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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1416822 |
総通号数 | 35 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2024-11-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2024-04-12 |
確定日 | 2024-10-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6776072号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6776072号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6776072号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和5年6月6日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」を指定商品として、同6年1月26日に登録査定、同年2月5日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する国際登録第1555245号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、第4類ないし第12類、第14類、第16類、第18類、第20類ないし第22類、第24類ないし第28類、第30類、第34類ないし第39類及び第42類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品及び役務を指定商品及び指定役務として、2019年(令和元年)8月16日にGermanyにおいてした商標登録に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2020年(令和2年)2月12日に国際商標登録出願されたものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標の登録は、商標法第8条第1項の規定、同法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものであるから、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第52号証を提出した。 以下、証拠の表記に当たっては、甲第1号証を「甲1」のように省略して記載する。 (1)商標法第8条第1項該当性について ア 本件商標について 本件商標は、図形のみから構成されているので、特定の称呼は生じず、特定の観念は生じない。 イ 引用商標について 引用商標は、申立人の社名である「VOLKSWAGEN」の略称である、欧文字「VW」が円の中に縦書きされた構成となっているところ、欧文字から「ブイダブリュウ」の称呼が生じる。 また、引用商標「丸の中にVWの文字」は、申立人のハウスマークとして我が国でもよく知られるところであるから、引用商標からは「ドイツの自動車製造・販売メーカーであるフォルクスワーゲン社」の観念が生じる。 ウ 本件商標と引用商標の類否について 上下を反転させた本件商標と、引用商標を比較すると、本件商標は周囲の円周の3分の1が切れているものの、どちらも円の中に欧文字V及びWを含む構成である点が共通している。 商標は、必ずしも意図する方向からのみ需要者に視認されるとは限らない。本件商標が付される商品である「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」はいずれも軽量で、購入に当たり手に取って様々な方向から見ることが一般的な商品であり、本件商標を上下反転して見るときに、外観における引用商標との類似度は非常に顕著となる。 本件商標には特定の称呼や観念は生じないため、これらの点において引用商標と比較することはできないが、外観における、両者を区別することが難しいほどの強い図形的類似性により、総合的にみると両商標は類似するというのが相当である。 エ 本件商標と引用商標の指定商品の類否について 本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似する(甲1、甲2)。 オ 引用商標の著名性について (ア)申立人が製造・販売する全ての自動車の正面には引用商標がエンブレムとして付されているところ(甲3)、申立人の自動車(以下「申立人商品」という。)は我が国における外国メーカー車新規登録台数において常にトップ3に入っており(甲4)、中古車も多く市場に流通している(甲5)。これらの自動車は日本中を走り回るから、車に興味のない人にも引用商標が視認されることとなる。 (イ)申立人商品を扱う正規ディーラーは、我が国の全ての都道府県に存在し、建物・看板・のぼり旗などに引用商標を一見してすぐに分かる大きさ・場所・配置で付し、独自にSNS等で広く広告・営業を行っている(甲6)。 