31の2)。また、Facebookでも3,679件の「いいね!」があるとともに、3,641人のフォロワーがいる(甲5)。Instagramでは1,990人のフォロワーを擁している(甲6の1)。公式以外にも、玉川高島屋店のInstagramも存在している(甲6の2)。さらに、辻口氏のSNS(甲6の5〜8)においても、引用商標は頻繁に登場する。このように、SNSでも認知された商標であることが分かる。 2022年12月16日には、2011年当時からの店舗を移転し、豆スイーツ専門店「feve自由が丘店」と和スイーツ専門店「和楽紅屋」を統合した旗艦店がオープンした。プレスリリース配信サービスに掲載され(甲32)、その後、多くのメディアが本件に関するニュースを報じている(甲11、甲33の1〜8)。SNSにも取り上げられた(甲33の9)。このように、引用商標が付された店舗に関する情報は、多くのメディアに取り上げられるほどの注目度であることが分かる。 イ メディア等で取り上げられた事例について 引用商標はその著名性ゆえに、2011年の開店当初から、メディアに取り上げられる機会があり、そのほぼ全ての記事において辻口氏との関係性について言及されている。辻口氏の著名性が強い誘因力となって、多くの需要者が引用商標に接することができるため、引用商標が周知・著名性を獲得できるような効果的な宣伝が行われているといえる。 例えば、2013年には、自由が丘に存在する3店舗のパティシエ辻口氏の店「モンサンクレール」「自由が丘ロール屋」「feve自由が丘店」のスタンプウォーキングが実施されていたことが記載されている(甲34)。このような取組みにより、パティシエの辻口氏と引用商標との関係が印象付けられ、効果的に引用商標が宣伝されていたことが分かる。 また、2013年10月には福岡において、期間限定で引用商標が付された商品が販売されたことが天神経済新聞に記載されており(甲35)、催事販売が地方のニュースとして取り上げられること自体、引用商標が高い著名性を獲得していることは明らかである。 Woman Exciteにも2013年10月に辻口シェフプロデュースの豆スイーツとして引用商標が紹介されている(甲36)。 2014年には辻口氏が「TORJA」の「飲食の戦士たち IN JAPAN」のインタビュー記事に掲載されており、引用商標について紹介されている(甲37の1)。 また、同年にはキナリノの公式Xにおいても、引用商標が付されたスイーツがパティシエの辻口氏のものであり、パッケージがお洒落であることが記載されている(甲37の2)。 加えて、同年にはファッションブランドのVISとコラボレーションをしたり(甲38の1)、「ファイナルファンタジー」のキャラクターデザインを手掛ける天野喜孝とコラボレーションしており、それらがウェブ記事として取り上げられている(甲38の2)。 Woman Exciteの2015年のウェブ記事においてもファッション・ビューティー業界関係者が選ぶ東京土産として引用商標が取り上げられた(甲39)。 また、おしゃれな食の雑誌『エル・グルメ(ELLE gourmet)』のデジタル版「ELLE GPURMET」の2015年のウェブ記事には、引用商標が付された渋谷ヒカリエの限定商品についての記事が掲載され(甲40)、同年には旅行雑誌のウェブ記事で紹介された(甲41)。この記事においては、トップパティシエの辻口氏の店舗であることや、引用商標に関する辻口氏の想い、店内の品ぞろえ、さらにはモダンなディスプレイについて言及されている。また商品そのもののおいしさや、きめ細かなギフト対応に関する記載もある。 2016年にはスカイツリーのお土産としてマイナビウーマンに引用商標のスカイツリー店限定のお菓子が紹介されている(甲42)。 また、2016年3月には、前園真聖氏のおススメスイーツとして、引用商標が付された商品がテレビ「バイキング」で紹介されたこと、オーナーが辻口氏であること等が記載されている(甲43の1)。その後、辻口氏のブログでも前園氏が取材に来たことについて記載があり(甲43の2)、ウェブ記事が一年後に掲載された(甲43の3)。 2016年5月には「ECのミカタ」で取材され、工場において引用商標が付された商品が製造される工程や、商品開発について説明されている(甲44)。 さらに、食に関わる幅広いジャンルのキュレーターたちが厳選した逸品だけを紹介するウェブサイト「ippin」でも取り上げられ、辻口氏のプロデュースする商品であること等について記載されている(甲45の1)。その後、同サイトにハイクラスな一品としてウェブ記事で取り上げられている(甲45の2)。このウェブサイトで取り上げられていることは引用商標が専門家にも評価されていることを示すものである。この記事のタイトルは「甘党も辛党も一度食べたら止まらない幸せの味」となっており、需要者の人気が高いことが分かる。この記事内では、パティシェの辻口氏の店であることや、商品そのもののおいしさについて記載されている。