また、中古車販売業者も、申立人商品を扱っており(甲5)、これらの事実は、申立人商品の需要や人気の大きさとともに、自動車を購入しようとする者でなくとも自然と引用商標が目に入る機会が多いことを示す。 (ウ)申立人は、我が国のみならず、世界中で人気が高い車種を多く製造・販売してきており(甲7)、我が国では1953年より販売が開始されて「かぶと虫」の愛称で親しまれた「タイプ1(後に「Beetle」)」(甲8)、1950年に発表され、我が国では通称「ワーゲンバス」と呼ばれ今でも親しまれている「タイプ2」(甲8)、1974年に誕生し50年間8世代にわたり親しまれ(甲9)、その車種名は日本国周知・著名商標である「Golf」(甲10)、「タイプ1(後に「Beetle」)」のデザインを引き継いだ「New Beetle」及び「The Beetle」(甲7)、コンパクトでありながら燃費の良さが魅力である「up!」(甲7)、「Golf」と並んで人気がある実用性の高い「Polo」(甲7)、SUVタイプの「Tiguan」(甲7)、輸入SUVカテゴリーにおける年間登録台数が2020年から2022年連続で1位であり、2023年には第2位であった、コンパクトサイズのSUV「T−Cross」(甲11)、同じく輸入SUVカテゴリーの年間登録台数が2021年に2位、2023年には1位であった「T−Roc」(甲11)、後述の受賞歴がある「トゥアレグ」、「Passat」、「ID.4」(甲12、甲14〜甲18)など、ニーズに応じた多種多様なタイプを取り揃えている。 (エ)申立人商品や搭載技術は、我が国において様々な賞を受賞している。 申立人商品は、日本二大カー・オブ・ザ・イヤーの1つである、市販を前提として日本国内で発表された乗用車の中から年間を通じて最も優秀な車を選定する「日本カー・オブ・ザ・イヤー」(略称:COTY)において、2004年から2024年までの間に「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」、「特別賞」及び輸入車として初めて「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の受賞を重ね、「10ベストカー」に選出され(甲12)、もう一方の、特定非営利活動法人日本自動車研究者ジャーナリスト会議(略称:RJC)が前年11月から本年10月末までの1年間に国内で発売された量産乗用車を選考対象とする「RJCカーオブザイヤー」においても、1996年から2004年にかけて、「インポートカー・オブ・ザ・イヤー」、「カー・オブ・ザ・イヤー=IMPORT」及び「カー・オブ・ザ・イヤー特別賞ベストSUV」に選出された(甲13)。 また、申立人商品は、2011年から2020年にかけて、「RJCカー・オブ・ザ・イヤー=IMPORT」、「RJCカーオブザイヤー=インポート6ベスト」に選出、2021年、2022年及び2024年にかけては、「RJCインポート・カーオブザイヤー6ベスト」に選出のほか、申立人の自動車に搭載される搭載技術が、2008年及び2009年には、「RJSテクノロジー・オブ・ザ・イヤー」、2023年及び2024年には「RJSテクノロジー・オブ・ザ・イヤー6ベスト」に選出された(甲14)。 さらに、申立人商品は、特定非営利活動法人日本自動車殿堂(略称:JAHFA)がその年次に発売された輸入乗用車の中で最も優れた乗用車に与える「インポートカーオブザイヤー」において、2007年〜2014年、2016年〜2017年、2023年〜2024年に選出され、加えて、その年次に発表された国産・輸入乗用車で最も優れたデザインに与えられる「カーデザインオブザイヤー」(2012〜2013年)、その年次に発表された輸入乗用車の中で最も優れた技術を持つものに与えられる「インポートテクノロジーオブザイヤー」(2005年)、JAHFA最優秀輸入車開発者賞(甲15)、公益財団法人日本デザイン振興会(略称:JDP)が主催する「グッドデザイン賞」において、1996年から2013年の間に複数回の「グッドデザイン賞」を受賞した(甲16、甲17)。そのほかにも、燃費管理サービス「e燃費」のユーザーが投稿する実燃費データを統計処理してランキング形式で集計し、優れた数値を出した車種を表彰する「e燃費アワード」において、2007−2019年に、輸入車部門で1位となり、2022−2023年にはハイブリッドWLTCモード燃費達成率ランキングで2位を獲得している(甲18)。 (オ)申立人の100%子会社であるフォルクスワーゲングループジャパン株式会社(甲19)は、積極的に様々な分野のイベントに出展、参加、協賛をし、あるいは自らイベントを開催している。 2021年には、「JAPAN GOLF FAIR 2021」にブースを出展し(会場来場者数:21,793人)(甲20〜甲22)、11月〜12月に「六本木ヒルズクリスマスマーケット2021」に協賛してブースを出展しキャンペーンを実施(例年の来場者数:約700万人)(甲23〜甲25)、11月に「日独交流160周年記念ドイツフェア2021」で車両展示及びキャンペーンを実施した(甲26、甲27)。 2022年には1月に「東京オートサロン2022」に出展し(参加者数:126,869名、オンラインライブ再生回数:426,960回)(甲28、甲29)、10月に「ドイツフェスティバル2022」に出展し(毎年の来場者数:約3万人)(甲30、甲31)、12月に体験型ポップアップスペースをオープンして大人も子供も一緒に遊べる様々なプログラムを提供した(甲32)。 2023年には8月に「YOKOHAMA URBAN SPORTS FESTIVAL’23」への協賛・出展(来場者数:70,000人)(甲33、甲34)及び全国19都市で展示・試乗イベントのキャラバンを開催した(甲35、甲36)。自動車に興味がある者向けだけとは限らないこれらのイベントを通し、多くの来場者が、申立人商品に親しむこととなった。 (カ)申立人商品は、その著名性と人気度により、以前より実写版又はアニメ版の映像に登場している。 ごく最近のものでは、申立人の電気自動車(引用商標のエンブレム付き)が登場する人気3Dアニメ映画「ミラキュラス レディバグ&シャノワール:ザ・ムービー」がNetflixにて配信され、4車種が画面上を縦横無尽に大活躍した(甲36〜甲38)。また、2024年4月26日に公開され、現時点で今年の公開映画の日本興行収入ランキング10位であり、現在もなお上映中の映画「ゴジラ×コング 新たなる帝国」には申立人商品「ID.4」が劇中に登場している(甲39〜甲42)。上映館では、日本向けに制作した「ID.4」×「ゴジラ」×「コング」のショートムービーが公開され、公開11日間だけでも、全国71劇場で、のべ85万6,851人がこのショートムービーを見ている(甲39、甲41)。 (キ)申立人は、スポット広告の他に、ラジオや、Apple Podcast・Spotify・Amazon Music・Radiko・YouTubeなどの各プラットフォームを通じて配信されるJ−WAVEのメイン番組スポンサーとなっており(甲43、甲44)、トーク番組では、申立人商品が紹介され、ドライブしながらトークが進められている(甲44)。 (ク)以上から明らかなように、申立人のハウスマークでもある引用商標は、自動車に興味がある人はもちろんのこと、興味がない人にも様々なイベント等で自然と目にする機会が全国レベルであり、また、申立人商品はその外見デザイン、技術、性能で高く評価され多くの賞を受けており、新規登録車及び中古車が国内を走り回っているから、本件商標の登録出願時には既に著名であり、その著名性は登録査定時にも維持されていた。 カ まとめ 上記したように、本件商標は上下を反転させたときの引用商標との類似度が非常に顕著な商標であり、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似しており、かつ、本件商標は引用商標より後に出願されたものである。よって、本件商標は商標法第8条第1項の規定に違反して登録されたものである。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性について 本件商標と引用商標の外観上の強い類似性が、比較できない称呼及び観念を凌駕していること、両者の商品が同一・類似であることは、上記(1)ウ及びエで述べたとおりであり、引用商標に係る出願に対して、申立人でもある引用商標の出願人は、令和6年(2024年)2月1日付けで発送された「通知書」について、WIPOに対しLimitationを行い、当該Limitationは2024年6月27日に国際登録簿に記録された(甲2)。これをもって引用商標に係る出願の拒絶理由は全て解消するから、近々登録査定の運びとなる。よって、引用商標が我が国において登録となったときには、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について 申立人は、自動車並びにその部品及び附属品、関連商品のみならず、被服、カフスボタン、傘、腕時計、バッグ、キャディバッグ・ゴルフクラブカバー・ゴルフ靴用ケース・ゴルフ用ボールマーカー、帽子、飲料用断熱容器、ペンケースやボールペン、マルチツールナイフ、スピーカー、タオル、カードおもちゃ、子供用の乗物おもちゃ、キーホルダー、ミニカーやモデルカー、チョコレート、マグカップ等の幅広い商品に、引用商標を使用又は使用許諾しており、それらの製品は正規ディーラー店舗や自動車関連グッズを取り扱う店舗だけではなく、大手百貨店、使用許諾を受けた者の店舗(全国1300店以上)、一般の店舗並びに大手通販サイト、大手百貨店のオンライン、使用許諾を受けた者の公式オンラインでも販売されている(甲45〜甲52)。本件商標が、これを目にする取引者及び需要者に、引用商標であると容易に誤認若しくは混同を生じさせあるいは引用商標を連想させるほどに同一・類似する商標であることは、上記、(1)ウで述べたとおりである。 そうすると、申立人は幅広い分野に引用商標を使用しており、本件商標の指定商品は引用商標の指定商品・役務と同一・類似し、本件商標の指定商品の取引者及び需要者には取引の特別な実情はなく引用商標の取引者及び需要者と共通しており、これら取引者及び需要者が本件商標を見るときには、申立人のハウスマークとして周知著名であり独創的な引用商標を連想、想起し、申立人若しくはその日本子会社と組織的、経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、本願は商標法第4条第1第15号に該当する。