また、2019年にも、自由が丘で人気の手土産として紹介されるとともに、辻口氏のプロデュースする商品であること等について記載されている(甲45の3)。また、「ippin」の公式Xにおいても引用商標についての記載がある(甲45の4、5)。 また、辻口氏が伊勢丹新宿店のスイーツイベント「マ・パティスリー」のために作った限定の商品が話題になっているとの記載があり、引用商標が使用されている(甲46)。 2018年9月には千葉県に初出店したことが取り上げられ(甲47)、千葉への初出店の際には、千葉県のマスコットキャラクター「チーバくん」を起用した船橋店限定商品を発売したことが記載されている。 引用商標が付された商品のパッケージについて紹介されている(甲48)。 2019年3月にはサンリオキャラクターとコラボ商品を発売したことが記載されており(甲49の1)、我が国の著名なキャラクターとのコラボ商品を作成することができるのも、引用商標の商品及びサービスが周知・著名性を獲得していることの証拠である。この情報については複数のメディアに掲載され(甲49の2〜4)、サンリオの公式SNSにも掲載され、多くの反響があった(甲49の5、6)。 渋谷ヒカリエの「ShinQsフードFun!!Club」においてもウェブ記事が掲載され(甲50)、辻口氏のプロデュースする商品であること等について記載されている。 2019年8月にもウェブ記事に取り上げられ(甲51)、この記事においてもパティシエの辻口氏の店であることや、商品そのもののおいしさについて記載されている。 2021年1月には名酒「獺祭」や「ドンペリニョン」とコラボレーションしたことも記載され(甲52)、この記事の中では、パティシエの辻口氏について1990年代から国内外のコンテストで数々の賞に輝き、ファンが多いと記載されている。我が国をはじめ世界の名酒とコラボレーションできるということは、引用商標の商品及びサービスが周知・著名性を獲得していることの証拠である。 2022年には自由が丘でお勧めの人気土産15選に選ばれており(甲53)、この記事においてもパティシエの辻口氏の店であることや、自由が丘はレベルの高いケーキ屋が多く、このお菓子の激戦区といわれる自由が丘で15選の中に選ばれていることが記載されており、引用商標の商品及びサービスが周知・著名性を獲得していることの証拠である。 さらに、日本最大級の宿・ホテル予約サイト「じゃらん」の観光「青報ニュース記事において、自由が丘の2022年に味わいたいスイーツ店10選に選ばれ紹介され(甲54)、この記事においてもパティシエの辻口氏の店であることや引用商標の意味、商品のおいしさ等が記載されている。著名なサイトの情報記事に掲載されていることを考慮すると、引用商標の商品及びサービスが周知・著名性を獲得していることの証拠である。 おしゃれな食の雑誌『エル・グルメ(ELLE gourmet)』のデジタル版「ELLE GOURMET」の2023年の最新プラントベーススイーツ10選にも選ばれている。このことから、引用商標が我が国を代表するおしゃれな健康志向のお菓子及びその小売店の商標として周知になっていることを証明している(甲55)。 また、同年には新商品が出たことに関するウェブ記事も掲載され(甲56)、この記事においてもパティシエの辻口氏の店であることが記載されている。加えて、2023年版の羽田空港のおしゃれなお土産21選にも選ばれている(甲57)。 これらのメディアの情報から明らかなとおり、引用商標が付された商品が魅力的な商品及びサービスを提供するブランドとして、需要者に認識されており、全国的な周知・著名性を獲得しているといえる。 引用商標は、テレビでも多く取り上げられている。 2011年7月29日に「王様のブランチ」において引用商標が取り上げられた(甲9)。 2012年5月6日には「テレビ東京 ソロモン流」で辻口氏が特集され、その中で引用商標が付された商品と店舗が紹介された(甲58)。 2013年には、フジテレビ「いらこん」とイラスト投稿SNSサイト「pixiv(ピクシブ)」とのコラボレーション企画がなされ、当該企画において引用商標のパッケージについてのコンテストが行われた。そのコンテストの様子は複数回にわたってテレビ放送されていた(甲59)。 2015年4月3日(金)23:00〜放送「アナザースカイ」において、田中みな実氏が、引用商標が付された商品を紹介した(甲60)。 2016年9月16日(金)18:15〜「news every.」において、「和楽紅屋」と「フェーヴ」のアウトレットが紹介された(甲61の1)。 このアウトレットは当時大変好評で、大盛況のアウトレットであった(甲61の2)。 2021年9月12日には「ラヴィット」の中での企画、ぼる塾「自由が丘 最新絶品スイーツ」芸能界スイーツ部で取り上げられた(甲62)。 2023年5月2日にも石川テレビが取材に来たことが記載されている(甲63)。 このように、辻口氏のブランドの一つとして、第29類及び第30類の商品、第35類の小売等役務についても、過去10年以上にわたり継続的にテレビをはじめ、多数のメディアで紹介されていることから、引用商標は全国における周知・著名性を獲得しているといえる。