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (ア)申立人は、1937年に設立された自動車を製造・販売するドイツの企業であり、我が国においては、1953年に販売が開始されて以降、多種多様な申立人商品が販売されており(申立人の主張、甲8)、申立人商品を取り扱う正規ディーラーは、全ての都道府県に存在し、それらの店舗の看板・のぼり旗などに引用商標が使用されている(甲6)。 (イ)我が国における申立人商品の販売実績は、2008年度ないし2023年度の外国メーカー車新規登録台数において、約31,000台ないし約72,000台、シェアは、約13%ないし約25%で推移しており、1位ないし3位に位置づけられている(甲4)。 また、「ネクステージ」のウェブサイト(2020年4月26日付け)によれば、「フォルクスワーゲンは、世界的に人気の高い車です。2019年の世界自動車メーカー売上高ランキングにおいて、日本のトヨタを抜いて、1位を獲得しています。」の記載がある(甲7)。 (ウ)申立人及び申立人以外の複数のウェブサイトにおいて、申立人商品の紹介記事とともに、申立人のハウスマークとして又は申立人商品である自動車のフロントエンブレム等に引用商標が使用されている(甲3、甲7、甲9、甲11、甲15、甲20、甲21、甲23、甲26、甲27、甲30、甲32、甲33、甲35〜甲39、甲44 ほか)。 また、申立人は、申立人商品のほか、被服、バッグ、ゴルフ用品、帽子、傘、文房具、タオル、おもちゃ、キーホルダー、水筒、貯金箱等を取り扱っており、それらの商品には引用商標が使用されている(甲45〜甲47、甲49〜甲52)。 (エ)申立人商品は、日本カー・オブ・ザ・イヤーで10ベストカー、RJCインポート・カーオブザイヤーで6ベスト、日本自動車殿堂インポートカーオブザイヤー、グッドデザイン賞、グッドデザイン・ベスト100、e燃費アワードなど、1996年ないし2024年にかけて、複数の自動車分野での賞を受賞している(甲12、甲14〜甲18)。 (オ)申立人の子会社によって、「JAPAN GOLF FAIR 2021」への出展、「六本木ヒルズクリスマスマーケット 2021」、「ドイツフェア2021」、「東京オートサロン2022」、「ドイツフェスティバル2022」(横浜)での展示、「試乗体験会」(六本木)、「YOKOHAMA URBAN SPORTS FESTIVAL’23」、東京ミッドタウンでの展示・試乗イベントなどの複数のイベントで申立人商品の展示、試乗体験会などが行われた(甲20、甲21、甲23〜甲35)。 また、申立人商品は、他社とのコラボにより、我が国で公開された映画などに登場し、また、ラジオ番組でも紹介された(甲36〜甲39、甲43、甲44)。 イ 上記アによれば、申立人は、1937年に設立された自動車を製造・販売するドイツの企業であり、我が国においては、1953年に販売が開始されて以降、多種多様な申立人商品が販売されていること、我が国における2008年度ないし2023年度の外国メーカー車新規登録台数のランキングにおいて、申立人商品は、1位ないし3位に位置づけられていること、引用商標は、国内の正規ディーラーの店舗の看板・のぼり旗などや申立人のハウスマークとして又は申立人商品である自動車のフロントエンブレム等に使用されていること、申立人商品は、1996年ないし2024年にかけての複数の自動車分野での賞を受賞していること、複数のイベントで申立人商品の展示、試乗体験会が行われたことなどから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標は、申立人商品を表示する申立人のハウスマークとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたといえる。 (2)商標法第8条第1項違反について 申立人は、引用商標を挙げ、本件商標は商標法第8条第1項の規定及び同法第4条第1項第11号に違反して登録された旨を主張しているが、引用商標は本件商標の登録査定日において設定登録されていないものであるから、当審は、本件商標と引用商標との関係における申立人の主張は、同法第8条第1項の規定に違反して登録された旨の主張と判断し、以下検討する。 ア 本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、円周の下部が切れた円輪郭内に、切れ目の両端から円輪郭の上部に向かって延びた山状の線が中央部で交差し、下部の切れ目に向かって延び、交差した線の中央部に横線を配した構成からなるところ、当該山状の線は、円輪郭の上部に接することなく配され、その全体の構成からは、何らかの文字を表したものと認識できないほどの図形化がなされており、全体として一種の幾何学図形を表したものとして認識されるというべきである。 そうすると、本件商標からは、特定の称呼及び観念を生じないものである。 イ 引用商標について 引用商標は、別掲2のとおり、円輪郭内にV字状の線を上部に配し、その下にW字状の線が配された図形からなるところ、V字状の線及びW字状の線は重なることなく、V字状の線及びW字状の線の両端はいずれも円輪郭に接するように配され、全体がまとまりよく一体的に構成されており、円と鋭角に折れ曲がった直線から構成された一種の幾何学図形を表したものとして認識し把握されるというべきであるから、当該図形からは、特定の称呼を生じないものである。 