商品及びサービスの名称として、商標が使用され、広告宣伝されていることを考慮すると、商品及び役務について周知・著名性の差はなく、本件商標の出願日よりも前から、引用商標は指定商品役務に関して著名性を獲得している商標である。 (2)引用商標と本件商標の類似性 本件商標は、「e」の上部にアクサン・グラーヴが付された「Feve」からなる商標であり、「フェーブ」の称呼が生じ、観念としては、「Feve」はフランス語で「ソラマメ」の意味や、「1月のフランス菓子「ガレット・デ・ロワ」の中に隠す磁器飾り」の意味があるものの、このフランス語が我が国の需要者の間に知られているとはいい難いので、特段の観念を持たない造語として把握される。 一方、引用商標は「e」の上部にアクサン・グラーヴが付された「Feve」からなる商標であり、「フェーブ」の称呼が生じるとともに、観念としては、フランス語で「ソラマメ」の意味や、「1月のフランス菓子「ガレット・デ・ロワ」の中に隠す磁器飾り」の意味があるものの、このフランス語が需要者の間に知られているとはいい難いので、特段の観念を持たない造語として把握される。 本件商標と引用商標を比較した場合に、共通して「フェーブ」の称呼が生じ、互いに呼称が同一であり、本件商標と引用商標の外観が類似し、本件商標と引用商標から生じる観念として、もともとのフランス語の意味が共通しているとともに、なじみのないフランス語であることから、特段の観念を持たない造語として把握されるという点でも共通する。 加えて、指定役務についても、本件商標の指定役務中、「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と、引用商標の指定商品及び指定役務中、申立人商品及び役務は類似する。 したがって、本件商標と引用商標は、互いに類似する商標である。 (3)まとめ 上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものであって、その独創性の程度も高いと認められ、また、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは類似関係にあるため、商標法第4条第1項10号に該当する。 2 商標法第4条第1項第15号について (1)引用商標の著名性について 上記1(1)で述べたとおり、引用商標は日本全国における著名性を有している。 (2)本件商標と引用商標との同一類似性の程度について 上記1(2)で述べたとおり、本件商標は著名な引用商標と類似する商標である。 (3)本件商標の指定役務と申立人商品及び役務との関連性並びに需要者の共通性について 本件商標に係る指定役務と申立人商品及び役務は互いに類似関係にあることは上記1(2)で述べたとおりであり、これらの分野においては密接な関わりがあり、取引者及び需要者を共通にする場合が少なくないものといえる。 (4)まとめ 上記(1)ないし(3)を総合すれば、引用商標は、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものであって、その独創性の程度も高いと認められるものである。 また、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは類似関係にある。 さらに、上記(3)のとおり、本件商標の指定役務と申立人商品及び役務とは、関連性の程度は強く、その取引者及び需要者を共通にすることも少なくないといえるものであることを考慮すれば、本件商標をその指定商品について使用した場合には、これに接する取引者、需要者をして、引用商標を想起、連想させ、その商品及び役務が申立人あるいは申立人の代表取締役であるパティシエの辻口氏と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知性について 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (1)申立人の代表、かつパティシエである辻口氏は、2011年、東京自由が丘に、豆を用いたスイーツ専門店「feve」をオープンした(甲4の4、5、甲7〜甲9 ほか)。 (2)辻口氏がプロデュースする豆を用いたスイーツ(以下「申立人商品」という。)は、東京を中心とした複数の商業施設、駅ビル、羽田空港、温泉の売店(宮城、埼玉、三重、大阪、東京など)、パーキングエリア、催事(北海道、東京を含む首都圏、静岡、愛媛、福岡など)等のほか、オンラインショップでも販売されていることがうかがえる(甲4の1〜3、甲5、甲10、甲12〜甲15、甲17〜甲26、甲29の3 ほか)。 なお、平成24年度ないし令和5年度にかけてのオンラインショップ売上高において、1,800万円ないし7,000万円で推移しているとされる(甲27)が、当該商品分野の市場占有率の証拠の提出はないため、申立人商品の売上高の多寡は不明である。 (3)引用商標は、申立人の店舗の内装や外装、申立人商品のパッケージ、紙袋、ポップ等に使用されている(甲2〜甲4の3、甲5〜甲6の2、甲7、甲17の2、甲21の1、甲29の3、甲30、甲33の3、甲40、甲45の2、5 ほか)。 (4)広告宣伝について、申立人や申立人以外のSNS(Facebook、X、Instagram ほか)(甲5〜甲6の5、甲9、甲16、甲18〜甲24、甲28の2、甲29の1、甲32の2、甲37の2 ほか)、ウェブサイト(甲4の1〜3、甲14の1、甲25、甲28の1、甲29の3、甲30、甲32の1、甲33の1〜5、7、8、甲36、甲37の1、甲38、甲39、甲42 ほか)、デジタル雑誌(甲40、甲41 ほか)、新聞(甲7、甲8、甲35)、2011年ないし2021年放送のテレビ番組(甲9、甲43の1、甲58〜甲63)等を通じて、申立人の店舗及び申立人商品は、辻口氏が手がける店舗及び商品として紹介されたことがうかがえる。 なお、新聞広告は、地域紙の「自由が丘経済新聞」及び「天神経済新聞」の2紙であり、全国紙については確認できない。 テレビ番組については、2011年ないし2021年の間に辻口氏ないし申立人商品が取り上げられたことがうかがえるが、約10年の間に7番組にとどまる。 (5)申立人商品とアーティスト、キャラクターや酒造企業など複数のコラボが行われている(甲38、甲49、甲52)。 (6)申立人商品について、例えば「自由が丘で今人気の手みやげ10選」(甲45の3)、「自由が丘でおすすめ人気お土産15選」(甲53)、「自由が丘の絶品スイーツ店10選!」(甲54)、「最新プラントベーススイーツ10選」(甲55)、「羽田空港のおしゃれなお土産21選!」(甲57)のように紹介されている。 (7)上記(1)ないし(6)よりすれば、申立人の代表、かつパティシエである辻口氏は、2011年、東京自由が丘に、豆を用いたスイーツ専門店「feve」をオープンしたこと、申立人商品は、東京を中心とした複数の商業施設、駅ビル、羽田空港、温泉の売店、パーキングエリア、催事、オンラインショップなどを通じて販売されたこと、引用商標は、申立人の店舗の内装や外装、申立人商品のパッケージ、紙袋、ポップ等に使用されたこと、申立人の店舗及び申立人商品は、辻口氏が手がける店舗及び商品としてSNS、ウェブサイト、デジタル雑誌、新聞、テレビ等のメディアを通じて紹介されたこと申立人商品が複数の企業とコラボしたこと、申立人商品が、人気スイーツの一つとして取り上げられたことはうかがえる。 しかしながら、申立人の主張する販売実績は、申立人商品のオンラインショップの売上高であり、オンラインショップ以外の売上高については確認できない上、当該商品分野の市場占有率の証拠の提出がないため、申立人商品の売上高の多寡は不明である。 また、新聞広告は、全国紙については確認できないこと、テレビ番組は、約10年の間に7番組と放送回数が多いとはいえず、引用商標に係る各種広告宣伝の手法は、そのほとんどが申立人の店舗及び申立人商品が辻口氏が手がける店舗及び商品であることが印象付けられるようにされており、需要者に対し、必ずしも引用商標のみが印象付けられるように広告されたとはいい難い。 さらに、申立人商品が、コラボ商品や人気スイーツの一つとして取り上げられたとしても、他の商品とともに掲載されており、申立人商品のみが目立つ形で取り上げられているとはいい難い。 そして、申立人商品の販売実績や広告宣伝費などの多寡を客観的に把握することができる証拠は提出されていない。 その他、申立人提出の証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていることを認めるに足りる証拠の提出はないことから、引用商標が、我が国の需要者にどの程度認識されているのか把握、評価することができない。 したがって、提出証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第10号該当性について (1)本件商標と引用商標の類否について 本件商標は、別掲1のとおり、「Feve」(2文字目の「e」の文字の上にアクサン・グラーブが付されている。以下、同じ。)の欧文字を表してなるところ、当該文字は、「ソラマメ」(ポケットプログレッシブ仏和・和仏辞典 第3版)の意味を有するフランス語であるが、一般に親しまれた語とまではいえないから、特定の観念を認識させるものとはいえない。 したがって、本件商標は、その構成文字に相応して「フェーブ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 他方、引用商標は、別掲2のとおり、黄緑色で「Feve」(2文字目の「e」の文字の上にアクサン・グラーブが付されている。以下、同じ。)の欧文字を表してなるところ、引用商標は、本件商標と同じ文字構成よりなるから、本件商標と同様に、引用商標は、その構成文字に相応して「フェーブ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。 