そして、引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示する申立人のハウスマークとして需要者の間に広く認識されていたものであるから、「申立人のハウスマーク」の観念を生じるものである。 そうすると、引用商標は、特定の称呼を生じず、「申立人のハウスマーク」の観念を生じるものである。 ウ 本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標とを比較すると、両者は、上記ア及びイのとおり、いずれも一種の幾何学図形からなる商標であるとしても、本件商標は、円周の下部が切れた円輪郭内に、その全体の構成からは、何らかの文字を表したものと認識できないほどの図形化がなされているのに対し、引用商標は、円輪郭内にV字状の線及びW字状の線が配された図形からなる点、本件商標は、円周の下部が切れた円輪郭内に配された山状の線は、円輪郭の上部に接することなく配されているのに対し、引用商標は、V字状の線及びW字状の線は重なることなく、V字状の線及びW字状の線の両端がいずれも円輪郭内に接するように配されたものである点などの相違により、両者は、外観全体から受ける視覚的印象が異なるものであるから、これらを離隔的に観察しても、判然と区別できるものである。 また、称呼においては、本件商標及び引用商標からは、特定の称呼が生じないから、称呼上、比較することはできない。 さらに、観念においては、本件商標は、特定の観念が生じないのに対し、引用商標からは、「申立人のハウスマーク」の観念が生じるから、観念上、相紛れるおそれはないものである。 そうすると、本件商標と引用商標とは、称呼において比較することができないとしても、外観において、判然と区別できるものであり、観念において相紛れるおそれはないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 なお、申立人が主張する上下を反転させた本件商標と引用商標を比較した場合であっても、両者は、全体構成及び各構成要素の相違により、外観全体から受ける視覚的印象が異なるものであることに変わりはないものであるから、上記したとおり、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 したがって、本件商標は、商標法第8条第1項の規定に違反して登録されたものとはいえない。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標の周知性について 引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示する申立人のハウスマークとして需要者の間に広く認識されていたといえる。 イ 本件商標と引用商標の類似性の程度について 本件商標と引用商標とは、上記(2)のとおり、非類似の商標であるから、本件商標と引用商標の類似性の程度は低いものといえる。 ウ 本件商標の指定商品と申立人商品との関連性及び需要者の共通性について 本件商標の指定商品は、「被服」等、人の身体に身につけるファッション関連の商品であるのに対し、申立人商品は「自動車」であるから、両商品は、その用途、性質等においてかなり異なり、本件商標の指定商品と申立人商品の関連性及び需要者の共通性は低いものというのが相当である。 エ 出所の混同のおそれについて 上記アのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示する申立人のハウスマークとして需要者の間に広く認識されていたとしても、上記イのとおり、本件商標と引用商標の類似性の程度は低く、本件商標の指定商品と申立人商品の関連性及び需要者の共通性は低いものである。 そうすると、本願商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、それに接する需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が、他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第8条第1項の規定及び同法第4条第1項第15号に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) ![]() 別掲2(引用商標) ![]() (この書面において著作物の複製をしている場合の御注意) 本複製物は、著作権法の規定に基づき、特許庁が審査・審判等に係る手続に必要と認めた範囲で複製したものです。本複製物を他の目的で著作権者の許可なく複製等すると、著作権侵害となる可能性がありますので、取扱いには御注意ください。 |
異議決定日 | 2024-10-09 |
出願番号 | 2023061743 |
審決分類 |
T
1
651・
4-
Y
(W25)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
鈴木 雅也 |
特許庁審判官 |
小田 昌子 馬場 秀敏 |
登録日 | 2024-02-05 |
登録番号 | 6776072 |
権利者 | 有限会社サカイヤプランニング |
代理人 | 高橋 正宏 |
代理人 | 江崎 光史 |
代理人 | 佐久間 洋子 |
代理人 | 田崎 恵美子 |