本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、書体の違いはあるものの、両者は「Feve」の文字構成を共通にし、称呼においては、両者は「フェーブ」の称呼を共通にするものであり、観念においては、いずれも特定の観念を生じないから比較することができない。 したがって、本件商標と引用商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において、相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。 (2)引用商標の周知性について 上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標は申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできないものである。 (3)小括 そうすると、本件商標は、引用商標と類似する商標ではあるものの、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものとは認められないものであるから、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものである。 したがって、本件商標は、申立てに係る役務について、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知性について 上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標は申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできないものである。 (2)本件商標と引用商標の類似性の程度について 上記2のとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのある類似の商標であるから、類似性の程度は高いというべきである。 (3)独創性の程度について 「Feve」の文字は、一般に親しまれた語とまではいえず、特定の観念を認識させるものとはいえないが、「ソラマメ」の意味を有する既存のフランス語であるから、必ずしも独創性の程度は高いとはいえない。 (4)本件商標の申立てに係る役務と申立人商品及び役務との関連性及び需要者の共通性について 本件商標の申立てに係る役務は、上記第1のとおり、「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」、申立人商品及び役務は、上記第2のとおり、「豆菓子」、「菓子」及び「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」であり、本件商標の申立てに係る役務と申立人商品及び役務は互いに類似する商品及び役務であるから、両者の関連性の程度及び需要者の共通性の程度は高いといえる。 (5)出所の混同のおそれについて 上記(2)及び(4)のとおり、本件商標と引用商標とは、類似性の程度が高く、本件商標の申立てに係る役務と申立人商品及び役務の関連性の程度及び需要者の共通性の程度が高いとしても、上記(1)及び(3)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものとは認めることができないものであり、独創性の程度が高いとはいえないものである。 そうすると、本件商標は、本件商標の商標権者がこれをその申立てに係る役務について使用しても、これに接する需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、申立てに係る役務について、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 むすび 以上のとおり、本件商標は、申立てに係る役務について商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するとはいえず、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標 ![]() 別掲2 引用商標(甲2〜甲4の3 ほか。色彩は原本参照。) ![]() (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2024-10-24 |
出願番号 | 2023068405 |
審決分類 |
T
1
652・
25-
Y
(W35)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
鈴木 雅也 |
特許庁審判官 |
小田 昌子 馬場 秀敏 |
登録日 | 2024-04-10 |
登録番号 | 6794698 |
権利者 | 株式会社フェーヴ |
商標の称呼 | フェーブ、フェーベ、フェブ、フェベ |
代理人 | 羽鳥 亘 |
代理人 | 柿原 希望 |
代理人 | 羽鳥 慎也 |